
離婚を解決する最終手段が離婚裁判ですが、気になるのは弁護士費用や裁判にかかる費用(訴訟費用)のことではないでしょうか?
この記事では、離婚裁判で負担する「弁護士費用」と「訴訟費用」やこれらの費用を相手方に請求できるかどうか、などについて解説します。
ぜひ、最後までご一読いただき、参考にしていただけると幸いです。
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目次
①離婚裁判とは
離婚裁判とは、公開の法廷で、離婚するかしないか(できるかできないか)、離婚するとしていかなる条件で離婚するかを決める手続きです。
離婚裁判をするには、裁判所に対して訴状を提出して訴訟を提起する費用があります。
もっとも、注意しなければならないのは、離婚裁判をしたいからといっていきなり訴訟を提起することはできない、という点です。
つまり、離婚裁判の訴訟を提起は、まずは家庭裁判所に対して離婚調停の申立てを行い、離婚調停が不成立となった場合にはじめて可能となるのです。
これを調停前置主義といいます。
②離婚裁判で負担するのは「弁護士費用」と「訴訟費用」
離婚裁判で負担する費用は何も弁護士費用だけではありません。
弁護士費用のほかに訴訟費用も負担しなければならない場合があります。
弁護士費用
弁護士費用は、弁護士に弁護活動を依頼した場合に、弁護士の弁護活動に伴って発生する費用です。
弁護士費用は、大きく「法律相談料」、「着手金」、「報酬金」、「日当費」、「実費」に分けることができますが、離婚裁判の場合、協議や調停と比べいずれも高額で、合計の弁護士費用も高額となります。
弁護士費用はご自身で弁護士に弁護活動を依頼したからこそ発生したわけですから、弁護士費用は、原則自己負担です。
例外については「⑤離婚裁判で弁護士費用を相手方に請求できる?」で解説します。
訴訟費用
訴訟費用は、裁判手続きを行う際に発生する費用です。
たとえば、訴訟費用には
- 訴状を提出する際に必要な手数料(訴状に貼付する印紙代)、郵便切手代
- 証人が法廷に出廷する際に必要な旅費、日当及び宿泊費
などが含まれます。
手数料についていうと、離婚のみを請求する場合は「1万3,000円」ですが、離婚に加え財産分与、養育費、慰謝料などと請求事項が増えれば増えるほど手数料は高くなります(後ほど詳しく解説します)。
訴訟提起時には、原告(訴訟を提起する方)が手数料と郵便切手代を裁判所に納めなければなりません。
その後、離婚裁判で全面勝訴(被告が全面敗訴)した場合は、訴訟費用は全額、被告負担となります。
たとえば、原告が訴訟提起時に3万円の手数料と郵便切手代を裁判所に納め、その他の訴訟費用は一切かからなかったとします。
この場合、原告が全面勝訴した場合は、離婚裁判後に、原告は被告に対して3万円全額を請求できるということになります。
つまり、原告が全面勝訴の場合は、原告が、訴訟提起時に本来被告が負担すべき訴訟費用を手立て替えていた、ということになります。
③離婚裁判の「弁護士費用」の内訳
「②離婚裁判で負担するのは「弁護士費用」と「訴訟費用」の弁護士費用」で述べましたとおり、弁護士費用は「法律相談料」、「着手金」、「報酬金」、「日当費」、「実費」に分けることができます。
なお、各内訳に関する料金体系は法律事務所ごとに異なりますので、相談時、契約時にしっかり内容を確認することを忘れないでください。
法律相談料【無料OR5,000円~】 ※以下、金額はすべて税抜きです
法律相談料は、弁護士にはじめて相談する「初回法律相談」の際に発生する費用です。
最近は、初回の法律相談に限って「無料」としている法律事務所も多いです。
もっとも、無料といっても「30分」、「60分」などと時間制限を設けている場合もあり、超過分は有料となる場合もあります。
他方で、初回の法律相談から「有料」としている法律事務所もあります。
有料の場合も時間制限を設けられ、超過分は追加費用を支払わなければならない場合もあります。
着手金【30万円~50万円】
着手金は、弁護士と委任契約を締結した(弁護士に弁護活動を依頼した)直後に発生し、弁護士の弁護活動の成果の如何にかかわらず返金されない費用です。
着手金という文字通り、着手金を支払わなければ、原則として弁護士は弁護活動を始めてくれません。
着手金は一括で支払うことを求められる場合が多いですが、中には分割での支払いにも対応している法律事務所もあります。
離婚裁判の着手金は30万円から50万円が相場です。
協議、調停の段階から弁護士に依頼している方は、追加で発生する着手金がいくらなのかしっかり確認しておきましょう。
報酬金【成果に応じて】
報酬金は、弁護活動の成果に応じて発生する費用です。
報酬金については「基礎報酬金」と「追加報酬金」の2段階設定とされていることもあります。
離婚裁判の「基礎報酬金」の相場は20万円から30万円です。
加えて、「追加報酬金」が発生します。
お金にかかわらない事項(離婚、親権、面会交流)については「10~30万円」と固定の報酬金が設定されています。
相場はいずれも10万円~20万円です。
他方で、お金にかかわる事項(養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など)については「経済的利益(※)×10~30%」とされている場合が多いです。
※経済的利益とは、相手方に請求できる、と確定された金額のこと。
日当費【出廷回数などによる】
離婚裁判の日当費は主に、弁護士の裁判所への出廷など、事務所外で弁護活動を行った際に発生する費用です。
着手金と同様、「1回の出廷につき3万円」などと固定の金額が設定されていることが多いです。
したがって、離婚裁判で争う事項が多く、弁護士の裁判所への出廷の回数が多くなれば多くなるほど日当費は高くなります。
実費【弁護活動による】
実費は、弁護士が裁判所へ出廷するための交通費、相手方や裁判所、公的機関などとの文書のやり取りをするための郵送費、訴状に貼付しなければ印紙代(手数料)など、弁護活動によって実際に発生した費用です。
実費も結局は弁護士の弁護活動により変動しますが、当初「5万円」と固定の金額(基本必要となる実費)を設定しておき、弁護活動の内容によって追加の実費が発生するとしている法律事務所もあります。
④離婚裁判の「訴訟費用」の内訳
訴訟費用についても「②離婚裁判で負担するのは「弁護士費用」と「訴訟費用」の訴訟費用」で述べましたとおり、主に、手数料、郵便切手代、証人が法廷に出頭する際に必要な旅費、日当及び宿泊費です。
手数料
手数料は、訴訟の提起の際に必要な訴状に貼付する印紙代のことです。
前述のとおり、手数料は、離婚のみを求める場合は「1万3,000円」(ア)です。
これは、親権者の指定を求める場合を含みます。
しかし、離婚に併せて財産分与、養育費、面会交流を求める場合はそれぞれにつき1,200円(養育費の場合は子供1人につき1,200円)が加算されます(イ)。
たとえば、離婚請求に併せて財産分与と子2人の養育費を請求する場合は、
1万3,000円+1,200円(財産分与)+1,200円×2人分(養育費)=1万6,000円
が手数料となります。
さらに、上記と併せて慰謝料を求める場合は、「上記(ア)の手数料」と「慰謝料請求に対する手数料」とを比較して、多額の方に上記(イ)に対する手数料を合算した額が手数料となります。
たとえば、離婚請求、財産分与と子2人の養育費に併せて慰謝料300万円を請求する場合は、「慰謝料請求に対する手数料(慰謝料300万円を請求する場合の手数料は2万円)」の方が「上記(ア)の手数料」よりも高額です。
したがって、この場合、
2万円+1,200円(財産分与)+1,200円×2人分(養育費)=2万3,600円
が手数料ということになります。
郵便切手代
郵便切手代は、裁判所が原告、被告などに対して書類を送る際にかかる費用のことです。
法律では、郵便切手代についても、裁判所ではなく訴訟の当事者(訴訟提起時は原告)に負担させなければならないとされています。
郵便切手代は裁判所によって異なりますが、6,000円前後から7,000円前後が一般的です。
金額のほか、切手の種類、枚数も裁判所により異なりますので、訴訟を提起する前に裁判所に確認しておきましょう。
証人が法廷に出頭する際に必要な日当、旅費、宿泊費
日当は、証人が出頭や出頭のための旅行に要した日数に応じてかかる費用です。
1日あたり「3,950円という固定の金額が設定されています。
旅費は、証人が裁判所に出頭するために要する交通費のことです。
もっとも、交通費といっても実費で発生するわけではありません。
旅費は「300円~」で、証人の住所地と出頭する裁判所までの距離に応じて増額されます。
宿泊費は、証人が出頭や出頭のための旅行に要した宿泊料のことです。
宿泊地によって、一夜あたり、「8,500円」の場合と「7,500円」の場合があります。
⑤離婚裁判で相手方に「弁護士費用」を請求できる?
「離婚の原因を作ったのは相手方にあるのだから相手方に弁護士費用を負担させたい」とお考えになる方も多いでしょう。
しかし、前述のとおり、弁護士費用は自己負担なのが原則です。
そもそも、弁護士費用はご自身で弁護士に弁護活動を依頼したことによって発生した費用であって、相手方に弁護士費用を負担させるべき根拠がないといわざるを得ません。
もっとも、弁護士費用が相手方の不法行為によって負担せざるを得なかった費用、といえる場合は、例外的に、相手方に対して弁護士費用を請求することができます。
あなたが負担した弁護士費用は「不法行為」による「損害」であって、この損害分のお金を相手方に請求できるというわけです。
交通事故で怪我した際に、加害者に対して損害賠償金を請求できるのと同じ考え方です。
相手方に弁護士費用を請求できる「不法行為」とは、たとえば、離婚の場合、不貞行為やDVなどです。
不貞行為は、相手方があなた以外の人と肉体関係を持つことで、単なる不倫、浮気は基本的に不貞行為に含まれません。
DVには、生命・身体に危害を加えるおそれのある行為のほか、心身に影響を与える言動も含まれます。
⑥弁護士費用を少しでも安く抑える方法
可能であれば、離婚裁判前の協議、調停で解決させることです。
離婚裁判に進むと弁護士の負担も大きくなる分、それに比例して弁護士費用の負担も大きくなります。
また、離婚裁判に進んだ場合でも、離婚裁判を長期化させないことです。
離婚裁判を長期化させればさせるほど弁護士費用は高くなります。
離婚裁判を長期化させないためには、むやみやたらにあれこれ争わず、離婚裁判で決着をつけたい事項を絞ることです。
そのためには、難しいかもしれませんが、相手方に譲るところは譲る、譲れないところは譲らないという風にメリハリをつけた姿勢でいることが必要です。
まとめ
離婚裁判で金銭的に負担しなければならないのは「弁護士費用」と「訴訟費用」です。
弁護士費用は原則、自己負担、相手方に請求できたとしても全額の約1割程度でしょう。
訴訟費用は、全面勝訴すれば相手方に負担させることができますが、一部勝訴や和解の場合は一部負担しなければならない場合もあります。
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