今回は、裁判外で行われる手続きである任意整理と、裁判上の手続きである個人再生を比較してみたいと思います。
この2つの手続きは同じ債務整理の方法でありながら、「裁判上」と「裁判外」と手続きの舞台がまったく異なっています。このため両者には、債務整理の効果という点で決定的に大きな違いが存在します。
個人再生と比較した場合、任意整理にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
詳しく解説します。
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そもそも任意整理とは?
まずは、基本的な事柄から確認しておきましょう。そもそも任意整理とは、どのような手続きなのでしょうか?
任意整理とは、裁判外で行われる債務整理方法のことです。裁判所を使わずに金融業者など債権者と債務者が借金の額や支払い方法などについて、「任意」に交渉する方法が任意整理です。
一般的には、債務の返済が苦しい場合に、主として債務元本の減額・利息のカット・毎月の返済金の減額などを期待して行われます。
それでは、個人再生手続きと比較した場合の任意整理のメリットとデメリットを考えてみましょう。
任意整理のメリット
うえで述べたように、任意整理は個人再生と異なり、裁判外で行う債務整理方法です。両者は手続きが根本的に異なるため、手続きを利用するための条件や効果も大きく異なります。
個人再生と比較した場合、任意整理にはつぎのようなメリットがあります。
誰でも手続きが可能
任意整理は債権者と債務者の間で行われる任意の交渉です。このため、任意整理をする場合には、個人再生の場合に要求されるような法律上の条件というものがありません。
つまり、任意整理したいと思う債務者は、誰でも任意整理を行うことができるということです。
ただし、任意整理は相手方が交渉に応じるかどうかという点でも「任意」であるため、必ずしも成功するとは限りません。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合には、利用するために各種の条件があります。個人再生は法律によって定められている手続きであるため、利用するためには法律で定められた条件をクリアしなければならないのです。
このため、債務者の事情によっては個人再生できない可能性もあります。
裁判外の交渉のため面倒が少ない
裁判所を通さずに相手業者と交渉するため、面倒な手続きが少なくて済みます。
任意整理は、債務者本人のみで行うことも可能です。この場合には、専門家に依頼するという手間も省くことができます。
ただし通常のケースでは、専門家に依頼したほうが有利な条件で交渉を行うことができます。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合は、裁判所上行わなければならないため、手続きが厳格・複雑となります。人によっては、これを非常に面倒な手続きだと思われるかもしれません。
また、手続きが非常に専門的なものであるため、債務者本人のみで個人再生することは現実的とは言えません。
費用が安い
任意整理は費用が安く済む、という点も大きなメリットです。
債務者本人のみで行う場合には、費用はほぼゼロ円。弁護士や司法書士など債務整理の専門家に依頼する場合でも、一般的に費用はそれほど高くはありません。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合には、どうしても費用がかさみます。
裁判所にかかる費用だけでなく、通常は債務整理の専門家への費用なども掛かるためです。このため、費用の大まかな目安として、最低でも20万円以上の負担が必要になると考えておいた方がよいでしょう。
ただし、個人再生は債務者本人だけで行うことができないわけではありません。専門家に依頼せず、本人だけで行うことも法律上は可能です。しかし、個人再生は手続きが専門的であるため、本人だけで手続きを行うには非常にハードルが高いものとなっています。個人再生の成功率をあげるためにも、専門家への依頼が不可欠と言ってもいいでしょう。
なお、個人再生する場合にかかる費用の詳細については以下の記事でわかりやすく解説していますので参考にしてください。
債務整理の対象となる債権者を自由に選ぶことができる
任意整理では、債務整理の対象となる債権者を自由に選んで交渉することができます。つまり、複数いる債権者の中から自由に債務整理の対象を選ぶことができるのです。
このため、債権者の中に親族や友人・知人などがいる場合、「この債権者には迷惑をかけたくない」という債権者だけを債務整理の対象から外すことが可能です。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合には、債務整理の対象となる債権者を選ぶことができません。
つまり、個人・法人を問わず債権者すべてを債務整理の対象としなければならないのです。親族や友人・知人などからの借り入れがある場合でも、それらの人からの借金も個人再生の対象となります。そのため、個人再生が成功した場合には、それらの人からの借金も減額されることになり、親族などに迷惑をかけることになります。
任意整理のデメリット
それではつぎに、任意整理のデメリットを見てみることにしましょう。
任意整理を個人再生と比較した場合、任意整理にはつぎのようなデメリットが考えられます。
交渉が成立するとは限らない
任意整理とは、文字どおり裁判外における当事者間の「任意」の交渉です。つまり、交渉が成立するかどうかは相手次第、ということなのです。
このため本人が任意整理を希望したとしても、相手業者が応じてくれなければ任意整理は失敗することになります。
個人再生の場合は?
任意整理が裁判外で行われる任意の交渉であるのに対して、個人再生は法律によって定められた裁判上の厳格・強力な手続きです。このため、個人再生が成功した場合には、債権者の意向を問わず債務の大幅なカットが実現されます。
債務の減額率が少ない
うえで述べたように、任意整理は当事者間の自由な交渉によって行われるものです。
このため相手業者が交渉に応じてくれたとしても、債務の減額率は非常に小さいものであることが一般的です。
また、交渉内容で任意整理の結果も異なってきます。
任意整理の交渉内容が、返済期間を延長することで毎月の返済額を減少する場合などには、相手業者も応じてくれる可能性が高いでしょう。しかし、債務元本の減額・すでに発生している利息や将来利息のカットなどの交渉では、相手業者の対応も厳しく、実現の可能性は低いと言わざるを得ません。もちろん相手業者や交渉次第によって結果は異なってきますが、任意整理に過度の期待をすることは賢明ではありません。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生は、法律の規定に基づく裁判手続きであるため、債務整理の効果が非常に高いという特徴を持っています。
個人再生に成功した場合には、最大で80~90%もの債務の減額が可能となります。また、残った債務の返済に関しては、基本的に3年間の分割返済が認められます。しかも、残った債務に関しては将来利息も発生しないため、債務整理前と比べて債務の返済が非常に楽になるのです。
ブラックリストに載る
任意整理した場合には、ブラックリストに載ることになります。
任意整理や個人再生に限らず債務整理をする以上、ブラックリストに載ることはまず避けることができません。債務整理の相談者の中には、ブラックリストに載ることを極端に恐れる方がいらっしゃいます。しかし、債務整理で借金問題を解決する以上、これはある程度は仕方のないことなのです。
ただし、任意整理は債権者に与える損害が個人再生と比べると軽微であるため、ブラックリストから名前が削除されるまでの期間は短いものとなります。この点はある意味、任意整理のメリットととらえることができるかもしれません。
個人再生の場合は?
個人再生も債務整理手続きである以上、手続きをした場合には基本的にブラックリストに載ることになります。ただし、個人信用情報機関の中には、個人再生しても事故情報として記録しない機関もあるようです。
なおブラックリストに関して、より詳細な情報が知りたい方は以下の記事にわかりやすく解説していますので参考にしてください。
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結論!任意整理は債務整理方法としての効果が低い!
以上のように、任意整理には債務整理の対象となる業者を選べるなどメリットも存在します。これは、親族や友人などに迷惑をかけず、金融業者など一部の債権者からの債務のみを整理するような場合には大きなメリットとなるでしょう。
しかしその反面、任意整理は成功率が高いとはいえず、仮に債権者と交渉が成立しても債務の返済が楽になるほどの大きな効果はあまり期待できないというデメリットがあります。
借金問題を根本から解決しようとする場合、このデメリットは非常に大きなものと言えます。
やはり、借金問題を根本から解決しようとする場合には、個人再生や自己破産など裁判所を利用した厳格な債務整理方法を検討すべきでしょう。
まとめ
今回は個人再生と比較した場合、任意整理に考えられるメリットとデメリットについて説明いたしました。
任意整理には、裁判外で行えるという点から気軽に手続きできるというメリットが存在します。また、債権者が複数存在する場合には、その任意の一部の債務だけを債務整理の対象とすることも可能です。しかしその反面、裁判外での手続きだからこそ発生する各種のデメリットもあるのです。
デメリットの中で最大と思われるものは、任意整理が成功する確率が必ずしも高くないという点が挙げられます。また、たとえ成功したとしても、債務の減額効果が低いのが一般的です。
もちろん、個人再生の手続きも確実に成功する保証があるわけではありません。しかし、債務整理の専門家に依頼することにより、かなり高い確率で成功させることができます。
任意整理のメリットとデメリットを総合考慮した場合、残念ですが任意整理には借金問題を解決する効果をあまり期待できない、ということになるでしょう。
比較的借金総額が少なく、返済に関してまだ多少の余力がある場合など、利用できるシーンは限定されるものと思われます。
毎月の返済が苦しく、すでに借金の返済が行き詰まっているような場合には、個人再生または自己破産を検討したほうがよいでしょう。
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