自己破産は、地方裁判所で厳格に行われる手続きです。
そのため一般の方にとっては敷居が高く、自己破産をためらう方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
一般的な自己破産手続きでは、破産申し立てからすべての手続きが終了するまで少なくとも数か月から半年程度の時間がかかります。
しかし、東京地裁が採用している即日面接制度を利用すれば手続きに要する期間を短縮することができるのです。
今回は「即日面接」をテーマにご紹介します。
- 「自己破産にかかる時間を早く終わらせる方法とは?」
- 「即日面接の内容とメリット・デメリットとは?」
- 「即日面接を利用するための条件とは?」
上記のような疑問に債務整理のプロがお答えします。
なお、当記事は重要ポイントを赤ペンで強調してあります。
お急ぎの場合には、そのポイントだけを読んでいただければ一通り理解可能です。
その場合、ほんの1~2分程度で最後まで目を通していただけます。
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即日面接とは?
自己破産は、その申立てをした後に「破産手続開始決定」を受けることによって本格手に手続きが開始されることになります。
通常の手続きの場合、破産の申立てから破産手続開始決定が出るまで数週間から1か月前後の時間がかかります。
破産手続開始決定が出るまでの期間を短縮するために採用されているが、即日面接という制度なのです。
最短、申立て当日に破産手続開始決定が出る!
しかし、即日面接制度を利用した場合には、破産手続開始決定が出るまでの時間が最短では申立ての当日。遅くとも3日以内(土日除く)に出ることになり、自己破産に関する手続きが非常に迅速に進むことになるのです。
裁判官と面接するのは弁護士
「即日面接」という言葉を聞くと、まるで自己破産の申立てをした本人が面接するイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、即日面接は破産の手続きを代理する弁護士が裁判官と面接する手続きです。
破産申立人本人が裁判所に出頭し、裁判官と面接するようなことはありませんので心配は無用です。
即日面接制度を利用するためには、その前提として破産申立人の借金や収入・資産の状況、免責不許可事由の有無などに関して弁護士が調査していることが必要です。
「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」とは、破産申立人が負っている借金をチャラにしてもいいかを判断するための重要な判断材料となるものだと考えてよいでしょう。
つまり、免責不許可事由に該当する事実がある場合には、最悪のケースとして破産手続きを行っても借金が免除されない可能性があるのです。
即日面接では、まず弁護士と裁判所の書記官が予備審査を行います。
その後、弁護士と担当裁判官が面接を行い、問題がないと判断された場合には破産手続開始決定が出されることになるのです。
ただし、破産手続開始決定が出る時期に関しては、破産の処理方法が同時廃止事件となる場合と管財事件になる場合とでは違ってくるので注意が必要です。
同時廃止事件の場合
自己破産の処理方法が同時廃止事件となった場合、破産手続き開始決定と同時にその手続きが終結(廃止)することになります。
「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」とは、破産申立人にめぼしい財産がないため破産債権者への弁済に充当すべき財産がないことが明白な場合に採用される破産の処理方法です。
裁判官と弁護士が面接をした結果、自己破産が同時廃止となる場合には即日「破産手続開始決定」と「破産手続廃止決定」が出ることになります。
自己破産の手続きは、大きく分けて「破産手続」と「免責手続」の2つに分けることができますが同時廃止事件の場合、「破産手続」は開始と同時に終了し「免責手続」が開始されることになります。
ちなみに実際における運用では、個人の自己破産は管財事件よりも同時廃止で処理される方が多くなっています。
同時廃止の場合には自己破産申立人の財産はいっさい処分されることがないなど管財事件と比較して多くのメリットを受けることができます。
もし、ご自分の自己破産が同時廃止または管財事件のどちらになるか心配な場合には、弁護士等に相談してみましょう。きっと、有益なアドバイスを貰えるはずです。
管財事件(少額管財)の場合
自己破産という手続きは、破産申立人の持っている財産を処分・換金し、そのお金を債権者に分配するのが原則的な方法です。
一定以上高額な財産すべてを債権者への弁済に充当するのと引き換えに、それでも返済しきれない借金の残額に関しては債務の返済を免除してもらうことになります。
同時廃止では「破産手続」がいっさい行われませんが、管財事件の場合には原則どおり「破産手続」が厳格に行われます。
管財事件では、裁判所によって選任された破産管財人が破産申立人の持っている一定以上高額な財産を処分・換金したり、債権者に分配するなどの職務を行います。
自己破産が管財事件となる場合には、即日面接をした日の属する週の翌週水曜日午後5時に破産手続開始決定が出される扱いとなっています。
上記のことを要約すると、以下のようになります。
- ①面接当日に破産手続開始決定が出た場合:同時廃止事件
- ②面接当日に破産手続開始決定が出ない場合:管財事件
即日面接のメリット
即日面接を利用した場合、以下のようなメリットがあります。
- (1)手続きにかかる時間を節約可能
- (2)裁判所費用が安い
- (3)破産申立人が面接しなくてよい
それぞれについて簡単に確認しておきましょう。
(1)手続きにかかる時間を節約可能
即日面接を利用した場合、上記のように破産に要する時間を短縮することができます。
同制度を利用しない場合と比較すると、かなり時間の節約が可能となり破産の手続きにかかる時間が短縮されるため、破産申立人としては精神的負担の軽減にもつながることでしょう。
(2)裁判所費用が安い
自己破産を申立てる場合には、裁判所所定の費用がかかります。
即日面接を利用した場合、通常の自己破産と比べるとその費用を5000円前後安く抑えることが可能です。
多重債務に苦しむ人にとって、5000円は決して少ない金額ではありません。
(3)破産申立人が面接しなくてよい
自己破産する場合、原則として「破産審尋」と「免責審尋」が行われ、破産申立人は裁判官から情聴取などを受けることになります。
つまり、破産申立人は上記2回の審尋の際に裁判所に出頭する必要があります。
審尋が行われる際には、破産申立人本人が裁判官と面接することになるのが一般的です(ただし、裁判所によっては上記審尋が省略される場合もあります)。
しかし即日面接が行われる場合、破産申立人は「破産審尋」の際に裁判所に出頭する必要がありません。
破産申立人本人に代わって弁護士が裁判官と面接することになるからです。
破産申立人としては、裁判官との面接は気の重いものでしょう。
そのような面倒な手続きを行わずに済むという点も、即日面接を利用するメリットです。
即日面接のデメリット
即日面接を利用した場合、以下のようなデメリットを受けることになります。
- (1)原則として東京地裁でしか利用できない
- (2)弁護士を代理人とする必要がある
(1)原則として東京地裁でしか利用できない
即日面接は破産手続きの迅速化が期待できるため、破産申立人にとっては魅力的な制度です。
しかし、同制度が利用できる裁判所は現在のところ東京地裁に限定されています。
しかも東京地裁でも本庁のみでしか扱いがないため、立川支部での破産手続きでは即日面接を利用することができないので注意してください。
(2)弁護士を代理人とする必要がある
自己破産は、弁護士等に依頼することなしに自分自身で行うこともできる手続きです。
しかし即日面接制度を利用するためには、弁護士を代理人として破産手続きを行わなければいけません。
自己破産を依頼することのできる債務整理の専門家には、弁護士のほかにも司法書士がいます。
しかし司法書士に破産手続きを依頼した場合には、即日面接を利用することはできません。
即日面接という制度は、破産の申立てに際して弁護士によって破産申立人の借金や財産、免責不許可事由の有無などの調査が行われることを前提としているためです。当然ながら弁護士への費用が必要となります。
まとめ
今回は、東京地裁で運用されている「即日面接」をご紹介しました。
即日面接制度では、通常の破産手続きに要する期間を数週間から1か月程度短縮することが可能となります。
ただし、即日面接は東京地裁のみで採用されている制度であるため、それ以外の裁判所で破産手続きを行う場合には利用することができません。
横浜地裁などでは類似の制度を採用していますが、やはりごく限られた裁判所でしか利用できない制度であることには注意する必要があります。
今回ご紹介した知識を活用し、効率的に自己破産手続きを行っていただければ幸いです。
借金問題の解決方法は、人によってさまざまです。
自己破産が適している場合もあれば個人再生など、その他の債務整理が適しているケースもあります。どの方法が適しているかを判断するためには、弁護士に相談することがベスト!
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