相続放棄をすることで、被相続人の借金などの債務を相続せずに済みますし、ある特定の相続人に財産を集中させたいといった場合も活用できます。
しかし、相続放棄は、相続が開始されたのを知ってから3ヶ月以内に、相続放棄申述書などの必要書類を家庭裁判所に提出しなくてはなりません。
とはいえ、「相続放棄申述書の書き方がわからない」とお困りの方も多いことでしょう。
そこでここでは、遺産相続問題に詳しい弁護士が、相続放棄申述書の書き方をわかりやすく解説していきます。
法律に詳しくなくても、サンプルを元に解説していきますので初めて書く方でも安心です。早速見ていきましょう。
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目次
相続放棄申述書とは
相続放棄申述書とは、家庭裁判所に相続放棄を認めてもらうために提出する申請書面です。
ただし、提出したからといって必ずしも相続放棄が認められるものではなく、家庭裁判所が審査して問題がないと判断されて初めて相続放棄が認められます。
相続放棄は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出しなくてはなりません。
そして、相続放棄は、やり直しがきかない1度きりの手続きですので、その出だしとなる相続放棄申述書への記入は不備のないよう慎重に進める必要があるでしょう。
相続放棄申述書の提出先と提出方法
被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。「裁判所の管轄区域」のページから調べることができます。
郵送でも提出可能ですが、窓口に持参することで、記載漏れや誤記入があった場合に職員から指摘してもらえますので、出来るだけ直接出向くことをお勧めします。
相続放棄申述書の書き方
相続放棄申述書は最寄りの家庭裁判所でもらうことができますが、インターネット環境があるのであれば、裁判所のホームページからダウンロードして印刷して使用できます。
全国共通のフォーマットですが、相続放棄をする相続人が20歳以上なのか、20歳未満なのかによって記入する内容がが若干異なりますので注意が必要です。
相続放棄申述書をダウンロード | 【PDFダウンロード】【Wordダウンロード】 |
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記入例のサンプル | 【成人の場合の記入例】【未成年の場合の記入例】 |
なお、相続放棄をする申述人が複数人いる場合は、それぞれが申述書を作成する必要があります。1人が代表して作成して提出するという方法は採れませんのでこの点も注意してください。
以下では、相続放棄申述書の書式記入サンプルを元に、各記入箇所につき説明していきます。
書き始める前の注意点
記入すべき欄は、黒い太枠の箇所だけですので、「収入印紙・予納郵便切手の金額を書く欄」「準口頭」「関連事件番号」「申述の趣旨(最初から印字されています)」の欄は記載不要です。
ただし、収入印紙を貼る欄には800円分の収入印紙を貼ってください。その際、領収書や契約書に貼る印紙のような押印をしてはいけませんので注意してください。
相続放棄申述書は手書きである必要はなく、Wordのフォーマットをダウンロードしてパソコンで入力しても構いません。手書きの場合も、代筆でも問題ありません。
使用する印鑑はシャチハタ等のゴム印でなければ認印でも構いません。
裁判所名・日付欄の書き方
裁判所名を記入する欄には、被相続人が最後に定めていたい住所を管轄する家庭裁判所の名前を記入します。裁判所の管轄区域より確認できます。
日付は、相続放棄申述書を書き終わった日を記入してください。
申述人の記名押印欄の書き方
申述人が成人の場合は、申述人の氏名を書いて下さい。
申述人が未成年の場合は、「〇〇(子供の名前)の法定代理人××(親の名前)」という記載になります。
添付書類欄の書き方
添付書類の欄には、「戸籍」と「住民票」関連のチェックボックスが既にありますので、相続放棄申述書以外にこれらの書類があるようであればチェックを入れましょう。
また、それ以外に添付書類がある場合は空欄に記載しチェックを入れます。最後に添付書類が合計何通あるのかを記載します。
なお、被相続人と相続人との関係によって必要書類は異なりますので、相続放棄の必要書類が知りたい!【取得・提出方法もわかります】で確認をしましょう。
申述人欄の書き方
申述人欄には、相続放棄をする人(申述人)の本籍地、住所、名前、生年月日、職業、被相続人との続柄を記載します。
本籍地は、申述人の戸籍謄本に記載された本籍地をそのまま書き写します。
住所は、住民票上の住所と実際に住んでいる住所が異なる場合でも、申述人が実際に住んでいる住所を記載します。相続放棄申述書の提出後に、家庭裁判所が申述人に書面(照会書等)を送るための住所ですので、郵便物が届くよう現住所である必要があるからです。
なお、申述人が未成年の場合、この申述人欄には、その未成年者の個人情報を記載してください。法定代理人の個人情報については、「法定代理人等」の欄への記載となります。
被相続人欄の書き方
被相続人欄には、亡くなった方(被相続人)の、本籍・最後の住所・死亡時の職業・氏名・死亡日を記載します。
本籍については、被相続人の戸籍謄本に記載の本籍地をそのまま記載します。
最後の住所については、住民票上の最後の住所の記載となります。亡くなった時に住民票上の住所に住んでいなかったとしてもあくまでも死亡時の住民票上の住所を記載する必要があります。
死亡時の職業は、具体的な職種を書く必要はなく、無職・会社員・自営業といった形で構いません。
死亡日については、被相続人の戸籍謄本や住民票で確認してください。
申述の理由欄の書き方
申述の理由ですが、こちらは大きく分けて3つあります。①相続の開始を知った日、②相続放棄する理由、③相続財産の概略です。それぞれ見ていきましょう。
①相続の開始を知った日
相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月という熟慮期間が設けられています。被相続人が死亡した日ではなく、「相続人が、自分が相続人になったことを知った日」ですので間違えないようにして下さい。
相続の開始を知った日の欄には、相続開始を知った年月日の記入欄と、どのタイミングで知ったのかに〇をする欄があります。
もし相続人が死亡した日に知ったということであれば、「被相続人の死亡の当日」に○をつけます。
被相続人が死亡して日数が経過してから連絡を受けて知ったのであれば、「死亡の通知を受けた日に」〇をつけます。
また、自分より先順位の相続人が全員相続放棄をしたため、自分が相続人となったことを知ったのであれば、「先順位者の相続放棄を知った日」に〇をつけます。
②放棄の理由
相続放棄の理由についても、すでに申述書に選択肢が記載されています。そのため、この中で当てはまるところに丸をつけるだけでいいようになっています。
放棄の理由が原因で相続放棄の許可が下りないということはありませんので、心配する必要はありません。
なお、「遺産を分散させたくない。」というのは、例えば、被相続人が事業を営んでいて、その事業を継続させるために、複数の相続人のうちの一人に全相続財産を集中させたいようなケースです。
「債務超過のため。」というのは、プラスの財産よりもマイナス財産(借金)の方が多いため、負の財産を引き継ぎたくないケースです。
財産の概要
被相続人の財産調査をして、完全に財産を把握しなければ相続放棄ができないとなると、3ヶ月という相続放棄が可能な期間を経過することも考えられます。
そのため、財産の概要欄には、記載時に申述人が把握している範囲で、不動産や預貯金、有価証券といったプラスの財産や、借金等の負債であるマイナスの財産を書けば良いこととされています。
相続放棄申述書の提出後の流れ
相続放棄申述書の提出が無事に済んだ後、相続放棄が完了するまでの流れを解説します。
ステップ① 相続放棄照会書と回答書が送付されてくる
相続放棄申述書を提出してからおおよそ1~2週間後に、家庭裁判所から、「相続放棄照会書」と「相続放棄回答書」が一緒に送られてきます(照会書兼回答書という形で一体となっている場合もあります)。
照会書の「照会」は、”確認”や”問い合わせ”という意味合いで理解して構いません。
照会書には主に、回答書に記載する時の注意事項(使用できる筆記用具の種類や印鑑、代筆可能な人など)が書かれており、具体的な確認事項については回答書に質問形式で書かれています。
書かれている質問内容としては、
- ①被相続人の死亡を知った日はいつか?
- ②被相続人の死亡を知った経緯は?
- ③被相続人の財産を処分したりしていないか?
- ④相続放棄することは真意に基づくものか?
- ④今も相続放棄をする気持ちに変わりはないか?
などがあります。
回答を記入する際にとくに注意すべき点としては、「①被相続人の死亡を知った日」です。
既に触れましたが、相続放棄ができる期限は、被相続人が死亡したことを知った日から3ヶ月以内です。その期間を過ぎると相続放棄が認められなくなります。
誤記入して後で問題とならないよう、被相続人が死亡したことを知った日を正確に書く必要があるでしょう。
回答書に必要事項を記載したら、裁判所に返送します。
ステップ② 相続放棄申述受理証明書が交付されれば完了
相続放棄回答書を受け取った家庭裁判所は、先に提出された相続放棄申述書と合わせて、相続放棄を認めていいかどうかを審査します。
審査が無事に通ると、家庭裁判所から相続人に対し、「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきます。これで相続放棄の手続きは完了します。
必要に応じて相続放棄申述受理証明書を取得しよう
相続放棄受理証明書とは、相続放棄をしたことを第三者に証明するための正式な書類で、家庭裁判所に対して請求すれば発行してもらえます。
上記でお伝えした、「相続放棄申述受理通知書」でも、相続放棄手続きが完了したことがわかるため、第三者によってはそれでよしとしてくれることもありますが、正式な証明書類である相続放棄受理証明書の提出を求められることもあります。
具体的には、
- ①相続した土地や建物といった不動産の名義変更
- ②相続した預金口座の名義変更や解約手続き
などの場合に必要となります。
また、マイナスの財産(債務)を相続放棄した場合に、本当に相続放棄をしたのかの確認のために債権者から提出を求められることもあります。
この証明書は、「相続放棄申述受理通知書」と同封されている「相続放棄申述受理証明書の交付申請書」で交付申請ができ(1通あたり150円の収入印紙が必要)、何度でも発行可能です。
まとめ
相続放棄の申述書の書き方や注意点について説明しました。申述書を書くことは基本的に難しいものはなく、事実を記載すれば問題はありません。
相続放棄は3ヶ月しかできないうえ、一度しか申請できないとあって、申述書は慎重に記載することが求められます。わからないことがあれば、自分で判断をせずに専門家に相談しましょう。
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