このようなことでお困りではないでしょうか。
結論から言いますと、他人の駐車場に許可なく入って切り返しやUターンをする行為は住居不法侵入罪に問われる可能性があります。もっとも、民事不介入として警察が動かない可能性が高く、また、具体的な損害が生じていない場合には、損害賠償請求(慰謝料請求)は困難でしょう。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 他人の家の駐車場で車を切り返し(転回)すると不法侵入になるのか
- 駐車場で切り返しされないための対策と注意点
についてわかりやすく解説していきます。
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目次
他人の家の駐車場で車を切り返し(転回)すると不法侵入?
他人の家の駐車場で勝手に車を切り返し(転回)すると、不法侵入になるのでしょうか。
法的に不法侵入になるかどうかという問題は、刑事責任として「住居侵入罪」が成立するのか、そして民事責任として「不法行為に基づく損害賠償請求義務」が発生するのか、という問題に言い換えることができます。
不法侵入にならないこともある
それでは、他人の駐車場に立ち入る行為は、住居侵入罪になるのでしょうか。
住居侵入罪は、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入」する行為を指します(刑法第130条)。
ここで「住居」とは、人が起臥寝食する場所のほか、建物の周囲にある敷地で塀や垣根で囲われた土地(これを「囲繞地(いにょうち)」といいます。庭など)も含むとするのが判例です。
したがって、家の周囲を塀や垣根で囲った敷地内に存在する駐車場は住居に含まれると判断される可能性は高いでしょう。そのため、そのような駐車場で勝手に車を切り返すと住居不法侵入(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が成立する可能性があります。
もっとも、門塀などによって外部との交通を遮断するような構造ではない自宅敷地内にある駐車場や、住居と離れている駐車場などの場合には「住居」とはいえず住居侵入罪は成立しない可能性もあります。
しかし、このように刑法犯が成立しない場合であっても、軽犯罪法違反を追及できる可能性は残っています。
軽犯罪法により、「入ることを禁じた場所・・・に正当な理由がなくて入った」場合には、「拘留」または「科料」が課されることになります(軽犯罪法第1条32号、第2条)。
したがって、「立ち入り禁止。切り返し等の侵入も一切お断りします。」などの立て看板を設置しておけば、無断侵入者に対して軽犯罪法違反を問える可能性があるのです。
不法侵入はどこから?住居侵入罪になる分かれ目と逮捕後の流れを解説
民事不介入で警察が動かない可能性も高い
建造物侵入罪や軽犯罪法違反の構成要件にあてはまっていたとしても、警察は動いてくれない可能性があります。
民事不介入の原則や、証拠に基づく立証が困難な場合には、たとえ相手が行為を認めていたとしても、警告や注意のみで事件として立件されない可能性があるのです。実害が生じていない場合や悪質性が高くないと判断された場合にも警察は動いてくれないケースがあります。
不法侵入で損害賠償請求できる?
不法侵入が不法行為であるとして損害賠償請求をすることはできるでしょうか。
相手方に不法行為が成立するためには、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」と言えなければなりません(民法第709条)。
したがって、物を壊されたり、芝生が荒らされたなどの具体的な損害がなければ、そもそも損害賠償請求はできません。
単なる切り返しのための侵入であれば、精神的苦痛も観念できませんので慰謝料請求も困難でしょう。
駐車場で切り返しされないための対策と注意点
第三者の無断侵入が気になるという方は、切り返しのために侵入されないように対策を講じておくことが重要でしょう。
そのような対策としては以下のような措置が考えられます。
- 私有地につき立ち入り禁止の看板を設置する
- カラーコーンを置く
- チェーンポールを置く など
ただし、過剰なバリケード(例えば、一見普通のカラーコーンだが中にセメントが詰められたもの)を設置していると、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵がある」と判断される可能性があります。
このような工作物が原因で、切り返しのために駐車場に侵入してきた自動車が破損したり、運転者が負傷したりした場合には、逆に土地の所有者が「工作物責任」に問われる可能性が出てきてしまいます。
工作物責任とは、瑕疵ある工作物の設置・保存によって他人に損害を生じたときに、その工作物の占有者や所有者が負うことになる損害賠償義務のことです。私有地に不法侵入してきた点から相当程度の過失相殺がなされますが、賠償義務を負うリスクは残ります。
また、占有者は損害の発生を防止するのに必要な注意をしていた場合には、免責されます。他方、工作物の所有者は、そのような注意をしていたことを立証しても免責されませんので注意が必要です。
以上から、侵入されないような対策については、常識の範囲内の措置にとどめ、あまり過剰な対抗策で臨むことはおすすめしません。
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