ネットの誹謗中傷を名誉毀損罪で刑事告訴する流れを弁護士が解説

「ネットで誹謗中傷をしてきた相手を刑事告訴して、きちんと処罰してほしい」「でも、名前も分からない相手を本当に訴えられるのだろうか」と悩んでいませんか。

書き込みが名誉毀損罪や侮辱罪にあたれば、刑事告訴することができます。これらの罪では、告訴がなければ相手は起訴されません。相手が匿名でも、投稿者を特定するための手続きがあります。ただし、告訴できる期間は犯人を知った日から6か月に限られます。

この記事では、ネット上の名誉毀損や侮辱の問題に詳しい弁護士が、次の点について解説します。

  • 刑事告訴できる書き込み
  • 告訴の手続きの流れと期限
  • 告訴状が受理されないときの対処法
  • 弁護士に依頼するメリットと費用

お読みいただくことで、ご自身のケースで告訴できるかを見極め、今から何を準備すべきかを整理できます。

なお、ネットの誹謗中傷でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。

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誹謗中傷で成立する罪と刑事告訴できる場合

刑事告訴とは、犯罪の被害にあった人などが、警察や検察に被害の内容を伝えたうえで、犯人への処罰を求めて申し出ることをいいます。

インターネット上の誹謗中傷は、内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪にあたります。この2つは親告罪(告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪)とされているため(刑法232条1項)、相手の処罰を望むなら刑事告訴が欠かせません。

刑事告訴は被害者本人のほか、被害者が未成年であれば親権者などの法定代理人も行えます(刑事訴訟法230条・231条1項)。会社が被害を受けた場合は、会社が被害者として告訴し、代表者が手続きを行います。

誹謗中傷で問題になる主な罪と、起訴に刑事告訴が必要かどうかは次のとおりです。

罪名 処罰される行為 法定刑 親告罪か
名誉毀損罪(刑法230条) 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 親告罪(起訴には告訴が必要)
侮辱罪(刑法231条) 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱する 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 親告罪(起訴には告訴が必要)
信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条) うその情報を広めたり、人をあざむく手段を使ったりして、人の信用を傷つけたり、業務を妨害したりする 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 親告罪ではない(告訴がなくても起訴できる)
脅迫罪(刑法222条) 生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて脅す 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 親告罪ではない(告訴がなくても起訴できる)

※2025年6月1日施行の刑法改正により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に統一されました。

名誉毀損罪とその成立要件

名誉毀損罪が成立するには、次の3つの要件がそろう必要があります(刑法230条1項)。

  • 公然と行われたこと
  • 事実を摘示したこと
  • 人の名誉を毀損したこと

誰でも見られる掲示板やSNS、ブログへの誹謗中傷の書き込みは「公然と」にあたります。「事実」とは具体的な事柄のことで、真実かどうかは問われません(条文は「その事実の有無にかかわらず」と定めています)。「人の名誉を毀損する」とは、その人の社会的評価を下げることをいいます。

たとえば、実名を挙げて「カルト団体に入っている危険人物だ」「会社を辞めたのは女性関係が原因だ」などと書き込まれた場合は、内容の真偽にかかわらず名誉毀損罪にあたり、刑事告訴できる可能性があります。

もっとも、公共の利害に関わる事実を専ら公益を図る目的で示した場合や、公務員・選挙の候補者に関する事実を示した場合で、真実だと証明されたときは罰せられません(刑法230条の2)。

関連記事:源氏名・伏字・ハンドルネームへの誹謗中傷は名誉毀損になる?

侮辱罪とその成立要件

侮辱罪は、具体的な事実を示さなくても、公然と人を侮辱すれば成立します(刑法231条)。

たとえば、X(旧Twitter)などのSNSで名前を挙げて「バカ」「気持ち悪い」と書き込まれるような、事実を伴わない誹謗中傷が侮辱罪の対象になりえます。

法定刑は名誉毀損罪より軽く定められています。侮辱罪も親告罪で、刑事告訴がなければ起訴されません。

業務妨害罪や脅迫罪は親告罪ではない

お店の口コミ欄に「賞味期限切れの食材を使っている」などのうその情報を書き込めば、信用毀損罪や業務妨害罪(刑法233条)にあたる可能性があります。「家に行って痛い目にあわせる」のように、生命や身体などに害を加えると告げる誹謗中傷の書き込みは、脅迫罪(刑法222条)の対象になりえます。

これらも刑事告訴できますが、親告罪ではないため、告訴期間(犯人を知った日から6か月)の制限はなく、告訴がなくても起訴できます。

誹謗中傷を刑事告訴する手続きの流れ

誹謗中傷の刑事告訴は、おおむね次の流れで進みます。

誹謗中傷を刑事告訴する流れ(書き込みの証拠の保存→投稿者の特定→告訴状の提出→捜査と起訴・不起訴の判断)

書き込みの証拠を保存する

まずは、誹謗中傷の書き込みが消される前に証拠を残します。投稿が表示された画面をスクリーンショットなどで保存・印刷し、URL・投稿日時・投稿者のアカウント名が分かるようにしておきましょう。

保存した画面は、刑事告訴の際に告訴状に添える証拠になるほか、投稿者を特定する手続きでも使います。

匿名の投稿者を特定する

誹謗中傷の投稿者が匿名の場合は、サイトの運営者やプロバイダ(インターネット接続業者)に投稿者の情報を開示するよう求める「発信者情報開示請求」を行い、氏名や住所を特定します。運営者などが任意に開示しない場合は、裁判所の手続きを使います。

氏名が分からないまま「氏名不詳」として告訴すること自体は法律上可能です。ただ、相手が分からない状態では捜査が進みにくく、実務では投稿者を特定してから刑事告訴するのが一般的です。

投稿者を特定する具体的な手続きは「発信者情報開示請求とは?開示命令による手続きを解説」で詳しく解説しています。

告訴状を作成して管轄の警察署に提出する

告訴状に法律で決まった書式はありませんが、一般的には次の事項を記載します。

  • 告訴人(告訴する人)の住所・氏名
  • 被告訴人(告訴される相手)の住所・氏名
  • 告訴の趣旨(処罰を求める罪名)
  • 告訴事実(いつ、どのサイトに、どんな誹謗中傷が書き込まれたか)
  • 証拠(書き込みの画面を印刷したものなど)

告訴状には年月日を記載し、告訴人が署名押印する必要もあります(刑事訴訟規則60条)。記載事項の詳細は「告訴・告発の方法|告訴状を受理してもらうための5つの注意点とは」をご覧ください。

提出の前に、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口へ事情を伝えておくと、何を準備すればよいかが分かり、手続きを進めやすくなります。窓口は警察庁の都道府県警察連絡先一覧から確認できます。

提出先は、実務では被害者の住所地や犯罪地などを管轄する警察署とするのが一般的です。なお、犯罪捜査規範は、管轄区域内の事件かどうかを問わず、警察に告訴の受理を義務づけています(63条1項)。

刑事告訴は検察官に対して行うこともでき、口頭ですることも認められています(刑事訴訟法241条1項)。

警察の捜査を経て検察官が起訴・不起訴を決める

告訴を受けた警察は、告訴に関する書類と証拠物を速やかに検察官へ送付する義務を負います(刑事訴訟法242条)。警察の捜査の中で、誹謗中傷をした投稿者が逮捕されることもありますが、逮捕されずに捜査が進むことも少なくありません。

検察官は捜査の結果をふまえて起訴・不起訴の処分を決め、告訴人に通知します(同法260条)。不起訴処分になったときは、請求すれば理由を告げてもらえます(同法261条)。

刑事告訴をしても、相手を起訴まで進めるのは難しい場合があります。令和7年(2025年)の検察統計では、ネット上に限らない「名誉毀損」の区分全体で、検察官が起訴した人は434人、不起訴とした人は1,233人で、起訴率は26.0%でした。不起訴には、起訴猶予や嫌疑不十分のほか、告訴の取消しなどで起訴の条件を欠いた場合も含まれます。

なお、告訴は、相手が起訴されるまでは取り消せますが、取り消した人は、同じ事件についてあらためて告訴することはできません(同法237条)。

刑事告訴はいつまでできる?告訴期間と公訴時効

刑事告訴には、「告訴期間」(告訴ができる期間)と「公訴時効」(検察官が起訴できる期間)という2つの期限があります。

名誉毀損罪や侮辱罪などの親告罪は、原則として、犯人を知った日から数えて6か月を過ぎると告訴はできません(刑事訴訟法235条)。「犯人を知った」とは、氏名や住所まで知る必要はないものの、ほかの人と区別して特定できる程度に認識することをいうとした裁判例があります。匿名の投稿では、発信者情報開示請求などで投稿者が誰か分かった時点が、起算点の目安になると考えられています。

ネット上の誹謗中傷の書き込みについては、削除されずに閲覧できる状態が続く間は犯罪が終わらず、告訴期間も進まないとして、犯人を知ってから6か月を過ぎた告訴を有効と認めた裁判例もあります。ただし、事案によって判断が変わりうるため、原則どおり6か月以内に告訴するのが安全です。

公訴時効は犯罪行為が終わった時から進み、名誉毀損罪・侮辱罪ともに3年です(同法250条・253条)。3年が過ぎると公訴時効が完成し、検察官は起訴できなくなります。前述の裁判例は、書き込みを閲覧できる状態が続く間は犯罪が終わらないとしており、公訴時効の起算点には争いがあります。念のため、投稿時から数えて3年を期限と考えておきましょう。

さらに、投稿者の特定に必要なIPアドレスなどの通信記録(ログ)の保存期間は、プロバイダなどで3か月から半年ほどが目安とされています。ログが消えると投稿者を特定できなくなるおそれがあるため、誹謗中傷の書き込みに気づいたら早めに動くことが大切です。

告訴状が受理されないときの対処法

犯罪捜査規範では、警察は告訴を受理しなければならないと定められています(63条1項)。

しかし実際には、書類や証拠の補充を求められ、すぐには受理されないこともあります。誹謗中傷の刑事告訴が受理されない主な理由には、次のようなものがあります。

  • 書き込みがどの罪にあたるのかが整理されていない
  • 投稿の画面や日時などの証拠が足りない
  • 損害賠償など民事上の問題として受け取られている

こうした場合は、該当する罪名や処罰を求める意思を明確にしたうえで足りない証拠を補って告訴状を出し直す、検察官に刑事告訴する、弁護士に依頼して告訴状と証拠を整えてもらう、といった対応が考えられます。

告訴状を出しても受理されないときや捜査が進まないときの打開策は「ネットの誹謗中傷で警察が動かない理由と3つの対処法を解説」で紹介しています。

刑事告訴と被害届・民事の損害賠償請求との違い

誹謗中傷への法的な対応には、刑事告訴のほかに、被害届(被害にあった事実を警察に届け出る書類)の提出と、投稿の削除や損害賠償を求める民事の請求があります。それぞれの違いは次のとおりです。

項目 刑事告訴 被害届 民事の請求
目的 犯人の処罰を求める 被害にあった事実を知らせる 投稿の削除や損害賠償を求める
出す先 警察・検察 警察 相手・サイト運営者・裁判所
期限 親告罪は犯人を知った日から6か月 届出の期限の定めはない 損害賠償は損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年のいずれか早い方(民法724条)
得られる結果 起訴されて有罪判決を受ければ刑罰が科される 名誉毀損罪・侮辱罪では、被害届だけでは起訴されない 削除や金銭の支払いが認められる(刑罰は科されない)

被害届は被害の事実を知らせるもので、処罰を求める意思表示は含みません。警察は被害届を受け付けなければなりませんが(犯罪捜査規範61条1項)、受け付けたからといって捜査が義務づけられるわけではありません。名誉毀損罪や侮辱罪で相手の処罰を求めるなら、被害届ではなく刑事告訴が必要です。警察に被害を届け出る手順は「被害届の出し方と書き方は?受理されない時の対処法も解説」で解説しています。

民事の請求は刑事告訴と目的が違うため、並行して進められます。

民事の請求とは別に刑事告訴をする意味は、相手に刑事罰という形で責任を問えることと、警察や検察が捜査によって事実を調べることにあります。捜査の対象になること自体が、書き込みの抑止につながる場合もあります。

刑罰とは別に、相手に金銭の支払いを求める場合は「名誉毀損の慰謝料相場はいくら?請求できる条件を弁護士が解説」をご覧ください。

誹謗中傷の刑事告訴を弁護士に依頼するメリットと費用

誹謗中傷の刑事告訴はご自身でも行えますが、弁護士に依頼すると、主に次のようなサポートを受けられます。

  • どの罪にあたるかの検討や、告訴状・証拠の整理を頼める
  • 警察への相談や告訴状の提出の際のやり取りを任せられる
  • 発信者情報開示請求による投稿者の特定から刑事告訴まで、まとめて相談できる

弁護士に依頼すれば必ず受理されるというものではありませんが、罪の要件に沿って事実と証拠を整理することで、警察に被害の内容を正確に伝えやすくなります。

当事務所の費用は、初回相談が原則無料です。発信者情報開示請求(仮処分・訴訟)は着手金22万円~・報酬金22万円~です。刑事告訴の費用は、事案の内容をうかがったうえで個別にご案内します。

ネットの誹謗中傷で刑事告訴をお考えの方へ

誹謗中傷の書き込みで相手の処罰を求めるには、どの罪にあたるかを見極め、期限内に証拠をそろえて刑事告訴することが大切です。投稿者の特定に必要な通信記録は3か月から半年ほどで消えることがあり、犯人が分かってからの告訴期間は6か月です。

証拠の整理や投稿者の特定、告訴状の作成は、弁護士に頼むこともできます。

書き込みを目にするたびに傷つき、「このまま泣き寝入りはしたくない」と感じている方もいるでしょう。すでに書き込みが広まっている場合や、相手が誰か分からない場合でも、早めに動くことで取れる手段は広がります。

当事務所はネット上の誹謗中傷問題に豊富な実績があり、刑事告訴から削除請求・損害賠償請求までご相談いただけます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

誹謗中傷の削除請求 発信者情報開示請求 名誉毀損・侮辱 風評被害対策 リベンジポルノ 慰謝料請求
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
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