
「実は妊娠していた」――別れた彼女から突然そう告げられたら、誰でも混乱するのが普通です。
しかし、すでに関係が終わっている相手だからといって、無視したり、曖昧な態度をとってしまうと、思わぬトラブルや将来にわたる法的責任に発展するリスクがあります。
中絶や出産の選択によって、男性側が負うべき法的な義務や対応は大きく異なります。また、認知・養育費・相続といった人生に関わる重大な問題にもつながりかねません。
この記事では、元カノから妊娠報告を受けた男性がとるべき正しい対応を、妊娠トラブルに強い弁護士の視点からわかりやすく解説します。
対応を誤れば取り返しのつかない結果になりかねません。この記事を最後まで読むことで、法的リスクを回避し、冷静かつ適切に行動するための判断材料を得ることができます。
なお、記事を読まれた上で「ご自身での対応は難しいかもしれない」と感じられた場合には、全国どこからでも無料でご相談いただけますので、ぜひ当事務所までお気軽にご連絡ください。
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目次
【相談内容】別れた彼女が妊娠していました…どうすればいいですか?
私は、28歳・会社員の男です。
3ヶ月前に別れた彼女から、突然「実は妊娠していた」と連絡がありました。驚きと戸惑いで頭が真っ白になりました。私たちがお付き合いしていたのは半年前から3ヶ月前のことで、避妊はしていましたが、まさかこのようなことになるとは夢にも思っていませんでした。
すぐに元カノに連絡を取り、今後のことを話し合いました。私は復縁するつもりは一切なかったので、正直にその気持ちを伝え、もし可能であれば中絶という選択肢も考えてほしいと伝えました。別れた彼女も当初は私の気持ちを理解してくれたのか、「私も中絶を考えている」というような返事をしてくれました。
しかし、数日後、元カノから再び連絡があり、「やっぱり産みたい。認知請求もしないし、養育費もあなたに請求するつもりはないから」と言われてしまいました。
彼女の意思が二転三転していることに、私は不安を感じています。
もし、元カノが中絶を選んだ場合、中絶費用は私が負担するべきなのでしょうか?中絶することになった場合、彼女に対して慰謝料のようなものを支払う必要はあるのでしょうか?
もし、別れた彼女が出産を選んだ場合、私は父親としてどのような法的責任を負うことになるのでしょうか?認知という手続きが必要になるのでしょうか?そして、養育費はやはり支払わなければならないのでしょうか?
さらに、もし私が元カノに示談金を支払い、「認知請求はしない」「養育費も請求しない」という内容の示談契約を結んだ場合、将来的に彼女から認知請求や養育費の請求をされる心配はなくなるのでしょうか?
【弁護士の見解】元カノが妊娠していた場合に男性が負う法的責任
元カノから突然「妊娠していた」と告げられた場合、男性側としては驚きや動揺とともに、今後どのような責任を負うことになるのか不安を感じる方も多いでしょう。特に中絶費用の負担や慰謝料の支払い義務、出産された場合の認知・養育費の問題など、法的な対応を誤ると重大なトラブルに発展する可能性もあります。
ここでは、妊娠・出産に関連して男性が負う可能性のある法的責任について、別れた彼女との関係を前提に、弁護士の視点から詳しく解説します。
中絶を選んだ場合の費用負担
女性が妊娠した場合、その選択肢の一つに中絶があります。
この中絶にかかる費用について、法律上明確な定めはありませんが、原則として男女双方が協力して負担することが公平であると考えられています。妊娠は一方的な行為によるものではなく、両者の同意に基づく性交渉によって生じた結果であるという考え方が根底にあるためです。
たとえば、元カノとの交際中に妊娠が発覚し、中絶を選択することになった場合、費用の分担についても冷静かつ丁寧に話し合う必要があります。
もっとも、具体的な負担割合については、個々の状況や話し合いによって決定されることが一般的です。
中絶に伴う慰謝料について
合意に基づいた性交渉の結果としての妊娠であり、女性が自らの意思で中絶を選択した場合、通常は男性に対して中絶による慰謝料を請求することは難しいと考えられます。なぜなら、妊娠・中絶という結果は、性交渉という男女双方の行為から生じたものであるため、一方にだけ法的な責任を負わせる根拠に乏しいからです。
しかし、例外的に、男性の発言や行動が、相手に精神的な苦痛を与えたと評価される場合には、慰謝料の支払いが命じられる可能性があります。
たとえば、男性が強引に中絶を強要したり、妊娠中の元カノに対して不誠実な対応を繰り返すなど、女性に精神的な苦痛を与えたと認められるケースでは、慰謝料を請求される可能性があります。
出産を選んだ場合の認知・養育費の義務
別れた彼女が出産を選択した場合、法的には、その子どもの父親である男性には、認知と養育費の支払いという重要な義務が発生する可能性があります。
まず、婚姻関係にない男女間に生まれた子どもは、父親からの「認知」がなければ法律上の親子関係が認められません。
もし男性が任意に認知を拒否した場合でも、元カノは家庭裁判所に対して認知を求める調停や審判を申し立てることができます(強制認知)。DNA鑑定などの科学的な証拠に基づいて親子関係が認められれば、裁判所は男性に対して認知を命じることになります。
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認知が成立した場合、男性は法律上の父親として、子どもが経済的に自立するまで養育費を支払う義務を負います。養育費の金額は、家庭裁判所の養育費算定表を参考に、具体的な金額が決定されることが一般的です。
さらに、認知された子どもは、法律上の親子関係に基づいて、父親の法定相続人となります。つまり、父親が亡くなった場合、その遺産を相続する権利を持つことになるのです。
この点は、将来ご自身が別の方と結婚して家庭を持った際に、大きな問題へと発展する可能性もあります。毎月の養育費によって家計に影響が及ぶだけでなく、いずれは現在のご家族以外に相続財産が分与される可能性があることを、あらかじめ理解しておく必要があります。
妊娠が事実であるならば、出産後に法的な責任が生じるのは避けられない可能性が高く、早い段階での対応が非常に重要です。状況に応じた適切な判断ができるよう、お早めに弁護士にご相談ください。
「認知請求しない・養育費請求しない」という示談の効力
元カノが「認知請求はしない」「養育費を請求するつもりはない」という発言があったとしても、 直ちにそのような言葉が法的な拘束力を持つとは限りません。
仮に、男性と元カノの間で「認知請求をしない」「養育費も請求しない」という内容の書面による示談書が作成されていたとしても、その内容が未成年の子どもの利益を著しく害するものである場合(例えば、父親が養育費の支払いを一切放棄するような内容)、公序良俗に反するものとして無効と判断される可能性があります。
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特に、子どもの権利に関わる事項については、法律上の保護が強くはたらく傾向にあり、親の一方的な都合で子の利益が侵害されないように配慮されます。
したがって、出産しても何も請求しないという別れた彼女の発言や、そのような内容の合意があったとしても、それを鵜呑みにすることは極めて危険です。
将来的に、元カノの気持ちが変わったり、子どもの成長に伴い経済的な支援が必要になったりした場合、事後的に認知請求や養育費の請求を受ける可能性は十分にあります。
【弁護士のアドバイス】元カノが妊娠していたと告げてきた場合の対応方法
元カノから「妊娠していた」と突然告げられた場合、感情的な混乱から冷静な判断を欠いてしまう方も少なくありません。しかし、曖昧な対応や誤った言動をしてしまうと、法的トラブルや金銭的リスクを招く可能性があります。 このセクションでは、別れた彼女から妊娠報告を受けた際に男性が取るべき対応について、弁護士の視点から整理します。対応のポイントは次の通りです。
- ① 妊娠の事実確認を求める
- ② 曖昧な態度をとらず、復縁の意思がないことを明言する
- ③ 必要に応じて中絶費用の全額負担も検討する
- ④ 将来のトラブルを避けるため、弁護士に相談する
①妊娠の事実確認を求める
まず最も重要なことは、妊娠が事実であるかどうかを確認することです。
中には元カノへの未練や、別れに対する感情的な動機から、虚偽の妊娠を申し立てるケースや、妊娠の時期や経過が事実と異なるケースも存在しています。
そのため、元カノに対して、妊娠の事実を示す客観的な証拠の提示を求めることが必要です。
具体的には、産婦人科を受診し、医師の診断書を提出してもらうよう依頼するのが適切でしょう。診断書には、妊娠週数や胎児の状況などが記載されており、妊娠の真偽や時期を確認する上で重要な情報となります。
今回のケースでは、別れてから3ヶ月後に妊娠の報告があったという点で、その間に他の男性と関係を持った可能性も否定できません。
このような状況においては、出生前DNA鑑定という選択肢も検討に値します。出生前DNA鑑定は、妊娠中の母親の血液中に含まれる胎児のDNAと、父親と思われる男性のDNAを照合することで、胎児の父親を確認する検査のことです。
今後の対応を検討するためにも、相手方に検査への協力を求めましょう。
②曖昧な態度をとらず、復縁の意思がないことを明言する
妊娠の事実が確認できたとしても、もし相談者に元カノとの復縁の意思が全くないのであれば、その旨を明確に伝えることが将来的なトラブルを避ける上で非常に重要です。
曖昧な態度は、将来的な認知請求や養育費請求における交渉を不利に進めてしまう要因となりかねません。相手に無用な期待を持たせることは、法的・心理的トラブルにつながる可能性があります。
したがって、別れた彼女に対しては、妊娠という事実を受け止めつつも、復縁の意思がないことを、感情的な言葉遣いは避けつつも、冷静に、かつ明確・率直に伝えるべきでしょう。
③中絶費用の全額負担を検討する
前述の通り、一般的には、中絶費用は男女双方で折半することが公平と考えられますが、もし元カノが経済的に厳しい状況にあり、費用の折半が難しいようであれば、相談者側が全額を負担することも検討してください。
今回のケースでは、すでに妊娠から3ヶ月が経過しており、母体保護法の規定により、妊娠22週を超えると原則として中絶手術は認められなくなります。時間的な制約がある中で、費用の負担割合について交渉が長引けば、その間に元カノの意思が変わってしまう可能性も否定できません。
もし相談者が相手に中絶を強く希望しているのであれば、費用の全額負担を申し出ることは、手続きの迅速化を図り、不要なトラブルを避けるための有効な戦略と言えるでしょう。
④弁護士に相談する
今回のような、感情的な対立が深まりやすく、 法的にも複雑な要素を含む状況においては、早期に専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、中立的な立場から法的な観点に基づいた適切なアドバイスを提供し、トラブルの円満な解決をサポートすることができます。
弁護士に相談することで、まず、妊娠の事実確認に関する適切な進め方についてアドバイスを受けることができます。
また、中絶を選択した場合の費用負担や慰謝料の問題、出産を選択した場合の認知や養育費の義務など、具体的な金銭的な対応について詳細な説明を受けることができます。そして、もし当事者間で示談交渉を行うことになった場合には、弁護士に有効な示談書の作成や、合意内容の妥当性について適切なアドバイスやサポートを受けることもできます。
早期に弁護士に相談することで、将来的なトラブルのリスクを軽減することが期待できます。
元カノの妊娠でお悩みの方は当事務所までご相談を
別れた彼女から突然妊娠を告げられた場合、感情の整理がつかないまま対応を誤ってしまうと、ご自身の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に、中絶費用の負担や慰謝料、認知・養育費など、将来にわたって重い責任を問われる可能性がある問題だけに、早い段階での冷静な判断と、法的に正しい対応が欠かせません。
当事務所では、これまでにも同様のご相談を多数受けており、妊娠報告を受けた男性側の立場に立ったサポートを行ってきました。親身かつ誠実な姿勢でお話を伺いながら、ご希望に応じて示談交渉や書面作成まで、弁護士が全力で対応いたします。
対応を誤れば、あなたの人生に取り返しのつかない影響を与えることもあります。
記事を読まれた上で、「自分では対応が難しいかもしれない」と感じられた場合には、全国どこからでも、無料相談を受け付けております。まずはお気軽に当事務所までご相談ください。
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