
「AVをトレントで落としただけなのに、なぜアップロードになるのか」「トレントなど使っていないのに、なぜ自分に届いたのか」。発信者情報開示に関する意見照会書を受け取った方が、最初に抱く疑問です。
ただ、書面が届いた時点では、あなたの氏名も住所もまだ相手方には渡っていません。発信者情報開示請求とは、権利を侵害されたと主張する側が、通信の記録をもとに利用者の氏名や住所などの個人情報をプロバイダから開示してもらう手続きのことです。意見照会書は、その情報を渡してよいかどうかを契約者本人に尋ねるための書面です。
書面には回答期限が示されていますが、その期限内に方針を決めれば、取れる手は残っています。ご自身に心当たりがある場合も、家族が使っていたなど覚えのない場合も、それぞれに進め方があります。
この記事では、ネット上の著作権トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- トレントのダウンロードが違法アップロードになる仕組み
- 意見照会書が届いたときの3つの対応
- 請求される金額と複数請求のリスク
- 身に覚えがない場合にすべきこと
お読みいただくことで、期限までに何を決めればよいか、ご自身のケースでは何が争点になるのかを整理できます。
なお、意見照会書がすでに届いていて回答期限が近い方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。地域を問わずご相談を承っています。
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【相談事例】AVをトレントで落としたら開示請求の通知が届きました
40代会社員のMさん(仮名)のもとに、ある日、見慣れない法律事務所からの封筒が届きました。親展と書かれた封筒を開けると、契約しているインターネットプロバイダーの代理人弁護士から送られた「発信者情報開示に関する意見照会書」が入っていました。
書面には、AV制作会社がMさんによる著作権侵害を主張し、氏名や住所などの個人情報開示を求めていること、14日以内に「開示に同意する」か「同意しない」かを回答するよう書かれており、IPアドレス・アクセス日時・問題となったAVファイル名まで添付されていました。
Mさんには心当たりがありました。数ヶ月前、トレント(BitTorrent/ビットトレント)でアダルトビデオ(AV)の動画をダウンロードしたのです。ただし「個人で見るためにダウンロードしただけ」という認識で、アップロードはしておらず、著作権侵害に該当するとは思っていませんでした。それなのに意見照会書には「ダウンロード及びアップロード」と書かれており、混乱しました。
家族に知られるのは絶対に避けたいと考えたMさんは、自己判断は危険だと考え、当事務所に相談に来られました。Mさんの行為は著作権侵害に当たるのでしょうか。意見照会書にどう対応すべきでしょうか。順を追って解説します。
※本記事の相談内容は、よくあるご相談をもとにした設例です。
トレントでのAVダウンロードが違法アップロードになる仕組みと罰則
アダルトビデオ(AV)をトレントで落とした行為が違法アップロードとして扱われるのは、このソフトが、ファイルを受け取るのと同時に、受け取った部分を他の利用者へ送り返す設計になっているためです。手元では保存操作しかしていなくても、送信は自動で進みます。
意見照会書に「ダウンロード及びアップロード」と書かれていて戸惑った方も多いはずです。まずはその記載の意味から確認します。
受け取った断片を他の利用者へ送り返す仕組みになっている
動画配信サイトからの視聴やダウンロードは、事業者が用意した1か所のサーバーから利用者へデータが流れる形です。受け取る側と渡す側がはっきり分かれており、利用者が誰かへデータを渡すことはありません。
トレントはこの形をとりません。利用者どうしが直接データをやり取りするP2P方式(ピア・ツー・ピア)が使われており、ファイルは細かい断片に分割され、その断片を持っている利用者同士が互いに渡し合うことで1本の動画が組み上がります。ソフトを起動して目的のファイルを指定すると、断片を受け取る役割と、すでに受け取った断片を求めている相手へ渡す役割が、同時に割り当てられます。
つまり、保存が終わるまでの間、あなたの回線からも見知らぬ誰かへ同じ作品のデータを渡せる状態が続いていたことになります。ソフトを閉じずに放置していれば、その時間だけ送信も続きます。
著作権法は、著作物を公衆に向けて送信する権利(公衆送信権)を定めており、ネット上で求めに応じて自動的に送信できる状態に置くこと(送信可能化)も、この権利に含めています(23条1項)。断片であっても、求められれば渡せる状態にしていた以上、この権利の侵害として扱われます。権利者側が通知で「アップロード」と表現しているのは、この部分を指しています。
なお、トレントというソフトを使うこと自体を法律が禁じているわけではありません。配布が許された無償ソフトや自作データのやり取りに使う分には問題は生じません。境界は、扱ったファイルが権利者の許諾なく流通しているものかどうかにあります。「トレントはダウンロードのみも違法?開示請求や損害賠償のリスク」では、この線引きをもう少し細かく扱っています。
違法アップロードと違法ダウンロードでは罰則が大きく違う
著作権法は、送信する側と受け取る側とで法定刑を分けています。AVのトレント利用は両方の性質を持つため、重いほうが問題になります。
| 行為 | 根拠条文 | 法定刑 | 告訴の要否 |
| 違法アップロード(公衆送信権等の侵害) | 著作権法119条1項 | 10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり) | 原則として告訴が必要(123条1項)。一定の目的がある場合は不要(123条2項) |
|---|---|---|---|
| 違法ダウンロード(私的使用目的の録音録画) | 著作権法119条3項1号 (違法配信と知りながら行った場合) |
2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(併科あり) | 告訴が必要(123条1項) |
トレントの場合、受信の操作しかしていなくても送信が同時に生じているため、上段の10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金が上限となる枠組みで評価され得る点が、他のダウンロード行為との決定的な違いです。なお表にある「併科」とは、拘禁刑と罰金の両方を科すことをいいます。
告訴の要否についても補足します。ここでいう告訴とは、被害を受けた側が捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示のことです。著作権法123条2項は、有償で販売されている作品を原作のまま公衆送信した場合であっても、対価として利益を得る目的か、権利者の利益を害する目的があり、かつその利益が不当に害される場合に限って、告訴なしで起訴できると定めています。個人が視聴のために落としただけであれば、通常この目的要件は満たしません。権利者との話し合いが刑事面でも意味を持つのは、この構造によります。
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。同日より前の行為の処罰については、原則として改正前の例(懲役など)によります。
AVメーカーがトレント利用者を特定して開示請求に至るまでの実態
AVをトレントでダウンロードした後に意見照会書を受け取った方の多くは、「なぜ自分だけが選ばれたのか」と感じます。実際には個別に狙い撃ちされているのではなく、機械的な監視と定型化された手続きの上に成り立っています。規模も、想像よりはるかに大きくなっています。
総務省が令和7年11月に公表した資料によれば、令和6年にアクセスプロバイダへ申し立てられた発信者情報開示請求は154,484件でした。そのうち147,746件、割合にして約95.6%がP2Pファイル共有ソフトを用いたアダルト動画の著作権侵害に関する事案だったとされています(出典:総務省「P2Pファイル共有ソフトの不適切な利用による著作権侵害に係る発信者情報開示請求への対応について」)。同資料によれば、対応に当たる裁判所やアクセスプロバイダからは、請求の急増で業務の円滑な遂行に支障を来しつつあるとの声も寄せられています。
年間15万件近い請求が動いている以上、届いた書面は特別なものではありません。同じ立場の人が全国に大勢います。
AVメーカーは監視会社に委託して通信の記録を集めている
AVメーカーが自社で通信を追いかけているわけではありません。著作権侵害の監視には、トレントの通信調査を専門とする事業者があたっています。権利者から委託を受けて、対象の著作物が流通しているトレントのネットワークに常時参加し、断片を受け渡している相手のIPアドレス(インターネットに接続した回線に割り当てられる番号)と通信の日時を記録しています。
記録は人手で選別されるのではなく、トレントのネットワークに接続しているシステムが自動で収集します。そのため、利用が短時間であっても、接続していた事実が残っていれば記録の対象になります。
総務省の前掲資料によれば、情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会が、P2Pファイル共有ソフトによる権利侵害を検知するシステムのうち信頼性の高いものについて認定を行っています。同資料は、プロバイダが開示の可否を判断する際に、この認定の有無を参考とすることには一定の合理性があると整理しています。つまり、法認定を受けたシステムで収集された記録は、プロバイダが開示の可否を判断する際の参考材料として扱われ得るということです。
「他の人も使っているのに、なぜ自分に」という感覚は自然でしょう。ただ、記録が残っている以上、誰でも手続きの対象になり得ます。
記録が集まってから通知が届くまでには4つの段階がある
トレント利用で残されたIPアドレスの記録が、プロバイダからあなたのもとに届く意見照会書に変わるまでには、次の段階を踏みます。
- 監視会社が記録を収集する
→権利者から委託を受けた監視会社が、対象作品をやり取りしている相手方のIPアドレスと通信日時を記録します。 - 調査結果が権利者の代理人へ渡る
→収集された記録は報告書の形にまとめられ、AVメーカーの代理人弁護士へ引き渡されます。 - 代理人がプロバイダへ開示を求める
→報告書を添えて、そのIPアドレスを割り当てていたインターネットサービスプロバイダに対し、契約者の氏名・住所などの開示を求めます。 - プロバイダが契約者へ意見を尋ねる
→プロバイダは求められてすぐ情報を渡すのではなく、契約者本人に「開示してよいか」を尋ねる書面を送ります。これが意見照会書です。
書面が届いた時点では、まだ氏名も住所も相手方には渡っていません。あなたの手元にある意見照会書は、情報が渡る前の最後の分岐点にあたります。ここでどう答えるかが、その後の展開を分けます。
トレントの開示請求で意見照会書が届いたときの3つの対応
AVのトレント利用を理由に届いた意見照会書に対して、契約者が取り得る道は、「同意する」「同意しない」「答えない」の3つです。書面には回答期限が示されます。目安になるのは2週間です。情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会が定める指針では、意見照会から2週間程度が過ぎても回答がないときは、発信者はその点について特段の主張をしないものとして扱うこととされています。それぞれ何が起きるのかを先に把握したうえで、書き方を決めてください。
なお、この書面は郵便で届くとは限りません。総務省は、プロバイダが契約者から申告を受けているメールアドレス宛てに送る方法も妨げられない、との考え方を示しています。心当たりがある方は、迷惑メールに紛れていないかも確認しておいたほうがよいでしょう。
①「開示に同意する」と回答する
同意すると回答すると、プロバイダから権利者側へ氏名・住所・電話番号・メールアドレスといった契約者情報が渡ります。以後のやり取りは、あなたとAVメーカーの代理人との間で直接進むことになります。
短期間で示談(当事者どうしの話し合いによる解決)の協議に入れるという面はありますが、提示された金額が妥当かどうかを検討する前に、相手が交渉を始められる状態に自分から進んでしまうことにもなります。回答する前に、トレント開示請求の根拠と金額の見通しを押さえておきたいところです。
②「開示に同意しない」と回答する
同意しないと回答しても、それで開示が止まるわけではありません。プロバイダは、権利侵害が明らかかどうかといった開示の要件を自ら判断します。総務省の前掲資料によれば、アクセスプロバイダの中には、認定を受けた検知システムの結果を踏まえて要件を満たすと判断し、裁判手続を経ずに開示している例もあります(同資料は、契約者が不同意と回答した場合の扱いまでは述べていません)。また、プロバイダが開示しない場合でも、権利者側は裁判所へ発信者情報開示命令の申立てを行うことができ(情報流通プラットフォーム対処法8条)、裁判所が要件を満たすと判断すれば、契約者の意向にかかわらず情報は開示されます。
不同意は「拒否して終わらせる手段」ではなく、「開示してよいかの判断をプロバイダや裁判所に委ねる選択」だと理解しておくのが正確です。AVの利用に身に覚えがない、あるいは記録の内容に争う余地があるといった事情があるなら、その主張を書面に残す意味は大きくなります。実際にどう書くかは「トレント開示請求で届く意見照会書|拒否理由の書き方とその後の流れ」にまとめました。
③回答しないまま期限を過ぎる
最も避けたいのがこれです。答えなければ手続きが止まると考えてしまいがちですが、そうはなりません。
総務省の資料は、プロバイダがあらかじめ十分な回答期限を示して意見照会を行った場合、期限を過ぎても回答がないときは、回答がなかったことを前提に開示の諾否を判断してよいという整理を示しています。前述のとおり、2週間程度を過ぎて回答がなければ、発信者は特段の主張をしないものとして扱われます。
つまり沈黙は時間稼ぎにならず、言い分を述べる機会を自分から手放す結果になりかねません。仮に後から争おうとしても、初期に何も主張していないことが、後の交渉などで不利に働くおそれもあります。意見照会書を放置した場合、さらにその後に届く示談金請求まで無視し続けた場合に何が起きるかは、「トレント開示請求や示談金請求の無視でどうなる?リスクを解説」で別途扱っています。
開示された後に何が起きる?AVメーカーからの損害賠償と刑事告訴のリスク
トレントに関する発信者情報が開示された後は、AVメーカー側の代理人から民事上の損害賠償請求の書面が届くのが一般的な流れです。請求は1社で終わるとは限らず、対応の仕方によっては刑事手続に進む可能性も残ります。ここでは、請求額の実態、請求が重なる理由、刑事面のリスクを順に見ていきます。
請求される金額と裁判所が認める金額には開きがある
トレントの開示請求で最初に押さえておきたいのは、書面に書かれた金額が、そのまま支払うべき金額を意味するわけではないという点です。請求の場面と判決の場面では、金額の桁が変わることがあります。
請求段階の水準から見ていきます。当事務所がトレント案件で扱った事案では、AVメーカーから提示される金額は1作品あたり22万円であることが多く、複数作品をまとめて解決する場合は55万円(事案により33万円から77万円)での提示を受けることが多い印象です。
一方、争われた場合に裁判所が認めた額は、これと大きく異なります。知的財産高等裁判所 令和4年4月20日判決(令和3年(ネ)10074号・債務不存在確認請求控訴事件)は、BitTorrentの利用者側が権利者に対して債務の不存在確認を求めた事案の控訴審です。裁判所は損害額を次の枠組みで算定しました。
- 対象とする回数:その利用者がBitTorrentを使っていた期間中に、ネットワーク全体で作品がダウンロードされたと推定される回数に限る(利用前・利用停止後は含めない)
- 単価の取り方:権利者が作品をストリーミング配信で販売する際の利益額(1ダウンロードあたりの損害額)
この算定により、判決で認められた額は1人あたり15,906円から59,892円の範囲にとどまりました。しかもこの事件では、一審原告11名のうち2名について「本件著作物をダウンロードしたと認めるに足りる証拠はない」と判断され、賠償義務そのものが否定されています。
ここから読み取れることは2つあります。この判決では金額がAVのトレント利用の実態に応じて積み上げる形で計算されており、算定の前提を確認すれば下がる余地があること。そして、記録に名前が挙がったからといって、責任が自動的に確定するわけではないことです。金額そのものの相場と、減らせる余地がどこにあるかは「トレント開示請求の示談金相場は?高すぎる請求の減額と対処法を解説」が詳しいです。
1社で終わらず、別のメーカーからも請求が届くことがある
1社のAVメーカーと話がついたのに、しばらくして別の会社の代理人から書面が届く。この展開は珍しくありません。
理由は権利の持ち主にあります。アダルトビデオの著作権は、作品を製作したメーカー(映画製作者)に帰属するのが通常です(著作権法29条1項)。同じ時期にトレントで扱った作品のメーカーが複数にわたれば、メーカーごとに別々に手続きが進みます。1社との示談は、他社の請求を止める効力を持ちません。
そのため、最初の1社に対して金額を確かめないまま応じてしまうと、後から届いた請求と合わせて総額が高額に膨らむことになります。何社から来る可能性があるのかは、開示請求の対象とされた作品の数や利用していた期間からある程度の見当がつきます。1社目の書面が届いた段階で全体像を見積もっておくと、支払いの順序や条件の組み立て方が変わります。
起訴されれば裁判は公開で行われ、有罪が確定すれば前科がつく
著作権侵害は民事の問題にとどまりません。トレント利用は違法アップロードとして評価されるため、著作権法119条1項による刑事罰の対象になり得ます。
もっとも、同法123条1項により、この罪は原則として権利者の告訴がなければ起訴できない親告罪です。告訴なしで起訴できるのは、前述した123条2項の目的要件を満たす場合に限られます。権利者との間で解決がついていれば、刑事手続まで進む可能性は相応に下がると考えられます。
ただし、請求を無視し続けたり、交渉が決裂したりすれば、権利者が刑事の手続きを選ぶ余地は残ります(親告罪の告訴には、犯人を知った日から6か月という期間の制限があります。刑事訴訟法235条)。有罪判決が確定すれば前科として記録に残り、資格や就業に影響が及ぶ場面も出てきます。
見落とされやすいのが、記録の残り方です。裁判の対審(法廷での審理)と判決は公開の法廷で行われることが憲法82条1項で定められています。刑事事件の訴訟記録は、事件が終わった後、原則として誰でも閲覧できます(刑事訴訟法53条1項)。損害賠償をめぐる民事裁判になった場合も、範囲に制限はあるものの、第三者が記録の閲覧を請求できます(民事訴訟法91条1項・91条の2第1項)。話し合いの段階で解決すれば、民事裁判の記録が生じることはなく、刑事手続に進む可能性も下がります。刑事事件になった実例と逮捕に至る確率については、「トレントで捕まる確率は?逮捕される違法行為と対処法を解説」を参照してください。
AVのトレント利用で開示請求されたときの対処法
AVのトレント問題で、やるべきことは多くありません。順番だけ間違えなければ、限られた時間でも必要な手当ては打てます。書面が届いた日から、次の順で進めてください。
- トレントソフトを止めて、保存したファイルを削除する
- 回答期限と請求元、対象になった作品を書面で確認する
- 身に覚えがあるなら、示談による解決を検討する
- 身に覚えがないなら、不同意で回答して手がかりを残す
①トレントソフトを止めて、保存したファイルを削除する
最初に手を付けるのはここです。トレントソフトが起動したままだと送信が続き、その間の通信もあらたな記録として残り得ます。前掲の知的財産高等裁判所の判決のように、利用していた期間に応じて賠償額を算定した裁判例もあるため、止めるのが1日早いだけでも意味があります。
BitTorrent(ビットトレント)をはじめとするクライアントソフトを終了させたうえで、パソコン起動時の自動実行の設定も切ってください。そのうえで、保存済みのファイルと、ダウンロードのもとになったデータを削除します。
なお、削除しても過去の記録が消えるわけではありません。ここでの目的は、これ以上記録を増やさないことにあります。
②回答期限と請求元、対象になった作品を書面で確認する
次に、届いた書面から事実関係を拾い出します。確認すべきは、回答期限の日付、開示を求めている権利者の名称、その代理人、対象とされたIPアドレスと通信日時、そしてAVの作品名です。
このうち回答期限は最優先で確認してください。目安は2週間程度で、郵便の到着までの日数を考えると、手元で使える時間はさらに短くなります。
作品名と通信日時は、身に覚えの有無を判断する材料にもなります。その日時に自分が在宅していたか、トレントを動かしていた記憶があるか、回線を誰が使える状態だったかを、記憶が新しいうちに書き出しておいてください。
③身に覚えがあるなら、示談による解決を検討する
トレントの利用に心当たりがある場合、現実的な着地点は権利者との話し合いによる解決です。金額に折り合いがつけば、その権利者との関係はそこで解決します(別のメーカーからの請求には効力が及びません)。
刑事面でも意味があります。前述のとおり著作権法119条1項の罪は原則として告訴がなければ起訴できないため、権利者との間で解決がつけば、刑事手続へ進む可能性は下がると考えられます。すでに告訴された後であっても、起訴される前であれば、告訴は取り消すことができます(刑事訴訟法237条1項)。また、解決の内容は検察官の処分判断でも考慮される材料になります。刑事訴訟法248条は、犯人の性格や情状などのほか、犯罪後の情況も踏まえ、訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができる、と定めています。
ただし、AVメーカーから提示された金額をそのまま受け入れる必要はありません。前掲の裁判例のように、算定の前提を確認すると請求額と開きが出ることがあります。金額の根拠を尋ねないまま振り込むのは避けてください。
なお、心当たりがある場合でも、意見照会書そのものに同意で答えるか不同意で答えるかは一律には決まりません。請求元が1社か複数か、記録に争う余地があるかによって、早く交渉に入ったほうがよい場面と、裁判所の判断を経たほうがよい場面が分かれます。前掲の3つの対応を踏まえ、書面の中身を確かめたうえで選んでください。
④身に覚えがないなら、不同意で回答して手がかりを残す
トレントを使った覚えがないのに書面が届くことがあります。同居する家族が使っていた、来客に教えたWi-Fiのパスワードがそのまま使われていた、ルーターの設定が弱く外部から接続されていた、といった事情が背景にあるケースです。
この場合は、意見照会書に「同意しない」と回答したうえで、自分の行為ではないことを示す手がかりを集めます。通信日時に外出していたことが分かるレシートや交通系ICカードの履歴、勤務記録などが該当します。ルーターの接続履歴が残っていれば、それも残しておいてください。
不同意で回答しても、プロバイダの判断や裁判所の手続きを通じて開示される可能性は残ります。だからこそ、主張の中身と裏づけを早い段階で形にしておくことが効いてきます。原因はケースごとに違うため、「身に覚えがないトレント開示請求の意見照会書が届いた時の対処法」も併せてお読みください。
トレントの開示請求で弁護士に依頼する4つのメリット
AVのトレント問題では、相手方が手続きに慣れている一方で、請求を受ける側は初めて経験することばかりです。判断材料の差がそのまま結果の差になりやすいため、代理人を立てる意味は小さくありません。主なものは次の4つです。
- ① 家族や職場に知られるリスクを抑えられる
- ② 自分の状況の法的なリスクを見極められる
- ③ 意見照会書に適切な内容で回答できる
- ④ 示談交渉や訴訟対応を任せられる
①家族や職場に知られるリスクを抑えられる
トレントの相談に来られる方が最初に口にするのは、金額よりも「家族に知られたくない」という一点です。
AVメーカー側は代理人弁護士を立てて手続きを進めているのが通常です。弁護士職務基本規程52条は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なくその代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならないと定めています。こちらも代理人を立てれば、相手方の代理人からの連絡は弁護士事務所宛てに切り替わるのが通常であり、自宅へ書面や電話が届く場面は事実上抑えられます。ただし、別の作品についてプロバイダから届く意見照会書や、訴訟になった場合の裁判所からの書類は、ご自宅に届くことがあります。
すでに届いている意見照会書への回答も、弁護士名で提出できます。示談で解決できれば、通常は法廷での審理に至らないため、記録として外部に残る経路も生じにくくなります。合意の内容を口外しない旨の条項を入れておけば、話が広がるリスクもさらに下げられます。
②自分の状況の法的なリスクを見極められる
届いた書面には、IPアドレス・通信日時・AVの作品名が並んでいます。ただし、その記録が何をどこまで裏づけているのかは、書面を読んだだけでは判断できません。
弁護士に相談すれば、記録の内容と自分のトレントの使い方を突き合わせて、責任が認められる範囲と想定される金額の幅を整理できます。前掲の裁判例のように賠償義務そのものが否定された例もあるため、争う余地があるのかどうかを早い段階で見極める価値は高いといえます。
見通しが立てば、期限までに何を決めればよいかもはっきりします。漠然とした不安のまま期限を迎えるのが、いちばん避けたい状態です。
③意見照会書に適切な内容で回答できる
トレントの利用を理由に届いた意見照会書への回答は、後の交渉や裁判で相手方に読まれることを前提に書く必要があります。同意・不同意のどちらを選ぶかだけでなく、理由の書き方によって、その後の主張の通りやすさが変わってきます。
弁護士に依頼すれば、請求の根拠を確認したうえで、争点になり得る部分を落とさない形で回答書を作成できます。AVの利用に身に覚えがない事案では、この段階でどこまで書いておくかが特に効いてきます。
期限が短いことも、専門家に任せる理由になります。書き方を調べながら自分で作るには、2週間はけっして長くありません。
④示談交渉や訴訟対応を任せられる
発信者情報が開示された後は、金額をめぐる交渉が始まります。相手方はAV関連の同種案件を数多く扱っているため、提示された金額の妥当性を個人が単独で検証するのは簡単ではありません。
弁護士が窓口になると、算定の前提を確認しながら、実態に見合った水準を目指して示談交渉にあたります。複数のAVメーカーからトレント利用を理由とする請求が来ている場合も、全体の見通しを立てたうえで、支払いの順序や条件を組み立てていきます。
示談交渉がまとまらず訴訟に移った場合も、訴訟対応として期日出頭や書面の作成をそのまま任せられます。日常生活への影響を抑えながら手続きを進められる点は、実務上の利点として大きいところです。
なお、当事務所の弁護士費用は、ご依頼時の着手金と、事件終了時に成果に応じてお支払いいただく報酬金が基本で(別途、実費や日当等がかかる場合があります)、金額は事案の難易に応じてお見積りします。初回のご相談は原則無料で、カードでのお支払いや分割払いのご相談にも応じています。
AVのトレント利用と開示請求のよくある質問
AVのトレント利用に関する相談の場で繰り返し尋ねられる4つの疑問に、順にお答えします。
何年も前に使ったきりですが、いまから請求されることはありますか
あります。損害賠償を求める権利は、権利者が損害と相手方を知った時から3年、行為の時から20年が経過すると時効によって消滅します(民法724条)。開示によって相手方が判明した直後であれば、3年の起算はそこから始まるため、利用自体が数年前であっても請求は成り立ちます。
実際に請求が届くかどうかは、権利者側にトレントの記録が残っているか、プロバイダに当時の接続履歴が保存されているかに左右されます。AVのダウンロードをやめてから時間が経っていることは、責任がなくなる理由にはなりません。
AVを1本落としただけでも請求されるのでしょうか
AVをダウンロードした本数にかかわらず、公衆送信にあたる行為があれば権利の侵害は成立します。「1本なら対象外」という基準は法律上ありません。
もっとも、金額は利用の実態の影響を受けます。前掲の知的財産高等裁判所の判決は、その利用者がトレントを使っていた期間中にネットワーク全体で作品がダウンロードされたと推定される回数に、1ダウンロードあたりの損害額を掛ける方法で損害を算定していました。1本でも請求の対象にはなりますが、対象の作品が少なく利用期間が短ければ、金額は小さくなり得ます。
トレントのソフトを消してファイルも削除しました。責任はなくなりますか
なくなりません。削除で消えるのは手元のデータだけで、トレントで、いつ、どの回線(IPアドレス)がどの作品を送信できる状態にしていたかという記録は、権利者側に残っています。責任の有無は、その記録をもとに判断されます。
とはいえ、送信を止めるのが早ければ対象となる期間は短くなり、前掲の判決のような算定方法では金額にも反映され得ます。記録を消すためではなく、これ以上増やさないために行う対応だと考えてください。
スマートフォンで保存した場合も特定されますか
トレント利用を特定する手がかりになるのはIPアドレスであり、端末の種類ではありません。パソコンかスマートフォンかで扱いが変わることはないと考えてよいでしょう。
AVをダウンロードした端末が自宅のWi-Fiにつながっていれば、その回線の契約者へ照会が向かいます。携帯回線から直接つないでいた場合は、その回線の契約者が対象です。いずれの場合も、書面が届くのは通信を行った本人ではなく回線の契約者である点に注意が必要です。
AVのトレント利用で開示請求を受けた方は早めにご相談ください
トレントでのAVのダウンロードは、仕組みのうえで送信を伴います。そのため意見照会書への答え方が、その後の展開を大きく分けます。もっとも、提示された請求額がそのまま確定するわけではなく、算定の前提を確かめれば動く余地は残っています。
その見極めには、届いた書面の記録とご自身の利用状況を突き合わせる作業が要ります。判断がつかないまま期限を迎えてしまうと、言い分を述べる機会も、金額を検討する機会も失われかねません。相手方はこの種の案件を数多く扱っており、こちらだけが手探りという状態は避けたいところです。
「家族に知られたくない」「期限まで日がない」「すでに代理人弁護士から通知書が届いている」。どの段階であっても、打てる手が尽きているわけではありません。むしろ早いほど、選べる道は多く残っています。
当事務所はトレント関連の著作権トラブルを多数お引き受けしてきました。ご家族や職場に影響が及ばないよう配慮しながら、示談交渉による穏便な解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

