トレントで捕まる確率は?逮捕される違法行為と対処法を解説

「トレントで捕まる確率は、実際のところどのくらいなのか」。意見照会書が届いて青ざめている方からも、使い続けてよいのか迷っている方からも、最初に受けるのはこの質問です。結論からお伝えすると、一般の利用者が逮捕に至る例は多くありません。警察庁の統計では、トレントに限らず著作権侵害事犯全体で検挙されたのは令和7年で64件です(人数ではなく事件数です)。

もっとも、確率が低いことと、自分が対象から外れることは別の話です。トレントは、受け取ったデータの断片をその場で他の利用者へ送り返す仕組みです。受け取っただけのつもりでも、違法アップロードと評価されることがあります。しかも刑事事件にならなくても、発信者情報開示請求と損害賠償請求は現実に動いています。

この記事では、トレント案件を多数扱ってきた弁護士が、次の点について解説します。

  • 逮捕される可能性があるのはどんなケースか
  • 逮捕者がほとんど出ていない3つの理由
  • 実際に逮捕・検挙された5つの事例
  • 逮捕を回避するために今できること

お読みいただくことで、自分のケースがどの程度のリスクなのかを見極め、いま何をすべきかを判断できます。

なお、意見照会書や請求書がすでに届いている方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っております。早期対応が結果を左右します。

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トレント利用で逮捕される3つの違法行為

BitTorrent(通称ビットトレント)やμTorrentに代表される「トレント」は、多数の利用者が少しずつデータを分け合って大きなファイルを配布する仕組みです。無料で配布されている基本ソフトのインストールイメージや、PCゲームの大型アップデートのように、権利者が自ら配布に使っている例もあります。ソフトの利用そのものに違法性はありません。

ただし、著作権で保護された作品を無断で共有すれば著作権法違反となり、扱った作品自体が刑法などに触れる内容であれば別の罪にもあたります。いずれも逮捕される可能性があります。

刑事罰の対象になり得る3つの行為を見ていきましょう。

  • ①違法アップロードをした場合
  • ②違法ダウンロードをした場合
  • ③刑法上違法な内容を含む作品を扱った場合

①違法アップロードをした場合

トレントには、気づかないうちに著作権侵害の当事者になってしまう危険な特性があります。

「トレント」はP2P(ピアツーピア)技術のひとつで、受け取ったデータの断片を、受け取っている最中から他の利用者へ自動で送り返す仕組みになっています。ダウンロードだけをしているつもりでも、トレントではこの自動送信が同時に起きています。

著作権者が許可していないコンテンツをトレントでダウンロードする行為は、通常、結果として違法アップロードを伴うことになります

トレントの仕組み

著作権法では、著作者に「公衆送信権」(著作権法23条1項)が認められており、著作物を無断でインターネット上に公開する行為はこの権利の侵害となります。なかでも、ファイルをアップロードして不特定多数がダウンロードできる状態にする行為は「送信可能化権」の侵害にあたり、実際にダウンロードされたかどうかにかかわらず違法です。

トレントでは、受信と同時にこの送信可能化が生じるのが通常です。そのため、本人の意識はダウンロードだけであっても、罪名としてはダウンロードではなく送信可能化権の侵害(違法アップロード)として逮捕の対象になり得ます。

違法アップロードに対する罰則は、「10年以下の拘禁刑」または「1000万円以下の罰金」、もしくはその両方です。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法で導入された刑罰で、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」を統合したものにあたります。

②違法ダウンロードをした場合

権利者に無断で公開された作品だと分かったうえで取得する行為も、著作権法違反(違法ダウンロード)にあたります。

ただし、過去の逮捕事例で違法ダウンロード単独を理由としたものはほとんどありません。多くは、ダウンロードと同時に行われる違法アップロードを理由として逮捕される構図です。つまり、この類型の罰則は実在するものの、実際に立件されるのは①の形が中心だということです。

違法ダウンロードの罰則は、「2年以下の拘禁刑」または「200万円以下の罰金」、もしくはその両方です(著作権法119条3項)。ただし、トレントでの取得がこの刑事罰の対象になるには、私的使用の目的で、有償で提供されている作品を違法に配信されたものだと知りながら取得したことが必要です。音楽・映像以外の作品では、継続的に、または反復して取得したことも要件となり、軽微なものは除かれます。

トレントのダウンロードに関するリスクや実際の開示請求事例について、詳しくは「トレントはダウンロードのみも違法?リスクと開示請求された事例」をご参照ください。

③刑法上違法な内容を含む作品を扱った場合

著作権法に違反していない場合でも、トレントで扱った作品自体が刑法などに触れる内容であれば、逮捕に至ることがあります。

具体的には、アダルトコンテンツはわいせつ物頒布等罪(刑法175条)に抵触することがあります。児童ポルノは児童買春・児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)に抵触します。これらの作品をトレントで不特定または多数の者に提供・公然陳列する行為は、著作権侵害とは別の法律違反として刑事罰の対象になります。加えて児童ポルノについては、自己の性的好奇心を満たす目的で所持していた場合にも罰則があるため、取得した側も対象になり得ます。

これらの行為に対しては、以下の刑罰が定められています。

わいせつ物頒布等罪 2年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金もしくは科料、または拘禁刑と罰金の併科
児童ポルノを不特定または多数の者に提供・公然陳列等 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金もしくはその両方
児童ポルノの単純所持(自己の性的好奇心を満たす目的での所持に限る) 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

これらの罪は、原則として親告罪である著作権法違反と違い、誰の告訴も要件とせずに起訴され得る罪です。権利者と話をつけたかどうかに左右されません。捜査も、プロバイダから届く意見照会書とは別の経路で始まることがあります。心当たりがある場合は、書面が届いているかどうかにかかわらず、早い段階で弁護士に相談してください。

捕まる確率は低い?逮捕者がほとんど出ていない3つの理由

ここまで「逮捕される可能性のあるケース」を見てきましたが、著作権侵害が刑事事件として検挙された件数は、トレント以外も含めた全体でもごく限られています。警察庁の統計によれば、著作権侵害事犯の検挙事件数は令和5年98件、令和6年65件、令和7年(2025年)64件で、令和5年から大きく減り、その後は60件台で横ばいです。うちインターネットを利用した事犯は令和7年で53件(82.8%)でした(参考:警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」)。

では、トレントを使っていて捕まる確率は何%なのか。ここは正直にお伝えします。利用者の総数を示す公的な統計はありません。公表されている検挙件数も著作権侵害事犯全体の数で、そのうちトレント分がいくつかは示されていません。分母も分子も分からないため、割合そのものは計算できないというのが実情です。しかもこの統計が数えているのは事件数で、検挙には逮捕に至らない書類送致も含まれます。1件に複数名が含まれることもあるため件数と人数は一致しませんが、64件のすべてが逮捕された事案というわけではありません。そのうえで、逮捕者が大量に出ていない背景には次の3つの理由があります。

  • ①告訴がなければ起訴できず、捜査に至りにくいから
  • ②違法ダウンロード行為の立証が技術的に困難だから
  • ③検挙対象が悪質性の高いケースに絞られているから

①告訴がなければ起訴できず、捜査に至りにくいから

著作権法違反は原則として親告罪であり、著作権者からの告訴がなければ検察官は起訴できません(著作権法123条1項)。告訴が要るのは起訴の場面であって、捜査や逮捕そのものに告訴は要りません。もっとも、起訴できなければ刑事事件として立てる意味が薄くなるため、権利者が告訴に動かない事案は、そもそも捜査の対象になりにくいという関係にあります。

そのため、トレントの事案が刑事事件になる入口は、権利者側が先に動く場合と、警察が自ら違法ファイルを見つける場合に分かれます。権利者側が動く場合には、刑事告訴のほか、権利者や権利者団体からの相談・調査が端緒になることもあります。いずれの入口をたどっても、著作権法違反として起訴するには原則として告訴が必要です(後述する非親告罪にあたる類型は例外です)。もっとも、著作権侵害事犯全体でも刑事事件として検挙されるのは直近2年で年間60件台にとどまり(前掲の警察庁統計)、トレントの事案はその内数です。実際には多くのケースが発信者情報開示請求と損害賠償交渉という民事の手続きで進み、初期段階から刑事告訴に踏み切るケースは多くありません。

特にアダルトビデオ・漫画・アニメといったジャンルでは、権利者側がトレント監視システムで侵害行為を把握しても、まずは発信者情報開示請求と損害賠償交渉から入ることがあります。示談が成立すれば、著作権者にとって告訴を行う実益が乏しくなるため、刑事事件化しないまま終結することもあります。

ただし、告訴がなくても起訴できる場合があります。対価を得る目的や権利者の利益を害する目的で、有償の作品を原作のまま公衆送信するなど一定の要件を満たす行為は、平成30年12月30日に施行された法改正により非親告罪となりました(著作権法123条2項)。原則が親告罪だからといって、告訴されない前提で構えるのは危険です。どの罪が親告罪でどの罪がそうでないかは、「【一覧表つき】親告罪とは?告訴期間と非親告罪との違いを解説」で一覧にまとめています。

②違法ダウンロード行為の立証が技術的に困難だから

違法ダウンロード(著作権法119条3項)は刑事罰の対象ですが、「ダウンロード行為」そのものを外部から立証することは技術的に困難です。

違法ダウンロードを刑事事件として立件するには、無断で公開された作品であると分かったうえで取得した、という事実を証明しなければなりません。しかし、ダウンロード行為は基本的に利用者のパソコン・スマートフォン内部で完結する行為であり、外部から確認するには本人の端末を押収・解析するほかありません。

一方、違法アップロードは、トレントネットワーク上で他の利用者に対してファイルが送信可能な状態に置かれるため、捜査機関側からも侵害行為を把握しやすいという特徴があります。このため、報道されている逮捕・検挙事例も、その多くが違法アップロードを理由としています。トレントの利用では、アップロードと比べて立証が難しいのはダウンロードの側です。もっとも、受信と同時に送信可能化が生じる以上、ダウンロードのつもりでいても把握されにくいということにはなりません。立件されるときの罪名が、ダウンロードではなく送信可能化権の侵害の側で構成されるということです。

③検挙対象が悪質性の高いケースに絞られているから

検挙するかどうかの基準は公表されていません。ただし、実際に検挙された事案からは共通する傾向が読み取れます。過去に逮捕・検挙された事案は、以下のような悪質性の高い行為が確認されたものが中心です。

  • 営利目的で違法アップロードを行っていた
  • 数百件・数十作品単位で大量にアップロードを継続していた
  • 海賊版サイト・リーチサイトの運営に関与していた
  • 著作権者からの警告・開示請求を無視し、共有を継続していた

先に挙げた警察庁の統計で、直近2年の検挙が60件台に収まっているのは、こうした要素のいずれかが認められる事案が優先して立件されているためと考えられます。ただしこれは検挙された事案に多く見られる傾向であって、立件の条件ではありません。営利性や規模がはっきりしない事案でも、権利者の方針や行為の態様によっては立件されています。

以上が、逮捕者がほとんど出ていない3つの理由です。ただし、検挙件数が限られていることは、利用の事実が把握されていないことを意味しません。トレントは参加者どうしが直接データをやり取りする仕組みのため、同じ作品を共有している端末のIPアドレスと通信日時は、外部から観測できる状態に置かれます。権利者側は監視システムでこの記録を収集し、そこから回線を提供しているプロバイダを割り出して、発信者情報開示請求へ進みます。刑事事件にならなくても、この民事の手続きは進んでおり、その通知が意見照会書という形で自宅に届きます。著作権者の方針や事案の悪質性によっては、通常のトレント利用者であっても刑事告訴・逮捕に至る可能性は否定できません。逆に刑事にならなかった場合でも、民事の請求だけは残ります。

特に、開示請求や示談金請求を無視し続けた場合のリスクについては、「トレント開示請求・示談金の無視は危険?無視する3つのリスク」で詳しく解説しています。

実際に逮捕・検挙された5つの事例

検挙に至る事案は限られていますが、トレントを悪用した著作権侵害行為で逮捕・検挙された事例は現実に報道されています。以下で取り上げるのは、音楽・アニメ・漫画・PCゲーム・テレビドラマの5件です。いずれも作品を違法にアップロードし、不特定多数が取得できる状態に置いていた事案です。

5件を読むときは、どのような行為が刑事事件へ発展したかに加えて、事件化の入口にも目を向けてください。端緒が明らかになっているトレント事案を見ると、権利者側が先に動いた経路と、警察が自ら見つけた経路に大きく分かれます。権利者側の動きには、刑事告訴だけでなく権利者団体による調査も含まれます。

音楽ファイルの違法アップロードで5名が送検された事例

2013年、日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理楽曲を無断公開されたとして刑事告訴し、大阪府内の男性5名が著作権法違反の疑いで大阪地方検察庁に送致されました。

内訳は大学生2名・高校生1名・アルバイト2名。5名は「μTorrent」というソフトを使って、JASRACの管理楽曲を、誰でも取得できる状態に置いていました。

これは、著作権者の有する公衆送信権を侵害する行為と判断されました。JASRACが「BitTorrent」系のファイル共有ソフトの悪用を理由に刑事告訴したのはこれが初めてであり、トレントの利用が刑事事件に発展し得ることを社会に示した事例として注目を集めました。

参考:ScanNetSecurity(2013年6月25日)

アニメなど約170作品を違法アップロードし逮捕された事例

2019年、トレントでアニメ動画を無断公開し、制作会社の著作権を侵害したとして、三重県在住の会社員の男性が逮捕されました。

この容疑者は、人気アニメやテレビ番組など約170作品を違法に公開しており、その被害額は推定で約18億円にものぼるとされました。

逮捕の決め手となったのは、トレントの特性を活かした捜査でした。トレントは一見匿名性が高そうに見えますが、警察の捜査では違法動画のアップロード元を特定し、そのIPアドレスや通信ログといった記録から容疑者を割り出すことが可能です。逮捕された男性は「自分が編集した動画をみんなに見てほしかった」と供述していました。

約170作品という規模は、先に見た検挙の傾向のうち「大量・継続」にあたります。また、トレントの通信記録から個人を特定することも可能です。

参考:2019年4月 デイリースポーツ報道

漫画の違法アップロードにより検挙された事例

2019年2月、長崎県警は、漫画をトレント経由で無断公開していた県内の30代男性を、公衆送信権を侵害したとして著作権法違反の疑いで長崎地方検察庁へ送致しました。

この男性は、著名なトラッカーサイトを通じて、講談社の「鬼灯の冷徹」(電子版)や集英社の「僕のヒーローアカデミア」といった人気漫画を違法に入手していました。そのうえで、トレントのネットワーク上で不特定多数の利用者に送信できる状態にしていたとされます。

この事件は、長崎県警生活環境課サイバー犯罪対策室のサイバーパトロールが端緒となり、著作権者である出版社と連携して摘発に至りました。漫画の違法アップロードも、トレント利用で刑事事件になり得ることを示した事例です。

参考:ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)2019年3月18日発表

PCゲームの違法アップロードで世界初の検挙事例

2021年6月、栃木県警察本部サイバー犯罪対策課と下野警察署が、トレントを悪用していた利用者3名を、公衆送信権の侵害にあたる著作権法違反の容疑で摘発しました。3名は、コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)の加盟会社が著作権を持つPCゲームソフトやアニメビデオを権利者の許諾を得ずに送信可能な状態に置き、不特定多数の利用者に提供していたとされています。

ファイル共有ソフトを介したゲーム作品の違法アップロードで利用者が立件されたのは、PCゲーム・コンシューマーゲームの分野で世界初の事案とされています。

検挙の発端は、ソフ倫の加盟会社からの相談でした。栃木県警がトレント上の違法ファイルを確認したことを契機に、ソフ倫加盟3社が2020年に刑事告訴を行い、捜査の進展を経て摘発に至ったものです。

音楽・アニメ・漫画だけでなく、ゲームソフトの違法アップロードでも立件され得ることを示した事例といえます。

参考:コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)「著作権侵害に関するニュース」

テレビドラマの第一アップローダーとして逮捕された事例

2026年7月、トレントサイト「Nyaa(nyaa.si)」でテレビドラマを権利者に無断で公開していた相模原市在住の男性が、著作権法違反の疑いで逮捕されました。逮捕したのは京都府警のサイバー捜査課と伏見警察署です。

男性は、NHKが著作権を持つドラマのデータを最初にネットワークへ流した「第一アップローダー」にあたるとされています。トレントでは、流通が始まった時点で完全なデータを持っているのはこの立場の人だけで、そこから受け取った利用者が次の利用者へ渡していく形で広がります。つまり第一アップローダーは拡散の起点にあたります。

特定に至った経緯も公表されています。経済産業省の支援を受けて進めている調査のなかで、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)は、日本ハッカー協会が開発した解析ツールによって被疑者の情報を取得しました。そこから京都府警の捜査によって本人の特定に至っています。

これに先立つ2025年にも、京都府警は別の事件として、Nyaaに置かれたファイルへ誘導するサイトを経由して作品を公開していた3名を、二次アップローダーとして摘発しています。最初に流した人だけでなく、受け取ったものを再共有した側も、規模や態様によっては立件されることがあるということです。ただしこの3名も、リーチサイトを経由して不特定多数へ提供していた点で、個人が単発で共有していた事案とは態様が異なります。CODAも、トレントで使われるファイル共有ソフトの多くはダウンロードと同時にアップロードが行われる仕組みであるため、利用しただけでも著作権法違反に問われる可能性があると注意を促しています。なお、2026年7月のこの逮捕は、先に挙げた警察庁の統計(令和7年=2025年)の対象期間より後の出来事で、64件には含まれていません。

参考:CODA(コンテンツ海外流通促進機構)2026年7月28日発表「トレントサイト『Nyaa』の第一アップローダー逮捕について」

5件に共通するのは、作品を不特定多数が取得できる状態に置いていたことです。入口の面では、権利者側が先に動いたものと、警察が自ら見つけたものに分かれます。5件目のように、権利者団体の調査が警察の捜査につながった例もあります。意見照会書だけが届いている段階は、多くの場合、権利者が民事で動き出した局面です。続いて、逮捕を回避するために今できることを整理します。

トレントで逮捕を回避するための対処法

発信者情報開示請求から示談までの流れ

トレントで捕まる確率を下げるうえで最も効くのは、著作権者に刑事告訴をさせないことです。著作権法違反はもともと親告罪が原則で、権利者が動かないかぎり刑事事件として立ちにくい構造になっています。だからこそ、著作権者と示談を成立させ、刑事告訴しないことを約束してもらうことが重要になります。ただし告訴は逮捕そのものの要件ではありません。この対処で直接下げられるのは起訴・処分のリスクで、逮捕のリスクは捜査が動きにくくなる形で間接的に下がると考えるのが正確です。なお、対価を得る目的または著作権者の利益を害する目的で有償の作品を原作のまま送信していた場合などは非親告罪の範囲に入り得るため、その場合の示談は処分を軽くする材料にとどまります。扱った作品自体がわいせつ物や児童ポルノにあたる場合も同じです。先に述べたとおりこれらの罪は誰の告訴も要件としないため、著作権者との示談で起訴を止めることはできません。

まだ何も届いていない段階でできることは2つです。ひとつは、トレントでの許諾のない作品の共有をいま止めること。もうひとつは、いつどの作品を扱っていたかを自分で記録しておくことです。過去の共有について後から請求が届く可能性は残りますが、止めた時点以降に被害が積み上がることはありません。

意見照会書が手元に届いている場合も、共有を止めることは同じく最初の一手です。そのうえで手続きは、開示、賠償交渉、示談という順で進みます。意見照会書への回答が示談の条件に影響し、後述する宥恕条項を得られるかどうかを通じて、刑事告訴を避けられるかどうかにつながります。具体的には、次の2つの対応がカギとなります。

①意見照会書に誠実に対応する

ここでいう誠実な対応とは、回答期限内に必ず回答を返すことです。同意で答えるか不同意で答えるかという内容の問題とは別軸だと考えてください。プロバイダ(ISP)から「トレント利用に関する発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたら、まず回答期限を確認します。

回答書に何を書くかは、その後の交渉にも影響します。同意・不同意のどちらで回答するかは、回答期限内に弁護士へ相談したうえで決めてください。回答書の書き方は「トレントで開示請求されたら拒否すべき?拒否理由と書き方を解説」で詳しく整理しています。

無視すると反論なしと扱われ、プロバイダの判断で氏名・住所が著作権者に開示される可能性が高くなります。

不同意で回答して任意の開示が止まれば、その権利者との賠償交渉はいったん進まなくなることがあります。その一方で、交渉が始まらなければ示談も成立せず、後述する宥恕条項を得るという手段も当面は使えません。ただし、権利者は裁判所に発信者情報開示命令を申し立てることができ、不同意で回答しても開示が認められる場合があります。また、開示が止まったことで刑事のリスクが消えるわけではありません。捜査は告訴や別の端緒からも始まり得ます。

一方、利用に全く身に覚えがない場合は、開示を拒否すべきこともあります。詳しくは「身に覚えがないトレント開示請求の意見照会書が届いた時の対処法」をご覧ください。

②弁護士に相談して示談交渉を進める

損害賠償請求や警告が届いた段階で、専門家である弁護士に相談し、今後の対応を一任することが最善策となります。

弁護士は、請求された賠償額が適正かどうかの判断や、著作権者との交渉を代行してくれます。

トレントで複数の作品を扱っていたケースでは、複数の著作権者から個別に開示請求や損害賠償請求が届くことも少なくありません。ひとつの示談を締結しても、別の権利者からさらに意見照会書が届くこともあり得ます。そのため、利用していた期間や作品数を踏まえ、権利者ごとに個別で解決するのか、まとめて解決するのかを含めて方針を決める必要があります。

弁護士に依頼すれば、複数社からの請求に対しても、一括して対応できます。示談金の相場や減額のポイントについては「トレント開示請求の示談金相場は?高すぎる請求の減額と対処法」をご参照ください。

示談交渉の際には、「宥恕(ゆうじょ)条項」と呼ばれる「被害者は加害者の行為を許し、刑事告訴を行わない」旨の条項を必ず示談書に盛り込むことが重要です。この条項は告訴権そのものを消滅させるものではありませんが、著作権者が告訴しない意思を書面で明確にすることになります。そのため起訴のリスクが直接下がり、捜査が動きにくくなることで逮捕のリスクも下がることが期待できます。仮に告訴後に示談が成立した場合でも、起訴される前であれば告訴を取り消すことができます(刑事訴訟法237条1項)。宥恕条項を根拠に著作権者が告訴を取り消せば、親告罪にあたる事案では起訴ができなくなります。条項の記載と告訴の取消しは別の手続きで、条項は取消しを求める根拠として働きます。

なお、トレントの事案でも、親告罪にあたる場合に著作権者が告訴できる期間は、犯人を知った日から6か月に限られています(刑事訴訟法235条)。実務上は、開示によって犯人が誰であるかを知った時点が起算点になると考えられます。ただし、これは交渉を引き延ばす理由にはなりません。期間内であれば告訴は可能で、その間も賠償請求や捜査は並行して進みます。金額についても、提示された額をそのまま受け入れる必要はありません。裁判所が実際に認めた賠償額と比べて過大な請求が届くこともあるため、支払う前に妥当性を確認しておくことをおすすめします。

トレント逮捕に関するよくある質問

トレントで捕まる確率を気にする方から実際によく寄せられるのは、「知らなかった」「消した」「自分ではない」という3つの言い分です。いずれも刑事責任の見通しは変わり得ますが、著作権者からの民事の請求が届く入口は同じです。

知らないうちにアップロードされていた場合も逮捕される?

知らなかったという言い分だけでは、逮捕の可能性がなくなるわけではありません。「ダウンロードしただけで、アップロードするつもりはなかった」「トレントの仕組みを知らなかった」という主張で、責任を完全に免れることは困難です。民事の損害賠償責任は過失があれば成立し、刑事責任についても、「知らなかった」という弁解だけで故意が否定されるとは限りません。

刑事罰には「故意」が必要です。もっとも、結果を確実に意図していなくても、起こり得ると認識しながらトレントでの共有を続けていれば「未必の故意」が認められ、刑事責任を問われる可能性があります。

民事上の損害賠償責任については、故意がなくても過失があれば発生します(民法709条)。知財高裁令和4年4月20日判決は、BitTorrentの仕組みは容易に知ることができるとして、ダウンロードと同時に行うアップロード(送信可能化)について、利用者には少なくとも過失があると認め、損害賠償責任を肯定しました。「知らなかった」という主張は、民事責任を免れる理由にはなりません。

一方、刑事責任については、違法性の認識が薄かったことや反省の意が、告訴するかどうかや処分の判断に影響することがあります。ただし刑事でも故意が直ちに否定されるわけではなく、知らないうちのアップロードで逮捕まで至るかは、故意の有無に加えて規模や継続性でも判断されます。すでに意見照会書が届いているなら回答期限を管理すること、届いていないなら、前章で挙げた共有の停止と記録の2点に戻ることが、それぞれ次の一手になります。

ダウンロードしたデータを削除すれば逮捕されない?

ファイルを削除しても、逮捕される可能性は残ります。

トレント利用時のIPアドレスはネットワーク上に記録されており、著作権者はこれを手がかりに発信者情報開示請求を行います。自分の端末からファイルを削除しても、通信ログは消えないため、著作権侵害の事実そのものは残ります。

ただし、共有可能な状態を早期に終わらせることで、損害賠償額の算定期間が短くなり、結果として賠償額を抑えられる場合があります。共有していた期間が短ければ侵害の規模も小さくなるため、悪質性が低い事案として著作権者が刑事告訴を見送る判断につながることもあります。

ここで注意したいのは、共有をやめることと削除することは別だという点です。トレントのソフトを終了して共有を解除する行為は、意見照会書が届いた後でもすぐに行ってかまいません。一方で、端末内のファイルや通信の記録を消す行為は、意見照会書が届いた後だと証拠隠滅と判断されるおそれがあるため、削除の可否は弁護士に相談してから決めてください。

家族のトレント利用で契約者が逮捕されることはある?

契約者本人がトレントを利用していなければ、原則として契約者が逮捕されたり刑事責任を問われたりすることはありません。ただし、実際にトレントを使っていた人が判明するまでは、契約者が事実確認の対象になることはあります。

契約者が刑事責任を問われないのは、著作権法違反の刑事責任が、実際に違法アップロード行為を行った人物に対して問われるためです。家族の誰がトレントを利用していたかが特定されれば、その家族が刑事責任を問われる可能性があります。

ただし、プロバイダ契約者宛に意見照会書や損害賠償請求の通知が届くため、事実関係の確認や家族との話し合いは契約者が窓口となって対応する必要があります。家族間で誰が利用していたかが明確でない場合、プロバイダへの回答内容も定まりません。まず家庭内で利用状況を確認するのが出発点ですが、回答期限は確認が済むかどうかにかかわらず到来します。期限内に回答できる見通しが立たないときは、その時点で弁護士に相談してください。

トレントの逮捕リスクでお悩みの方は弁護士へお早めにご相談ください

トレントの利用で刑事事件になるのは、営利性や大量アップロードといった悪質性のある事案が中心です。ただし、確率が低いことは安全の保証にはなりません。意見照会書を放置したり、回答を誤ったりすれば、情報開示から損害賠償請求、そして刑事告訴・逮捕へと進んでしまうおそれがあります。

弁護士に依頼すれば、意見照会書にどう回答するかの判断から、著作権者との示談交渉、宥恕条項を盛り込んだ示談書の締結まで、一連の対応を任せられます。複数の権利者から別々に請求が届いているケースでも、全体を見ながら方針を立てられます。

「家族や職場に知られたくない」「相手方と自分でやり取りするのは無理だ」と感じている方も少なくありません。当事務所は、ご家庭や勤務先に影響が及ばないよう配慮しながら、相手方との直接のやり取りを引き受け、できる限り穏便な解決を目指します。

トレント関連の案件を多数取り扱ってきた経験から、すでに請求書が届いている場合や回答期限が迫っている場合も、不利益を最小限に抑えるため弁護士がすぐに動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

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