暴言は犯罪になる?問える罪と暴言を吐かれた場合の対処法
暴言(言葉の暴力)を吐かれたら犯罪になるのだろうか?

このようにお考えの方もいるのではないでしょうか。

結論から言いますと、暴言も犯罪になり得ます

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • どこからが暴言なのか
  • 暴言はどんな犯罪に問える可能性があるのか
  • 暴言で警察に逮捕された実例
  • 暴言を吐かれた場合の対処法

などについてわかりやすく解説していきます。

なお、暴言を吐かれた被害者の方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

暴言とはどこから?

それでは、暴言とはどんな行為をいうのか解説します。

「暴言」とは言葉の暴力のこと

暴言という言葉を辞書で調べると、暴言とは、

  • 乱暴な言葉
  • 失礼で侮辱的な言葉
  • 言ってはならない発言

などと説明されていますが、法的に問題となる暴言とは言葉の暴力のことです。すなわち、他人を傷つけたり、他人に嫌な思い、不快な思いをさせたり、他人に迷惑になるような言葉や発言が暴言となりえます。

具体的にどんな言葉や発言が暴言となりうるのかは、言葉や発言の内容、言葉や発言が発せられた経緯、趣旨、状況、発言者とその相手方との関係性などを考慮しながら判断されるでしょう。

暴言の典型例

では、どんな言葉や発言が暴言となりうるのか具体的にみていきましょう。

SNS等のコメント欄への書き込み

近年はSNSやブログ、ニュース記事のコメント欄などに、他人を傷つけたり、他人に嫌な思い、不快な思いをさせるコメントを書き込み、最悪の場合、投稿者を死に追い込んでしまう悪質なケースが見受けられます。

自分の名前や顔写真などの個人情報を明かさず、誰でも気軽にコメントできる点がネットのよさではありますが、その反面、無責任なコメントが増え、上記のような最悪の事態にまで発展してしまうケースがあります。

SNS等への投稿

コメント欄ではなく、自身のSNS等に他人への批判、悪評を投稿する行為も暴言の一つになりえます。

インターネットの世界では、世界中の誰もがいつでも、どこからでも情報にアクセスすることができ、「いいね」や「リツイート」などをすることによって、あっという間に情報が世界に拡散されてしまいます。

また、ネットの怖いところは、情報の真偽が確かめられないまま、あたかもその情報が真実であるかのように拡散されてしまうことです。批判、悪評の対象となった人は、その情報に対する反論の機会を得られないまま、誤った情報だけが拡散され続けてしまいます。

パワハラ

パワハラもSNS等と同じく社会的な問題の一つです。厚生労働省によると、パワハラとは次の条件をすべて満たしたものと定義づけられています。

  • 優越的な関係を背景とした言動(であって)
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(により)
  • 労働者の就業環境が阻害されるもの

パワハラによって精神的病にかかり、休職、退職に追い込まれたり、最悪の場合、自殺にまで追い込まれるケースも見受けられます。

もっとも、パワハラにあたるかどうかの判断は、個別の事情を踏まえなければ難しいといえます。パワハラかどうかの判断に迷ったら、はやめに弁護士に相談しましょう。

セクハラ

一方、セクハラは、

  • 職場において行われる
  • 労働者の意に反する
  • 性的な言動

をいうと定義づけされています。性的な言動とは、SNS等に性的な内容の情報を投稿すること、性的関係を強要する言動などがこれにあたります。

セクハラもパワハラと同じく、個別の事情を踏まえなければセクハラかどうかの判断が難しいといえます。セクハラかどうかの判断に迷ったら、はやめに弁護士に相談しましょう。

モラハラ

モラハラはモラルハラスメントの略です。「モラル」とは倫理や道徳、「ハラスメント」とは嫌がらせという意味ですから、モラハラとは、倫理や道徳に反した嫌がらせということになります。

モラハラは職場のほか、家庭内でも起こりえます。一般に、上司から部下、夫から妻に対するモラハラが多いですが、立場や性別は関係ありません。部下から上司、妻から夫に対するモラハラの事例も散見されます。

店舗や事務所への嫌がらせ、営業妨害

お店で大声でクレームを言い続ける、根も葉もない噂をSNS等に投稿する、クレーム電話をかけ続けるなども暴言に該当します。

暴言を吐かれたらどんな罪に問える?

暴言罪という罪はありませんが、暴言の内容や暴言によって引き起こされた結果によっては刑法上の罪に問える可能性があります。以下では、暴言を吐かれた場合にどんな罪に問える可能性があるのか解説していきたいと思います。

軽犯罪法違反

まず、軽犯罪法違反です。

軽犯罪法15号には次の規定が設けられています。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(前略)
五 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

軽犯罪法 | e-Gov法令検索

飲食店で暴言を吐かれた、電車、地下鉄、バス、飛行機などの公共の乗物内で他の乗客に対して暴言を吐かれた、という場合は軽犯罪法違反に問える可能性があります。

罰則は「拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)又は科料(1万円未満の金銭納付)」です。

侮辱罪

侮辱罪は刑法第231条に規定されています。

(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

「事実を摘示しなくても(侮辱)」とは、人の社会的評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘、表示しないことをいいます。

たとえば、人に向かって「バカ」、「ブス」、「アホ」という行為は、具体的事実を指摘、表示したことにはなりませんから、侮辱にあたります。

「公然」とは、不特定又は多数の人が見聞きできる状況のことです。

罰則は「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金」です。

名誉棄損罪

名誉棄損罪は刑法第230条第1項に規定されています。

(名誉毀き損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

人の社会的評価を低下させるおそれのある具体的事実を指摘、表示した場合は名誉棄損罪に問える可能性があります。具体的事実を指摘、表示する必要がある点が侮辱罪と異なります。

たとえば、「〇〇さんは痴漢の前科がある」「〇〇さんは多額の借金を抱えて現在債務整理中」といった暴言を公の場で発言したり、ネットの掲示板等に書き込めば同罪が成立する可能性があります。

なお、具体的事実は真実か嘘かは問いません。いずれの場合も人の社会的評価が低下するおそれがあるからです。ただし、指摘、表示した事実が公共の利害に関する場合は、刑法第230条の2の特例により不処罰となることもあります。

罰則は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。

名誉毀損罪はどこから成立する?構成要件を解説

脅迫罪

脅迫罪は刑法第222条に規定されています。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法 | e-Gov法令検索

「脅迫」とは、人(またはその人の親族)の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知することで、手段を問いません。

たとえば、「ぶっ殺してやる」「お前の息子を殴ってやる」「裸の写真をネットに流出させてやる」などの暴言は害悪の告知にあたるため脅迫罪が成立する可能性があるでしょう。

罰則は「2年以下の懲役又は30万円以下」の罰金です。

脅迫罪になる言葉・ならない言葉は?強要罪・恐喝罪と何が違う?

恐喝罪

恐喝罪は刑法第249条に規定されています。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

脅迫となる暴言を手段として金品を脅し取られた場合は恐喝罪に問える可能性があります。

たとえば、「金を払わないなら蹴り飛ばすぞ」「会社に不倫していることをバラされたくなければ金をよこせ」などと脅せば恐喝罪が成立する可能性があります。

罰則は「10年以下の懲役」です。

恐喝罪とは?成立要件・時効・逮捕後の流れを恐喝に強い弁護士が解説

強要罪

強要罪は刑法第223条に規定されています。

(強要)
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

脅迫となる暴言を手段として、義務のないことさせられたなどという場合は強要罪に問える可能性があります。

たとえば、「土下座して謝罪しないならSNSで店の悪い評判を拡散させるぞ」などと脅せば強要罪が成立する可能性があります。

罰則は「3年以下の懲役」です。

強要罪とは?構成要件・未遂の処罰・事例・時効を解説

威力業務妨害罪

威力業務妨害罪は刑法第234条に規定されています。

(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

暴言によって業務を妨害された場合は威力業務妨害罪に問える可能性があります。

たとえば、店舗内で従業員に暴言を伴うクレームをして、他のお客との接客や営業活動を妨害した場合には威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

威力業務妨害とは?クレームでも成立?構成要件・判例を解説

暴言で逮捕された事例

ここでは暴言で警察に逮捕された事例をご紹介します。

ショッピングセンターで侮辱行為

202210月、石川県内のショッピングセンターで、同じ客として買い物に訪れていた

男性に対し、「こいつ頭おかしい」などと暴言を吐いたとして、50代の男性が侮辱罪で逮捕されています。容疑者が酒に酔って騒いでいたため、被害男性が注意したところ、侮辱されたとのことです。同年7月に改正刑法が施行され、侮辱罪が厳罰化されて以降、県内で侮辱罪で摘発されたのは初めてとのことです。

裁判所への業務妨害

20232月、群馬県内にある家庭裁判所に電話をかけ、電話に出た職員に対し、「裁判所なんか焼いてやるからな、灯油持って。放火してやる。全員焼き殺してやるよ」などといって、職員に不審者への警戒にあたらせるなどし、裁判所の業務を妨害したとして、県内に住む広告配達員2人の女性が威力業務妨害罪で逮捕されています。

暴言を受けた場合の対処法

最後に、暴言を受けた場合の対処法について解説します。

軽度の暴言なら無視する

まず、暴言が初期の段階で、エスカレートしておらず、気にならない程度であるなら無視するのが一番の得策かもしれません。

軽度な暴言に過度に反応すると、相手はあなたの反応を面白がって、暴言をさらにエスカレートさせてくるかもしれません。

もし、暴言が続くようであれば、音声を録音するなどして証拠を残しておきましょう。証拠は万が一後述する法的措置をとる際に役に立ちます。

発信者を特定する

SNSでの暴言がひどい場合は、発信者の住所、氏名などの個人情報を特定することも検討しなければいけません。暴言を辞めさせるにも、何らかの法的措置をとるにも、発信者の個人情報を特定しなければいけません

発信者を特定するには、発信者の個人情報を消去しないよう、裁判所からSNS等を運営するコンテンツプロバイダ等に対して命令を出してもらうとともに、裁判所に対して発信者の個人情報の開示を求める請求訴訟を提起する必要があります。

発信者情報開示請求とは?費用や期間などの情報をまとめました

同僚・上司、相談窓口に相談する

職場内でパワハラ、モラハラにあたる暴言を受けた場合は、相談しやすい同僚・上司か職場内に設けられている専用の相談窓口に相談してみましょう。職場内で事実関係に関する調査を進め、場合によっては部署変更、注意勧告、悪質なケースでは懲戒処分するなどの対処をしてくれる可能性があります。

もっとも、同僚・上司、職場内の相談窓口に相談しても、身内の問題であって、事を大げさにしたくないとの思いから、重大事案として取り扱ってもらえず、あなたが期待していたような対応をしてもらえない可能性もあります。そのおそれが大きい場合は、労働局や法務局などの公的機関が設けている相談窓口に相談してみましょう

モラハラ・DVの相談窓口に相談する

配偶者のモラハラにあたる暴言でお悩みの場合は、警察のほかDVセンター(配偶者暴力相談支援センター)、DVプラス、婦人相談所などの公的な相談窓口にはやめに相談しましょう。

モラハラは言葉の暴力とも言われていますが、エスカレートすると、言葉だけでなく実際に暴力を振るわれる危険もあります。そのため、一刻も早くご自分の身の安全を確保することが最優先です。上記の専門窓口に相談すればシェルター(一時避難所)を紹介してもらえることもあります。

また、裁判所に保護命令を出してもらうため、避難後に住民票等の閲覧等の制限措置をかけるためには、やはり上記の専門窓口に相談しておくことが必須となります。事態が悪化してしまう前にはやめに相談しましょう。

無料でモラハラやDVの相談ができる公的機関や相談機関一覧

弁護士に依頼する

暴言の被害で困った場合は、はやめに弁護士に相談しましょう

被害者が暴言をした相手と直接向き合うことは精神的にも大きな負担です。また、暴言をするような相手はなかなか自己の非を認めようとはしません。このような相手と対等に向かい合うには、交渉のプロである弁護士の力が必要です。

また、相手の出方しだいでは、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)や刑事告訴といった法的措置をとる必要がある場合も出てくるでしょう。損害賠償請求訴訟や刑事告訴はご自身で行うことも不可能ではありませんが、手続きが複雑で負担が大きく、途中で諦めてしまうことがほとんどだと思います。

また、SNSや掲示板などのネットで暴言を吐かれた場合に犯人を特定するための発信者情報開示請求の手続きも、やはり不慣れな一般の方が行うのは難易度が高いと思われます。

当事務所では、ネットに暴言を書き込んだ犯人の特定、暴言を吐いた相手への慰謝料請求、刑事告訴の代理を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、加害者に法的責任を取らせたいとお考えの方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。