非弁行為とは|ネット削除代行業者への依頼で生じる2つのリスク

「ネットの悪口や誹謗中傷を削除します!削除率99%の実績!」という業者の宣伝文句を見かけたことはありませんか?

じつはこういった削除代行業者に削除依頼をお願いすることは非弁行為という違法な犯罪行為に関与することになります

「犯罪行為に関与…依頼すると自分も逮捕されるの?」と不安に思われた方もいるかもしれません。

しかしご安心ください。非弁行為は依頼した側は罰せられません。

「じゃあ問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、削除代行業者に依頼すると2つの大きなリスクを抱えることになります

そこでここでは、以下の疑問点を解消できるよう、ネット誹謗中傷に詳しい弁護士がわかりやすく解説していきます。

  • そもそも非弁行為とは?
  • 業者の削除依頼代行は非弁行為になる?
  • 削除代行業者の非弁行為は具体的にどう行われる?
  • 非弁業者に支払った費用は返金請求できる?
  • 削除代行業者に依頼するリスクは?
  • 業者は全て非弁行為をしているの?

全て読み終えるのに3~5分かかりますが、もしわからないことがあったり、法律家への依頼を検討されている方は弁護士に気軽に相談してみましょう。

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そもそも非弁行為とは?

非弁行為とは、弁護士資格のない者や弁護士法人でない者が報酬を得る目的で弁護士業務を反復継続する意思で行うことで、弁護士法72条に違反する犯罪行為です。罰則は2年以下の懲役または300万円以下の罰金です(弁護士法77条3号)。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。(略)~

非弁行為の代表例としては以下のようなものがあります。

  • ”示談屋””事件屋”と呼ばれるヤクザまがいの者が交通事故の一方の代理人として示談交渉をまとめる。
  • 不動産業者が貸主に代わり滞納賃料の取り立てや立ち退き要求する。
  • コンサルティング会社が顧客の代理人として取引企業などと交渉する。
  • 行政書士が契約書や示談書の作成のみならず相手との交渉事をする。
  • 司法書士が訴額140万円を上回る事件の相談や和解の代理を行う。
  • 税理士が遺産分割の交渉を行う。

これらは全て、有償且つ業として(反復継続する意思を持ってという意味です)行えば弁護士法72条違反の非弁行為となります。

非弁行為の依頼者は罰せられない

非弁行為の依頼者が刑事罰を負うことはありません

非弁行為を禁止する弁護士法72条の立法趣旨は、事件屋などの無資格者が法的に問題のある内容の示談をまとめたり、より事案を複雑にするなど、依頼者の利益や権利が損なわれることを防止するためです。

そのため、非弁活動を行った者を処罰する規定はあれども、依頼した者を処罰する規定はないのです。

業者が削除依頼の代行をすることは非弁行為?

削除代行業者は株式会社等の企業であり弁護士法人ではありません。
有料で請け負っていることから報酬を得ることが目的であることは明らかです。
ホームページを設け集客し、事業として行っている以上は反復継続する意思(業とする意思)もあるでしょう。

また、削除代行業者が依頼者を代理してサイト運営者に削除申請をすることは弁護士業務でいうところの「一般の法律事件に関して法律事務を取り扱う」ことになります。
弁護士業務といえば、裁判や示談交渉などを一般的には思い浮かべると思いますが、削除申請をサイト運営者が拒否した場合は交渉が必要となりますし、削除申請に正当性があればサイト運営者に削除義務が生じる法律効果が発生します。削除申請は法律効果を生じさせる法律行為であり削除代行業者が代理で行うことは許されないのです

最近では、退職代行や敷金返還交渉代行など弁護士でない者による代行サービスが流行っていますが、これらも非弁行為に該当する可能性があります。

削除代行業者の非弁行為は具体的にどう行われるの?

基本的には業者が書き込みをされた本人を装い、掲示板やブログ等の管理人にメールやフォームより削除依頼をします。

また、削除依頼フォームに入力する文章をwordファイル等に打ち込みそれを販売する形で利益を得る業者もいます。文書の販売という形で脱法行為を図った方法ですが、その文書に書かれた内容を依頼者がサイト運営者に送信することでサイト運営者側に「削除義務」という法律効果が生じることもあるためやはり非弁行為となります。

さらに悪質なケースだと、実在しない弁護士の名を用いたり、実在する弁護士の名前を勝手に使用して、弁護士を偽装してサイト管理人に削除交渉するものもあります。

業者の「うちの顧問弁護士が削除依頼します」に騙されてはいけない

削除代行業者の中には、「うちは顧問弁護士がサイトに削除いらいするので安心です」といった謳い文句で集客しているところもあります。

この手の業者は、例えば依頼者から50万円の報酬をもらい、顧問弁護士に30万円で削除依頼を委任します。それにより業者は20万円を稼ぐことができます。顧問弁護士というと聞こえはいいですが、業者から仕事を丸投げされている単なる下請け弁護士です。つまり依頼者と弁護士との間に業者が介在し、業者が利ザヤを得ている状態です。これは弁護士以外の業種との提携を禁止する弁護士法27条の「非弁提携」に繋がる怖れもあります。

さらに悪質なケースでは、その顧問弁護士が自分の名義を業者に貸し、業者がその弁護士の名前でサイト管理者に削除依頼をしていることもあります。これは完全に非弁提携と言えるでしょう。

「顧問弁護士が対応」といった宣伝をしている業者は当然ながら自分たちの利益も上乗せしているため普通に弁護士に依頼するより高くつくことが多いでしょう。仮に低額であった場合には単に弁護士に名義を借りて自分達の手で削除依頼をしているか、そもそも弁護士の名すら用いずに単に非弁行為による削除代行をしていることもあります。「顧問弁護士」という甘い言葉には要注意です。

非弁行為の契約金は返還請求できる?

削除代行業者との委任契約は民法90条の公序良俗により無効となります。
債権回収の事案ですが、回収出来たら報酬を支払うとの約束で弁護士でない者に取り立てを委任した契約につき最高裁判所が公序良俗により無効の判断を下しています(最高裁判決昭和38年6月13日)。

無効というのは「最初からなかった」という意味ですので、契約が最初からなかったのであれば法律上の原因なくして業者は報酬を受け取ったことになります。そのため、依頼者は不当利得返還請求権(民法703条)を行使してその報酬の返金を求めることができます(10年の時効)。

実際に、以下の事例のように、削除代行業者に費用の全額の返還を認める判決も出ています。

「ネットの削除要請代行、非弁行為と認める判決」

インターネット上の書き込みの削除要請を報酬を得て代行する業者の行為は、弁護士法違反(非弁行為)にあたるとして、依頼者の男性が業者に支払った約49万円の返還を求めた訴訟で、東京地裁(原克也裁判長)は20日、非弁行為と認め、業者に全額の返還を命じる判決を言い渡した
男性の代理人弁護士によると、代行業者の削除要請行為が非弁行為と認定されたのは初めて。
判決によると、原告の男性は2012~13年、東京都内の業者に自身を中傷する13件の書き込みの削除を依頼。業者の要請で10件が削除され、男性は計約49万円を支払った。
弁護士法は、弁護士以外が報酬目的で法律事務を行うのを非弁行為として禁止している。訴訟で業者側は「サイトの通報用フォームを使って削除を依頼しただけで法律事務ではない」と主張した。
判決は「フォームの入力は男性の人格権に基づく削除請求権の行使で、サイト運営者に削除義務という法律上の効果を発生させる」と判断し、業者が男性から得た報酬を不当利得と認定した。慰謝料など1100万円の請求は棄却した。

2017年02月20日 23時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

非弁行為の削除代行業者に依頼することで生じるリスク

ここまで読まれた方は、次のように思われたのではないでしょうか。
自分は刑事罰を受けることもないし、返金もされるのであれば問題ないのでは?

たしかに非弁行為は依頼した側が罪に問われることはありませんし、不当利得を根拠に返金請求ができるという心強い判決もでています。
しかしやはり、削除代行業者に削除申請の依頼をすることはおススメしません。次のようなリスクが生じる怖れがあるためです。

返金に応じないリスク

たとえ返金請求できる法律上の根拠があったとしても、業者側が任意の返金に応じる保証はありません。実際に上で紹介した裁判例のように訴訟に持ち込まないといけないケースもあるでしょう。

先ほどの裁判例では地裁どまりとなっていますが、削除代行業者が意固地になれば高裁・最高裁までもつれる可能性もないとは言い切れません。そうなるとかなりの年月と労力を費やすことになります。

しかも自分で裁判を起こす(本人訴訟といいます)のは知識と経験が必要なため弁護士に依頼するのが一般的ですが、弁護士に支払う費用の全額を業者に請求できるものでもありません。つまり、業者に支払ったお金が返ってきたとしても弁護士費用は自己負担となることがあるのです。

さらに削除代行業者に資力がなければいくら勝訴判決を得ても絵に描いた餅です。敗訴した業者が飛んで行方をくらますこともあるでしょう。そうなると無駄に労力と弁護士費用を費やしただけという結果になります。

炎上のリスク

弁護士の名前を出すことでサイト管理者側に「余計な争いに巻き込まれたくない」という心理が働きますので、一般の方よりも書き込み削除の率は高まる傾向があります。そのため削除代行業者は弁護士の名を騙って削除依頼をすることがありますが、サイト管理者がその弁護士を調べて”虚偽”であることが発覚することがあります

そしてサイト管理者がその事実を掲示板やTwitter・FacebookなどのSNSに流してしまいそれが拡散して炎上してしまうリスクがあります。

とくに法人の場合、「非弁行為の違法業者に依頼した企業」「コンプライアンス意識が低い会社」というイメージが広がり、売上悪化などの企業業績に直結しがちです。会社のイメージを損なう書き込みの削除を依頼したつもりが炎上して余計にイメージ低下に繋がれば本末転倒です

全ての「業者」が非弁行為をするわけではない

ネット上の名誉毀損やプライバシー侵害にあたるような書き込みに対し、「誹謗中傷対策します」と広告している業者は数多くあります。

こういった業者の中でも、「削除します」と宣伝しているものはまさに非弁行為を行う会社ですが、逆SEO対策の業者は必ずしも非弁行為を行っているとは限りません。

逆SEOとは、例えば、「〇〇株式会社はブラック企業」などのネガティブキーワードの書き込みがネット上に存在する場合、「〇〇は待遇がいい」「〇〇は働き甲斐がある」などといったポジティブキーワードを2ちゃんねる等の掲示板に書き込む、或いは、そういったポジティブキーワードを含むページで構成されたWEBサイトを新規で立ち上げるなどして、ネガティブキーワードが書かれたページの順位を相対的に押し下げて目立たなくする手法です。

これは非弁行為ではないため、「弁護士でなければできない」という性質のものではありません

ただし、逆SEOは問題のあるページの順位を相対的に下げるだけですので、単に人の目に触れる機会を下げるだけで根本的解決にはなりません

また、業者の中には、非弁行為と指摘されることを回避するために「削除」という宣伝文句を避け、「逆SEO対策」「風評被害対策」「風評被害コンサルタント」といったサービス名称を用いている場合もあります。逆SEOについて相談や問い合わせをしたところ削除代行を持ち掛けられたという方も実際にいますので気を付ける必要があるでしょう。

手前みそになりますが、やはり誹謗中傷の書き込み自体を弁護士に依頼して削除してもらうことが根本的解決に繋がるでしょう。当法律事務所では全国どこからでもネット誹謗中傷に強い弁護士が無料相談を受け付けております。親身誠実をモットーとしておりますのでお気軽にご相談ください

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