ネットの誹謗中傷で警察が動かない理由と3つの対処法を解説

「ネットで誹謗中傷を受けているのに、警察に相談しても動いてもらえないのではないか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。実際に被害届を出したのに対応してもらえなかった経験のある方もいるかもしれません。

確かに、誹謗中傷は表現の自由との線引きが難しく、警察がすぐに捜査へ動かないケースが多いのが実情です。しかし、違法性が高いと判断される事案では警察も逮捕に踏み切っており、2022年の侮辱罪厳罰化以降は検挙件数も増加傾向にあります。

この記事では、ネット誹謗中傷の犯人特定に強い弁護士が、次の点について解説します。

  • 警察がなかなか動いてくれない理由
  • 警察が動いてくれるケース
  • 警察に動いてもらうための対処法
  • 警察に頼らず誹謗中傷を止める方法

なお、ネットの誹謗中傷でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へご相談ください。

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ネット誹謗中傷で警察がなかなか動いてくれないのはなぜ?

皆さん、"民事不介入の原則"という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

民事不介入の原則とは、犯罪(刑事)ではない個人間のトラブル(民事)に警察権は立ち入れないという原則です。

警察は事件を捜査し被疑者を逮捕することが仕事ですので、慰謝料請求や示談(当事者間で和解する話し合い)といった民事事件として扱うべきものについては動くことができないのは当然です。

この点、「人の悪口や事実無根の内容を不特定多数の人が目にするネット掲示板やSNS(X・インスタなど)、オンラインゲームのチャット等に書き込むことは、侮辱罪や名誉毀損罪として刑事事件になるのでは?」そう考える方もいることでしょう。

しかし、ある投稿内容が侮辱や名誉毀損にあたるかどうかの線引きは難しく、また、憲法で保障された表現の自由との兼ね合いから、警察も「事件性が高い」と判断できなければ易々とは立件できません。

そのため、よほど悪質な投稿でない限り「民事で解決してください」というのが警察の一般的な対応なのです。

警察に頼れない場合でも、自分で投稿の削除を進めることは可能です。具体的な方法については「ネットの誹謗中傷の書き込みを削除する7つの全手順を徹底解説!」で詳しく解説しています。

警察が動いてくれるケースは?

では、ネット誹謗中傷被害を受けた場合に警察が全く動かないのかといえばそうではありません。

2022年7月、侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」へと引き上げられました(その後、2025年6月1日施行の改正刑法により「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されています)。きっかけは、女子プロレスラーの木村花さんがSNS上の誹謗中傷を苦に亡くなった事件です。

この厳罰化により公訴時効(刑事事件を起訴できる期限)も1年から3年に延長され、警察が捜査に着手しやすくなっています。

実際の検挙件数も増えています。警察庁の犯罪情勢統計によれば、インターネット上の名誉毀損罪・侮辱罪の検挙件数は令和6年中に487件を記録し、前年比11.7%の増加となりました。

投稿回数や期間、書き込み内容からして"違法性が高い"事案であれば逮捕に動くこともあります。住所・氏名・家族関係といったプライバシー侵害を伴うもの、リベンジポルノ、殺害予告など被害が深刻になり得る投稿は、警察も事件性ありと判断しやすい類型です。

例えば、2024年11月、高知市の公立中学校で20代の女性教諭を中傷する動画をSNSに投稿したとして、中学3年の男子生徒が名誉毀損の疑いで高知東署に逮捕されました。教諭が被害届を提出してから約3週間というスピード逮捕で、未成年者の投稿でも違法性が認められれば警察が動くことを示した事例です(出典:高知新聞2024年11月20日)。

また、2024年3月には、競泳の瀬戸大也選手になりすまして卑猥な画像をX(旧ツイッター)に投稿した会社員の男が、名誉毀損とわいせつ図画陳列の疑いで埼玉県警に逮捕されています。瀬戸選手が警察に相談してから約7ヶ月で逮捕に至った事例で、有名人の被害でも捜査には一定の時間がかかることがわかります(出典:デイリースポーツ2024年3月6日)。

業務妨害罪での摘発も増えています。2024年7月には、能登半島地震の際にX上で虚偽の救助要請を投稿したとして、25歳の男性が偽計業務妨害罪で逮捕されました。災害時のデマや虚偽情報も、緊急対応のリソースを浪費させた業務妨害として刑事責任を問われるケースです。

なお、刑事事件とは別に、民事上の損害賠償請求も有力な解決手段です。慰謝料請求の手順や相場については「名誉毀損で慰謝料や損害賠償請求する人のための全手順と相場を公開」をご参照ください。

名誉毀損罪・侮辱罪の成立要件と法定刑

誹謗中傷で警察が動く可能性があるのは、書き込みが犯罪の成立要件を満たしているケースです。まず、ネット上の誹謗中傷で問題となりやすい名誉毀損罪と侮辱罪の成立要件を確認しておきましょう。

名誉毀損罪(刑法230条1項)

名誉毀損罪が成立するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。ネット上の誹謗中傷でも、要件にあてはまれば名誉毀損罪が成立します。

  • 公然性:不特定または多数の人に伝わり得る状態で発信されたこと
  • 事実の摘示:社会的評価を下げ得る具体的な事実が示されたこと(真偽は問わない)
  • 名誉の毀損:その内容が相手の社会的評価を低下させるおそれがあること

法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。ただし、書き込みが公共の利害に関する事実で、その目的が専ら公益を図ることにあり、内容が真実だと証明できた場合には、違法性が阻却されて処罰されません(刑法230条の2)。

侮辱罪(刑法231条)

侮辱罪は、事実を摘示せず公然と他人を侮辱した場合に成立します。ネット上の誹謗中傷で「バカ」「無能」「ブス」のように、抽象的な評価や罵倒で相手の社会的評価を下げる発言が典型例です。

法定刑は1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料。先に触れたとおり、2022年の厳罰化以前は「拘留又は科料」しかなく、抑止力が弱いという批判が長く続いていました。

実名でなくイニシャルや伏字でも名誉毀損が成立する場合があります。判断基準については「イニシャル・伏字・源氏名の誹謗中傷でも名誉毀損になる?」で詳しく解説しています。

名誉毀損罪や侮辱罪以外でも警察は動く

書き込み内容が名誉毀損や侮辱に該当しない場合でも、以下のような犯罪が成立すれば警察は逮捕に動きます。

書き込み内容 成立する犯罪 法定刑
ある人(またはその親族)の生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加える内容

例:「お前の娘をヤクザに売り飛ばすぞ」「交際時に撮った性行為の動画をネットにばら撒いてやる」

脅迫罪
(刑法222条)
2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
無差別殺人や施設等の爆破予告などの犯行予告、威力を用いて相手の業務を妨害する内容

例:「新宿駅に設置した爆弾が本日中に爆発する」「店員の態度がムカつくから仲間総出で店を潰してやる」

威力業務妨害罪
(刑法234条)
3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
嘘やデマで相手の業務を妨害する内容

例:「ラーメン店〇〇のスープはネズミで出汁をとっている」「〇〇温泉は入浴剤で色付けしている」

偽計業務妨害罪
(刑法233条)
3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

投稿者が匿名であっても、法的手続きによって特定することが可能です。投稿者の特定方法や費用については「発信者情報開示請求とは?費用や期間などの情報をまとめました」で詳しく解説しています。

名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪

検察官が被疑者を刑事裁判にかけるためには起訴する必要がありますが、被害者が告訴をして初めて起訴できる犯罪を「親告罪」といいます(刑法232条1項)。ネット上の誹謗中傷を警察に取り締まってもらいたい場合、この親告罪のルールが大きく影響します。

親告罪が設けられている理由の一つは、事件として事実が明るみになることで被害者のプライバシーや利益が侵害される恐れがあるからです。

例えば、「Aさんは児童買春で逮捕歴がある」という書き込みは名誉毀損罪、「Aはどんな仕事を与えても役に立たない」という書き込みは侮辱罪が成立する可能性があります。

しかし被害者であるAさんからしてみれば、この書き込み内容が事実かどうかは別として、これ以上、この書き込み内容が人に知れ渡るリスクは避けたいと考えることもあるでしょう。

にも拘らず、Aさんの意図に反して警察が勝手に犯人を逮捕し、検察が起訴をして刑事裁判となれば、傍聴人はもちろんのことマスコミに報道されてAさんのプライバシーや平穏な生活が脅かされるリスクもあります。

そういう事態を避けるために、名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪とされているのです。

逆に言えば、被害者が加害者の処罰を望むのであれば、警察に告訴状を提出する必要があります。なお、告訴ができる期限は犯人を知った日から6ヶ月以内と定められている(刑事訴訟法235条1項)ため、投稿者が判明している場合は期限切れに注意が必要です。

警察に動いてもらうための対処法

誹謗中傷の事案で警察が積極的に動くかどうかは、被害者側の準備によっても大きく変わります。単に窓口へ通報するだけでは「相談したが取り合ってもらえなかった」という結果になりがちです。次の3点を意識して臨みましょう。

被害届と告訴状の違いと使い分け

警察への被害申告には「被害届」と「告訴状」の2種類があり、それぞれ性質が異なります。

書類 内容 捜査義務
被害届 「こういう被害に遭った」と警察に届け出る書類。加害者の処罰を求める意思表示までは含まない 受理後の捜査は義務ではない
告訴状 被害事実の申告に加え、加害者の処罰を求める意思表示を含む 受理した捜査機関は捜査を開始する義務を負う

名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪なので、最終的に加害者を刑事裁判にかけるには告訴状の提出が必要です。

ただし、告訴状が受理されると、警察は速やかに書類・証拠物を検察官に送付しなければならず(刑事訴訟法242条)、検察官は処分結果を告訴人へ通知する義務を負います(同法260条)。こうした手続上の負担があるため、警察は受理を渋る傾向があります。そこで実務的には、まず受理されやすい被害届で被害事実を伝え、捜査の進展や証拠の固まり具合に応じて告訴状に切り替える流れが現実的です。

刑事告訴の具体的な手続きや告訴状の書き方については「ネットの誹謗中傷を名誉毀損罪で刑事告訴する手続を徹底解説!」もあわせてご確認ください。

サイバー犯罪相談窓口に相談する

ネット上の誹謗中傷事案を専門に扱っているのは、各都道府県警察本部に設置されたサイバー犯罪対策課などの専門部署です。最寄りの警察署や交番では対応が難しい事案でも、専門部署のサイバー犯罪相談窓口へ直接連絡することで捜査につながるケースがあります。

警察庁のホームページに、各都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口の一覧が公開されています。

参考:サイバー事案に関する相談窓口|警察庁

警察以外の相談先としては、総務省委託事業の「違法・有害情報相談センター」もあります。プロバイダや掲示板管理者への削除対応の進め方について、専門知識を持つ相談員からアドバイスを受けることができます。

被害の状況がわかる証拠を準備する

警察への相談で最も重視されるのが「違法性の高さ」と「具体的な被害」を裏づける証拠です。準備が不十分だと、犯罪該当性の判断が難しく、捜査の優先度も下がってしまいます。次のような資料を可能な限り揃えてから相談に向かいましょう。

  • 誹謗中傷投稿のスクリーンショット(日付・URLが映り込むように撮影)
  • 投稿が掲載されているページのURLと投稿日時・閲覧日時のメモ
  • 投稿者のアカウントページのスクリーンショットとアカウントID・URL
  • 誹謗中傷による具体的な損害を示す資料(営業損害なら帳簿、精神的被害なら医師の診断書等)

特にスクリーンショットは、投稿が削除されると証拠として確保できなくなります。被害を認識したら、可能な限り早い段階で保存しておくことが重要です。

警察が動かない誹謗中傷被害は弁護士にご相談ください

ネット誹謗中傷で警察を動かすには、被害事実・違法性・証拠の3点を揃えて相談する準備が欠かせません。それでも捜査が進まないケースや、一刻も早く投稿を止めたい場合には、弁護士への相談が現実的な選択肢となります。

弁護士であれば、裁判所への仮処分申立てによる投稿の削除、プロバイダへの発信者情報開示請求による投稿者の特定、慰謝料などの損害賠償請求といった法的手段を幅広く講じることができます。刑事告訴についても、証拠の整理から告訴状の作成まで一貫してサポートが可能です。

ネット上の誹謗中傷は、時間が経つほど拡散し、精神的な負担も増していきます。すでに書き込みが広がっている場合や、警察に被害届を提出しても対応してもらえなかった場合は、できるだけ早い段階で専門家への相談を検討されることをおすすめします。

当事務所はネット誹謗中傷の刑事告訴や投稿者の特定に豊富な実績があり、全国どこからでも無料でご相談いただけます。お一人で悩まず、まずはお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

誹謗中傷の削除請求 発信者情報開示請求 名誉毀損・侮辱 風評被害対策 リベンジポルノ 慰謝料請求
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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