近年は不倫した人に対する風当たりが強く、不倫した人があたかも犯罪者であるかのような報じられ方をすることがあります。
しかし、不倫は犯罪なのでしょうか?
結論から申し上げると不倫は犯罪ではありません。もっとも、不倫は犯罪ではないとしても、不倫した人は様々な責任や不利益を可能性はあります。
そこで、この記事では、
- ①不倫が犯罪ではない理由
- ②不倫は犯罪ではないものの、不倫した人が負う責任
- ③不倫した人が②以外に負う不利益
について解説してまいりたいと思います。
ぜひ最後までご一読いただき、不倫と犯罪について少しでも知っていただけると幸いです。
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目次
①不倫は犯罪?~不倫が犯罪ではない理由
確かに、「不倫を犯罪とし、不倫した方に何らかの罰を加えて欲しい」という不倫された方のお気持ちは分かります。
不倫されたら悔しいですし、辛いですし、そうしたお気持ちが沸き上がることも当然なことです。
しかし、結論から申し上げますと不倫は犯罪ではありません。
では、なぜ不倫は犯罪ではないのでしょうか?
以下、不倫が犯罪でない理由について解説してまいりたいと思います。
不倫が犯罪であることを定めた法律がないから
まず、不倫を含めてある行為が犯罪だ、というためにはそれが犯罪であること、そして、犯罪であるとしていかなる刑罰を科すことができるのかということが、あらかじめ法律に定められていなければなりません。
これを難しい言葉で罪刑法定主義といいます。
罪刑法定主義は国の最高法規である憲法31条の規定から導かれる大原則ですからここで全文をご紹介しておきます。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
そして、犯罪や刑罰を規定している代表的な法律といえば、多くの方がご存知の「刑法」です。刑法には、たとえば、万引き等に適用される窃盗罪(刑法第235条)が定められています。
(窃盗)
第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
この規定から「他人の物(財物)を盗む(窃取する)行為が犯罪だ」ということ、窃盗罪という犯罪を犯した人には「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という「刑罰」が科せられる可能性があること、が分かります。
これによって国民は「他人の物を盗むことは犯罪(いけないこと)なんだ」、「他人の物を盗むとこれだけの刑罰が待ち受けているんだ」ということをあらかじめ予測することができ、それなら「他人の物を盗むことは止めよう」という気持ちになります。
他方で、不倫についてはどうでしょうか?
まず、刑法の中には不倫について定めた規定はありません(戦前は既婚女性のみに適用される姦通罪という犯罪がありましたが、戦後廃止されています)。
また刑法と同様に刑罰を定めた他の法律の中にも不倫について定めた規定はありません。
つまり、不倫は犯罪ではないのです。
不倫について規定した法律がないのに、国家が勝手に不倫を犯罪だと認め刑罰を科すことができるとしたら、それは国民にとって不意打ち以外の何ものでもなく、国民の自由を奪う重大な権利侵害です。
そうした国家の暴走を防止するために、日本国憲法には先の規定(第31条)が設けられているのです。
不倫という個人間の問題に国家があえて介入すべきではないと考えられているから
また、なぜ不倫について規定した法律がない、あるいは国家がそうした法律を設けていないのか、言い換えると、なぜ不倫が犯罪とされていないのかといえば、現在の日本では、不倫については国家があえて不倫という個人間の問題に介入して刑罰を科す性質のものではないと考えられているからです。
不倫は個人の自由意思に委ねられるものです。
また、仮に不倫の紛争に発展した場合でも、本来はまず個人間で解決できる、あるいは解決すべき問題といえます。
こうした考え方に基づき、民法(第763条)では、夫婦は、その協議(話し合い)で離婚することができる、と定めています。
そして、その個人(夫婦)間の問題に国家(裁判所)がはじめて介入できるのは個人間で話がまとまらない場合として、国家が不倫(や離婚)の問題に介入できるのはあくまで例外という建前が取られているのです。
不倫を犯罪とした場合、いきなり国家(警察、検察、裁判所)が個人の問題に介入するということになってしまいます。
しかし、上記の考え方によれば、不倫を犯罪とすることができないことはもうお分かりいただけるのではないでしょうか?
②不倫が犯罪でないとして、他にどんな責任に問える?
不倫が犯罪でないとしても、不倫した相手はまったくお咎めなしか、といえばそうではありません。不倫をした相手には何らかの責任を問いたいですよね?ここでは不倫をした相手に問える
- 民事上の責任
- 社会的責任
について解説してまいります。
民事上の責任
民事上の責任とは、すなわち慰謝料の損害賠償責任のことです。
不倫の慰謝料の相場は【50万円~500万円】といわれていますが、個別具体的状況により上記以下の額となることもあれば、上記以上の額となることもあります。
慰謝料の損害賠償責任についてはは民法709条、710条に定められています。
(不法行為による損害賠償)
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
慰謝料は「精神的苦痛」に対する賠償のことで、民法710条の「財産以外の損害」が精神的苦痛のことを指しています。
なお、民法709条、710条いずれにも不倫という言葉は一言も出てきていません。
すなわち、不倫されたから直ちに不倫した相手に損害賠償責任を問うことができるわけではないのです。
相手に損害賠償責任を問えるのは、
”不倫=不法行為(=「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護された利益を侵害」された場合)”
の場合です。
では、不倫の不法行為は何かといえば、
”不貞行為(=婚姻関係にある夫婦(あるいはそれに近い関係にある男女)の一方が、他方の男女以外の者と自由な意思で「肉体関係」を持つこと)”
です。
すなわち、不貞行為をされたときにはじめて、不倫した相手に損害賠償責任を問えるという点に注意が必要です。
「肉体関係」には性交渉のほか、性交渉に近い行為(性交類似行為)は含まれますが、ハグやキス、手をつなぐ、食事をするなどは肉体関係に含まれず不貞行為とはいえません。
もっとも、不貞行為を疑わせるような事情(ラブホテルに長時間滞在するなど)が証拠上認められれば、慰謝料請求することは可能です。
社会的責任
社会的責任としては、まず「仕事に対する影響」を挙げることができます。
不貞行為以外の不倫自体に刑事上、民事上の法的責任が伴うわけではありません。
しかし、近年は不倫が発覚するととたんにマスコミによる追及やSNS上などで情報が拡散され、その結果、社会的信用を失って仕事が激減する、あるいは最悪の場合、仕事そのものを失うというケースも散見されます。
また、こうした事態にはならないとしても、いずれ身内には当然のこと、職場の上司、同僚、部下、知人、友人、周辺地域の住民に不倫や不倫が原因で離婚したことが知れ渡ってしまう可能性は十分に考えられます。
そうすると、仕事の面では仕事上での信用を失い、昇進等に影響が出てくるかもしれません。
また、普段の生活の面では、接触を敬遠されるようになり、お付き合いに支障が出てくる、その地域に住みづらくなって引っ越し等を余儀なくされるなどという事態へと発展することも可能性も十分考えられます。
③不倫が犯罪でないとして、不倫した相手は他にどんな不利益を被る?
これまで不倫した相手が被る不利益として、
- 民事上の責任(損害賠償責任)
- 社会的責任(仕事に対する影響など)
をご紹介しましたが、このほかにも、
- 離婚
という大きな不利益を被ることになります。
不倫して、離婚して楽になった、という方も中にはおられるかもしれません。しかし、事態はどう単純ではありません。
まず、離婚時には、慰謝料のほか財産分与、養育費の支払い(子どもがいる場合)などの法的義務が発生します。これらの額や相手の経済状況によっては大きな痛手となるでしょう。
また、不倫をしたものの離婚を望まない方にとっては、強制的に離婚させられてしまうという不利益を負います。
不貞行為は裁判上の離婚原因です(民法770条)。
(裁判上の離婚)
第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
離婚をきっかけとして精神的にも、経済的にも支えてくれる人がいなくなり、辛い、寂しい生活を送らざるを得なくなるかもしれません。
また、子どもがいる場合、子どもの年齢によっては「不倫した親」という目で見られるようになり、離婚後の面会交流を拒否されて子どもとの交流が難しくなることも考えられます。
まとめ
不倫は犯罪ではありませんから不倫した相手に刑事上の責任(懲役、罰金など)を問うことはできません。
もっとも、不倫のうち不貞行為は民法上の「不法行為」にあたりますから、不倫した相手が不貞行為を自白した(認めた)場合や、否認された場合でも集めた証拠により不貞行為を立証することができれば、相手に民事上の責任(損害賠償責任)を問うことは可能です。
また、民事上の責任のほか社会的責任、離婚に伴う不利益などを負うことも十分に考えられます。
不倫は犯罪ではありませんが、不倫した相手にはそれなりの重たい責任や不利益が発生するということはぜひ認識していただければと思います。
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