このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、他人が所有しているペット(動物)をわざと殺傷するなどした場合は、器物損壊罪に問われます。器物損壊罪は、故意に他人の物を損壊または傷害した場合に成立する犯罪であるところ、動物は法律上「物」として扱われているためです。ただし、他人が所有している動物が対象ですので、自分が飼っているペットや、野良猫・野良犬、野生動物を虐待するなどして殺傷しても器物損壊は成立しません。もっともこの場合、動物愛護管理法違反になり得ます。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が上記内容につき詳しく解説するとともに、なぜ動物は物扱いされるのかについても合わせて解説していきます。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
他人のペット(動物)を殺傷すると器物損壊罪が成立
器物損壊罪とは、故意に(わざと)他人の物を損壊または傷害した場合に成立する犯罪です。刑法第261条に規定されています。罰則は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
「他人の物」とは、他人の所有する文書・電磁的記録・建造物・艦船を除いたすべての有体物を指します。そのため、他人が飼っているペット(動物)も対象となります。
また、たとえ自己所有の物であっても、差し押さえを受けている物や、賃貸している物などを損壊した場合は器物損壊罪が成立します(刑法第262条)。したがって、例えば、一時的に他人にレンタルしている自己所有のペットを殺傷した場合も器物損壊罪に問われる可能性があります。
「損壊」とは、物の毀損・破壊のことをいい、物理的に物の形体を変更又は滅却させる行為のほか、ひろく物の本来の効用を失わせる行為も含まれます。そのため、飲食店の食器に放尿する行為や他人の家のブロック塀にスプレーで落書きする行為も、器物損壊行為にあたります。
「傷害」とは、動物にのみ使用される言葉で、動物を殺傷する行為はもちろん、他人が飼育するペットを逃がしたり、飼養する魚を池の外に流失させる行為なども傷害に含まれます。
また、器物損壊罪の成立には「故意(わざと・意図的に)」に物を損壊・傷害したことが必要ですので、例えば、自動車の運転操作を誤って散歩中の飼い犬を轢き殺してしまったとしても同罪は成立しません。
器損損壊とは?成立要件と示談金相場・示談しないとどうなるのかを解説
器物損壊ではなく動物愛護管理法違反になることも
上記の通り、器物損壊は「他人の物」を損壊・傷害した場合に成立する罪ですので、自分で飼っているペットや、野生動物や野良猫・野良犬など所有者がいない動物を殺傷しても器物損壊罪は成立しません。
ただし、「愛護動物」をみだりに殺傷した場合には、動物愛護管理法違反となります。
愛護動物とは、飼い主の有無にかかわらない全ての「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」及び、人が占有している(人に飼われている)動物で「哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」を指します(動物愛護管理法第44条参照)。
動物愛護管理法違反の罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金ですので、器物損壊罪よりも重い罪となります。
では、人に飼われている「哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物」を殺傷した場合、器物損壊罪と動物愛護管理法のどちらが適用されるのでしょうか。
動物愛護管理法における動物殺傷罪と器物損壊罪の法的取扱いは全く異なります。
すなわち、動物殺傷罪の保護法益は、動物を愛護する気風という良俗(社会的法益)であるのに対し、器物損壊罪の保護法益は、損壊の対象となった物の財産権(個人的法益)です。そのため、動物の殺傷事件についていずれの犯罪が適用されるのかについては、事案によって異なります。
例えば、同じ飼い猫であっても、飼い主が殺傷した場合には動物愛護管理法の動物殺傷罪が適用されることになりますが、他人が殺傷した場合には、動物殺傷罪に加えて器物損壊罪も成立する可能性があります。
なぜペットは「物」扱いなの?
法律上、ペット(動物)はあくまでも物として扱われています。しかし、飼い主からすればペットも家族の一員であり、器物損壊の器物(物)として扱われることに納得いかない方も多いはずです。では、なぜ、ペットは法律上、物として扱われるのでしょうか。
すべての犯罪には保護法益があり、犯罪の客体については保護法益との関係で理解をしておく必要があります。
一般的に刑法犯の保護法益については、その帰属主体に応じて個人的法的、社会的法益、国家的法益の3つに分類されています。
器物損壊罪の保護法益は、損壊の対象となった物の財産権であるため個人的法益に分類されます。そして、動物愛護法の保護法益も、動物を愛護する気風という社会的法益に分類されます。
したがって、いずれにしても動物それ自体の生命や身体が保護法益として罰則が規定されているわけではないのです。そのため、犯罪の客体としてのペットはあくまでも物として扱われているのです。
他人のペット(動物)殺傷してしまったら弁護士に相談
器物損壊罪は、検察官が起訴するにあたり被害者等の告訴が必要な「親告罪」です。そのため、他人のペットを殺傷したことが捜査機関に発覚する前に飼い主と示談を成立させることができれば、告訴しないことに同意していただけますので、逮捕される事態を回避することができます。
また、逮捕された後でも、起訴される前に飼い主と示談が成立し、告訴を取り下げてもらうことができれば、検察官は不起訴処分とせざるを得ません。不起訴処分となれば刑事裁判にかけられて刑罰を科せられる可能性が消滅します。もちろん前科がつくこともありません。
もっとも、上記の通り、人が占有している(人に飼われている)動物で「哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」をみだりに殺傷すると、動物愛護管理法違反で罪に問われる可能性があります。動物愛護管理法違反は器物損壊罪と違い親告罪ではありませんので、たとえ飼い主と示談が成立し、告訴がなされなかったとしても、起訴される可能性があります。
したがって、他人のペットを殺傷してしまった場合には、できるだけ早急に弁護士に相談し、逮捕の回避や不起訴獲得に向けた弁護活動を依頼した方が得策でしょう。
当事務所では、刑事事件で逮捕を回避、不起訴を獲得するための対策を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、他人のペット・動物を殺傷してしまい罪に問われる可能性のある方や、既に逮捕された方のご家族の方は、まずは当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|