SNSなどでのネットいじめはなぜ起こる?原因と対策を弁護士が解説

今やインターネットを利用していない人はいないほどネットは普及してきました。誰でもパソコンやスマホがあれば簡単にネットに繋げる上、無料でTwitter(X)やフェイスブック、インスタグラム、LINEなどのSNSを利用できることから、10代や20代の学生の間でもインターネットは普及しています。

その弊害として「ネットいじめ」と呼ばれるいじめの形態も広がってきました。ネットいじめとは、ネットの掲示板やSNSなどで誹謗中傷などの嫌がらせを受けたり、勝手に自分と間違われるなりすましアカウントを作られて嫌がらせをされたりするものです。

実際にいじめられて自殺や殺人などの被害に遭ったケースを見ても、LINEでのトラブルなどネットが関連しているケースは多くなっています。

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ネットいじめの事例

ネットが普及する前も、悲しいことですがいじめはありました。しかし、ネットの普及によっていじめの形態は変わってきています。以前であれば、集団で無視したり暴行したりするなどの有形力が働いていましたが、昨今ではTwitter(X)やLINE、学校裏サイトなど、保護者や教師には決して見えないようなところがいじめの温床となるなど、その形態はより陰湿化していると言われています。

それでは、ネットいじめとはなにか、具体的な事例をもとに見ていきましょう。

事例1.ライン既読無視、ライン外し

ネットいじめとして最近特に問題になっているのが、LINEです。LINEはグループを作ることもできれば、個人でやり取りをすることもでき、メッセージのやり取りだけではなく通話も無料で行えることから爆発的に普及しました。

このLINEがネットいじめに大きく関わっています。例えば、同級生の間でLINEグループを作り、その中で誰か特定の人を吊るし上げて「うざい」「キモい」「しね」などの悪口を書き込んだり、グループから退会させて(LINE外し)陰で誹謗中傷をしたりといったケースが報告されています。

このほか、LINEの機能としてメッセージを開いたら「既読」と表示されますが、既読になっているのに返事を送らないと「既読無視した」としていじめの対象になるケースなどもあります。

参考:「既読スルー」「裏グループ」 追い詰められた女子生徒

事例2.学校裏サイトなどに誹謗中傷を書き込む

小中学校や高校には、それぞれ公式のホームページができていることが多いものですが、公式に作成されたものではなく、在校生が任意で作成した「学校裏サイト」も、ネットいじめの温床として問題視されています。

学校裏サイトは、多くの場合掲示板になっていて、パスワードを入れなければアクセスできないようにしているため、教師や保護者が見ることは困難です。また、調べようにも、検索エンジンにみつからないようにしていたり、パソコンからのアクセスを拒否する設定にしていたりと、見つかりにくいことが特徴です。

学校裏サイトでは、そのクローズ性も相まって、特定個人の誹謗中傷やプライバシー情報が晒されるなど、健全とはいえない利用のされ方をしていることも多くあります。

事例3.本人になりすましてトラブルを引き起こす

嫌がらせをしたい本人になりすますなどして送信元のメールアドレスを詐称してメールを送信する「なりすましメール」もネットいじめの一つです。

最近では、メール以外でも、嫌がらせをしたい相手の本名やあだ名でTwitterのアカウントを開設したり、Facebookを開設したりして、誹謗中傷に当たるような書き込みを重ねてあたかも本人がそのツイートをしているかのように見せかけるといった方法も見受けられます。

最近では、就職活動などでも、企業が応募者の本名で検索し、SNSを見てどんな人柄なのかなどを判断しているケースも増えていると言われています。

そんな中、勝手になりすましのアカウントを作り、本人のイメージが下がるような書き込みをすれば、何も知らない相手はそれがなりすましによるものだとは気づきません。その結果、希望した就職先から断られるといったこともありえます。なりすましは、極めて悪質だと言えるでしょう。

事例4.メールで悪口や誹謗中傷を送ってくる

メールやLINE、DMを使って誹謗中傷をそのまま本人に送りつけるという手段もネットいじめの一つの種類です。顔が見えず、電話などのように直接相手とコミュニケーションを取らないネットの世界では、どんどん自分の発言がエスカレートしていくことがあります。

また、何気無い一言であってもその温度が相手に伝わらない分、冷たい発言と取られがちでもあります。無機質なメールは、思った以上に相手にダメージを与えやすいのです。

また、メールやLINE、DMは、他の人が誹謗中傷の状況を目撃することができません。そのため、「言いたい放題」のことが言えてしまう怖さがあります。

ネットいじめの原因

スマートフォンが急速に普及したこと

独立行政法人の国立青少年教育振興機構の調査によると、中学生のスマホ所持率はおよそ7割、高校生となるとおよそ9割にも達します。

また、2017年現在、PCからのインターネット利用率とスマホからの利用率がほぼ肩を並べる状態になっているといわれています。特に学生はパソコンよりもスマホからのネット利用が多く、スマホへの依存症が社会問題化しているほどです。

さらに、上記調査によると、中学生のスマホ使用目的の約4割、高校生の約6割がSNSの利用ということが分かっております。

このようにスマートフォンの子供への普及と、学校の友達同士がSNSを介して連絡を取り合うのが常態化したことがネットいじめが急速に広まった最大の原因と言われています。

いじめはSNSなどでクローズ化して見つけにくい

まず、ネットいじめが蔓延化する原因の一番は表面化するのが遅いということ。ネット以外の一般的ないじめであっても、その多くは隠れたところで行われているため教師や家族が気づきにくい一面はありました。しかし、それでもやはりいじめの事実は漏れ聞こえてくるものです。

例えば、靴や制服などを隠される・あからさまに無視されているなどの状況に違和感を感じるクラスメイトもいるはずですし、教師も違和感には気がつきやすいものではないでしょうか。

しかし、SNSでのいじめや学校裏サイトでの誹謗中傷などのネットいじめは、その場でいじめている方が会話をしているわけではありません。それに声に出して対象者に誹謗中傷を浴びせるということもありませんので、一見わかりにくいことが多いのです。

そのため、後からネットいじめの事実を聞いた人が「まさかあの子がいじめられていたなんて」と驚くケースもあります。

子供はいじめのことを親に相談しにくい

いじめられていることを親に相談できる子供は多くありません。もしくは、一度は相談できたとしてもエスカレートしていくいじめに対してしっかりと声に出して「助けてほしい」と言える子供は少ないのです。

いじめられていることを家族に言ったことがばれたら何をされるかわからない、と報復に怯えてしまったり、家族を心配させたくないと考えて我慢してしまうことにより周囲の者にネットいじめが表面化しにくくなるのです。

ネットいじめにあっている子供に見られる兆候

  • 以前よりも落ち込んでいるように見える
  • 一人で孤独に過ごしている時間が増えた
  • 帰宅後、自室で隠れて泣いていることがある
  • 注意散漫でテレビやゲームにも集中できないようになった

上記のように一定期間に急激に感情が変化しているような場合には、子どもがトラブルに遭っている可能性があります。その原因はネットいじめかもしれません。

ただしネットいじめに遭っている子どもは精神的にショックを受けています。そのため原因を探るためにも一方的に追求することはせず、落ち着いた雰囲気の中で子どもが自発的に相談できる環境をセッティングしてあげましょう。

  • スマホやタブレットの画面を親に見せないように隠すようになった
  • 学校や人の多い集まりに行きたがらないようになった
  • SNSを頻繁にチェックするようになった
  • 以前よりインターネットを利用することを怖がっている様子である
  • スマホの通知やメッセージ音が頻繁に入るようになった
  • スマホを肌身離さず身に着けている

上記のように何かに恐怖心を抱いているような様子がある場合にも、原因はネットいじめかもしれません。そのような場合には、他の原因の可能性もありますが、何が怖いのか・何に困っているのか優しく尋ねてみましょう。

ネットいじめ対策方法

ネットいじめに遭ってしまっているとき、対策としてはいろいろな方法が考えられます。人によっては学校に訴えかけていじめをやめさせるよう要求することもあるかもしれません。SNSを使えないよう、子供に携帯電話を渡さないと考える人もいるかもしれません。

ネットいじめに対する対策についてはいろいろな方法がありますが、どの方法が最も優れているかということは残念ながらありません。ある対策法がこのケースには効果的だったとしても、他のケースではかえっていじめを深く潜らせてしまったというようなケースもあります。

正解はひとつではないということも、知っておきたいことのひとつです。

では、実際にネットいじめに遭ってしまったり、家族がいじめに遭っていることを知ったとき、具体的にはどんな対策を取ればいいかをまとめました。ネットいじめに対する対処法は知っておくだけでも役立ちます。

1.見つけたら証拠を保存

ネットいじめの現場を押さえた時には、証拠としてその書き込みを保存しておきましょう。誹謗中傷やいじめの証拠があれば、いろいろな場面で役に立ちます。

誹謗中傷に当たる書き込みの削除依頼をする時にも証拠が必要になりますし、名誉毀損罪や侮辱罪などで刑事的な責任を負わせたい時などにも必要です。その書き込みが誹謗中傷やいじめにあたるとわかるよう、前後の文脈が必要であれば、それも合わせて保存しておきましょう。

保存方法は、書き込みの画面をスクリーンショットで保存するというのが一般的です。可能な限り、URLと撮影日時が分かるよう、PCから保存をします。また、掲示板であれば、URLと撮影日時のほか、投稿者のID、番号、投稿日時などがわかるようにしておきます。

SNSでも、URLと撮影日時、アカウント名やアカウントのアイコン、投稿日時などがわかるよう、スクリーンショットを保存しましょう。

2.ネットいじめにあたる投稿の削除依頼

SNSや掲示板などで誹謗中傷にあたる書き込みがなされたとき、それを面白がった人から他のサイトに転載されたり、リツイートされたりして拡散されることがあります。そうすると被害はどんどん大きくなってしまうため、そうなる前にできるだけ早く大元の書き込みを人目に触れない状態にしなければなりません。

そこで、まずは投稿の削除依頼をサイトの管理人に対して行うことになります。投稿削除依頼の手続き方法については、以下の記事を参考にしてください。

3.LINEやTwitterなどをやめる・メールアドレスを変更する

もしも可能であれば、LINEの利用自体をやめてしまうのも一つの方法です。これは、ネットいじめの犯人と共通の友人がいない場合や、リアルでは全く知らない人が犯人であるときには使いやすい手段です。

アカウント自体を消してしまえば、もう相手からコンタクトを取られることはありません。そうして事態が沈静化することを待ちます。 しかし、いじめている犯人がクラスメイトや共通の友人が多く日々顔を合わせるような相手の場合や、他にもコンタクトの手段を持っている・誹謗中傷の元となっているトラブルが深刻であるなどの理由がある場合は難しいかもしれません。

これはメールアドレスの場合も同様です。もしもアドレスを変えることでほとんど解決できるようなケースであれば、思い切ってアドレスを変えてしまうのも一つの方法です。

4.インターネットのフィルタリング機能を使う

特に未成年に言えることですが、人生経験が少ないためにネット上でいろいろな犯罪が起きていることを知らなかったり、危機管理意識が薄かったりして、ネットを通じて何らかのトラブルに巻き込まれる危険が高い傾向にあります。

そのため、知らない間に有害の情報にアクセスしてしまったり、ウイルスに感染したり、危険な人でも警戒できずに近づいてしまったりということが考えられます。

こういった危機管理の低さはネットいじめに繋がりやすいため、できれば大人がフィルタリング機能を設定するなどの対策を取り、未成年が有害な情報に接する機会を減らすよう対策を立てることも必要です。

フィルタリングの設定方法などわからないことがあれば、ドコモやSoftBankなどの携帯キャリアに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

参考:フィルタリングサービス(NTTドコモ)

参考:ウエブ安心サービス・フィルタリングサービス(SoftBank)

5.相手に対して刑事、民事的措置も検討

ネットいじめを受けたときには、いじめに当たる投稿を削除するなどの技術的な対策も必要ですが、場合によっては相手に対し、刑事告訴や慰謝料の請求なども考えられます。

相手に反省の色が見えない場合や、投稿を削除するだけでは抑止効果にならないような場合には、検討する価値があります。以下の記事も参考にしてみてください。

ネットいじめ。一人で抱え込まずに相談窓口を利用して

ネットいじめは陰湿です。相手の顔が見えない分、自分の発言でどれだけ相手が傷ついているのかが見えにくいため、どんどん行動がエスカレートしていってしまいます。現実的に対処すルことも大切ですが、ネットいじめに遭ってしまったときの心のケアも大切です。

一人で悩まないことが大切です。もしも身近な人に相談がしにくいのであれば、公的相談窓口などもたくさんありますので、そういったところを利用してみてください。

このほか、市町村などの自治体によっても相談窓口が設置されています。

参考:ここにもあります!相談できる窓口が。「いじめ」しない させない 見逃さない:政府広報オンライン

参考:子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち):文部科学省

弁護士へ相談することも解決への近道

ネットいじめに関して弁護士ができることは多くあります。具体的な対処をしていくのであれば、弁護士にご相談ください。

例えば、誹謗中傷に関する投稿を削除したい場合や、相手を刑事告訴したい、そこまではしたくはないが、いじめをやめさせるために警告文を送りたいといったようなとき、弁護士がお役に立てることは多いものです。
特に、相手が誰かわからない、匿名のときには、弁護士を通して相手を特定する、発信者情報開示という手続が必要になります。

法的措置に関して具体的なアドバイスができ、現実的解決に向けてサポートできるのが弁護士の強みです。心のケアは相談窓口や時にはカウンセリングなどを利用しながらケアをしていき、現実的な対処を求める際には弁護士に気軽にご相談ください。

いろいろな専門家の意見を聞くことにより、きっと見えてくるものも変わってきます。

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