
「海外のサイトに書かれた誹謗中傷や、海外にいる相手からの投稿だから、開示請求はできないのでは」と不安を感じていませんか。結論として、運営会社やサーバーが海外にあっても、日本の裁判所で開示請求できる場合があります。
ただし、投稿者が外国の通信会社の回線やVPN(接続元を隠すサービス)を使っていたり、投稿の記録(ログ)が消えていたりすると、投稿者の特定までたどり着けないこともあります。
この記事では、ネット誹謗中傷の犯人特定に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 海外サイト・海外サーバーでも開示請求できるのか
- 投稿者の特定が難しくなるのはどんな場合か
- 外国の運営会社を相手にする手続き
- 特定した投稿者に賠償を求める方法
お読みいただくことで、ご自身のケースで手続きを進められそうか、今何をすべきかを判断できます。
なお、誹謗中傷の投稿者の特定でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。
| ネットで誹謗中傷されたら弁護士に無料で相談してみよう |
|
海外サイトや海外からの誹謗中傷でも開示請求はできる?
海外が絡む投稿でも、それだけで開示請求ができなくなるわけではありません。ただし、どこに「海外」が関わるかで進め方や見通しが変わります。主に次の3つの場合があります。
- 海外の会社が運営するサイトやSNSに書き込まれた
- サイトのサーバーが海外にある
- 投稿者が海外に住んでいる、または海外から投稿した
運営会社が海外の会社でも、日本で事業を行っていて、その日本での業務に関する開示請求であれば、日本の裁判所に申し立てられます。
海外サーバーに置かれたサイトでも、サーバーの場所だけで開示請求の可否は決まりません。請求の相手はサイトを運営し投稿の記録を持つ事業者で、その事業者が日本の会社なら国内のサイトと同じ手続きで進められます。
投稿者が海外在住でも、日本の携帯電話会社やプロバイダの回線から書き込んでいれば、その回線の事業者は日本の会社なので、国内と同じように特定を進められます。
情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)では、どの場合も、投稿によって権利が侵害されたことが明らかで、損害賠償(受けた損害をお金で償ってもらうこと)の請求などのために開示を受ける正当な理由があることが、開示の基本的な条件とされています(5条1項)。
投稿者の特定に限界があるケース
海外の通信会社の回線から投稿されていると、日本の手続きではその会社に情報を開示させにくく、住所や氏名の特定は難しくなります。海外に限らず、IPアドレスが開示されても投稿者を特定できないケースについては「IPアドレス開示請求は意味ない?犯人特定ができない4つのケース」で詳しく紹介しています。
海外の運営会社が日本で登記をしていないと、開示請求に必要な書類の翻訳や海外への送付で手続きが長引きます。その間に、投稿者が使った通信会社のログの保存期間が過ぎてしまうおそれがあります。通信会社が分かり、その会社に開示を求める段階になれば、消去禁止命令(記録の消去を禁じる命令)もあわせて申し立てられますが、それまでに消えたログは戻りません。
投稿者が海外のVPNを使っていると、開示で分かるIPアドレスはVPN事業者のものになります。その事業者も海外の通信会社と同じく、日本の裁判所の手続きでは開示させにくいため、本人までたどるのは難しくなります。もっとも、投稿に使われたアカウントへVPNを通さずにログインした記録が残っていれば、特定できることもあります。
民事の手続きで特定が難しいときは、名誉毀損罪(公然と事実を示して人の社会的評価を下げる罪)や侮辱罪などで刑事告訴(捜査機関に犯罪を申告して処罰を求めること)をし、捜査に委ねることもできます。告訴の進め方は「ネットの誹謗中傷を名誉毀損罪で刑事告訴する流れを弁護士が解説」を参考にしてください。
海外の運営会社に削除・開示請求をするときの手続き
投稿の削除や投稿者の特定に使う手続きは、運営会社が海外でも日本国内と基本的に同じです。特定には、2022年10月施行の法改正で始まった発信者情報開示命令(裁判所が事業者に投稿者の情報の開示を命じる手続き)を使えます。提供命令(プロバイダの名称などを申立人に伝えさせる命令)もあわせて申し立てれば、判明したプロバイダへの申立ても同じ裁判所で一連の手続きとして進められます(情報流通プラットフォーム対処法15条1項・10条7項)。
以前は運営会社への仮処分(正式な裁判の前に出してもらう裁判所の命令)とプロバイダへの訴訟の2段階が必要で、特定までに半年以上かかることが多く、1年を超えることもありました。今はそれより短く進む場合もありますが、相手方の所在や書類の翻訳の要否、ログの状況によって期間も費用も大きく変わります。手続きの流れや期間の全体像は「発信者情報開示請求とは?開示命令による手続きを解説」で紹介しています。
申立先の裁判所と国際裁判管轄
海外の会社への開示請求を日本の裁判所に申し立てられるかは、国際裁判管轄(国をまたぐ争いをどの国の裁判所で扱えるか)の問題です。発信者情報開示命令では、日本で事業を行う者(日本で継続して取引をする外国会社を含む)が相手で、申立てがその日本での業務に関するものであれば、日本の裁判所が管轄権を持ちます(情報流通プラットフォーム対処法9条1項3号)。
申し立てる裁判所は、相手方の営業所などの所在地で決まるのが原則です。日本に営業所も代表者などの住所もなく管轄が定まらないときは、最高裁判所規則で定める東京都千代田区を管轄する東京地方裁判所に申し立てます(同法10条2項、発信者情報開示命令事件手続規則1条)。開示の手続きの流れは「発信者情報開示請求の仮処分と訴訟の手続き」もご参照ください。
請求の相手方となる海外の本社
削除や開示請求の相手方は、サイトやSNSを運営している会社です。X(旧Twitter)ならX Corp.、InstagramやFacebookならMeta Platforms, Inc.、YouTubeならGoogle LLCと、いずれも海外の本社が相手になります。
これらの会社は日本にも法人を置いていますが、日本法人には投稿の削除や開示に応じる権限がないことがあり、旧Twitter Japan(現X Corp. Japan)を相手方とした開示請求を退けた裁判例もあります(東京地方裁判所平成28年9月15日判決)。
一方、X Corp.、Meta Platforms, Inc.、Google LLCは日本で外国会社の登記をしています。そのため、法務局で登記事項証明書(会社の代表者などを証明する書類)を取得できます。日本に住所のある「日本における代表者」もいるので(会社法817条1項)、翻訳や海外への送達をせずに、国内の会社と同じように手続きを進められます。ただし、掲示板の5ちゃんねるのように日本で登記をしていない運営者もあります。
関連記事:X(旧Twitter)削除依頼の方法|応じない場合の対処法も解説
書類の翻訳と海外への送達
日本で登記をしていない会社に削除や開示請求をするときは、登記事項証明書の代わりに、本国で発行される資格証明書(会社の存在や代表者を証明する書類)を入手し、日本語の翻訳文を付けて裁判所に提出します。資格証明書の取得や申立書などの翻訳に、費用と時間がかかります。
また、申立書や裁判所の決定などの書類は、日本に届け先がない相手には海外へ向けて届けるため、国内より時間がかかります。
削除を求める仮処分
投稿者を特定する手続きである発信者情報開示請求では、投稿そのものは消えません。裁判の前に、運営会社の窓口から削除を申し出ることもできます。X Corp.やMeta Platforms, Inc.、Google LLCなどは大規模特定電気通信役務提供者(総務大臣が指定する大規模なSNSなどの事業者)に2025年4月30日に指定され(総務省)、削除の申出を受けたら遅滞なく必要な調査を行う義務を負っています(情報流通プラットフォーム対処法23条)。
運営会社が削除に応じないときや、削除を急ぐときは、削除の仮処分を申し立てます。仮処分は、削除を求める裁判を起こせる裁判所に申し立てるもので(民事保全法12条1項)、名誉毀損などでは被害者の住所地の裁判所を選べる場合があります。正式な裁判より短い期間で結論が出やすいのも特長です。この仮処分の詳しい進め方は「削除請求の仮処分|誹謗中傷を消す流れと期間・費用」にまとめています。
投稿者を特定した後の対処法と損害賠償請求
開示請求で分かるのは投稿者の氏名や住所などで、賠償金は別に請求しなければ支払われません。特定した投稿者には、示談交渉(話し合いによる解決)や損害賠償請求の裁判で、慰謝料(精神的苦痛に対する賠償金)などの支払いを求めます。
投稿者が日本に住んでいたり、日本に財産があったりすれば、国内の相手と同じように進めやすくなります。一方、投稿者が海外に住んでいる場合は、訴状などを海外へ送達する必要があり時間がかかるうえ、日本に財産がないと、裁判で勝っても強制執行で支払いを受けるのが難しくなることがあります。そのため、相手の生活の拠点や財産の状況も踏まえて、示談と裁判のどちらで進めるかを検討します。
示談や裁判での損害賠償請求の手順や慰謝料の相場は「名誉毀損の慰謝料相場はいくら?請求できる条件を弁護士が解説」で詳しく説明しています。
海外が絡む開示請求は早めに弁護士へ相談を
海外サイトやSNSでの誹謗中傷でも、日本で開示請求を進められる道はあります。ただし、ログの保存期間や投稿者が使う回線によっては特定が難しくなり、日本で登記をしていない海外の運営会社が相手なら、書類の翻訳や海外への送付にも時間がかかります。
弁護士に依頼すれば、どの裁判所に申し立てるか、誰を相手方にするかの判断から、翻訳を含む書類の準備までを任せられます。ログが消える前に手続きへ着手するためにも、早めの相談が大切です。
「海外の会社が相手で、何から始めればいいかわからない」「投稿からもう時間がたってしまった」と一人で悩まれている方も、まずは今の状況をお聞かせください。
当事務所は誹謗中傷問題を重点的に取り扱っており、海外法人を相手にした削除請求・発信者情報開示請求にも豊富な実績がございます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
| ネットで誹謗中傷されたら弁護士に無料で相談してみよう |
|
この記事の監修者
ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

