この記事をご覧の方の中には、「相手に何とかして浮気(不貞行為)を認めさせて慰謝料を手に入れたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか?
確かに、相手が不貞行為を認めた場合、すなわち自白した場合は慰謝料請求することが可能でしょう。
他方、慰謝料請求されることを分かっていながら自白する人は、発覚当初から猛省している人は別として、そう多くはないはずです。
そこで、そうした場合、次の問題が生じます。
- 不貞行為を否認している人をどう自白させるのか?
- どんな点に注意すればよいのか?
- 仮に、自白を獲得できた場合、どういう形で残しておけばよいのか?
という点です。
この記事では上記の疑問にお答えしていきますので、ぜひ最後までご一読いただけると幸いです。
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目次
不貞行為を自白することは慰謝料請求する際の証拠となる?
結論からいいますと、不貞行為の自白は慰謝料請求する際の証拠となります。
しかし、そもそも不貞行為とは何かということをしっかり押さえていなければ、不貞行為の自白だったと思っていたものが実はそうではなかった、という事態にも陥りかねません。
そこで、以下では、不貞行為とは何か、自白とは何か、という点について詳しく解説します。
不貞行為とは
婚姻関係にある夫婦は配偶者以外の方と肉体関係(口腔性交、混浴などの性交類似行為も含む)をもってはならない貞操義務を負っていると解されています。
そして、この貞操義務に違反すること、すなわち、婚姻関係にある夫または妻が配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を持つことを「不貞行為」といいます。
したがって、キスやハグ、手をつなぐ、デートや食事をするといった肉体関係を伴わない行為は不貞行為にはなりません。
不貞行為の自白は証拠になります
不貞行為は、「平穏な婚姻生活を維持したい」という配偶者の権利を害することから不法行為(民法709条・710条)にあたります。そのため、あなたは相手や不貞相手に対して損害賠償請求(慰謝料請求)をすることができます。
そして自白とは、配偶者や不貞相手が「不貞行為をしました」と認めることをいいます。
配偶者や不貞相手は、慰謝料請求されるにもかかわらず自白しており、わざわざ嘘をつく意味もありませんから、基本的にその自白は信用性が高いと考えられています。
その意味で、自白はあらゆる証拠の中でも価値の高いものとして位置づけられています。
不貞行為の自白を証拠で残す3つの方法
不貞行為の自白はそのまま、つまり口頭でも証拠となります。
しかし、口頭のままだと後日、自白から否認に転じられた場合に、自白の存在を証明することが難しくなります。
自白の存在を不貞の当事者(配偶者、不貞相手)にも第三者(弁護士、裁判官など)にもはっきりとわかるように形として残しておくには、
- 書面で残す
- 音声データで残す
- 動画データで残す
という3つの方法が考えられます。
なお、上記のうち、書面で残すことが最も効果的で、次に音声又は動画です。音声、動画では発言のニュアンスで自白したかどうか明確に判断できないという不安定さが残ります。これに対して書面は、自白したかどうか明確に文字に表すことができ、誰が見ても同じ判断をしやすいのです。
以下、それぞれ解説します。
書面で残す
書面はご自身で作成したもので結構です。書面の題名は「念書」、「謝罪文」、「誓約書(今後、不倫、不貞行為をしないことを誓約する事項を盛り込む場合)」などとすることが一般的です。
書面に盛り込むでき内容は以下のとおりです。
書類に記載すべき事項
必ず盛り込むべき事項
- 配偶者、不貞相手の情報(氏名、生年月日、住所、電話番号など、可能な限り)
- 不貞行為を行ったこと
- 不貞行為に及んだ期間、回数、場所(住所)
- (不貞相手に署名・押印させる場合は)不貞相手が、配偶者が既婚であることを知りつつ不貞関係を継続していたこと
→もっとも、知らなくても注意を払えば知り得た、という場合にも慰謝料請求できます - 書類の作成年月日
- 配偶者、不貞相手の署名、押印
→必ず配偶者、不貞相手自身にさせること
できれば盛り込みたい事項
- 今後の誓約事項(相手と会わない、連絡を取らないなど)
- 誓約事項を遵守しなかった場合の制裁(慰謝料を支払うなど)
記入例(配偶者に署名・押印させる場合)
(日付)令和〇年〇月〇日
(署名・押印)〇〇〇〇 ㊞ ~ 例 ~
署名・押印以外の部分は、あなたが配偶者や浮気相手から聴き取った内容を、あらかじめ打ち出しておいて構いません。
しかし、署名・押印は必ず配偶者、不貞相手にさせましょう(あなたが書いた場合は私文書偽造罪に問われる可能性があります)。
紛失の場合にそなえて、署名・押印された書面をカメラで撮影し、データと紙媒体の両方で保管しておくとよいです。
また、データは複数の粉末に保存しておきましょう。
音声データで残す
音声データで残すには、
- IC・ボイスレコーダーに録音する
- スマートフォンにインストールしたアプリで録音する
方法が主流かと思います。
録音する方法は、配偶者、不貞相手にあらかじめ録音する旨告げて録音する方法と告げないで(密かに)録音(秘密録音)する方法があるかと思います。
秘密録音した場合は、一見、証拠として使えなさそうですが、録音方法が著しく反社会的な手段を用いたものでなければ証拠として使うことは可能です。
いかなる場面で自白されるか分かりませんので、配偶者や不貞相手との話し合いの際は常に録音機器を持ち歩くようにしておきましょう。
ただ、音声データに残す際は、とかくダラダラと曖昧な会話だけを録音してしまいがちです。そこで、録音する際(配偶者や不貞相手から話を聴き出す際)は、自白を取るのだという意識を明確に持ち、少なくとも、相手から、
- 不貞行為を行ったこと
- 不貞行為を誰と、いつ、どこで、どのくらいの期間、何回程度行ったか
- 不貞行為の相手の住所、生年月日など
については聴き出すようにしましょう。
録音した音声データは書面と同様、複数の端末に保存しておくことをお勧めします。
動画データで残す
動画データで残す方法は、スマートフォンのカメラで撮影する方法が一般的でしょう。
動画データからは会話をしている人の表情、しぐさなど声や声のニュアンス以外の情報も入ってくるため、より効果的に自白の内容を伝えることができる可能性はあります。
もっとも、注意点は音声データと同様です。自白を取ることを忘れて、ダラダラと会話を録音することは避けましょう。やはり、音声データで挙げた3つの事項は最低限聴き出してください。
動画データも書面、音声データと同様、複数の端末に保存しておくことをお勧めします。
不貞行為の自白を証拠とする場合の注意点
自白を証拠とする場合は、
- 強制による自白は証拠とならない
- 自白の内容の信用性を争われる可能性がある
- 自白以外の証拠も集めておく(自白に頼り切りにならない)
- 自白は不貞行為をした配偶者、不貞相手のものでなければ意味がない
という4点に注意する必要があります。
強制による自白は証拠とならない
強制による自白は、いくら自白が明確に表現されていて、証拠の価値(証明力)としては素晴らしくても、証拠となる資格(証拠能力)がないものと判断され証拠として使う前に門前払いされる可能性があります。
強制による自白とは、たとえば、
- 暴行(刑法208条):殴る、蹴る、胸倉をつかむなど人の身体に対する有形力の行使
- 傷害(刑法204条):暴行の結果、怪我を負わせること
- 脅迫(刑法222条):殺す、家を焼く、素性をネットに公開するなどを言う
- 強要(刑法223条):暴行、脅迫による無類やり自白させる
などの手段を用いて自白させることです。こうした手段を用いた場合は、反対にあなたが訴えられる可能性もあります。
せっかく自白を聴き出せても、強制手段を用いては意味がありません。難しいとは思いますが、感情的にならず冷静さを保ちつつ自白を引き出す姿勢が大切です。
自白の信用性を争われる可能性がある
自白が証拠として使えた(自白の証拠能力が認められた)としても、それで安心することはできません。今度は、自白の内容が信用できるかどうか、つまり証拠としての価値(証明力)があるかどうかを検討しなければならないのです。
冒頭で述べたとおり、自白は基本的には証拠としての価値が高いと考えられていますから、証拠として使えるようになると、ダイレクトに不貞行為の存在を証明できる可能性が高いです。
そこで、不貞行為の存在を否認したい配偶者や不貞相手側からすれば、先に自白していた場合は、自白の証拠能力、あるいは自白の内容が信用性できるかどうか(自白に証明力があるかどうか)を争ってくるのです。
自白の信用性に影響を与える事情としては、
- 自白をした理由
- 自白をした経緯
- 自白をする際の状況
- 自白した日の配偶者、不貞相手の体調、判断能力
- 自白の内容と自白以外の証拠の内容との齟齬
- 否認した内容の方が、信用性が高い
などが考えられます。
とはいえ、配偶者、不貞相手が一度自白したことを、後日なかったことにすることはなかなか難しいことです。
つまり、それだけ自白は大切ということですから、まずは、前述した3つの対策をしっかりとっておくようにしましょう。
自白以外の証拠も集めておく(自白に頼り切りにならない)
いくら自白が証拠の価値として高いといっても、前述のように、不貞行為を自白した後否認され、自白の信用性を争われることがあります。
そうした場合、自白と後の否認のどちらが信用できるか、という点も争点となるため、あらかじめ自白の信用性を担保するための証拠を集めておく必要があるのです。
自白の信用性を担保するための証拠として、最も価値が高いと考えられるのが、不貞相手(または、不貞相手に慰謝料請求する場合は配偶者)の証言(自白)です。
不貞相手(または、配偶者)こそが不貞行為の事実をもっとも知り得る人物なのですから、不貞相手から話を聴き出すのが一番手っ取り早いというわけです。
ここで不貞相手(または、配偶者)が証言した場合は前述した3つの方法で証拠として残しておきましょう。
不貞相手(または、配偶者)の証言(自白)以外でも、集めることができるものは数多く集めておくべきです。
配偶者、不貞相手が自白している間は、相手からの提出も受けやすいといえます。
自白は不貞行為をした配偶者、不貞相手のものでなければ意味がない
始めの方で解説したとおり、自白とは、配偶者や不貞相手が「不貞行為をしました。」と認めることをいいます。
配偶者、不貞相手以外の方(知人、友人)の、たとえば、「XとYがラブホテルに入っているところを見た。」という話は証言にはなり得ても自白ではありません。また、ラブホテルに入ったのが本当にXとYだったのかも疑わなければなりません。つまり、証言の信用性の問題です。
もっとも、仮に、その証言に信用性が認められる場合は、自白の信用性を補強する証拠にはなりえます。そのため、自白の信用性が争われた場合は、自白が信用できることを証明するため、裁判で上記のような証言をしてもらうことがあります。
不貞行為の自白は慰謝料の額に影響あるか?
配偶者や不貞相手が自白すると慰謝料が減額されるのではないか?と心配される方もおられるのではないでしょうか?
しかし、配偶者や不貞相手が自白したこと自体を理由として慰謝料が減額されることはありません。
なぜなら、不貞行為をした方が自白することは当然のことだと考えられるからです。
もっとも、自白をした経緯(たとえば、発覚当初から一貫して自白しているなど)に照らして深く反省していることが認められる場合には、反省していることを理由として慰謝料が減額される可能性はあります。
不貞行為の自白を獲得したい場合に弁護士に依頼するメリット
自白は証拠の価値が高いですから、何とか相手から自白を得たい、と考える方もおられるでしょう。
そうした場合、弁護士に依頼することも検討しましょう。弁護士に依頼するメリットは次の2点です。
自白を得るための交渉力を有している
配偶者や不貞相手がすんなり自白してくれればよいですが、実際はそうはいかない場合の方が多いでしょう。
そうした場合に相手から自白を得るには、自白を得るための証拠を集めることと、その証拠を用いて相手を説得する交渉力です。
離婚に詳しい弁護士であれば、興信所等とも連携しながら自白を得るための証拠を集め、その証拠を武器に相手と交渉し自白を獲得するよう努めてくれます。
また、弁護士に依頼すれば、相手と直接交渉する必要がなく、精神的な負担を軽減できるという点もメリットです。
獲得した自白をきちんとした形(証拠)で残してくれる
そして、無事に自白を獲得できれば、それをきちんとした形で残してくれます。
確かに、前記のとおり、自白を証拠として残す方法を解説しましたが、仮にそれに倣って実行したとしても、やはり取扱いに慣れていない一般の方では「本当にこれでいいのか。」という不安が残るものです。
弁護士に依頼すれば、獲得した自白をまさに使える証拠として形に残してくれますから安心です。
まとめ
不貞行為の自白は、強制による場合を除いて証拠となります。
もっとも、証拠となり得たとしても証拠として価値があるかどうか、すなわち自白の信用性があるかどうかは別の話です。
自白の有無を争われた場合に備えて、書面に残すなどの対策を取りましょう。
また、自白の信用性を争われた場合にそなえて、可能な限り他の証拠も併せて集めておくことが大切です。
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