
「サイトに削除を頼んでも消してもらえない誹謗中傷の投稿を、削除請求の仮処分なら本当に消せるのだろうか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。サイト運営者が任意の削除に応じなくても、裁判所に仮処分を申し立てれば、通常の裁判を待たずに、裁判所から削除の命令を出してもらえる可能性があります。命令が出るまでの目安は1か月~3か月ほどです。
もっとも、申し立てれば必ず消せるわけではありません。投稿が名誉やプライバシーなどの権利を侵害していることと、放っておけば被害が広がるため急いで消す必要があることを、裁判所に示せるかどうかが分かれ目になります。
この記事では、ネット誹謗中傷の削除に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 削除請求の仮処分とは?通常の裁判との違い
- 仮処分が認められるための2つの要件
- 申立てから削除命令が出るまでの流れ
- 削除命令が出るまでの期間と費用の目安
お読みいただくことで、目の前の投稿を仮処分で消せそうか、申し立てる前に何を用意すればよいかを判断できます。
なお、ネット上の誹謗中傷でお悩みの方は、ひとりで抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。
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削除請求の仮処分とは?通常の裁判との違いと認められる要件
削除請求の仮処分とは、本案訴訟(通常の裁判)の結論を待たずに、裁判所がサイト運営者に対して暫定的に投稿の削除を命じる民事保全法上の手続きです。「削除仮処分」とも呼ばれます。
ここでは、通常の裁判や任意の削除依頼との違い、仮処分でできることの範囲、認められるための要件を順に説明します。
通常の裁判や任意の削除依頼との違い
掲示板やSNS、口コミサイトに誹謗中傷を書き込まれたとき、まず考えられるのはサイト運営者への削除依頼です。依頼の方法や費用については「ネットの誹謗中傷を削除するには?削除依頼の方法と費用を解説」で解説しています。
もっとも、依頼しても断られたり、返事がないまま放置されたりすることがあります。そうして投稿が残り、広がり続けているときに使うのが削除の仮処分です。
裁判所を通じて削除請求をする方法には、仮処分のほかに通常の裁判もあります。通常の裁判(本案訴訟)で削除を求めると、判決までに半年から1年以上かかる場合もあります。その間も投稿は残り、閲覧や転載、拡散が続いてしまいます。
仮処分であれば、裁判所が暫定的に判断するため、認められれば通常の裁判よりもずっと早く削除の命令を得られます。
仮処分でできるのは投稿の削除まで
削除の仮処分で求めることができるのは投稿の削除までで、投稿者の特定や、慰謝料(精神的な苦痛に対する賠償金)の請求は別の手続きになります。
目的ごとに整理すると、投稿を消すなら削除請求の仮処分、書き込んだ人を突き止めるなら発信者情報開示請求(サイト運営者やプロバイダに投稿者の情報を開示させる手続き)を使います。慰謝料などを求めるなら、特定した投稿者への損害賠償(損害を金銭で償わせること)の請求に進みます。
投稿者の特定まで進める方法は「発信者情報開示請求の仮処分と訴訟の手続き」で紹介しています。
削除の仮処分が認められる2つの要件
削除の仮処分が認められるには、被保全権利(守られるべき権利)と保全の必要性(急いで削除する必要)の2つを、裁判所に疎明(一応確からしいと示すこと)しなければなりません。民事保全法13条は、次のように定めています。
(申立て及び疎明)
第13条
1.保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
2.保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。
出典:e-Gov法令検索
被保全権利として主張するのは、誹謗中傷であれば名誉権(社会的な評価を守る権利)、住所や本名をさらされたのであればプライバシー権(私生活の情報をみだりに公開されない権利)などです。住所や本名の公開がプライバシー侵害にあたるかを詳しく知りたい方は、「プライバシーの侵害とは?判断基準と事例、慰謝料請求などの対処法」もあわせてご確認ください。
名誉毀損を理由にする場合は、公共の利害に関わる事実を公益目的で書いた真実の投稿ではないことも示す必要があります。
保全の必要性は、投稿を放置すると回復しにくい被害が広がるという緊急性を示して認めてもらいます。被保全権利の侵害が認められる投稿であれば、保全の必要性も認められやすいとされています。インターネット上の書き込みはSNSやまとめサイトに転載されやすく、氏名や住所の公開は実生活での嫌がらせに、企業への風評は売上の低下につながることもあります。どちらかの疎明が足りないと判断されると、削除請求の仮処分申立ては却下されます。
削除請求の仮処分で誹謗中傷を消す流れ4ステップ
削除の仮処分は、申立てから命令の発令まで、4つのステップで進みます。途中には、審尋(裁判官が事情を聴く手続き)や、担保金(裁判所が定める保証のお金)の供託(法務局へ預けること)といった、なじみの薄い手続きも含まれます。
- 裁判所に仮処分命令申立書を提出
- 審尋
- 担保金の供託
- 仮処分命令の発令
①裁判所に仮処分命令申立書を提出
削除請求の仮処分の申立ては、投稿の削除を求める被害者(申立人)が、裁判所に仮処分命令申立書と証拠を提出して行います。申立書には、どの投稿がどの権利をどう侵害しているのか、なぜ急いで削除しなければならないのかを、2つの要件に沿って記載します。
証拠としては、投稿のURLと投稿日時が一緒に写る形で画面を保存しておくことが大切です。掲示板ならスレッド名と書き込み番号、SNSなら投稿ごとの個別ページを開いた状態でスクリーンショットを撮ると、どの投稿かを示しやすくなります。同じ人物から書き込みが続いている場合は、日付の順にそろえておくと、被害が続いていることが伝わりやすくなります。
②審尋
審尋とは、裁判官が申立人やサイト運営者から事情を聴く手続きです。仮処分による削除請求では、まず申立人(弁護士に依頼していれば代理人の弁護士)が裁判官と面談し、申立書の内容を説明して質問に答えます。証拠が足りないと判断されれば、追加の資料を求められることもあります。
そのうえで、原則として、サイト運営者も立ち会うことのできる審尋の期日が開かれます(民事保全法23条4項)。
ただし、海外法人が運営するサイトが相手の場合などは、申立人側だけの審尋で進むケースもあります。相手が海外法人のときの手続きは「海外サイトの誹謗中傷でも開示請求できる?特定の限界と対処法」で解説しています。
③担保金の供託
審尋を経て、裁判所が削除を命じてよいと判断すると、申立人は、裁判所が定めた額の担保金を法務局に供託するよう求められます。民事保全法14条1項が、担保を立てさせたうえで命令を出せると定めているためです。
担保金は、仮処分が後の裁判で誤りだったとされた場合にサイト運営者の損害を償うためのお金です。削除請求の仮処分は短い期間に、疎明の程度の証拠で判断されるため、こうした備えが求められます。担保金の額や取り戻し方は、費用の項目の「担保金の額と取り戻し方」で説明します。
④仮処分命令の発令
担保金を供託して供託書の写しを裁判所に出すと、投稿の削除を命じる仮処分命令が出されます。発令を受けると、サイト運営者は通常、命令に従って投稿を削除します。削除されれば、本案訴訟に進まずに手続きを終えられるのが一般的です。
サイト運営者が削除命令に従わない場合は、申立人は間接強制(削除するまで一定の金銭を支払わせる方法)を申し立てることができます(民事保全法52条1項・民事執行法172条)。
仮処分にかかる期間と費用の目安
削除請求の仮処分で命令が出るまでの期間と、かかる費用(裁判所に納める実費、担保金、弁護士に依頼する場合の弁護士費用)の目安は次のとおりです。
| 項目 | 目安 | ポイント |
| 期間 | おおむね1か月~3か月 | 追加の証拠や相手方の反論があると延びることがある |
|---|---|---|
| 印紙代・郵券(郵便切手) | 印紙2,000円、郵券は数千円程度 | 裁判所に納める実費 |
| 担保金 | 10万円~50万円程度 | 担保の取消し(裁判所への申立てが必要)が認められれば取り戻せる |
| 弁護士費用(当事務所) | 着手金22万円~、報酬金22万円~ | 事案に応じて別途見積り |
申立てから削除命令までの期間
審尋や担保金の供託を含め、申し立ててから削除の命令が出るまでの期間は、おおむね1か月~3か月です。命令が出ればサイト運営者は通常これに従うため、投稿が消えるまでの見通しも、この期間をもとに立てられます。審尋で追加の証拠を求められたり、サイト運営者が審尋の期日で削除に反対したりすると、その分だけ長くなることがあります。申立書と証拠を最初から十分にそろえておけば、追加の提出を求められる場面を減らしやすくなります。なお、削除請求の仮処分の命令は担保金を供託した後に出るため、担保金の準備に手間取ると、発令も遅れます。
仮処分手続きのあいだも投稿は閲覧され続けるため、投稿を見つけた段階で証拠を残し、早めに準備を始めることが大切です。
裁判所に納める印紙代と郵券
申立書に貼る収入印紙は2,000円で、郵券は国内のサイト運営者が相手なら数千円程度です。郵券は、仮処分の書類を裁判所が相手方へ送るために使われます。
相手方が海外法人の場合は、書類の翻訳や海外への送付が必要になるため、その分の費用が別にかかります。
担保金の額と取り戻し方
担保金の額は、削除を求める投稿の数や事案の内容を見て裁判所が決めます。削除の仮処分では、10万円~50万円程度が目安です。
供託した担保金は、サイト運営者の同意を得るなどして裁判所に担保の取消しを申し立て、認められれば取り戻せます。戻ってくるのは手続きが終わった後なので、仮処分を申し立てる段階では、担保金を全額用意しておく必要があります。
弁護士に支払う費用
弁護士に依頼する場合は、依頼したときに支払う着手金と、事件が終わったときに成果に応じて支払う報酬金がかかります。当事務所の削除請求(仮処分・訴訟)の弁護士費用は、着手金22万円~、報酬金22万円~です。裁判所を使わず、サイト運営者との交渉で削除を求める場合の弁護士費用は、着手金・報酬金とも5万5000円~です。
着手金・報酬金は一般的な事件を想定した金額です。事案の難しさなどに応じて別途お見積りするほか、手数料や実費がかかる場合もあります。投稿の削除以外も含めた料金の一覧は「弁護士費用」のページをご覧ください。初回のご相談は原則無料です。
削除の仮処分を弁護士に依頼するメリット
削除請求の仮処分の申立てでは、短い期間のうちに2つの要件を疎明できるかが問われます。弁護士に依頼すれば、申立書の作成と証拠の整理、審尋での説明、担保金の供託の手続きまでを、代理人に任せられます。
名誉毀損を理由とする削除では、どの表現が社会的な評価を下げているのか、なぜ公共の利害・公益目的・真実性の点から正当化されないのかを、法的に整理して示す必要があります。こうした主張の組み立ても弁護士が担います。
投稿者を特定して責任を問いたい場合は、削除と発信者情報開示請求をどの順番で進めるかも重要です。投稿を先に消してしまうと、投稿と結びついたIPアドレスなどの記録を確認しにくくなり、投稿者の特定が難しくなるおそれがあるため、手続きの順番は最初に決めておくのがよいでしょう。投稿者への慰謝料の請求については「名誉毀損の慰謝料相場はいくら?請求できる条件を弁護士が解説」で、相場や請求できる条件を確認できます。
誹謗中傷を仮処分で削除したい方は弁護士にご相談ください
サイト運営者に削除を断られた誹謗中傷の投稿でも、削除請求の仮処分なら、裁判所の命令によって通常の裁判より早く消すことを目指せます。ただし、命令を得るには、権利侵害と、急いで削除する必要があることを、証拠で示さなければなりません。
弁護士に依頼すれば、申立ての準備から命令が出るまでの手続きを任せられ、投稿者の特定を見据えた進め方も一緒に考えられます。
書き込みが残っているあいだは、誰に見られているのかと気が休まらない日が続きます。すでに削除依頼を断られた方や、投稿がほかのサイトに転載され始めている方は、早めに動き出しましょう。
当事務所では、投稿の削除から投稿者の特定、損害賠償の請求まで、ネット誹謗中傷の問題をまとめてご相談いただけます。被害が広がる前に解決へ進めるよう、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

