
「客待ちをしていた家族が売春防止法違反で逮捕された」「自分のしたことは処罰の対象になるのだろうか」と、突然の事態や先の見えない不安を抱えていませんか。
この法律は、売春・買春そのものは処罰しない一方で、勧誘・客待ち・周旋・場所の提供・管理売春といった行為には罰則を定めています。これらの行為で逮捕されると、最大23日間の身柄拘束に加え、前科や実名報道といった重い不利益につながりかねません。2026年3月には「買う側」への罰則導入を議論する法務省の検討会も始まり、規制強化の流れが進んでいます。
この記事では、売春防止法違反事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 売春防止法違反で逮捕される行為と罰則
- 売る側・買う側は処罰されるのか
- 逮捕されたらどうなるのか
なお、売春防止法違反についてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。
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売春防止法とは?わかりやすく解説
売春防止法とは、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良な風俗を乱すものであることから、売春を助長する行為等を処罰することによって売春の防止を図ることを目的とした法律です(売春防止法第1条)。
そもそも売春とは?
売春防止法は、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と定め(同法第3条)、すべての人に対して売春行為を禁止しています。
売春防止法における「売春」とは、「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義されています(売春防止法第2条)。
このような売春の定義から、対償(現金や物品、サービスなど)を受け取ることや、その約束があることが必要となり、無償の性行為は売春にはあたりません。また、売春は不特定の相手方との性交が必要であるため、妻や交際相手などの特定の間柄にある者との性交は、対償の有無にかかわらず原則として売春にはあたりません。
そして、「性交」には、性交類似行為(オーラルセックスやアナルセックスなど)は含まれないと解釈されています。したがって、同性間の行為も、たとえ対償が伴っても売春防止法上の「売春」には該当しないとされています。
なお、売春の主体は女性に限定されていません。男性が対償を受けて女性と性交することも、この法律上の「売春」にあたります。
売春と買春の違いは?
「売春(ばいしゅん)」とは、上記で説明した通り、対償を受け取って(売って)不特定の相手と性交すること、すなわち「性的サービスを提供する側」を指します。
これに対して、「買春(かいしゅん、または、ばいしゅん)」は、対償を支払って(買って)不特定の相手と性交する行為、つまり「性的サービスを受ける側」です。
売春と買春は表裏一体の関係にありますが、売春防止法上、「買春」という直接的な定義規定は設けられていません。
売春防止法の目的
売春防止法は、売春が人としての尊厳を害し、社会の善良な風俗を乱すものであることから、これを防止することを目的として1956年(昭和31年)に制定された法律です。
売春防止法が制定された目的としては、主に以下の2点が挙げられます。
- 善良な風俗の維持:売春行為が社会に広がることを防ぎ、公衆衛生の悪化や家庭の崩壊といった社会的な悪影響を防止し、健全な社会秩序を維持すること。
- 立場の弱い女性の保護と更生:生活苦や暴力など、さまざまな理由から売春を強いられたり、売春をするおそれのある女性を、斡旋業者や悪質な経営者から守り、その更生を図ること。
特に後者の目的のため、「売春」や「買春」といった行為そのものには罰則を設けていません。これは、単純に売春当事者に罰則を科すだけでは問題の根本的な解決にはならない、という福祉的な視点に基づくものです。その代わりに、売春をビジネスとして行う者への罰則を厳しく定め、女性を経済的・社会的に搾取する行為を抑止する仕組みになっています。
売春防止法の改正と女性支援法
2022年5月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援法)」が制定されたことに伴い、売春防止法の福祉的な規定が大きく見直されました。従来の補導処分制度や婦人補導院は2024年4月1日をもって廃止され、婦人相談所は「女性相談支援センター」に改組されています。
女性支援法は、生活困窮や性暴力被害などの問題を抱える女性に対し、「罰する」のではなく「寄り添って支える」包括的な支援を目指す法律です。
なお、売春の勧誘・周旋・場所の提供といった罰則規定は、引き続き売春防止法で有効に存続しています。
売春防止法違反で逮捕される行為と罰則
売春行為そのものは処罰されません。ただし、売春を助長・斡旋・管理する行為については厳しい罰則が設けられています。
売春防止法違反で逮捕され得る行為は次の通りです。
- ①勧誘・立ちふさがり・つきまとい・客待ち・誘引
- ②周旋等
- ③困惑等による売春・対償の収受等
- ④前貸等
- ⑤売春をさせる契約
- ⑥場所の提供
- ⑦売春をさせる業(管理売春)
- ⑧資金等の提供
①勧誘・立ちふさがり・つきまとい・客待ち・誘引
売春をする目的で、以下のような行為をした場合には、勧誘等罪が成立します(売春防止法第5条)。
- 公衆の目に触れるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること
- 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと
- 公衆の目に触れるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること
具体的には、路上で性行為を求める客を誘う「立ちんぼ」行為や、そのためのつきまとい、立ちふさがり行為が典型例です。売春の実行の有無にかかわらず、これらの勧誘行為があった時点で成立します。
また、SNSやインターネット掲示板に売春の相手を募集する投稿をする行為も、誘引として処罰の対象となり得ます。
もっとも、客待ちの罪は、路上に立っているだけで直ちに成立するわけではありません。立っていた場所や時間帯、服装や外見、通行人への視線の向け方や声のかけ方といった事情を総合して、売春の意思を周囲に示していたと認められる場合に成立すると解されています。
勧誘等罪が成立した場合には、6ヶ月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金が科せられます(売春防止法第5条)。立ちんぼの違法性や逮捕事例について詳しくは「立ちんぼは犯罪?男女別の罪名と罰則・逮捕リスク・逮捕後の流れを解説」で解説しています。
※拘禁刑とは、2025年6月から施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化した刑罰です。刑務作業が義務ではなくなり、受刑者の改善更生に応じた柔軟な処遇が可能となりました。
②周旋等
売春の周旋をした場合のほか、売春の周旋をする目的で以下のような行為をした場合にも、周旋等罪が成立します(売春防止法第6条)。
- 人を売春の相手方となるように勧誘すること
- 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと
- 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること
周旋(しゅうせん)とは、売春をしたい者と買春をしたい者の間に立って、交渉や取り次ぎを行う行為を指し、ポン引きや遣り手婆などが典型です。デリヘルなどの派遣型風俗店で、店側が性交サービスを前提に女性を客のもとへ派遣していたようなケースも、周旋として摘発されることがあります。これらの行為は、組織的な売春や管理売春の入り口となる危険性があるため、犯罪として禁止されています。
周旋等罪が成立した場合には、2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科せられます。
裁判例では、売春クラブの従業員が18歳未満の児童に売春をさせる契約を結び、売春の周旋も行った事案で、売春防止法違反および児童福祉法違反により懲役1年2月の実刑判決が言い渡されたものがあります【平成15(う)103 平成15年5月19日 東京高等裁判所】。周旋は実際に売春が行われたかどうかを問わず、仲介行為があった時点で成立し、仲介料などの報酬を受け取っていなくても処罰の対象となります。
③困惑等による売春・対償の収受等
人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた場合や、人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた場合、その行為は極めて悪質と見なされ、重く罰せられます(売春防止法第7条)。
これらは、相手が正常な意思決定ができない状態につけ込む行為だからです。
近年では、ホストクラブの売掛金(ツケ)を回収する目的で、客の女性に売春を強いたホストらが本条違反で摘発される事例が相次いでおり、警察が取り締まりを強めている類型でもあります。
欺罔・困惑による場合や親族関係の影響力を利用した場合(第1項)の罰則は、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。脅迫や暴行を用いた場合(第2項)はより重く、3年以下の拘禁刑、または3年以下の拘禁刑および10万円以下の罰金が科されます。いずれも未遂が処罰対象となっています。
さらに、これらの悪質な手段で売春をさせた者が、その対価(対償)の全部または一部を受け取ったり、受け取ることを要求・約束したりした場合は、より重く、5年以下の拘禁刑および20万円以下の罰金に処されます(同法第8条1項)。また、売春をした人に対し、親族関係による影響力を利用して対償の提供を要求する行為も、それ自体が独立して処罰され、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象です(同条2項)。
④前貸等
売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与する行為も禁止されています(売春防止法第9条)。
財産的利益を事前に貸与することで相手に借金を背負わせ、売春を続けざるを得ない状況に追い込む手口を封じるための規定です。
前貸等罪が成立した場合には、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が科されます。
⑤売春をさせる契約
人に売春をさせることを内容とする契約を締結した場合も、売春防止法違反となります(売春防止法第10条)。
実際の売春行為や場所の提供がなくても、売春をさせる契約を結ぶ行為それ自体が処罰の対象となる点に特徴があります。この罪は、売春をさせる側が締結した場合に成立し、未遂も処罰の対象となります。
罰則は、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
⑥場所の提供
売春を行う場所として、その事実を知ったうえで場所を提供した者は処罰されます(売春防止法第11条第1項)。
自宅や賃貸物件の一室などが性行為の場として利用されることを知りながら貸し出す行為がこれにあたり、使用料の有無は問わず、提供した時点で成立します。
「情を知って」という要件は、売春に使われると確実に知っていた場合に限られません。「売春に使われるかもしれないが、それでも構わない」という程度の認識(未必の故意)でも足りると解されています。他方、認識は場所を引き渡した時点で必要とされるため、引き渡した後になって初めて売春の事実を知ったにすぎない場合には、この罪は成立しません。
罰則は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。もし、この場所の提供を業として(反復継続する意思で)行った場合は、より重い7年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金が科せられます(同条第2項)。
実際の裁判例でも、売春をさせる契約を結んだうえで業として売春場所の提供を行った風俗経営者に対し、懲役2年6月及び罰金30万円(法人にも罰金30万円)の刑が確定したものがあります【平成25(わ)24 平成25年9月4日 岐阜地方裁判所】。
⑦売春をさせる業(管理売春)
管理売春とは、自己の占有・管理する場所や自己の指定する場所に人を居住させ、売春をさせる事業を営む行為を指します(売春防止法第12条)。
これは、女性を施設などに囲い込み、逃亡を防ぎながら売春をさせていた、旧来の「娼家」と呼ばれる売春宿を根絶するために設けられた最も重い規定の一つです。
罰則は、10年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金と非常に重く定められています。反復継続の意思があれば成立し、管理者が直接的な利益を得ていなくても成立します。どこからが「売春をさせる業」にあたるのかといった成立要件や具体例は「管理売春とは?わかりやすく解説」をご参照ください。
⑧資金等の提供
売春場所の提供業や管理売春に用いられると知りながら、資金、土地、または建物を提供する行為も処罰対象です(売春防止法第13条)。
組織的な売春行為の背後にある資金提供者やインフラ提供者を摘発し、売春組織の根絶を狙った規定です。
場所の提供を「業」として行う行為に要する資金などを、事情を知って提供した場合は、5年以下の拘禁刑および20万円以下の罰金です。一方で、管理売春(売春をさせる業)に要する資金などを、事情を知って提供した場合は、さらに重く、7年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金が科せられます。
売春防止法で売る側・買う側は逮捕される?
結論からいえば、売春をした人(売る側)も、その相手方となった人(買う側)も、成人同士の売買春それ自体を理由に売春防止法違反で逮捕されることはありません。ただし、売る側は勧誘や客待ちといった関連行為で処罰される可能性があり、買う側も相手が18歳未満であれば別の法律で厳しく処罰されます。さらに2026年3月には、法務省が「買う側」への罰則導入を議論する検討会を開始しており、今後の法改正で状況が変わる可能性があります。
売る側・買う側とも売買春そのものに罰則はない
売春防止法第3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と定めており、売春も買春も法律上は違法な行為です。しかし、この規定に違反したこと自体を処罰する罰則は設けられていません。
罰則がない理由は、当事者の処罰よりも福祉的な支援を優先した制定時の考え方にあります(詳しい背景は記事末尾のよくある質問で解説しています)。
そのため、女性が報酬を受け取って性交した場合も、成人(18歳以上)の相手に対価を支払って性交した場合も、売買春そのものを理由に逮捕されたり刑事罰を科されたりすることは、現行法ではありません。
売る側は勧誘や客待ちで逮捕されるケースが多い
売春行為そのものに罰則がないとしても、売春を成立させるために行った関連行為は、売春防止法による処罰の対象となります。売る側が逮捕・検挙されるケースとして多いのが、売春の相手方を募るための勧誘等に関わる行為です。
具体的には、公衆の目に触れる方法で買春を希望する客を募る「客待ち」行為や、男性に積極的に声をかける「勧誘」、さらには道路などの公共の場所で立ちふさがったり、つきまとったりする行為などがこれにあたります。これらの行為は、公衆の面前で売春の存在を露呈させ、社会の風俗を乱す危険性が高いとして取り締まりの対象となります。
近年では、新宿歌舞伎町の大久保公園周辺などで見られる、いわゆる「立ちんぼ」行為がこの規定に該当し、警察による現行犯逮捕や検挙事例が頻繁に発生しています。立ちんぼをした行為者や指示をした経営者は、警察による捜査を受け、刑事罰が科される可能性が高いです。指示に従って立ちんぼ行為をしただけであっても罰金となることがあります。
売春防止法違反に至らない場合でも、客待ちやつきまといといった行為は、各自治体が定める迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。たとえば、東京都の条例では「不当な客引行為等の禁止」として、売春類似行為のために公衆の目に触れる方法で客待ちや客引きをすることを禁じており、違反者には50万円以下の罰金などが科される場合があります。このほか、金銭のやり取りを伴う性行為が問題となるケースについては「援助交際は犯罪?適用される法律と逮捕後の流れを弁護士が解説」もあわせてご確認ください。
買う側は相手が18歳未満なら児童買春罪で処罰される
ただし、買春の相手が18歳未満の児童であった場合は、売春防止法ではなく「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)」により処罰されます。
児童買春罪の法定刑は、5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(同法第4条)。児童が同意していたかどうかは関係なく、18歳未満の者に対償を渡し、または渡す約束をして性交等を行った時点で犯罪が成立します。
「相手が18歳以上だと思っていた」という弁解は、相手の外見や会話の内容、やり取りの経緯などから18歳未満と認識し得た場合には認められません。年齢確認を怠っていたときは、「18歳未満かもしれない」と思いながら行為に及んだ(未必の故意がある)と判断されるおそれがあります。年齢を知らなかった場合にどう扱われるかは「18歳未満だと知らなかった場合でも児童買春や淫行になる?」をあわせてお読みください。
「買う側」の処罰を検討する法改正の動き
2026年3月24日、法務省は売春防止法の見直しに向けた有識者検討会の初会合を開きました。座長は北川佳世子早稲田大学教授が務め、刑事法学者や法曹三者ら11名で構成されています。
現行法は「売る側」の勧誘行為にだけ罰則を設け、「買う側」は不問としています。この不均衡が国会で繰り返し指摘されたことが検討会設置の契機となりました。2025年11月には高市首相が平口法相に対し、規制の見直しを検討するよう直接指示を出しています。
検討会の主な論点は、買う側の勧誘行為にも罰則を設けるべきか、現行の法定刑の水準は妥当か、そして売春の定義を「性交」のみとしている点を見直すべきか、の3点です。報道によれば、2026年秋の臨時国会に改正案を提出する可能性もあるとされています。
この法改正が実現すれば、売春防止法の制定から約70年で初めて「買う側」にも罰則が設けられることになります。今後の検討会の議論の行方が注目されます。
売春防止法違反で逮捕されたらどうなる?
売春防止法違反で逮捕されると、刑事罰だけでなく、社会生活全般に深刻な影響が及びます。
逮捕された後の手続きの流れと、生じ得る不利益は次の通りです。
- ①逮捕から起訴までの流れ
- ②在宅事件として捜査される場合
- ③実名報道や懲戒処分のおそれ
- ④前科がつく
①逮捕から起訴までの流れ
売春防止法違反で逮捕されると、以下の流れで刑事手続きが進みます。
まず、逮捕後48時間以内に、警察から検察官へ事件が送致(送検)されます。送検を受けた検察官は、24時間以内に裁判所へ勾留(引き続き身柄を拘束する処分)を請求するかどうかを判断します。
検察官の勾留請求が認められると、被疑者は原則10日間の勾留を受けます。勾留の場所は、多くの場合、引き続き警察署の留置場です。この期間中に捜査が十分に進まない場合、検察官はさらに最大10日間の勾留延長を請求でき、裁判官がこれを認めると最長で合計20日間の勾留となります。
各段階の期間の上限をまとめると、次の通りです。
| 手続きの段階 | 期間の上限 |
| 逮捕から検察官への送致 | 48時間以内 |
| 送致から勾留請求の判断 | 24時間以内 |
| 勾留 | 原則10日間(延長により最長20日間) |
逮捕から数えると、最大で23日間も身柄を拘束される可能性があり、その間、社会生活から完全に切り離されます。
この長期間の身柄拘束の間、被疑者は携帯電話の使用や外部との自由な連絡が許されず、孤立した状況に置かれます。会社や学校への無断欠勤が続くことで、解雇や退学のきっかけになりかねません。
②在宅事件として捜査される場合
売春防止法違反は現行犯逮捕の多い犯罪ですが、すべての事件で身柄が拘束されるわけではありません。インターネット掲示板への書き込みによる誘引罪などでは、自宅の家宅捜索を受けた後、逮捕されないまま捜査が進む「在宅事件」となることも珍しくありません(証拠の状況によっては後日逮捕となることもあります)。
在宅事件では、警察の捜査が終わると事件が検察庁へ送られ(書類送検)、検察官の取調べを経て起訴・不起訴が決まります。身柄事件のような時間制限がないため、処分が決まるまで数ヶ月に及ぶこともありますが、その間も前科がつくかどうかの瀬戸際にあることに変わりはありません。取調べの呼出しへの対応を誤らないためにも、早い段階で弁護士に相談しておくことが重要です。
③実名報道や懲戒処分のおそれ
売春防止法違反の中でも、組織的な周旋(あっせん)や管理売春といった社会的な関心の高い事件や、被疑者の社会的地位が高い事件では、新聞やテレビ、インターネットニュースなどで実名報道されるおそれがあります。特にインターネット上に掲載された情報は半永久的に残り続けるため、事件が解決した後でも、氏名検索一つで過去の事件が発覚し、永続的な社会的制裁につながります。
また、長期の身柄拘束による無断欠勤や、犯罪行為による信用の失墜は、多くの企業の就業規則で懲戒事由と定められています。悪質な事案や報道された場合には懲戒解雇に至る危険性もあり、そうなれば退職金の不支給など経済的な損失も避けられません。学生の場合も、学校の懲戒規定に基づいて退学処分となることがあります。
④前科がつく
検察官によって起訴され、裁判所で有罪判決(罰金刑、執行猶予付き判決、実刑判決のいずれか)が確定すると、前科がつきます。前科情報が戸籍や住民票に記載されることはありませんが、前科がつくことで職業上の制限や再就職の困難化、海外渡航の制限といった不利益が生じます。
- 職業上の制限:弁護士や公認会計士などの士業、医師、警備員、金融業など、法令や業界の規定により前科があることで資格を失ったり、新たに就職できなくなったりする職業が存在します。
- 再就職の困難化:履歴書の賞罰欄に記載義務が生じるほか、採用選考において、犯罪歴が不利に働く可能性が高まり、再就職が極めて難しくなります。
- 海外渡航の制限:米国など一部の国では、ビザ申請時に犯罪歴を申告する必要があり、前科を理由にビザの発給が拒否され、入国が制限される場合があります。
- 再犯時の加重:万が一再び犯罪を犯してしまった場合、前科があることは「再犯の可能性が高い」と判断され、より重い刑事処分(実刑判決など)を科される大きな要因となります。
関連記事:売春防止法違反は実刑になる?実刑となったケースと回避方法を解説
売春防止法違反の弁護活動
売春防止法違反で逮捕された場合でも、早期に弁護士へ相談すれば、不起訴処分や刑の軽減を目指せます。弁護活動の内容は、被疑者の立場や関与の程度によって異なります。
売春する本人が問われる罪の弁護活動
売春する本人(売る側)が問われる売春防止法違反は、主に勧誘・立ちふさがり・つきまとい・客待ち・誘引といった第5条の勧誘等罪です。
特に、「勧誘罪」や「客待ちの罪」は、歓楽街や繁華街で取り締まりを行う私服の捜査員によって現行犯逮捕されるケースが大半です。警察官が客を装って近づき、売春の申し出を受けた段階で身柄を確保する形態が典型的です。
しかし、捜査機関側が、誘導的な質問を繰り返し、積極的に犯罪行為を誘発したような場合には、捜査手法の適法性、すなわち違法な「おとり捜査」の可能性が問題となります。
弁護士は、早期に被疑者と接見(身柄拘束中の面会)し、取調べでの供述対応について助言することで、不利な供述調書が作成されるのを防ぎます。
客待ちや立ちふさがりといった「勧誘等」の罪は、明確な言動ではなく、外見や視線などの間接事実で立件されるため、弁護士は警察・検察に対し、犯罪成立要件(「公衆の目に触れるような方法で」など)を満たさないことを主張することで、嫌疑不十分(犯罪を立証する証拠が足りないこと)による不起訴処分の獲得を目指します。
また、インターネット掲示板などへの書き込みによる「誘引罪」は、投稿履歴という客観証拠が残るため、事実関係を争って嫌疑不十分の不起訴を得ることは現実的に難しい面があります。
この場合は、深く反省している旨を記した反省文の提出や、贖罪寄付(慈善団体への寄付)を行うなどの情状立証活動を展開し、起訴猶予(反省などの事情を考慮して起訴を見送る処分)による不起訴処分の獲得を目指します。
そして、逮捕されず在宅事件となった場合であっても、警察や検察からの連絡により事件が家族に発覚するリスクがあります。弁護士が身元引受人となることや、警察・検察からの呼出しや書類送付を弁護士経由とすることで、家族や勤務先に発覚しないよう対応を進められる場合もあります。
第三者(仲介・周旋)が問われる罪の弁護活動
第三者が問われる売春防止法違反の主な対象行為は、周旋等です。周旋とは、売春しようとする女性と買春しようとする客との間に入り、両者を引き合わせる仲介(あっせん)行為を指します。
このような周旋行為は、売春を助長する行為としてその悪質性が高く評価されるため、初犯であっても検察官により公訴提起(起訴)されるリスクが十分にあります。
弁護士は、被疑者の深い反省の意思、家族による監督環境の整備、そして再犯防止のための具体的取り組み(性風俗産業との関係断絶、集客用携帯電話の解約、関係者との連絡断絶など)を客観的な証拠とともに検察官に示し、不起訴処分(起訴猶予)または略式命令(正式裁判を開かずに罰金を科す簡易な手続き)による罰金処分の獲得を目指します。
周旋行為であっても、売春に従事した女性が被害者として位置づけられる事案においては、示談(被害者との話し合いによる和解の合意)の交渉や被害弁償が重要な情状証拠となり得ます。
搾取・管理する者が問われる罪の弁護活動
売春を搾取・管理する側が問われるのは、前貸等、売春をさせる契約、場所の提供、売春をさせる業(管理売春)、および資金等の提供です。
これらの行為は、売春を組織的に管理・運営・搾取するものであり、売春防止法違反の中で最も悪質性が高いと判断されます。
そのため、初犯かどうかにかかわらず正式裁判を求めて起訴(公判請求)される公算が大きく、事案の悪質性や組織性によっては実刑判決のリスクも伴います。
弁護士は、以下の有利な情状を具体的に検察官や裁判所に主張し、不起訴・罰金処分、あるいは執行猶予付き判決を目指します。
- 深い反省の意思表示(反省文、贖罪寄付)
- 家族の監督が期待できる環境の整備
- 事業からの完全撤退
- 新しい仕事を始め、更生への意欲を示していること
- 客や売春従事者との連絡を断絶したこと
- 被害者対応
特に、売春場所として使われた物件の賃貸借契約の解約・引き渡し、待機場所の賃貸借契約の解約、集客用ホームページの閉鎖、携帯電話の解約などは事業からの完全撤退を示す客観的な事実となります。
また、強制性が認められる事案では、売春させられた女性を被害者とみなせる場合があります。この場合、弁護士による示談交渉や被害弁償が、刑事処分を軽減するうえで不可欠な活動となります。
よくある質問
売春防止法違反の時効は?
刑事事件の時効は「公訴時効」と呼ばれ、犯罪行為が終わった時から進行します。公訴時効が完成すると、検察官はその事件について起訴できなくなります。
禁止されている行為の内容によって法定刑が異なるため、公訴時効の期間も変わります。勧誘や周旋のような比較的軽い罪は時効が短く、管理売春のように重い罪ほど時効が長くなります。
主な違反行為の公訴時効期間は以下の通りです。
| 売春防止法に違反する行為 | 公訴時効 |
| 売春の勧誘・周旋・前貸し | 3年 |
| 売春契約・場所の提供 | 3年 |
| 困惑などに乗じて売春をさせ対価を得る | 5年 |
| 業として場所の提供 | 5年 |
| 管理売春 | 7年 |
関連記事:売春防止法違反の時効は何年?時効待ちリスクと対処法を解説
ソープは本番行為があるので違法?
いわゆるソープランドのような風俗店で性交を伴うサービスが行われた場合、これは売春防止法上の「売春」に該当するため、違法です。風営法の届出をして営業している性風俗店であっても、性交を伴うサービスまでが適法になるわけではありません。ソープランドの運営者が、売春が行われることを知っていて場所を提供している場合には、場所の提供罪などの売春防止法違反に問われます。
しかし、ソープランドが摘発を免れて営業できている背景には、ある「建前」が存在します。
店舗側は、「店として性行為を提供させているわけではなく、客と在籍する風俗嬢が自由恋愛に基づき、個人の合意で性行為に及んだ」という建前を取ることで、店舗のサービスと性行為を無関係だと説明しています。
しかし、この建前は、あくまで売春防止法の罰則を回避するための解釈であり、性行為自体は違法行為です。同種の店舗が広く営業している実態があっても、それは犯罪の成立や摘発の可能性を否定する理由にはなりません。性行為を前提とする営業を続ける限り、摘発のリスクが消えることはありません。なお、売春防止法では、売春をした女性スタッフの側にも、その客の側にも罰則規定はありません。
売春・買春に罰則がないのはなぜ?
売春防止法は売春・買春を禁止していながら、行為そのものを処罰する規定は置いていません。その理由は法律制定時の考え方にあります。
売春に至る女性の多くは、経済的な困窮や社会的な弱さを背景に追い込まれたケースが少なくありませんでした。こうした人々を一律に刑罰で罰するよりも、福祉的な支援によって更生を図るほうが問題の根本的な解決につながるという判断です。
密室で行われる売買春行為は証拠の収集・立証が極めて難しいという実務上の課題もあります。売る側と買う側が口裏を合わせれば、行為の事実を証明すること自体が困難になるためです。
こうした背景から、売買春行為そのものではなく、勧誘・周旋・場所の提供・管理売春といった「売春を助長する行為」に罰則を集中させる構造となっています。
売春防止法違反でお困りの方は今すぐ弁護士にご相談ください
売春防止法は、売買春そのものを処罰しない代わりに、勧誘・客待ち・周旋・場所の提供・管理売春といった行為に罰則を置いています。ひとたび逮捕されれば、最大23日間の身柄拘束や前科など、生活の基盤を揺るがす不利益に直結しかねません。
弁護士が早期に介入すれば、接見を通じて取調べへの対応を助言し、不利な供述調書が作られるのを防げます。事案によっては、嫌疑不十分や起訴猶予による不起訴処分、身柄の早期解放に向けた働きかけも可能です。
「警察から呼出しの連絡が来た」「家族が突然逮捕された」「自宅の家宅捜索を受けた」。こうした状況では、時間の経過とともに取れる選択肢が狭まっていきます。おひとりで抱え込まず、できるだけ早い段階でご相談ください。
当事務所は売春防止法違反を含む刑事事件を多数取り扱ってきた実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、ご家族や職場への影響を抑えられるよう配慮しながら、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、お電話・メールフォーム・LINEからお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、24時間365日受け付けています。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

