モラハラ離婚の慰謝料相場は?事例と離婚後の請求の可否を解説

モラハラは配偶者に精神的苦痛を与える不法行為(民法709条)にあたりますので、離婚に際して、あるいは離婚後に慰謝料請求することも可能です

そして、モラハラの慰謝料相場は50万円~300万円です。もっとも、この金額はあくまでも相場ですので、様々な要因によって相場以上、あるいは、相場以下の金額になることもあります。

この記事では、離婚問題に強い弁護士が、

  • モラハラの慰謝料請求が難しい現実
  • モラハラの慰謝料相場
  • モラハラの慰謝料請求の事例
  • モラハラ離婚後の慰謝料請求の可否
  • 慰謝料を多くもらうために重要なこと
  • モラハラの慰謝料請求の流れ

などについてわかりやすく解説していきます。

誰でも気軽に弁護士に相談できます
  • 全国どこからでも24時間年中無休で電話・メール・LINEでの相談ができます
  • 弊所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。お気軽に無料相談をご利用ください
  • 離婚問題で依頼者が有利になるよう弁護士が全力を尽くします
  • 弁護士が親身誠実にあなたの味方になりますのでもう一人で悩まないでください

モラハラとは?

モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、倫理・道徳に反した嫌がらせのことです。簡単に言えば、肉体的虐待(DV)とは違いモラハラは「精神的虐待」をすることです。

夫婦間でのモラハラ行為の具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 暴言や侮辱的な言葉で配偶者の人格を攻撃する
  • 配偶者を異常に束縛し行動を常に監視する
  • 「男(女)のくせに」と貶してくる
  • 話しかけても無視をする
  • 配偶者の考えを認めず丸め込んで自分に従わせる
  • 自分の間違いを認めないばかりか平気で噓をつく
  • 反論すると機嫌が悪くなる
  • 配偶者だけでなくその親族や友人まで貶す
  • 子供に妻(夫)の悪口を吹き込む

モラハラの慰謝料請求は難しい

そもそもモラハラで離婚や慰謝料請求はできるのか?

夫婦間の話し合いで合意できればいつでも離婚することができます(協議離婚)。夫婦の話し合いがまとまらない場合には裁判所を介した話し合いをし、そこで互いが合意すれば離婚することができます(調停離婚)。

協議離婚や調停離婚で合意が得られない場合には最終的に裁判官に離婚を認めるかどうかを判断してもらうことになりますが(裁判離婚)、モラハラを理由として離婚を認めてもらうには、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)」にあたる必要があります。

そして裁判官に「これ以上、婚姻関係を継続させておく意味がない」と判断してもらえた場合には、モラハラを離婚原因とした離婚請求が認められます

また、モラハラは配偶者に精神的苦痛を与える不法行為(民法709条)にあたりますので、離婚に際して慰謝料請求することも可能です

もっとも以下で説明するように、モラハラで慰謝料請求することが難しい現実があります。

証拠なしだとモラハラで慰謝料請求をするのは難しい

上記の通り、モラハラは不法行為にあたるため慰謝料請求できますが、裁判では証拠にもとづいて慰謝料請求の可否や額が決定されますので、不法行為(モラハラ)があったことを慰謝料請求をする側が証明しなくてはなりません。

しかしながら、モラハラはDV(配偶者や内縁など親密な関係にある者からの暴力)で怪我を負うケースのように目に見える傷が残らないため証拠が残りにくいといった問題点があります。

また、被害者においても、「自分が悪い」「単なる夫婦喧嘩の一種」とモラハラをされている自覚に欠ける人が多いです。そのため、将来の離婚請求や慰謝料請求に備えて証拠を確保しておこうという考えに至らない方も少なくないのです。

モラハラの加害者は、「自分が正しく相手が間違っている。相手の為を思って言っているに過ぎない」と考えていることが多く、裁判になってもモラハラ行為があったことを否定してくる可能性が極めて高いでしょう。

そのため、普段からモラハラ言動の証拠を残しておくことが重要となります。どのようなものがモラハラの証拠になるかについては後述します。

モラハラ離婚の慰謝料相場は?

モラハラが原因で離婚した場合の慰謝料相場は、およそ50万円~300万円です。

もっとも、以下で示すように、モラハラの悪質性や被害者が受けた精神的苦痛の度合いが大きい場合にはそれ以上の慰謝料が認められることもあります。

モラハラ離婚の慰謝料額に影響する要因

裁判官がモラハラの慰謝料額を算定するにあたり、以下のような複合的な要素を考慮することになります。

  • モラハラをどれだけの長い期間受け続けてきたのか
  • 日常的に行われていたのか、年に数回だけだったのかなど、モラハラの頻度
  • モラハラの内容
  • 被害者の精神・健康状態
  • モラハラ行為が離婚に及ぼす影響
  • 夫婦それぞれの経済状況
  • 婚姻期間の長さ
  • 子供の有無や人数

婚姻期間が長く、悪質なモラハラ言動により長期間に渡って精神的な苦痛を受けていたようなケースや、被害者がうつ病やトラウマになるなど精神疾患になってしまったケースでは、高額な慰謝料が認められる可能性があります。また、慰謝料を請求する側の配偶者の収入が低く、請求される側が高いケースについても、額が高めになる傾向があります。

モラハラの慰謝料請求が認められた事例

実際に裁判で争われた、モラハラの慰謝料請求の事例と裁判所が支払を命じた額を以下で紹介します。ただし、離婚に際しての慰謝料は、モラハラ以外の様々な要因も加味してその額が決まるため、下記の慰謝料額はあくまでも一例として考えてください。

夫は常日頃、「俺が喰わせている。お前ひとりでは何もできない」などと妻に心無い発言を繰り返し、話し合いで分が悪くなると怒鳴る・脅すなどの行為で妻を従わせていた事案。夫に対し150万円の慰謝料の支払いが命じられています(東京地裁 平成14年(タ)第418号)。
夫が、妻が浮気しているとあらぬ疑いを持ち、義母が加担して、妻に嫌がらせの言動を浴びせたうえに家を出るように強要した。さらに、夫に離婚を迫られた妻が応じなかったことに対し、嫌がらせ電話等をした挙句に、なんら落ち度のない妻の父母に対して訴訟を提起した事案。夫に対して500万円の慰謝料の支払いが命じられています(東京高裁 昭和54年1月29日判決)。

この事例では、婚姻期間が10年以上の夫婦において、夫が妻に対して請求した慰謝料のうち80万が認められました(東京地方裁判所平成17年2月2日判例)。

慰謝料の算定において以下のような事情が考慮されています。

  • 夫のフィリピン赴任後、妻が頻繁に深夜までダンスホールに入り浸り、出費を重ねるという度を超した遊興生活に耽り、夫から注意を受けても反省の態度を示すことがなかった
  • 婚姻関係が破綻の原因は、妻側の自己本位な態度にあった
  • 妻は別居後の生活や子どもの監護について夫と話合いの機会を持つ努力をしなかった
  • 妻の身勝手な行動によって原告が相当程度の心労を被ったこと

この事例は夫が、妻が原因で夫婦関係が悪化し離婚することになったとして離婚と慰謝料を請求した事例です。

以下の事情を考慮して、夫の慰謝料120万円を認めています(東京地方裁判所平成30年12月27日判決)。

  • 妻が、夫と別居した日に娘を連れてAとの間で不貞行為に及んでいるほか、夫との婚姻期間中に風俗店で働くなど、妻の婚姻関係に対する侵害行為は悪質であること
  • 別居に至るなど悪化したことの発端としては、夫が妻の家事の仕方について注意することなどをきっかけとして夫婦間での口論が絶えなかったことや、夫が妻に生活費を渡さないことについて妻が不満を募らせたこと
  • 妻の不貞行為により6年間継続した婚姻関係が破綻して離婚をし、仕事と長女の養育とを両立する生活を余儀なくされるなどしており、妻に対する強い不信感を述べるなど、原告に生じた精神的苦痛は大きいものと認められること

この事例は、妻が夫に対して離婚に伴う慰謝料を請求した事例です。

以下の事情を考慮して、妻の夫に対する慰謝料180万円の支払いを認めました(東京高等裁判所令和3年10月6日)。

  • 夫が妻に「非常識」、「お前が間違っている」、「価値がない」、「お前は人間的にカスだ」、「クズ」などと罵倒し、このような暴言を吐くことが月に数回程度あった
  • 些細なことであっても妻の言動に不満を感じて怒り始めると、自分の気が済むまで怒り続け、子らの前であっても構わず妻を非難した
  • 夫による長女の連れ去り行為などによって、夫に対する信頼を完全に失い、婚姻関係が完全に破綻して、婚姻共同生活を回復することはもはや困難といわざるを得ない状態となったこと

離婚後にモラハラの慰謝料請求をすることはできる?

離婚後にモラハラの慰謝料請求をすることも可能です。

慰謝料は離婚の際に請求しなければならないものというわけではなく、また離婚の際に請求していなかったからその後は請求することができないという性質のものではないからです

また、離婚時に請求せず、離婚してから遅れて請求したため賠償金額が減額される、などという事態はおこりません

もっとも、モラハラの慰謝料請求権は一定期間が経過することで時効により消滅してしまいます

モラハラは不法行為(民法第709条)にあたりますが、不法行為に基づく慰謝料請求権(損害賠償請求権)は、「被害者が損害および加害者を知ってから3年間その権利を行使しないとき」は時効が成立してしまいます(民法第724条)。

したがって、モラハラ被害を受けてから3年が経過してしまうと、モラハラ被害を受けたことに対する慰謝料請求権は時効消滅してしまいます。

もっとも、モラハラにより離婚を余儀なくされたことに対する「離婚慰謝料」は、離婚時を起算点としますので、モラハラ被害者は離婚後3年間は慰謝料請求することができます

少しややこしく感じるかもしれませんが、離婚後でも3年以内であればモラハラ被害に遭った配偶者は相手に対して慰謝料請求ができると覚えておきましょう。

離婚後でも慰謝料請求はできる!時効は?証拠がない場合は?

モラハラの慰謝料を多く貰うには証拠が重要

いくらモラハラの被害がひどくても、その事実をただ主観的に伝えるだけでは、高額な慰謝料は望めません。裁判官が被害者側の主張だけを聞いて判断してしまうと、判断を誤る可能性があるからです。

重要なことは、「確かにモラハラがあった」「これだけの被害を受けている」ということが事実として示されることです。そのために必要なのが証拠です。仮にモラハラを100回受けたのに、1回の証拠しかなければ、裁判官はその1回の証拠だけで判断をしなければならなくなります。慰謝料をより高額にしたいのなら、とにかく証拠を集めることが重要になります。

具体的には、以下のような証拠をできるだけ多く集めるようにしましょう。

  • モラハラの発言を録音した音声や動画
  • モラハラでうつ病やPTSD(心的外傷性ストレス障害)になった場合の病院のカルテや診断書
  • 警察やカウンセリングなどに相談したときの相談履歴
  • モラハラの被害について書いた日記やメモ
  • モラハラ夫または妻が壊した壁や物の写真

どのような証拠を集めるべきか、集め方を知りたいという方は、モラハラ離婚に役立つ6つの証拠と集め方|日記や録音は証拠になる?で詳しく解説していますので参考にしてください。

モラハラで離婚するときの慰謝料請求の流れ

ここで改めて、モラハラで離婚するときの慰謝料請求の流れについて解説します。

まず証拠を集める

これまで説明したように、モラハラの慰謝料を獲得するには、事実を客観的に証明できる証拠が必要です。慰謝料請求を行う前の準備段階として、まずは証拠を集めましょう。

別居してとにかく距離を置く

モラハラ配偶者は「自分は正しく、相手が間違っている」という思考回路が基本軸となっていることが多いため、相手からモラハラの事実を指摘されると感情的になりがちです。しかも、離婚を切り出されたうえに慰謝料請求をされるとなると、言葉の暴力に加え、身体的暴力(DV)をふるわれる恐れもあります。

そのため、モラハラ離婚と慰謝料請求を進めていくのであれば、事前に別居して身の安全を確保したうえで、電話やメール・手紙等でモラハラ加害者とやり取りすべきでしょう。身体的な暴力がなかったとしても、被害者は加害者に恐怖心を抱いていることも多いでしょうから、精神衛生上も、また、対等に話し合いをするうえでも、やはり別居を優先させるべきです。

ただし、黙って勝手に家を飛び出すと、「家庭を捨てた」「婚姻関係を維持する努力を放棄した」といった攻撃材料をモラハラ配偶者に与えてしまうことにもなり兼ねません。離婚裁判や慰謝料請求にあたり不利な状況を作らないためにも、”なぜ別居に踏み切ったのか”をメールやLINE等でモラハラ配偶者に送信しておき、正当な理由があって別居に踏み切ったことを形に残しておくことが大切です

別居の際は、婚姻費用と養育費をしっかり請求する

モラハラ配偶者の中には、生活費等を全て自分で管理して、相手には最低限の額しか渡さない「経済的DV」をしている人も少なくありません。そのため、別居にかかる家賃や光熱費等、(子供がいる場合は)養育費、が捻出できずに別居に踏み切れない方もいます。

しかし、夫婦間には経済的弱者を扶養しなくてはならない義務があり、また、親である以上、例え別居したとしても子供に対して養育費の支払い義務があります。婚姻費用分担請求や養育費請求の調停を申し立て、モラハラの慰謝料をもらって離婚するまでの間の生活費や養育費もしっかりと相手に支払わせましょう。

話し合いの中で慰謝料を請求する

上で述べたように、モラハラの加害者と被害者が直に会って話し合いをしても、感情的になって話がまとまらないケースが多いでしょう。そこで、電話やメール等での話し合いを進めていくことになりますが、その際は、通話の録音やメール等のやり取りの保存は忘れずに行いましょう。後々、調停や裁判で離婚や慰謝料について争うことになった場合に、相手の発言の内容によっては新たなモラハラ被害の証拠になることもあるからです。

なお、現実問題として、モラハラ配偶者がすんなりと離婚に応じて慰謝料を支払うケースはあまり多くありません。攻撃的な言動をしてくるか、連絡を無視するなどの対応をしてくることが予想されます。その場合は、次で説明する「内容証明郵便の送付」に進みましょう。

内容証明郵便で慰謝料を請求する

内容証明郵便というのは、誰が誰に宛てて、どんな内容の文書を送ったのかを郵便局が証明してくれる制度です。そのため、「そんなものは受け取っていない」という言い逃れができません。内容証明郵便を送ることによって、「本気で離婚を考えている」「慰謝料を請求したい」という意思を相手に伝えることができます。

ただし、内容証明郵便は法的な強制力はありませんので、モラハラ夫や妻のような自我が強い人の場合、内容証明郵便を無視する人も少なくありません。その場合は、以下で説明する、離婚調停や離婚裁判の中で慰謝料請求を目指すことになります。

離婚調停でモラハラ慰謝料を請求する

ここまででモラハラ夫または妻が慰謝料の支払いに同意していないのであれば、次は離婚調停を申し立てることになります。一足飛びに裁判を起こした方が解決も早いように思えますが、日本では裁判を起こす前に調停を経なければなりません

離婚調停とは、法廷に当事者と裁判官、調停委員が集まり、離婚について話し合うものです。当事者が納得して離婚に同意すれば調停が成立となります。裁判官が離婚について判断するものではありません。離婚調停において慰謝料を主張することもできます。

離婚調停の流れ

離婚調停の流れは以下のようになっています。

  1. 調停を申し立てる
  2. 呼出状がくる
  3. 調停期日
  4. 調停成立の場合は、調停調書が作成される。不成立の場合は終了となる

参考:家事調停の流れ(公益財産法人日本調停協会連合会)

裁判離婚

調停でも合意が得られない時には、最終手段として裁判離婚という手続きに移ります。当事者の主張を聞き、証拠などを精査した上で、最終的に裁判官が離婚をするかどうかについての判断を下すのです。

裁判離婚で離婚の判決を得ると、そこで離婚が成立します。慰謝料の請求が認められれば、相手側には慰謝料の支払い義務が生まれます。もし相手が約束を破って慰謝料を支払わなければ、強制執行といって財産の差押えなどができるようになるのです。

まとめ

モラハラの慰謝料について解説しました。モラハラは証拠が残りにくく、またモラハラをしている夫や妻もその事実を否定しがちなため、高い慰謝料が認められにくいという特性があります。慰謝料を少しでも高くするためには、できるだけ多くの証拠を残しておくことが重要です。

誰でも気軽に弁護士に相談できます
  • 全国どこからでも24時間年中無休で電話・メール・LINEでの相談ができます
  • 弊所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。お気軽に無料相談をご利用ください
  • 離婚問題で依頼者が有利になるよう弁護士が全力を尽くします
  • 弁護士が親身誠実にあなたの味方になりますのでもう一人で悩まないでください
離婚問題の悩みは弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による離婚問題の無料相談を受け付けております。

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

ご相談のみで問題が解決する方も多くおられますので、誰でも気軽に相談できる法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。