個人再生が出来ない人・不向きな人の5つのケースを分かりやすく解説

債務整理には自己破産や任意整理など、いくつかの種類がありますが、債務者ごとに向き不向きというものがあります。

「この人のケースでは、任意整理が最適だろう。」

「この人のケースでは、自己破産より個人再生が適している。」

などなど、どの債務整理が適しているかは、その人それぞれの事情によって千差万別です。

結局どの債務整理が適しているのかは、その人の債務状況や資産、収入などいろいろな情報を総合して、専門家の知識や経験などから最終的に決定されることになるのです。

「もう借金の返済はしたくない。自己破産したい。」という強い希望を持っていたとしても、実際には自己破産が不向きである場合もあります。

逆に「自分で借りたものは、責任をもって全額返済したい」という希望の方に自己破産を勧める場合もあります。

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「個人再生が出来ない」2つのパターン

ひと口に「個人再生できない」といっても、大別した場合にはつぎの2つのパターンが考えられます。

1.個人再生が出来ない、向かない場合

ひとつ目のパターンは、個人再生の手続き自体が利用できない、または不向きな場合です。

債務や資産状況などによって、法律上や実際上の事情から個人再生ができないことや不向きである場合があるのです。

2.手続きが失敗に終わる場合

ふたつ目のパターンは、個人再生手続き自体は利用ができますが、最終的に債務整理の目的を達成できない場合です。これは手続きを行っても、裁判所によって再生計画が認められないような場合などです。

今回こちらでは、個人再生ができない場合のうち、個人再生手続きが不向きな場合について、ご説明いたします。

個人再生ができない・不向きな5つのケース

個人再生は非常に有効な債務整理方法ではありますが、万能ではありません。債務者の諸々の事情・状況などによって、そもそも個人再生手続きができなかったり、不向きとされるケースがあるのです。

このような場合には、裁判所に個人再生を申し立てたとしても棄却されてしまいます。

それでは、どのようなケースで個人再生ができない、あるいは不向きなのかを見ていきましょう。

1.個人再生の利用条件をクリアーしていない場合

個人再生は裁判上で行われる手続きです。これは「民事再生法」という法律に基づいて行われるもので、この制度を利用するためには法律の定める条件をクリアーしている必要があります。

民事再生法では第25条によって、この条件を「再生手続開始の条件」として以下のように定めています。この条件をクリアーできない場合、申し立てを行ったとしても棄却されることになります。

民事再生法第25条(再生手続開始の条件)

次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。

(1)再生手続の費用の予納がないとき。
(2)裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
(3)再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
(4)不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

この第25条の定める条件を要約すると、以下のようになります。

(1)再生手続きのための費用を裁判所に納めない場合

個人再生手続きをする場合には、裁判所に各種費用を納める必要があります。

この費用を裁判所に納めない場合、個人再生の申し立ては棄却されることになります。つまり、「門前払い」されることになるわけです。

なお、費用の詳細に関しては、以下の記事にわかりやすく解説されておりますので参照してください。

(2)破産手続きなどが始まっている場合

ご自分の債務に関して、すでに破産手続きなどが開始している場合には、裁判所の判断によって個人再生の申し立てが受け付けられないことがあります。

(3)再生計画案の作成等に関して問題があることが明らかな場合

個人再生では自己破産と異なり、減額された債務を返済する必要があります。この返済は再生計画に基づいて行われることになります。この再生計画は、個人再生を申し立てた側で作成する必要があります。そのため、この再生計画の作成や現実的な履行に関して、明らかに支障が認められる場合には、個人再生は裁判所によって棄却されます。

(4)再生手続きの申し立てが不正な目的でなされたなどの場合

「不正な目的」とは、債権者からの取り立てを逃れるためだけの目的で申し立てられたような場合のことです。このような場合にも、申し立ては棄却されます。

2.債務額が100万円未満の場合

個人再生は手続き後に、ある程度の債務を支払う必要があります。法律の定めにより、この額は最低でも100万円以上とされています。つまり、債務額が100万円以下である場合には、個人再生するメリットがほとんどないということになります。

債務額100万円未満の場合は、任意整理を検討すべき

個人再生では、法律の定めによって債務額や将来利息が強制的にカットされます。これに対して任意整理では、そのような強力な効果はありません。しかし、交渉次第によっては、将来利息のカットまたはある程度債務の減額が認められる可能性もゼロではありません。個人再生できない場合には、任意整理を検討してもいいと思います。

将来利息はカットされる

債務総額が100万円以下の場合には、個人再生しても債務額が減少するどころか逆に増えてしまう可能性があります。しかし、個人再生した場合、債務が減額されなくても将来利息がカットされるという効果はあります。これも大きなメリットであることは間違いありません。

しかし個人再生する場合、裁判所や専門家への費用などがかかってしまうため、債務総額が少ない場合には、あまりメリットが無いと思われます。

任意整理が成立しない場合には有効かも!

任意整理の場合、相手業者が強硬なケースでは将来利息のカットにすら応じてくれない場合もあります。このような場合には、個人再生することで将来利息のカットを実現することができます。

ただし、個人再生する場合には各種費用等もかかりますので、任意整理とどちらが得なのか、慎重に判断する必要があるでしょう。

3.債務額が5,000万円超ある場合

個人再生は法律の規定によって、債務額が5,000万円を超えている場合は手続きの利用ができないことになっています。ただし、この額は住宅ローンの残債務額は含めません。

住宅ローンを除いた債務額が5,000万円を超えている場合には、個人再生以外の債務整理を検討しなければなりません。

債務額5,000万円超の場合、自己破産を検討!

債務総額が住宅ローンを除いて5,000万円以下の場合までは個人再生は利用できます。しかし、これが5,000万円超となる高額な場合には、もはや個人再生は利用できません。

債務額もここまで高額となると、任意整理で解決できるレベルではないでしょう。このようなケースでは、自己破産を検討するしかないかもしれません。

4.定期的な収入がない場合

個人再生は、手続き後に一定額以上の債務を返済しなければならない手続きです。このため、手続きを利用するためには定期的な収入があることが条件とされています。

そのため、裁判所に対して定期的収入があることを証明しなければなりません。これができない場合には、手続き自体の利用が制限されることとなります。

そのため、つぎのような方は個人再生できないことになります。

  • 無職の方
  • 専業主婦の方

手続き上では、定期的収入があれば問題はありませんので、職業は正社員でなくても構いません。アルバイトやパートでも定期的な収入があるのであれば、手続きの利用は可能となります。

5.財産が多すぎる場合

繰り返しになりますが、個人再生では、手続き後に一定額以上の債務の返済をすることになります。この「一定額」のことを「最低弁済額」といいます。

個人再生では、法律上「清算価値保障の原則」というものがあり、このルールによって最低弁済額が決まることがあります。

清算価値保障の原則とは?

人は生きている以上、必ず何かしらの財産を持っているものです。

個人再生する人も、もちろん財産を持っています。個人再生する場合には、これら「所有する財産の経済的価値以上の金額を返済すべき」というのが、清算価値保障の原則というルールなのです。

財産が多いと返済額がアップする!

「清算価値保障の原則」との兼ね合いから、所有する財産が多ければ多いほど、個人再生手続き後に支払うべきとされる債務額が増加する可能性が高くなることになります。

このため、あまりに高額な財産を持っている場合には、個人再生以外の債務整理方法を検討する必要が出てくるかもしれません。

要注意!気付いていない「財産」について

「財産」といわれると、一般的には不動産や株券、預貯金などを思い浮かべることが多いと思われます。

しかし、個人再生をする場合には、自分でも気づいていないものが財産とされることがあります。代表的なものとしては、つぎのようなものが挙げられます。

  • 生命保険を契約している場合:解約返戻金
  • 会社員の場合:退職金

以上のような「財産」がある場合には、個人再生の手続き上、これも所有する財産としてカウントされることになりますので、注意が必要となります。

これらの金額が大きいと、個人再生手続き後に返済する債務額が増額される恐れが出てきます。以下の記事もあわせて読むことをオススメします。

個人再生できない場合の対策

今まで述べてきたように各種条件が整わない場合には、残念ながら個人再生の利用ができないケースがあります。

しかし、その場合でもまだ対策はあります。個人再生が認められなくても、まだほかにも債務整理にはいくつかの方法が残っているのです。

このような場合には、つぎのような方法が考えられます。

  • 自己破産する
  • 任意整理する

詳細につきましては、「個人再生、失敗例と失敗しないための2つのポイント」にて説明していますので、そちらを参照してください。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、個人再生が不向きな事例について説明させていただきました。

個人再生できない人には、法律の定める条件による制限だけでなく、財産状況など債務者の事情によって手続きの利用が制限されるパターンも多いのです。

今回ご説明した中で、特に大切だと思われる事項をおさらいしておきましょう。つぎのような場合には、個人再生が利用できない、または利用できたとしてもメリットが無い・少ないということになります。

  • 債務額が100万円以下の場合
  • 住宅ローンを除く債務額が5,000万円を超えている場合
  • 所有している財産が高額な場合

個人再生を検討される場合には、このような情報もよく吟味して手続きを行っていただきたいと思います。

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