車の物損事故で器物損壊になる?いたずらで車を傷つけた場合は?
  • 「交通事故で物損事故を起こしてしまった…過失でも器物損壊に問われるのだろうか…」
  • 「いたずらで他人の車に傷をつけてしまった…器物損壊で逮捕されるのだろうか…」

このようにお考えではないでしょうか。

結論から言いますと、器物損壊罪は故意犯ですので、過失のケース、すなわち前方不注意や運転操作ミスで物損事故を起こしたような場合には、器物損壊罪で処罰されることはありません。もっとも、いたずら目的で(故意に)他人の車を傷つけると器物損壊罪が成立します。器物損壊は現行犯逮捕されることが多い犯罪ですが、防犯カメラやドライブレコーダーの映像が証拠となり後日逮捕されることもあります。

この記事では、刑事事件に強い弁護士が上記内容につきわかりやすく解説するとともに、車への器物損壊で逮捕の回避や不起訴を獲得するためにすべきことを解説します。

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車への器物損壊罪が成立する要件や罰則は?

器物損壊罪とは、故意に(わざと)他人の物を損壊・傷害した場合に成立する犯罪です(刑法第261条)。器物損壊の罰則は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。

「他人の物」とは、他人の所有する文書・電磁的記録・建造物・艦船を除いたすべての有体物を指します。そのため、車も器物損壊の対象となります

また、たとえ自己所有の物であっても、差し押さえを受けている物や、賃貸している物などを損壊した場合は器物損壊罪が成立します(刑法第262条)。したがって、例えば、友人に一時的に貸している自己所有の車に傷をつけるなどした場合も器物損壊罪に問われる可能性があります。

「損壊」とは、物の毀損・破壊のことをいい、物理的に物の形体を変更又は滅却させる行為のほか、ひろく物の本来の効用を失わせる行為も含まれます。そのため、車を蹴って傷を付けたり凹ませる、サイドミラーを折り曲げて破壊する、硬貨でボンネットに線キズをつけるといった行為はもちろん、車のボディーにスプレーで落書きする行為も、器物損壊行為にあたります。

なお、「傷害」とは、動物を殺傷するなどした場合にのみに使用される言葉です。

器損損壊とは?成立要件と示談金相場・示談しないとどうなるのかを解説

車の過失による物損事故は器物損壊にならないが弁償は必要

前述の通り、器物損壊罪は、故意犯です。すなわち、わざと他人の物を損壊・傷害させるという認識・認容が必要な犯罪類型となります。他方で、このような認識・認容を欠く行為を過失といいます。そして、器物損壊罪には過失を処罰する規定がありません

したがって、例えば、車の運転操作を誤って民家の塀を壊す交通事故を起こしたケースでは、器物損壊罪に問われることはありません。

もっとも、故意を欠くために器物損壊罪が成立しなかった場合でも、他人の車を破損させたことにつき過失がある場合には、民事責任(不法行為責任)は負わなくてはなりません

民法709条は不法行為責任として「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。

したがって、上記のケースでは、「車の運転操作を誤った」点に過失が認められますので、被害者の車の修理にかかった費用を弁償(賠償)する必要があります。

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車への器物損壊と逮捕について

車の器物損壊は逃げれば逮捕されない?

前方不注意で追突事故を起こして当て逃げした場合や、いたずらで車のボディーに傷を付けたり車をパンクさせるなどした場合でも、器物損壊容疑で現行犯逮捕されなければ逃げ切れるとお考えの方もいるかもしれません。

しかし、犯人が気づいていないだけで、実は器物損壊の現場を目撃されていた可能性もあります。また、最近では街中のあちこちに防犯カメラが設置されており、犯行の一部始終が映っている可能性もあります。さらに、煽り運転が社会問題化したことでドライブレコーダーを車に設置する人が増えていますが、ドライブレコーダーには駐車中のいたずらや車両荒らし、当て逃げを撮影・録画できる「駐車監視機能」がついているものも多くあります。

したがって、器物損壊の犯人が逃げおおせたと考えていたとしても、目撃者の証言や防犯カメラ・ドライブレコーダーの映像が証拠となり、警察の捜査により犯人の身元が割り出されて後日逮捕される可能性も十分あります

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車の器物損壊で逮捕されるとどうなる?

車の器物損壊容疑で逮捕されると、最大3日間は弁護士以外の者と自由に連絡をとることができません。逮捕に引き続き勾留されると、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を決定するまで最大20日間身柄拘束をされます。これだけ身体拘束期間が長期にわたると、勤務先の会社や学校(学生の方)に事実を隠し通すことが困難になるでしょう。事案によってはマスコミで実名報道されてしまい、それがきっかけで会社や学校に事実が知れてしまうこともあります

また、正式起訴されて刑事裁判にかけられると、悪質な器物損壊のケースでは懲役実刑となって刑務所に収監されるおそれもあります。執行猶予付き判決であっても有罪であることに変わりはありません。有罪となると、会社を懲戒解雇されたり、学校を退学させられる可能性もあります。また、有罪となった場合には前科がつくことになりますので、資格取得や就職活動、海外渡航などで制限を受けることになります

車への器物損壊で逮捕・起訴を回避するには?

器物損壊罪は親告罪であるため示談成立が最重要

器物損壊罪は、被害者等の告訴がなければ検察官が起訴することができない「親告罪」です。したがって、車を破損させられた被害者が告訴する前に示談を成立させることができれば、告訴しないことに同意していただけるため、その後起訴される可能性は消滅します。

また、既に告訴されている場合でも、検察官が起訴する前に被害者と示談を成立させることで告訴を取り下げて頂けますので、検察官は不起訴処分をせざるを得ません。不起訴となれば刑事裁判は開かれませんので、有罪となって刑務所に入ることもありませんし、前科もつきません。

なお、示談に際して、車の弁償費用(修理代)に加え、慰謝料を払う必要があるのかどうか気になる方もいることでしょう。

この点、車を損壊した場合について、原則として損壊した車の修理費用が支払われていれば賠償として十分であると考えられます。実務上も器物損壊事件の民事責任として、原状回復費用のほかに慰謝料の請求が認められるケースは決して多くはありません。

もっとも、上記の通り、器物損壊事件で逮捕回避や不起訴を狙うには迅速に被害者と示談を成立させる必要があります。そのため、場合によっては車の修理代に加えて慰謝料や迷惑料を上乗せして支払うことが得策な場合もあり得ます

器物損壊事件の慰謝料の相場は5万円〜15万円程度でしょう。

自首することも検討する

器物損壊行為により破損した車の所有者や絡先が分からないため示談交渉のしようがない場合や、被害者が示談に応じてくれない場合には、自首することも検討する必要があるでしょう。

自首とは、捜査機関(警察、検察)に犯罪事実または犯人が発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を申告して、捜査機関の処分に委ねる意思表示をすることをいいます。自首が成立すると、刑が減軽される可能性があります(刑法第42条)。

また、自首そのものの効果ではありませんが、自首をすることで「逃亡・証拠隠滅のおそれがない」と捜査機関が判断して、逮捕を回避できる可能性もあります。逮捕された場合でも、自首したことが評価され、不起訴処分になる可能性もあります

弁護士への相談・依頼

ここまで、器物損壊による逮捕回避や不起訴獲得の手段として、「示談交渉」と「自首」を述べましたが、いずれも成功させるには弁護士の支援が不可欠です

自分の愛車を意図的に傷つけられた怒りや不信感から、加害者と直接交渉する被害者はいないと言っても過言ではありません。他方で、弁護士であれば示談交渉に応じても良いという被害者は多いです。

さらに、自首に際しても、単に警察に出頭するだけでは不十分です。自首しても逮捕されない保証はなく、逆に逮捕される可能性もあります。従って、弁護士の助言を受けながら、逮捕を回避するための準備を整えた上で出頭することが必要です。

したがって、他人の車への器物損壊行為をしてしまい、いつ逮捕されるのか不安を抱えている方は、早めに弁護士に相談することが大切です。

当事務所では、器物損壊の示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、人の車を傷つけたり汚したりして逮捕のおそれがある方や、既に逮捕された方のご家族の方は、当事務所の弁護士までまずはご相談ください。お力になれると思います。

よくある質問

車を蹴ったが凹みや傷がなくても器物損壊は成立する?

行為者が車を蹴ったものの傷や凹みがない場合には、基本的には器物損壊罪は成立しないと考えられます

そもそも、「他人の物を損壊した」というためには、物を物理的に損壊するか、あるいはその物の効用・利用可能性を侵害したといえなければなりません。車を蹴ったけれども傷や凹みが一切ない場合には、自動車を物理的に損壊したとも、車の効用・利用可能性を侵害したともいうことはできません。

したがって、上記のような場合には、器物損壊罪は成立しないと考えられます。

車に液体をかける・汚す行為は器物損壊が成立?

まず、車に剥離剤や接着剤といった液体をかけたり塗るなどした場合は器物損壊罪が成立します。剥離剤で車の塗装を剥がすことは車を物理的に壊す行為ですし、車のワイパーやドアノブに接着剤をつけて固定する行為は「物の本来の効用を失わせる行為」にあたるためです。

では、ジュースや尿などの液体をかけて車を汚した場合には、器物損壊罪が成立するのでしょうか。

繰り返しとなりますが、物理的な損壊がなくとも、物の効用・利用可能性を侵害したといえる場合には器物損壊が成立する可能性があります。

例えば、ジュースや尿といった液体を車のドアノブにかけた場合には、ノブに触れてドアを開けることが心理的に難しくなります。したがってこの場合、車の効用を害したと評価できるため、器物損壊罪が成立する可能性があります

また、ジュースや尿により悪臭や汚損を引き起こした場合にも、そのままの状態では利用することが難しいということで、車の利用可能性が侵害されたとして、器物損壊罪に問われる可能性があります。

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