- 「親の借金を相続して払い続けるなんてまっぴらだ」
- 「面倒な財産争いに一切関わりたくない」
- 「うちは経済的に困っていないから、他の兄弟がもらえる財産を増やしてあげたい」
そんな希望を叶えてくれる”相続放棄”ですが、きっちりと必要な書類を揃えて手続きを踏まなければ、一定期間経過後に相続したことになってしまいます。
プラスの財産ならまだしも、借金を相続してしまったら目も当てられません。
そこでここでは、相続問題に強い弁護士が、相続放棄の必要書類や取得方法、提出方法などを中心にわかりやすく解説していきます。
「自分のケースではどの書類を集める必要があるのか」を簡単に知ることができますので、ぜひご一読ください。
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目次
相続放棄をする場合に必ず準備する必要書類
相続放棄をする人(以下、「申述人」といいます)が必ず準備しなくてはならない必要書類は以下の5つです。
- ①相続放棄申述書
- ②相続放棄をする人の戸籍謄本
- ③被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- ④収入印紙
- ⑤切手
①相続放棄申述書
相続放棄申述書とは、誰かが亡くなって相続人になった人が、「自分は相続したくない」と考えた場合に、家庭裁判所に提出しなければならない書類です。
家庭裁判所の窓口でもらうこともできますが、裁判所のサイトからダウンロードすることもできます。
②申述人の戸籍謄本
戸籍謄本とは、別名、「戸籍全部事項証明書」と呼ばれており、自分の戸籍に記載されている全員の、出生や死亡、親子関係や婚姻関係などを証明するものです。
これは、被相続人と申述人の関係性を証明するために必要な書類ですので、一個人の情報だけが載っている「戸籍抄本」を間違えて準備しないようにしてください。
申述人の本籍所在地の市町村役場で取得できます。1通あたり450円程度で、郵送での取り寄せも可能です。
③被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
相続放棄の申し立ては、被相続人の最後の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所に対して行う必要があります。
そのため、管轄裁判所に対して、「被相続人が亡くなった時、あなた方の管轄するエリア内に住所地がありましたよ」という証明が必要です。
その証明に必要なのが、被相続人の住民票の除票、または、被相続人の戸籍の附票です。どちらでも構いません。
住民票の除票は、被相続人の最後の住民票上の住所地にある市町村役場で取得できます。
戸籍の附票は、被相続人の本籍所在地の市区町村役場で取得できます。
どちらも1通あたり350円程度の発行手数料で、郵送での取り寄せも可能です。
④収入印紙
相続放棄の手数料として、800円分の収入印紙が必要で、相続放棄申述書に貼る形で納付します。
800円分であれば、どのような組み合わせ(800円一枚、400円2枚、200円4枚など)でも構いません。
法務局や郵便局のほか、金券ショップやコンビニでも購入できます。また、家庭裁判所内の売店で売っていることもありますが、各裁判所によって異なりますので事前確認が必要です。
⑤切手
相続放棄の申し立て後に、家庭裁判所から申述人に郵便で通知を送る時に使う郵便切手を、申し立て時に提出する必要があります。
提出する郵便切手の額は家庭裁判所によって異なりますので、各地の裁判所のページから管轄の家庭裁判所を探して電話で問い合わせましょう。
被相続人と申述人との関係によって必要となる書類
上で紹介した、「相続放棄をする場合に必ず準備する必要書類」に加え、相続放棄をする人と被相続人との関係によって揃えなくてはならない書類があります。
幾つかのケースに分かれますので確認していきましょう。
配偶者が相続放棄をするケース
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要になります。
ただし、配偶者が申述人である場合は、相続放棄で必ず準備する必要書類である「申述人の戸籍謄本」がその役目を果たせます。
通常、配偶者は被相続人と同じ戸籍に入っているため、配偶者の戸籍謄本に被相続人の死亡の記載がされているからです。
そのため、配偶者が相続放棄をするケースでは、「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」を別途揃える必要はありません。
子供が相続放棄をするケース
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本が必要になります。
ただし、子供が小さい、または、独身などで親である被相続人の籍から抜けていない場合には、配偶者が相続放棄をするケースと同様に、申述人である子供の戸籍謄本に「被相続人の死亡の記載」がされていますので、別途揃える必要はありません。
孫(代襲相続人)が相続放棄をするケース
孫が代襲相続人の立場で相続放棄をする場合は、「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」に加え、「被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本」を準備する必要があります。
代襲相続とは、例えば、被相続人の死亡よりも前に、生きていれば相続人となる予定であった被相続人の子供が死亡した場合、その死亡した子供の子供(被相続人から見て孫)が、死亡した子供(孫から見れば自分の親)に代わって相続権を引き継ぐ制度です。
このケースでは、被相続人の子供を被代襲者、孫を代襲相続人(代襲者)と呼びます。
そして、代襲相続人である孫が相続放棄をしたいと考えた場合、代襲相続が発生している状況を証明するために、被代襲者が死亡していることがわかる書面が必要となるのです。
親や祖父母(直系尊属)が相続放棄をするケース
親(直系尊属)は第二順位の相続人です。
この第二順位の者が相続をする状況は、被相続人に、第一順位である子供(および代襲相続人である孫等の直系卑属)がいないか、既に全員死亡している場合です。
親が、第一順位である子供(および代襲相続人)が不存在であることを証明するための具体的な書類としては、
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の子供(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
の2つが必要となります。
なお、被相続人の親(父母)が既に死亡している場合は祖父母が相続人となりますが、祖父母が相続放棄をするときは、上記2つの書類に加え、被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本が必要となります。
「出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」の取得方法
被相続人や、被相続人の子供の「出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」を取得する必要があるケースでは、まずは死亡時の本籍地の役所で戸籍謄本を交付してもらいます。
その交付された戸籍謄本の内容から、その前の戸籍を順次遡ってゆき、出生時の戸籍謄本(正確には、”除籍謄本”や”原戸籍謄本”も含まれます)まで全て揃えなくてはなりません。
そこでまずは、死亡時の本籍所在地の役所で戸籍謄本を交付してもらう際に、「相続放棄で必要なので、出生まで遡れるだけの戸籍を出してください」とお願いします。
被相続人や被相続人の子供が、その本籍地で生まれ、結婚も転籍もせずにその地で死亡したのであれば、その役所で全ての戸籍が揃うこともあるでしょう。
ただしケースとしては稀ですので、交付された戸籍謄本でもっとも古い(出生に近い)ものを役所の担当者に見てもらい、次に取得すべき戸籍謄本を請求する役所について教えてもらいましょう。
兄弟姉妹や甥姪が相続放棄をするケース
兄妹姉妹は、第三順位の相続人となります。
この第三順位の者が相続をする状況は、被相続人に、第一順位である子供(及び代襲相続人である孫等の直系卑属)がいないか既に全員死亡している場合で、且つ、 第二順位である直系尊属(親や祖父母等)も死亡している場合です。
そのため、まずは自分よりも順位が先の相続人が死亡していることを証明する書類が必要です。具体的には以下の3つです。
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の子供(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
なお、被相続人の兄弟姉妹が既に死亡している場合は、その兄弟姉妹の子供(被相続人からみて甥姪)が代襲相続人となります。
甥姪が被相続人(甥姪からみておじ・おば)の相続を放棄するときは、上記3つの書類に加え、被相続人の兄弟姉妹(甥姪から見て親)の死亡の記載のある戸籍謄本が必要となります。
相続放棄の必要書類の提出方法
被相続人が死亡した時点の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要がります。相続人の住所地の管轄裁判所ではないので注意が必要です。
参考:裁判所の管轄区域を調べる
提出方法としては、必要書類を家庭裁判所に持参するか、郵送のどちらでも構いません。郵送の場合は、郵便事故で不着になる可能性も考慮して、配達状況の確認できる書留やレターパックで書類を送りましょう。相続開始を知ってから3ヶ月が経過すると相続放棄ができなくなりますので、書類が家庭裁判所に確実に届いたのかを確認する必要があるためです。
なお、原則的には提出した原本は返却してもらえませんので、後で書類を見返す必要が出てきた場合に備えて、提出前にコピーをとっておきましょう。
同時に複数の相続人が相続放棄する場合の書類は?
被相続人の複数の相続人が同時に相続放棄を行う時は、必要書類のうち被るものについては1部のみ提出すれば良いとされています。
例えば、両親と娘の3人家族で父親が亡くなった場合、配偶者である母親がまずは相続放棄の申述をすれば、後から申述する娘は、被相続人(父親)の戸籍謄本や住民票の除票は提出する必要はないということです。
相続放棄の必要書類の提出後の流れ
裁判所から相続放棄照会書が送られてくる
相続放棄の申述をすると、後日、家庭裁判所から「相続放棄照会書」という書面が郵送されてきます。
これに書かれている内容は、「あなたのお名前で、被相続人〇〇さんについての相続放棄が行われました。あなたの本当に意思を確認したいので、同封の回答書に必要事項を書き込み、〇日以内に当裁判所宛にご回答をお願いいたします」といったものです。この回答書を「相続放棄回答書」といいます。
相続放棄回答書に記載をして裁判所に返送
相続放棄回答書には、主に以下の質問事項が書かれています。
- 被相続人の死亡をいつ知りましたか?
- 申し立てはあなた自身が行いましたか?誰かに依頼しましたか?
- 申し立ては自分の意思によるものですか?
- 相続放棄をする理由は?
- あなた又は申述人(代理人が申述した場合)は遺産の全部または一部の処分や消費、隠匿をしたことはありますか?
要するに、第三者が本人になりすまして相続放棄を申述したり、本人が望まないのに相続放棄を無理強いさせられていないのかを裁判所が確認するために送ってくる書面です。
質問に対する回答を記載し、裁判所に返送しましょう。
裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く
回答書を返送し、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理すると、「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。これをもって相続放棄の申し立て手続きは完了となります。
この通知書は、第三者に対し、「私は相続放棄しましたよ」と伝えるために用いることができます。例えば、被相続人が債務を負っていた場合に、相続債権者に対して「私はもう相続人ではなくなったので、借金を相続していませんので払いませんよ」と主張するようなケースです。
ただし、この通知書は再発行してもらえませんので、原本は大切に保管し、コピーを使用するか、次に説明する「相続放棄申述受理証明書」を使用するようにしましょう。
必要に応じて「相続放棄申述受理証明書」を交付申請する
被相続人が借金を残して亡くなった場合、相続債権者によっては、相続放棄申述受理通知書のコピーではなく原本を渡すよう求めてくることもあります。
しかし、繰り返しとなりますが、相続放棄申述受理通知書は再発行が一切できないため、原本を渡してしまうと自分の手元には残りません。
そこでこのような場合は、家庭裁判所に対し、「相続放棄申述受理証明書」の交付申請をしましょう。発行してもらった証明書をもって相続放棄をしたことを相続債権者に主張できます。
また、この証明書は何度でも再発行可能ですので、再発行ができない”、相続放棄申述受理通知書”を紛失した場合でも、この証明書を発行すれば相続放棄の事実を誰に対しても証明できます。
弁護士に任せた方が良いこともある
相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に行わないと、例え負債の方がプラス財産を上回っていたとしても、その負債を相続してしまうことになります。
そのため、相続放棄の必要書類の収集、書類への記載、提出等を迅速に行う必要があります。
しかし、お仕事をされている方は平日の日中に役所に出向くことも難しいでしょうし、郵送で取り寄せるにしても複数の種類となると煩雑です。さらに相続放棄申述書への必要事項の記載も行わなくてはなりません。
書類集めや申述書への記載に時間をとられ、望まぬ相続で借金を背負ってしまっては取り返しがつきません。
時間的余裕がない、あるいは、書類の不備・申述書の書き間違え等で相続放棄の期限を過ぎてしまうことが心配である方は、弁護士に一任するのも一つの方法です。
弁護士に依頼して委任状を書くだけで、相続放棄の必要書類の収集や、相続放棄申述書の代筆、送付など、全て弁護士が代わりに行ってくれます。
もし、相続放棄の必要書類についてわからないことがある場合や、そもそも本当に相続放棄をした方がよいのか判断がつかない場合には、弁護士に相談して適切なアドヴァイスをもらいましょう。
当法律事務所では、遺産相続についてお悩みの方のご相談を24時間無料で受け付けております。親身誠実をモットーとしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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