このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、相続人やその配偶者が財産の使い込みをすると横領罪や窃盗罪が成立することがあります。ただし、使い込みをした者が被相続人の「配偶者」「直系血族」「同居の親族」である場合には、親族相盗例という特例により刑が免除されます。
この記事では、遺産相続に強い弁護士が、上記内容につきわかりやすく解説していきます。
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遺産相続で使い込みがあったら横領罪になる?
もしも遺産相続を使い込まれたら横領罪に問うことができるのか解説します。
相続の場面で横領にあたるケースは?
横領罪(刑法252条、5年以下の懲役)は自分が管理する他人の物を勝手に処分した場合などに成立する犯罪です。そこで、たとえば、
というようなケースで横領罪が成立する可能性があります。
もっとも、XがAから預金の引き出しや自分のためにお金を使うことについて、あらかじめ承諾を得ている場合は、横領罪は成立しません。
なお、XがAから預金口座の管理を任せられておらず、Aに無断で預金口座から預金を引き出した場合は横領罪ではなく窃盗罪が成立します。
横領罪が成立しても親族相盗例が適用されることも
親族相盗例とは親族間の犯罪に関する特例のことで、犯人とある一定の親族との間の犯罪については刑を免除したり、告訴がなければ起訴されないもの(親告罪)とする規定のことです。
親族間の内部的なことは、たとえそれが犯罪であったとしても、国家が積極的に介入することを差し控え、親族間相互の規律に委ねた方が親族間の秩序維持のために望ましいことであり、刑事政策上も妥当であるとの考えに基づいています。
親族相盗例は横領罪のほか、窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、背任罪には適用されますが、強盗罪には適用されません。
親族相盗例の適用によって刑が免除されるのは、「配偶者」、「直系血族」、「同居の親族」です。配偶者には内縁関係にある者は含まれません。直系血族は、親や実子、祖父母、孫といった自然血族のほか、養親や養子といった法定血族も含まれます。同居の親族とは、同一住居内で日常生活を共同にしている親族です。
では、先ほどの事例で親族相盗例が適用されるのかみていきましょう。
まず、長男Xが犯した罪は「横領罪」です。また、Xは父親Aの実子ですから「直系血族」にあたります。したがって、本事例には親族相盗例が適用され、Xの刑は免除されます。
次に、長男Xの配偶者YはAと同居しているかどうかで結論が異なります。すなわち、同居している場合は「同居の親族(法律上Yのような姻族も「親族」にあたります)」にあたり、Xと同じく刑が免除されます。一方、同居していない場合、横領罪は親告罪となり、Aの告訴があってはじめてYが起訴され、刑罰を科されることになります。
親族相盗例が適用されないケース
親族であっても親などの被後見人お身の回りの世話や財産を管理する権限がある法定後見人、あるいは任意後見人に選任されている場合は親族相盗例の適用はないとするのが裁判所の考えです。後見という重い責任を負っている以上、刑を免除すべきではないからです。
また、後見人して横領を行った場合は横領罪ではなく業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)が適用されます。
まとめ
相続では、相続人(X)やその関係者(Y)が被相続人(A)の財産を勝手に処分するといった問題が発生し、他の相続人から刑事事件化できないかという相談をよく受けます。
しかし、そもそも横領を証明することが難しく、仮に証明が可能でも、今回解説したように親族相盗例が適用され、警察が被害届を受理してくれないことも考えられます。
横領を証明するにはどのような証拠が必要か、どうすれば警察を動かすことができるか、お金を返してもらうにはどうすればいいか、このような疑問、悩みをお持ちでしたらはやめに弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、相続人やその関係者が使い込みをした財産の返還請求や損害賠償請求を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でバックアップしますので、お困りの方は当事務所の弁護士までご相談下さい。お力になれると思います。
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