
「胎児認知とはどんな手続きで、どこにどう届け出ればいいのか」「相手が胎児認知に応じてくれなかったらどうなるのか」と、出産を前に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
胎児認知とは、妊娠中に父親がお腹の子を自分の子と認める手続きで、母親の承諾があれば子が生まれる前でも届け出られます。生まれた時点で父子関係が定まるため、相続や国籍、出生届の父の欄などで子の立場を守れます。
もっとも、母親が結婚している場合など、そもそも認知ができないケースもあります。また、出生前は父親に認知を強制できないため、生まれる前と後で取れる手段が変わります。
この記事では、認知の問題に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 胎児認知とは?生後認知との違い
- メリットとデメリット
- 胎児認知届の書き方・提出先と必要書類
- 父親に認知を拒否されたときの対応
お読みいただくことで、出産までに何を準備し、どこへ届け出ればよいかを整理できます。
なお、お悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。
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胎児認知とは?妊娠中に父親が子を認知する手続き
胎児認知とは、子がまだお腹の中にいる妊娠中に、父親がその子を自分の子として法律上認める手続きです。
婚姻関係にない父母から生まれた子は、母親とは出産の事実によって親子になりますが、父親との法律上の親子関係は、父親が子を認知することで生じます。認知は子が生まれた後にもできますが、民法は、妊娠中に胎内の子を認知することも認めています。
(胎児又は死亡した子の認知)
第七百八十三条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
胎児認知は、生まれた後にする認知(生後認知)と比べると、母親の承諾が必要なこと、届出先が母親の本籍地に限られること、父親が応じない場合に裁判で強制する手段がないことが主な違いです。出生後に父親が自分の意思で認知する場合の進め方は「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」にまとめています。
胎児認知には母親の承諾が必要
胎児認知をするには、母親の承諾を得なければなりません(民法783条1項後段)。父親が認知を望んでいても、母親が承諾しなければ胎児認知はできず、子が生まれた後の認知を待つことになります。
父親が未成年であっても、親などの法定代理人(未成年者に代わって法律上の手続きをする人)の同意を得ずに胎児認知ができます(民法780条)。
代理出産で、他の女性の卵子を使って妊娠・出産した場合でも、出産した女性が子の母とされます(生殖補助医療法9条)。そのため、胎児認知に必要な承諾をするのも出産する女性です。
母親が結婚していると胎児認知はできない
母親が結婚している間に妊娠した子は、夫の子と推定されます(民法772条1項)。このように夫の子と推定される仕組みを「嫡出推定」といい、法律上の父親が夫と定まるため、夫以外の男性が胎児認知をしても効力は生じません(民法783条2項)。
母親が独身でも注意が必要です。離婚から300日以内に子が生まれたときは、結婚している間の妊娠と推定され、前の夫の子とされます(民法772条2項)。出産までに母親が再婚していれば、再婚後の夫の子と推定されます(同条3項)。いずれの場合も、夫以外の男性による胎児認知は効力を生じません。
この推定が実際の父子関係と異なる場合は、原則として、子が生まれた後に嫡出否認の訴え(父子関係を否定するための裁判)を起こす必要があり、出生前に胎児認知で解決することはできません。令和6年4月1日に施行された改正民法により、夫だけでなく子や母親も否認できるようになりました(民法774条。母親の否認は、子の利益を害することが明らかな場合を除く)。期間は、夫は子の出生を知った時から、子と母親は出生の時から、それぞれ3年以内です(民法777条)。
反対に、父親が結婚していても、母親の側に上のような事情がなければ胎児認知はできます。ただし、認知によって交際が父親の配偶者に知られ、不貞行為の慰謝料を請求されるおそれがあります。配偶者に知られてしまった場合の動き方は「既婚者の子供を産んだら?取るべき行動と妻からの慰謝料リスク」で解説しています。
胎児認知のメリット・デメリット
胎児認知にはメリットがある一方で、一度した認知は取り消せないなど、事前に知っておくべき点もあります。
メリット
胎児認知の主なメリットは、子が生まれた時点で父親が法律上定まり、その後の権利が守られることです。
外国人の母親と日本人の父親の子の場合、胎児認知をしておけば、子は出生と同時に日本国籍を取得します(国籍法2条1号)。生まれた後に認知したときは、法務大臣への届出によって日本国籍を取得する別の手続きが必要になります(国籍法3条1項)。
出産前に父親が亡くなった場合も、胎児は相続についてはすでに生まれたものとみなされます(民法886条1項)。胎児認知をしておけば、子が生きて生まれたとき、父親の相続人になれます。
また、出生届の父の欄に父親の氏名を書けるのも、胎児認知をしておく利点です。認知がないまま出産すると、父の欄を空けたまま届け出ることになります。
胎児認知で父子関係が定まっていれば、出産後に父母が別れても、改めて認知を求めることなく、母親は子のために養育費を請求できます。母親が実際にいくら受け取れるのか、どう進めればよいのかは「認知された子の養育費はどうなる?相場・請求手続きと期間を解説」をご確認ください。
デメリット
一度した認知は、取り消すことができません(民法785条)。
ただし、取り消しとは別に、血縁がないことを理由に、認知した父親が認知の無効を求める訴えを起こすことはできます。訴えを起こせる期間は、胎児認知の場合、子の出生の時から7年以内です(民法786条1項)。裁判にはDNA鑑定などの費用と時間もかかります。血縁がないと分かった場合のほか、どのような事情なら認知を争えるのかは「認知の取り消しはできる?無効を主張できるケースと手続き」で詳しく取り上げています。
親子関係に確信が持てないまま認知するのは避け、出生前の親子鑑定などで確かめてから決めることも考えられます。
胎児認知の手続き方法
胎児認知届は、父親が届出人となり、母親の承諾を付けて、母親の本籍地の役所に提出します。届け出てから戸籍に記載されるまでの流れは次のとおりです。
認知届を書き、母親の承諾を付ける
認知届の用紙は全国共通で、市区町村役場の窓口で受け取れます。胎児認知届は、生まれた後の認知と書き方が一部異なり、主に次の点に注意します。
- 「認知される子」の氏名欄には「胎児」と書き、生年月日などは空欄にする
- 胎児を認知する旨と、母親の氏名・本籍を書く(戸籍法61条)
- 認知の種別は「任意認知」を選ぶ
- 届出人である父親が、自分で署名する
双子など多胎を妊娠している場合の書き方は、事前に提出先の役所に確認しておくと確実です。
母親の承諾は、届書の「その他」欄に承諾する旨を書いて母親が署名するか、承諾書を別に作って付ける方法で示します(戸籍法38条1項)。令和3年9月1日以降、押印は任意です。書き方は、自治体が公開している胎児認知届の記入例が参考になります。
母親の本籍地の役所に提出する
胎児認知の届出は、母親の本籍がある市区町村の役所にしなければなりません(戸籍法61条)。出生後の認知とは違い、父親の本籍地や所在地の役所には届け出られません。母親が外国籍で日本に本籍がない場合は、母親の住所地の役所に届け出る扱いが一般的です。
胎児認知届は母親が提出することもできます。ただし、届出人はあくまで認知する父親なので、届書には父親本人の署名が必要です(戸籍法29条)。母親の本籍地が遠い場合は、郵送で届け出る方法もあります。
胎児認知の必要書類は、認知届、母親の承諾(届書への記載か承諾書)、窓口に行く人の本人確認書類が基本です。令和6年3月1日からは、戸籍の届出の際に戸籍謄本を添付することが原則不要になりました。事前に提出先へ確認しておくと安心です。
胎児認知の届出が受理されても、その時点では戸籍に記載されません。役所が届書を預かり、子が生まれて出生届が出された後に、戸籍に認知が記載されます。認知の効力は、出生の時にさかのぼって生じます(民法784条)。
認知した胎児が死産となったときは、出生届をすべき人が、そのことを知った日から14日以内に、認知を届け出た役所へその旨を届け出ます(戸籍法65条)。
父親に胎児認知を拒否された場合の対策
父親に胎児認知を拒否された場合、出産前に裁判で認知を強制する手続きはなく、認知調停や認知の訴えといった法的な対策を取れるのは子が生まれた後です。出産前の段階でできるのは、父親と話し合い、自分の意思で胎児認知をしてもらうよう求めることにとどまります。
子が生まれた後であれば、家庭裁判所の認知調停(調停委員を交えた話し合いの手続き)を利用できます。当事者が合意し、父子関係の根拠となる事実にも争いがなく、裁判所が必要な事実を調べたうえでその合意を正当と認めれば、合意に相当する審判(合意どおりに父子関係を認める裁判所の判断)がされます(家事事件手続法277条1項)。合意できないときは認知の訴え(裁判で認知を求める手続き)を起こすことができ(民法787条)、判決で父子関係が認められれば、父親が拒んでいても認知が成立します。
出生後の調停や訴えまで見通して動けるよう、早めに弁護士へ相談することを検討してください。
あわせて読みたい:
出産前・出産後に結婚(入籍)すると胎児認知はどうなる?
出産前に父母が結婚すれば、胎児認知は必要ありません。結婚前に妊娠した子でも、結婚した後に生まれれば夫の子と推定されるからです(民法772条1項後段)。すでに胎児認知をしていた場合、その認知は効力を生じません(民法783条2項)。それでも、子は夫の子とされるので、父子関係には影響しません。
出産後に父母が結婚すると、胎児認知をした子は嫡出子(結婚している父母の子)の身分を取得します(民法789条1項)。母親が結婚で氏を改めたときは、父母の婚姻中に限り、家庭裁判所の許可なしに、婚姻届とは別に入籍届を出して子を父母の氏にできます(民法791条2項)。認知をした子が戸籍にどう載るのかは「子を認知すると戸籍はどうなる?記載例と父の姓を名乗る手続き」をご覧ください。
胎児認知でお悩みの方は弁護士にご相談ください
妊娠中に胎児認知を届け出ておけば、生まれた時から子の権利を守れます。一方で、母親が婚姻中であればできず、父親が応じなければ出生前には強制できません。
相手が胎児認知に応じない場合でも、出生後は調停や訴えで認知を求められます。弁護士に依頼すれば、相手との話し合いや家庭裁判所の手続きを任せられるうえ、養育費や相続など出生後の問題まで見据えて準備できます。
出産を控えた時期に、相手との関係や手続きのことまで一人で抱えるのは、心身ともに大きな負担です。相手に認知を断られた方や、出産後の養育費が心配な方も、早めにご相談ください。
当事務所では、認知や養育費をめぐる問題に力を入れており、依頼者のお気持ちに寄り添いながら解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
不倫慰謝料、婚約破棄、妊娠トラブル、パパ活トラブル、元交際相手からのつきまといなど、男女トラブルのご相談に力を入れて取り組む。慰謝料を請求する側・請求された側のどちらのご相談も、お話を丁寧に伺ったうえで、相手方との交渉や調停・訴訟など状況に応じた手段を検討する。「家族や職場に知られたくない」といった事情にも配慮して対応している。











