相続放棄をしたら代襲相続は起きない!仕組みをわかりやすく解説

被相続人が亡くなって相続が開始される時点で、被相続人の子が亡くなっていたり、相続欠格や廃除によって相続権を失っている場合、その子の子(孫)が代わりに相続します。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。

ここで、被相続人が多額の借金を抱えており、プラスの財産よりマイナス財産が多いケースで、被相続人の子が存命中に相続放棄をした場合、孫は被相続人の負の遺産を代襲相続してしまうのでしょうか。

結論から言いますと、被相続人の子が相続放棄をした場合には代襲相続が発生せず、孫は被相続人の遺産を相続しません。つまり、被相続人の借金を引き継がないようにするために孫が何らかのアクションを起こす必要は一切ありません。

この記事では、相続問題に強い弁護士が、上記内容に加え、相続放棄と代襲相続との関係や仕組みについてわかりやすく解説していきます。

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相続放棄をしても代襲相続は発生しない

相続放棄とは、相続人が、一切の遺産相続を放棄する意思表示のことをいいます。遺産相続は、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになるため、プラスの財産よりも借金などの債務の方が大きいと分った時点で相続放棄が利用されることがほとんどです。

そして、冒頭でも述べたように、相続人が相続放棄をしても代襲相続は生じません

代襲相続に関する規定である民法887条2項にも、「相続人が被相続人より先に死亡した、廃除された、相続欠格により相続権を失った場合に、相続人の直系卑属が代襲相続する」と書かれており、相続人が相続放棄をした場合に代襲相続が起きるとはどこにも書かれていません

なぜなら、相続放棄の規定である民法939条で「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と書かれており、相続人が相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになるので、ありもしない相続権が下位である相続人の子(孫)に移ることがないからです

相続放棄で相続権は次順位の相続人に移る

相続人が相続放棄をすると、法律で定められた相続順位に従って別の相続人が相続することになります。

たとえば、Aさんに息子が一人、孫一人、兄弟一人、甥が一人いるとします。Aさんが死亡すれば第一順位である息子が相続人となりますが、息子が相続放棄をすれば(これまで説明してきたように)息子の子(孫)は代襲相続しませんので、次順位の相続人はAさんの兄弟です。ここでAさんの兄弟も相続放棄をすれば、その兄弟の子(甥)も代襲相続は発生しないため相続人不存在となります。

なおこのケースで、Aさんが死亡する前に兄弟が亡くなった場合には、甥は通常通り代襲相続しますので、Aさんが残したものがプラスの財産よりもマイナス財産(借金)が上回っていた場合には、相続放棄の手続きをとらなくてはなりません。もし放置して3ヶ月の期間を過ぎれば、被相続人であるAさんの借金を引き継ぐことになってしまうからです。

相続放棄と代襲相続の関係

代襲相続人は相続放棄ができる

代襲相続人の地位になったとしても、被代襲者の相続財産について相続放棄をすることができるのは、通常の相続の場合と同様です。

したがって、父親が先に死亡して後、祖父が死亡した場合、孫は代襲相続人となります。この場合孫は、父親の相続に関して相続放棄することも祖父の相続に関して相続放棄することもどちらもできるのです。

祖父の遺産だけを相続することもできる

父親の財産を相続放棄したうえで祖父の相続財産のみを代襲相続することはできるか、という問題を考えてみましょう。

結論からいうと、できます。

相続は被相続人ごとに発生するため、相続放棄についても被相続人ごとに判断する必要があります。過去に「父親については放棄しているのに、祖父については相続するというのは矛盾行為だ」などと指摘を受けることはどこからもありません。

父親の相続財産と祖父の相続財産については、相続人の地位に立ったものが別々に判断することができるのです。

父親が借金を残して死亡した後、祖父も借金を残して死亡したケース

それでは父親が借金を残して死亡した場合、まず相続人である子は父の借金を引き継がないようにするために、父を被相続人とする相続について相続放棄することになります。

その後祖父が死亡し、この祖父にも借金が残っていた場合を考えてみましょう。

父親については相続放棄によってはじめから相続人でないことになります。それでは祖父を被相続人とする相続については、改めて相続放棄の手続きが必要なのでしょうか。

結論からいうと、祖父の借金を引き継がないようにするためには、改めて相続放棄の手続きを行う必要があります。

この場合も、前述のとおり祖父の相続発生時点で父がすでに亡くなっているため代襲相続が発生することになります。

したがって、祖父の借金を相続しないようにするには、祖父の相続について相続放棄をする必要があります。

以上よりこの事案では、父親と祖父のそれぞれについて個別に相続放棄をすることで、父親と祖父それぞれの借金を引き継がずに済むことになります。

父親が資産を残して死亡し、祖父が借金を残して死亡したケース

それでは次に、父親が資産を残して死亡した場合について考えてみましょう。

相続財産について積極財産(権利)の方が消極財産(義務)より多い場合は、父の相続人である子は放棄せずに相続する方がメリットが多いでしょう。そのため子は父の相続について相続放棄はせずに単純に相続することになります。

そしてその後、祖父が死亡し借金を残していた場合には、前述のとおり代襲相続によって孫が相続人となります。

父親を相続することにした子(祖父から見ると孫)は、祖父の相続人の地位により相続放棄することができるのでしょうか。

この場合も孫は祖父の相続に関して相続放棄の手続きを行うことができます。

したがって、このケースで孫は自身の父親の財産については相続し、祖父の借金については相続放棄をすることができるのです。

死亡した父親の借金を相続放棄し、その後祖父が資産を残して死亡したケース

例えば、被相続人である祖父をX、相続人である父をY(Xの子供)、相続人の子供(Yの子供でありXの孫)をZとします。

親であるYが多額の借金を残して他界したため、その子供Zは相続放棄をしました。その後、祖父であるXが死亡した場合、ZはXの財産を代襲相続できるのかが問題となります。

先で説明したように、「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と民法939条に規定されています。

これは、Zは親であるYの相続を放棄した時点で初めから相続人ではなかった、つまりは、Zは祖父であるXが死んだ時点で親Yの相続人ではないのだから、Yの相続権がZに移行しない(つまりは代襲相続が生じない)のではないかという解釈が生じるためです。

しかし、結論を言えば、孫であるZは祖父Xの財産を代襲相続できます

なぜなら、民法939条の条文では、「”その相続に関しては”、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されています。つまり、父親Yの相続に関してはたしかにその子供Zは相続人ではなくなったけれども、あくまでも父親の相続に関してのみのことであり、祖父との代襲相続の関係にまでは影響を及ぼさないからです。

借金だらけの親の相続を放棄したがために、祖父母のプラス財産まで引き継げないとなれば、代襲相続の趣旨を蔑ろにすることになりますので妥当な結論と言えるでしょう。

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