この記事では、刑事事件に強い弁護士がこの疑問を解消していきます。
また、撮り鉄が妨害行為・不法侵入・迷惑行為をしたことで実際に逮捕された事例もあわせて紹介します。
身に覚えのある行為をしてしまい、いつ逮捕されるかご不安な方、既に逮捕された方のご家族の方でこの記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
目次
撮り鉄とは
撮り鉄とは、鉄道をこよなく愛する鉄道愛好家の中でも、とりわけ列車や列車を含んだ風景の写真や動画の撮影を趣味とし、駅構内や線路の沿線、撮り鉄しか知らない隠れスポットなどの様々な撮影場所で、カメラを片手に列車などを撮影している人たちの総称です。
鉄道愛好家には撮り鉄以外にも、全国各地の鉄道路線の列車を乗り渡ることを趣味とする乗り鉄、鉄道グッズを集めることを趣味とする収集鉄、鉄道模型を作ったり、コレクションすることを趣味とする模型鉄、列車の発車メロディーや車内アナウンスを録音することを趣味とする音鉄などがいます。
撮り鉄の妨害、迷惑行為で逮捕される可能性のある罪
上でご紹介した逮捕事例でもおわかりいただけるように、一歩でも常軌を逸した行動に出ると何らかの罪に問われてしまう可能性があります。ここでは撮り鉄が問われやすい罪をご紹介していきますので、ぜひ一度、頭に入れていただき、列車の撮影の際はお気を付けいただければと思います。
鉄道営業法(第37条)違反
まず、停車場や線路にみだりに(これといった理由もなく)立ち入った場合は鉄道営業法(第37条)違反に問われる可能性があります。鉄道営業法は明治33年に制定されたとても古い法律です。罰則は科料です。科料とは1000円以上10000円未満の金銭の納付を命じられる刑罰の一つです。
建造物侵入罪、住居侵入罪
次に、前述のとおり、列車を撮影するために、営業時間外の駅構内に立ち入った場合は建造物侵入罪、他人の敷地内に立ち入った場合は住居侵入罪に問われる可能性があります。両罪とも罰則は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
威力業務妨害罪
次に、撮り鉄の撮影行為を規制する駅員に暴言を吐くなどの駅員の業務に支障を生じさせるような行為を行った場合は威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
威力とは人の自由意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいいます。暴行などの有形力はもちろん、大声で怒鳴るなどの無形力も威力に含まれます。
業務に支障を生じさせるおそれがある行為を行えば足り、現実に業務に支障を生じさせたことは必要ではありません。
罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
列車往来危険罪
次に、電車の撮影のために線路内に立ち入り、電車に急ブレーキをかけさせたり、徐行させるなどした場合は列車往来危険罪に問われる可能性があります。罰則は「2年以上の有期懲役(上限20年)」ととても重たいです。なお、電車を転覆させたり、破壊した場合は往来危険汽車等転覆・破壊罪(罰則:無期又は3年以上の懲役)に問われる可能性があり、その上で人を死亡させた場合は同致死罪(罰則:死刑又は無期懲役)に問われる可能性があります。
暴行罪、傷害罪
撮り鉄や駅員などとトラブルとなって暴行を振るった場合は暴行罪、暴行の結果、人に怪我を負わせた場合は傷害罪に問われる可能性があります。暴行罪の罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」、傷害罪の罰則は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。なお、暴行の結果、人を死亡させた場合は傷害致死罪に問われる可能性があります。罰則は「3年以上の有期懲役」です。
撮り鉄の逮捕事例
近年は、一部のケースで、撮り鉄の熱狂のあまり、逮捕される事態へと発展してしまうケースもみうけられます。ここでは、近年、ニュースなどで取り上げられた撮り鉄の逮捕事例をご紹介します。
営業終了後の駅に侵入して逮捕された事例
2022年(令和4年)11月25日、撮り鉄の男性が、営業終了後の阪神京都線長岡駅の改札口から同駅に立ち入ったとして、京都府警に建造物侵入の疑いで逮捕されています。逮捕された撮り鉄は鉄道愛好家の中でも有名な撮り鉄の一人で、「試運転の車両を撮りたかった」と供述しているとのことです。
踏切内に三脚を置いて逮捕された事例
2015年(平成27年)12月20日、撮り鉄の男性が、電車を撮影するために踏切内に三脚を置いたとして、大阪府警に列車往来危険罪で現行犯逮捕されています。逮捕された撮り鉄は「危険なことはわかっていたが、国鉄時代の快速が走るので撮影したかった」と供述しているとのことです。なお、男性が踏切内に立ち入ったことによって電車が徐行せざるをえなくなり、電車に3~15分の遅れが出たとのことです。
撮り鉄同士のトラブルで逮捕
2021年(令和3年)4月27日、撮り鉄の少年が、同じ撮り鉄の少年を投げ倒し、頭蓋骨骨折などの怪我を負わせたとした傷害罪で逮捕されています。撮り鉄の少年らが、埼玉県川口市の西川口駅を走る臨時快速列車を撮影しようと同駅に集まっていたところ、容疑者の少年が別の撮り鉄と撮影場所をめぐってトラブルとなり、その場面を撮影していた被害者の撮り鉄の少年に暴行を加えたものです。
twitterで爆破予告して逮捕
2022年(令和4年)5月7日、撮り鉄の少年が、twitterにJR大阪駅に到着する電車への爆破予告に関する書き込みをしたとして威力業務妨害罪で逮捕されています。撮り鉄の少年は、同月4日、自身のtwitterに倉敷~大阪間を走行する電車に「爆弾を仕掛けた」と投稿し、JRの社員や警察官に乗客らの避難誘導や不審物の探索などをさせました。なお、電車内に爆弾などの不審物は見つかっていません。
撮り鉄が不正侵入・妨害行為などで逮捕されるとどうなる?
撮り鉄が、不正侵入・妨害行為などで逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
被疑者は逮捕されてから勾留請求がされるまでの①~⑥までの間(最大72時間)は弁護士以外の者と連絡をすることができません。会社勤めしている方や学校に通われている方は無断欠勤・無断欠席となってしまいますので、できるだけ早急に弁護士との接見を希望し、弁護士に依頼して家族などから勤務先や学校に休みの連絡を入れてもらう必要があります。
もっとも、⑥で裁判官により勾留請求が許可されると、その後、起訴・不起訴が決まるまで最大20日間は身柄拘束されますので、勤務先や学校に隠し通すことが厳しい状況になってきます。もしマスコミで実名報道されれば逮捕された事実を知られることになるでしょう。起訴されて刑事裁判にかけられて有罪判決となれば懲戒解雇や退学処分もあり得ます。また、前科もついてしまいます。
このような事態を回避するためにも、不正侵入や妨害行為で逮捕されるおそれがある場合や逮捕されてしまった場合には、弁護士に相談して適切な弁護活動を開始してもらう必要があります。
まとめ
誰しも多かれ少なかれ、夢中になれる趣味をもっています。その趣味を他人や社会に迷惑をかけない範囲で行うのであれば何の問題もありません。
しかし、夢中の度合いが行き過ぎて、つい他人者や社会に迷惑をかけるようなことになると、今回ご紹介したような罪に問われたり、場合によっては逮捕されることにもつながりかねません。
撮り鉄として活動する場合は、こうした可能性があることを念頭に入れつつ、きちんと活動を行う場所で決められたルールを守るよう心がけてください。
そして、万が一、罪に問われたり、逮捕された場合は弁護士に相談してください。
弊所では、逮捕の回避・不起訴の獲得を得意としており実績があります。撮影に夢中になるあまり行き過ぎた行為をしてしまった撮り鉄の方で、警察から出頭を求められている方、在宅捜査を受けている方、既に逮捕された方のご家族の方は弊所の弁護士までご相談ください。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守ります。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|