名誉毀損の慰謝料相場はいくら?請求できる条件を弁護士が解説

「ネットに名誉毀損の書き込みをされたが、投稿者に慰謝料を請求したらいくらくらいになるのだろう」と悩んでいませんか。ネット上の名誉毀損などで裁判所が認めた慰謝料は、法務省の調査で中央値30万円、平均47万円です。

もっとも、金額は投稿の内容や回数、拡散の程度によって上下します。投稿者の特定にかかった費用をどこまで回収できるかによっても、手元に残る額は変わります。

この記事では、ネットの誹謗中傷の犯人特定に強い弁護士が、次の点について解説します。

  • 慰謝料・損害賠償の相場はいくらか
  • 慰謝料の額が増える事情・減る事情
  • 請求できる条件とできないケース
  • 匿名の投稿者を特定して請求する流れ

お読みいただくことで、ご自身のケースで請求できるか、費用をかけても見合うかを判断する材料が得られます。

なお、投稿者の特定に必要な通信記録は保存期間が限られているため、早めの対応が欠かせません。ネットの誹謗中傷でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。

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名誉毀損の慰謝料・損害賠償の相場はいくら?

名誉毀損とは、「前科がある」「取引先をだましている」などと広めて、人の社会的な評価を下げることをいいます。これによって受けた損害を金銭で償ってもらうのが損害賠償で、そのうち、つらい、悔しいといった精神的苦痛に対する賠償を慰謝料といいます(民法710条)。

名誉毀損が原因で会社を解雇された、売上が落ちたといった財産的損害があれば、慰謝料とは別に賠償を請求できます。ただ、個人が被害を受けた場合、請求の中心になるのは慰謝料です。

個人・法人別の慰謝料相場

法務省は、公開された裁判例のうち、名誉毀損や侮辱などを認めて損害賠償を命じたものを調べ、「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」(令和8年4月)として公表しています。

同報告書によると、権利侵害が主にネット上で行われた裁判例118件で認められた慰謝料は、中央値30万円、平均47万円、最大349万円でした。このうち30万円未満が46.6%と約半数を占めています。100万円以上の高額な慰謝料が認められたのは19件(約16%)にとどまります。

この118件を被害者別にみると、個人(記者を除く100件)の慰謝料は中央値30万円、平均48.8万円、最大349万円でした。

法人の場合は精神的苦痛ではなく、社会的な信用が下がったことなどによる無形の損害が賠償の対象になります(同報告書はこれも慰謝料として集計しています)。118件のうち法人・団体(報道機関を除く16件)に認められた額は、中央値30万円、平均39.1万円、最大100万円でした。

なお、ここまでの数値は裁判で認められた額の集計です。裁判をせずに話し合いで解決する示談では、当事者の合意によって金額が決まります。

侮辱にとどまる場合の慰謝料相場

「バカ」「気持ち悪い」のように、具体的な事実を示さず、社会的な評価を下げるとまではいえない悪口は、名誉毀損ではなく、本人の自尊心を傷つける「名誉感情の侵害」(侮辱)として扱われます。ただし、悪口であれば必ず慰謝料を請求できるわけではなく、社会通念上許される限度を超える侮辱であることが必要です。

同報告書の118件のうち、名誉感情の侵害だけが認められた12件の慰謝料は、中央値15万円、平均23万円、最大70万円でした。名誉毀損よりも低い額になる傾向があります。

慰謝料が増える事情・減る事情

慰謝料が増額されるか減額されるかは、次のような事情を総合的に考慮して判断されます。

  • 内容が事実に反するか、悪質性がどれほど高いか
  • 投稿が何回あり、削除を求めた後も続いたか
  • SNSなどでどれだけ拡散し、閲覧されたか
  • 被害者がどのような職業・社会的地位にあるか
  • 体調を崩した、仕事を失ったといった実害があるか
  • 加害者が謝罪や反省をしているか

同報告書の集計でも、慰謝料の中央値は、名誉毀損などの侵害行為が1回なら20万円、10〜49回なら70万円と、回数が多いほど高くなっています。反対に、加害者が早い段階で謝罪している場合などは、低めに抑えられることがあります。

慰謝料以外に請求できる調査費用・弁護士費用

投稿者を特定するための発信者情報開示の費用も、損害として請求できる場合があります。同報告書によると、この費用の賠償を求めた事件の9割超で、開示手続の弁護士費用と実費が損害の項目として認められています。開示費用の全額が認められた事案の認容額は13万円から約73万円でした。

ただし、慰謝料が30万円未満の事案では開示費用の全額が認められにくく、その認容額を慰謝料と同じ額かそれ以下に抑えた裁判例が比較的多いとされています。

裁判を起こす場合、負けた側が負担する「訴訟費用」は申立ての手数料などで、弁護士費用は含まれません。もっとも、名誉毀損による損害賠償を求める裁判では、弁護士費用のうち相当と認められる額を損害として請求でき、その額は慰謝料などの認容額の1割程度とされることが多くあります。

開示や裁判の費用が回収できる額を上回る「費用倒れ」にならないか、依頼する前に弁護士へ見通しを確認しておくことが大切です。

名誉毀損で慰謝料を請求できる条件とできないケース

名誉毀損が、故意や過失によって他人の権利を侵害する不法行為(民法709条)にあたれば、被害者は投稿者に慰謝料などの損害賠償を請求できます。ここでは、投稿者を訴えて慰謝料が認められるための条件と、請求できないケースを確認します。

社会的評価を下げる投稿であること

名誉毀損の典型は、具体的な事実を示す「事実の摘示」によって、公然と評判を落とす投稿です。民事では、事実を示さない意見や論評であっても、社会的な評価を下げるものであれば名誉毀損にあたる場合があります。評価が低下するかどうかは、被害者本人の受け止め方ではなく、一般の読者が普通の注意で読んだときにどう受け取るかで判断されます。

実名がなくても、伏字やイニシャル、ハンドルネームなどから、周りの人が読んで誰のことか分かる場合は名誉毀損が成立しえます(同定可能性)。詳しくは「源氏名・伏字・ハンドルネームへの誹謗中傷は名誉毀損になる?」をご参照ください。

住所や病歴などを暴露された場合は、プライバシー侵害として慰謝料を請求できることもあります。

関連記事:プライバシーの侵害とは?判断基準と事例、慰謝料請求などの対処法

故意・過失と損害があること

名誉毀損で慰謝料を請求するには、投稿者に故意または過失があることも必要です(民法709条)。故意とは相手の評判を落とすと分かっていて投稿すること、過失とは注意すれば分かったのに不注意で投稿することをいいます。

損害には精神的苦痛も含まれるため、財産上の損失がなくても慰謝料を請求できます。あわせて、投稿と損害の間に因果関係があることが求められます。

慰謝料を請求できないケース

事実を示して社会的な評価を下げる投稿でも、次の3つがすべて認められると違法性がないとされ、慰謝料は請求できません。

  • 公共の利害に関する事実であること
  • 専ら公益を図る目的で投稿されたこと
  • 示した事実の重要な部分が真実だと証明されたこと

例えば、政治家の職務上の不正を、裏付けとなる資料をもとに指摘した投稿などは、これらを満たす可能性があります。一方、恨みを晴らすことが主な目的の投稿は、「専ら公益を図る目的」があるとはいいにくいでしょう。また、真実性を証明できなくても、投稿者が真実と信じたことに相当の理由があれば、故意や過失が否定されて請求が認められない例もあります。

関連記事:名誉毀損罪はどこから成立する?構成要件を解説

ネットの投稿者に慰謝料を請求する流れ

慰謝料を請求するときは、原則として投稿した本人を相手にします。請求は、次の流れで進めます。

  1. 投稿者を特定する
  2. 示談交渉で慰謝料を請求する
  3. 示談がまとまらなければ裁判を起こす

なお、名誉毀損罪や侮辱罪として刑事責任も問いたい場合は、慰謝料の請求とは別に刑事告訴(警察などに処罰を求めること)を検討できます。詳しくは「ネットの誹謗中傷を名誉毀損罪で刑事告訴する流れを弁護士が解説」をご覧ください。

①投稿者を特定する

まず、投稿のURLと日時が写るようにスクリーンショットを撮り、証拠を残します。投稿が消されると、後から被害を示すのが難しくなるためです。

匿名の投稿者を特定するには、SNSや掲示板などの運営者やプロバイダに発信者情報の開示を求めます。任意の開示請求のほか、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づき、裁判所が開示を命じる発信者情報開示命令の手続も使えます。詳しくは「発信者情報開示請求とは?開示命令による手続きを解説」で解説しています。

プロバイダが通信記録(ログ)を保存する期間は3〜6か月程度とされることが多く、過ぎると特定できなくなるおそれがあります。

また、名誉毀損の慰謝料を請求する権利は、損害と投稿者を知った時から3年、投稿の時から20年のどちらかが過ぎると時効で消滅します(民法724条)。

投稿者の特定までは求めず、投稿を消すことだけが目的なら、削除を求める方法もあります。詳しくは「ネットの誹謗中傷を削除するには?削除依頼の方法と費用を解説」をご参照ください。

②示談交渉で慰謝料を請求する

投稿者が分かったら、名誉毀損による慰謝料の金額と支払期限を示し、その支払いや投稿の削除などを求める請求書を送ります。差出日と内容を郵便局が証明する内容証明郵便を使えば、請求した事実を後から示せます。

示談交渉なら、裁判と違って損害を立証する必要がなく、裁判の費用もかかりません。合意できたら、示談金の額や再投稿の禁止などを示談書にまとめ、双方が署名します。

③示談がまとまらなければ裁判を起こす

相手が支払いに応じなければ、損害賠償請求の民事裁判を起こします。

請求額が60万円以下なら、名誉毀損で少額訴訟を起こす方法もあります。少額訴訟は簡易裁判所で行う手続で、原則として1回の期日で審理が終わります(参考:裁判所「少額訴訟」)。少額訴訟で名誉毀損の慰謝料を求めるときは、最初の期日までに必要な証拠をすべて揃え、主張を整理しておくことが大切です。なお、相手は、最初の期日で言い分を述べておらず、その期日もまだ終わっていなければ、申し出るだけで通常の裁判に移すことができ、その場合は審理が1回で終わるとは限りません。どちらの手続でも、弁護士に依頼せず自分で進める本人訴訟ができます。

通常の裁判の判決では、慰謝料の支払いに加えて、謝罪広告など名誉を回復するための処分を命じてもらえることもあります(民法723条)。判決が出ても相手が支払わないときは、強制執行の手続で給与や預金などを差し押さえることができます。

名誉毀損の慰謝料請求は弁護士にご相談ください

裁判例では、ネット上の名誉毀損の慰謝料は数十万円が中心で、書き込みの悪質さや件数、広がり方によって増減します。請求するには、投稿者の特定から示談交渉、裁判まで、いくつもの手続を期限内に進めなければなりません。

弁護士に依頼すれば、発信者情報の開示から交渉、訴訟までを一括して任せられます。相談の段階で、開示にかかる費用も含めてどこまで回収できそうか、費用倒れにならないかの見通しを確認できます。名誉毀損の慰謝料請求にかかる弁護士費用は事案によって異なるため、依頼前に見積もりをご確認ください。

中傷の書き込みを目にするたびにつらい思いをされている方や、投稿が拡散して不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。一人で悩み続けるよりも、通信記録が消える前に動くことが、投稿者の特定への近道です。

当事務所は、ネットの誹謗中傷の被害に遭われた方の投稿者特定と慰謝料請求をサポートしています。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

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