借金問題を法律的に解決する方法として、債務整理という手続きがあります。この手続きには基本的に4つの種類があり、それぞれに特徴を持っています。
その複数ある債務整理手続きの中で、自己破産と個人再生はともに裁判所で行われる厳格な手続きです。しかし両者には、利用するための条件や手続き後の効果などに関して大きな違いがあります。
今回は個人再生と自己破産を比較した場合の自己破産のメリット・デメリットにスポットを当てて解説してみたいと思います。
自分の借金問題を解決する方法として、自己破産がよいのか?それとも個人再生が適しているのか?それぞれのメリット・デメリットを理解することで、どちらの手続きが適しているのかを、ある程度判断できるようになると思います。
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個人再生と比較した場合の自己破産のメリット
個人再生と自己破産を比較した場合、自己破産のメリットとしては主につぎのようなものが考えられます。
借金全額の免除が受けられる
自己破産をする最大のメリットは、なんといっても債務全額の免除を受けられるという点です(一部、法律の規定により免除を受けられないとされる債務もあります)。
自己破産手続きの最終段階において、裁判所に「免責」を認めてもらい、それが法律上確定することによって基本的には債務の全額が消滅することになります。「債務の全額が消滅する」とは、いうまでもなく今まで抱えていた借金がゼロになるということです。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合には、債務全額の免除は受けられません。つまり、裁判所で個人再生が成功したとしても、一定額以上の債務がどうしても残ることになります。
ただし、個人再生が成功すると元の借金は最大80~90%がカットされます。そのため、これだけ大幅な債務のカットを受ければ残りの債務を支払うことができる経済状態である場合には、個人再生の利用が選択肢のひとつになります。
生活の再建を図りやすい
うえで述べた借金全額の免除が得られるという点と関連しますが、借金が完全になくなるため、生活の再建をしやすいというのも自己破産のメリットです。
自己破産することで、基本的には債務の全額が消滅するため、もはや債務を返済する必要がなくなるからです。毎月生活を圧迫していた借金の返済がなくなるわけですから、その分だけ生活に余裕ができるようになります。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合には、最大80~90%もの債務が免除されるとはいえ、ある程度の債務が残ります。当然、手続き後に一定額以上の債務を返済しなければなりません。このため、一気に借金問題を解決することができません。残った債務は基本的に3年間の分割返済をする必要があるため、この期間中は債務の返済を継続しなければならないことになります。
個人再生と比較した場合の自己破産のデメリット
個人再生と比べた場合、自己破産する場合には主につぎのようなデメリットが考えられます。
利用するためのハードルが高い
自己破産が裁判所で認められるためには、債務者において法律で定められている「免責不許可事由」に該当する事実が存在しないことが必要です。
たとえば、借金の大半を浪費やギャンブルで作ってしまっているようなケースを考えてみましょう。
浪費やギャンブルで借金を作った場合、これは免責不許可事由に該当します。
そのため自己破産を申し立てても、裁判所に免責を認めてもらえない可能性があるのです。
自己破産では、裁判所に免責が認められ確定することによってはじめて法律上、債務が消滅します。そのため、免責が認められないのであれば自己破産をする意味は大半が失われるといえます。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合は、免責不許可事由のような制限がありません。そのため、その分だけ利用のためのハードルが低いといえます。
マイホームなどを手放す必要がある
せっかく手に入れたマイホーム。誰でも手放したくないと思うのは人情というものです。
しかし自己破産する場合には、所有する一定以上高額な財産は手放さなければならないというルールがあります。
このため当然、マイホームは手放さなければならなくなります。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合は「住宅ローン特則」を利用することで、自宅を維持しながら債務整理を行うことができます。
住宅ローンは契約どおり満額を支払う必要がありますが、その他の債務に関しては大幅なカットを受けることができます。住宅ローン以外の債務に関して大半のカットを受けることで、毎月の返済が楽になり、マイホームを維持しながら借金問題の解決が可能となるのです。
資格制限がある
世の中にはたくさんの職業が存在しますが、ある一定の職業は破産することで失職するなど重大な影響が及ぶものがあります。
各種法律の定めによって一定の職業は、破産した場合には一定の期間その職業につけないとされているのです。これを、破産による「資格制限」といいます。
資格制限の対象である職業についている人が自己破産した場合、その仕事の欠格事由に該当することになるため、その仕事を辞めなければならなくなってしまいます。
個人再生の場合は?
これに対して個人再生の場合は、自己破産のような資格制限がありません。
このため、破産した場合には欠格事由に該当し失業するような職業についている人でも問題なく利用可能です。資格制限によって影響を受ける職業についている人が債務整理を検討する場合、個人再生はもっとも有力な選択肢となるでしょう。
住所・氏名が官報で公告される
自己破産をする場合には法律上、その者の住所・氏名が官報によって公告されることになっています。「官報」とは、簡単にいうと国の発行する広報誌のようなものです。国は一定以上の重要事項を、広く国民に対し伝えるため官報を発行しているのです。官報は現在、インターネット上でも閲覧することができるようになっています。
このため、官報の記載から自分が自己破産したことが友人・知人や会社にバレてしまうのではないかと心配する人がいます。もちろん、その可能性はゼロではありません。しかし実際問題として、友人・知人や会社の同僚など個人が官報を詳細に調べるようなことは、まずありません。過度に心配する必要はない、といっていいでしょう。
個人再生の場合は?
官報によって住所氏名が公告されてしまうという点に関しては、個人再生も自己破産と同様です。個人再生をした場合にも、その旨が数回官報に公告されるのです。
ブラックリストに名前が載る
世の中には個人の金融機関の利用情報を記録・管理している機関として、個人信用情報機関というものが存在します。
ある人が消費者金融やクレジットカード会社などからお金を借りたのに、約束どおりにお金を返済しなかったような場合には、その人の記録に「事故情報」というものが記録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
自己破産した場合には、当然ですが個人信用情報機関においてそのひとの記録に「事故情報」が記録されることになります。ただし、この扱いは自己破産に限ったものではありません。どのような方法でも債務整理した場合には、ほぼ確実に「事故情報」は記録されることになるのです。
ただし、自己破産は債権者にもっとも迷惑をかける行為とされるため、その事故情報の扱いも厳しいものとなります。つまり、ブラックリストから名前が削除されるまでの期間は、ほかの債務整理手続きの場合より長くなるのが通常です。
個人再生の場合は?
この点に関しては、個人再生も自己破産の場合と同様、基本的にブラックリストに載ることになります。
しかし個人再生の場合は、個人信用情報機関における事故情報の重大度が自己破産よりは多少軽いものとなるようです。自己破産と異なり、多少なりとも債務を返済する手続きであるためでしょうか。個人信用情報機関の中のCICという機関では、個人再生したという事実を事故情報とはしないとされています。
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まとめ
今回は、個人再生と自己破産という2つの手続きを比較した場合の自己破産のメリットとデメリットについて説明しました。
それでは、その内容をもう一度おさらいしてみましょう。
自己破産の最大ともいえるメリットは、基本的に債務全額の免除が得られるということでした。つまり、自己破産が認められることで、今まで苦しめられた借金がすべて消滅します。このため借金問題は一気に解決できることになるのです。
この債務全額の免除を受けられるという効果は、4つある債務整理の方法の中でも最大の魅力と言えるでしょう。個人再生した場合には債務の大半が免除されますが、全額の免除とまではいきません。借金問題を根本から一気に解決するためには、自己破産することがベストであることは間違いないでしょう。
これに対して、自己破産にはデメリットも存在します。
法律上「免責不許可事由」というものが定められているため、これに該当する事実がある場合には破産手続きが利用できない場合があるのです。例えば、借金の大半をギャンブルで作ったような場合がこれに該当します。
さらに、破産した場合には「資格制限」が発生します。このため、自己破産した人は一定の期間一定の職業に就くことができなくなってしまいます。
また、マイホームなど高額な財産を持っている場合にもデメリットを受けることになります。それら財産を手放さなくてはならないからです。
自己破産した場合にはブラックリストに載り、住所・氏名が官報で公告されるという点も忘れてはいけません。しかし、この点は個人再生した場合も、ほぼ同様のデメリットを受けます。
しかし、自己破産した際に受けることになるそれ以外のデメリットは、個人再生には存在しません。つまり、個人再生した場合でも資格制限は発生しませんし、マイホームを維持したまま債務整理することができるのです。免責不許可事由なども存在しないため、その分、利用しやすい制度となっています。
以上のような両者の特徴を充分に把握することで、自分の借金問題を解決するためには、どちらの方法が適しているのかをある程度は判断することができます。
ただし借金問題の解決方法は、その内容によりケースバイケースです。借金総額が同じだったとしても、債務の内容や所有する資産、収入などが違えば、解決方法が違ってくることも珍しくはありません。同じ500万円の借金を抱えているAさんとBさんがいるとしましょう。専門家に相談した結果、Aさんの借金問題の解決方法として自己破産が最適であるとされたからと言って、Bさんの場合にも自己破産が最適であるとは限らないのです。
つまり借金問題を解決する場合、どの方法がもっとも適しているのかを正確に判断するためには、高度な法律的・専門的知識が必要なのです。自分の判断だけに頼り、間違った方向で債務整理を検討してしまっているとしたら、それは大きな時間の浪費です。時間を浪費している間にも借金問題はどんどん悪化していってしまうのです。そのようなことにならないためにも、なるべく早い段階で債務整理の専門家へ相談することをお勧めします。
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