- 「不倫を1回だけされた…不貞行為の慰謝料請求はできるのだろうか…」
- 「1回限りの不倫だと慰謝料相場はいくらくらいだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、1度限りの不倫であったとしても、不貞行為の慰謝料請求が認められる可能性はあります。その場合の慰謝料の相場は数十万円~100万円程度といわれています。不倫の裁判上での慰謝料相場は、通常は100万円~300万円程度といわれていますので、それに比して不倫が1回だけのケースでは慰謝料額が相当減額される可能性があります。
この記事では、不倫問題に強い弁護士が、
- 不倫が1回だけでも不貞行為となるのか
- 不貞行為が1度だけの場合の慰謝料相場と判例
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
不倫が1回だけでも不貞行為となる?
そもそも不貞行為とは?
そもそも「不貞行為」とはどのような意味の行為なのでしょうか。
民法では、「配偶者に不貞な行為があったとき」には、夫婦の一方は離婚の訴えを提起することができる、と規定されています(民法第770条1項1号参照)。したがって、不貞行為は夫婦関係を根本から破壊し破綻させる法定離婚事由と考えられているのです。
このような法律の考え方から、「不貞行為」とは、配偶者以外の第三者と自由な意思に基づいて性交または性交類似行為を行うことであると定義することができます。
性交類似行為としては、手淫・肛門性交・口腔性交などの行為が該当します。また性的に密接な関係となる、裸で抱き合ったり、一緒にお風呂に入ったり、身体を愛撫したりする行為も不貞行為に該当することになります。
このように不貞行為に問われる可能性があるのは、配偶者が第三者と「性行為や肉体関係」に至った場合である必要があります。
したがって、デート・キス・一緒に食事をするなどという異性交際があるだけでは、原則として不貞行為とは認められません。
一般的に「どこからが浮気か」という話題は耳目を集めがちですが、法的に離婚や慰謝料を請求することができる「不貞行為」には、明確に肉体関係が要求されているという点には注意しておく必要があるでしょう。
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既婚者は体の関係が1回だけでも不貞行為となる
それでは、身体の関係が1回だけでもあれば不貞行為となるのでしょうか。
前述のように不貞行為の定義は、「配偶者以外の者と性交等を行うこと」で、回数や頻度などは問われていません。そのため1度でも性行為・肉体関係を持てば形式的には不貞行為に該当することになります。
ただし、不貞行為が1度だけの場合には、複数回ある場合に比べて慰謝料や離婚の判断に影響を与える可能性はあります(後述します)。
それでは、次から不貞行為が1度だけの場合に慰謝料請求はできるのか、という問題について解説してきます。
不貞行為が1度だけの場合の慰謝料について
不貞行為が1度だけでも慰謝料請求は可能?
不貞行為が1度だけの場合であっても、不貞をした方の配偶者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
不貞行為が1度でもあれば、相手方配偶者には民法の「不法行為責任」が発生することになるからです。
「不法行為責任」とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償しなければならない、という責任のことをいいます(民法第709条参照)。
そして、配偶者のいる者が第三者と性行為・肉体関係を持った場合には、「婚姻共同生活の平和の維持」という配偶者の権利・法律上保護に値する利益を侵害することになり、不法行為責任が発生するのです。
慰謝料請求が認められない場合とは?
たとえ不貞行為があった場合でも、以下で示すケースでは慰謝料請求をしても裁判で認めてもらえません。
不倫相手に「故意・過失」がなかったケース
不貞行為に不法行為責任が認められるためには、以下の不法行為の要件を満たす必要があります。
- 加害者の故意または過失
- 被害者の権利・利益侵害
- 加害者の行為と因果関係のある損害の発生
これらの要件のうち問題となるのは「加害者の故意または過失」です。
ここで「故意」とは「既婚者であることを知っていた」こと、「過失」とは「既婚者であることを知らなかったことに落ち度がある」ことを意味します。
不貞行為を働いた配偶者に「故意」があったことに争いはないでしょう。
他方で、不倫相手においては、故意または過失がなかった、すなわち、肉体関係を持った相手が既婚者であることを知らなかったり、知らないことにつき落ち度がないケースが存在します。
たとえば、不倫相手が配偶者と知り合ったのがSNSや出会い系サイトであって、配偶者が独身を装っていたため、不倫相手が(あなたの配偶者が)既婚者であることを知らないまま(つまり、故意がない状態で)性的関係に至ることもあるでしょう。また、実際に会った回数が1回~数回程度であれば、その短期間に既婚者かどうかを知る機会も少なく、既婚者であることを知らなかったことについて過失が認められないこともあるでしょう。
したがって、不倫相手において故意・過失の要件を満たさない場合には、不倫相手に対する慰謝料請求が認められません。ただし、上記の通り、配偶者に故意があることは間違いありませんので、配偶者に対しては不貞行為の慰謝料請求が可能です。
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既に婚姻関係が破綻していたケース
前述の通り、不貞行為が1回だけでも慰謝料請求が認められるのは、その不貞行為によって、「婚姻共同生活の平和の維持」というあなたの権利・法律上保護に値する利益が侵害される場合です。
しかし、不貞行為があった当時、既に夫婦間の婚姻関係が破綻していた場合には、「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・法的保護に値する利益が存在しないわけですから、不法行為が成立しない、すなわち、慰謝料請求が認められないことになります。
たとえば、不貞行為があった当時に夫婦が長期間の別居状態にあった場合や、同居していても夫婦で会話を交わすこともなく家庭内別居が続いていたような場合には、婚姻関係が破綻していたと判断される可能性があります。
ご自身のケースで婚姻関係が破綻していたかどうか詳しく知りたい方は、婚姻関係の破綻が認められやすい7つの状態を判例付きで弁護士が解説を参考にしてください。
既に一方から慰謝料を受け取っていたケース
不貞行為は、配偶者と不倫相手の二人によって共同して行われる不法行為ですので、「共同不法行為」といいます。
そして、共同不法行為について規定する民法第719条では「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。」と書かれています(民法第719条1項参照)。
この「連帯してその損害を賠償する責任を負う」がポイントです。たとえば、不貞行為によってあなたの精神的苦痛を慰謝するのに100万円が相当と考えられる場合に、あなたの配偶者と不倫相手が連帯して(共同して)この100万円を支払うことになります。
したがって、あなたが配偶者から不貞行為の慰謝料として100万円を受け取った場合には、さらに不倫相手に対して慰謝料請求をすることができないということです。
慰謝料額を左右する事情
「慰謝料」とは、不貞行為によって被害者が負った精神的苦痛を補償するために、加害者側から支払われる金銭のことを指します。被害者の精神的苦痛の認定については、明確なルールがあるわけではなく、事案に応じて裁判所がケースバイケースで判断することになります。
不貞行為を原因とした慰謝料を算定する場合には、以下のような事情を考慮して決められることになります。
慰謝料の金額に影響する事情 | 根拠 |
婚姻期間の長短 | 婚姻期間が長い夫婦は、保護すべき夫婦関係の実態や、被害者側の配偶者への悪影響が絶大であると考えられるため、慰謝料の増額要素となります。 |
不貞当時、夫婦関係が破綻していないこと | 不貞行為の当時、既に夫婦の婚姻関係が破壊されており破綻していたという場合には、被害者側の配偶者に保護すべき権利・利益を想定することができなくなってしまうため、夫婦関係が破綻していないことが慰謝料の増額要素となります。 |
不貞行為の期間 | 不貞行為の期間が長い場合には、被害者に対する権利・利益侵害が大きくなるとして、慰謝料の増額要素となります。 |
不貞行為の回数 | 不貞行為の回数が多い場合にも、不貞行為の悪質性が増すことになり被害者の精神的苦痛を増大させることになるため、慰謝料の増額要素となります。 |
夫婦間に未成年の子どもがいる場合 | 夫婦間に未成熟の子どもがいる場合には、夫婦でその子どもを養育していく義務があり、不貞行為はその子どもの成長にも甚大な悪影響を及ぼすとして、慰謝料の要素となります。 |
不貞関係の解消の約束 | 不貞行為をした相手方配偶者が、不貞発覚後に第三者との不貞関係を解消することを約束していたにも関わらず、再び不貞行為をした場合には、被害者に対する大きな裏切り行為であるとして、慰謝料の増額要素となります。 |
不貞相手が妊娠・出産した場合 | 相手方配偶者と不貞相手との間に子どもができた場合、被害者側の配偶者の精神的苦痛が増大する可能性が大きいため、慰謝料の増額要素となります。 |
被害者の精神的苦痛の大きさ | 被害者側の配偶者が、不貞行為が原因で、うつ病や適応障害などの精神疾患にり患し医師の診断の裏付けによって立証できる場合には、精神的苦痛が甚大であるとして、慰謝料の増額要素となります。 |
不貞行為の否認 | 証拠や資料から不貞行為が認められる状況であるにもかかわらず、加害者側の配偶者が長らく不貞行為を否認し続けてきたという事情がある場合は、悪質性が高いとして慰謝料の増額要素となります。 |
不貞行為が原因で離婚する場合 | 不貞行為が原因として夫婦が協議離婚する場合、不貞行為が夫婦関係を破綻に至らしめたとして高い悪質性が認められ、慰謝料の増額要素となります。 |
被害者側の落ち度 | 被害者側も過去に不貞行為をしていた場合や夫婦生活中に問題行為がある場合には、加害者のみを責めることができません。そのため、被害者側に落ち度がないという点が慰謝料の増額要素となります。 |
不貞行為が1回だけの慰謝料相場は?
それでは不貞行為が1回だけの場合、慰謝料の相場はどのくらいになるのでしょうか。
上記で説明したように不貞行為の期間や回数については、加害行為の悪質性を判断するための要素となります。
したがって、不貞行為が1回だけで継続期間もほとんどないという場合には、不貞行為の悪質性は否定される可能性があり、不貞行為が複数回に及ぶケースに比べて慰謝料の金額も相当減額される可能性があります。
もっとも、不貞行為の回数についても慰謝料算定の1つの考慮要素に過ぎませんので他の事情によっては増額されることも減額されることもありえます。
- 不貞行為が1回だけでそれっきり
- 夫婦どちらも不貞を原因として離婚するつもりはない
- 不貞をした配偶者が素直に認めて謝罪し今後しないように誓約している
- 夫婦間に未成熟の子どもがいない
以上のような事情がある場合には、1度の不貞行為は悪質性が高いとはいえず、未だ婚姻関係を破綻させ婚姻を継続することが難しくなったとも考えられない、と判断される可能性があります。
このようなケースであれば、1度だけの不貞行為を理由とする慰謝料としては、数十万円~100万円程度とされる可能性があるでしょう。
不貞行為が1回の場合の慰謝料請求に関する判例
1回の不貞行為で慰謝料70万円が認められた裁判例
この事案は妻である原告が、被告である不貞相手に対して夫であるAと少なくとも1回の不貞行為に及んだとして慰謝料300万円を請求した事案です。
- 不貞行為の発覚によって夫婦間の4年半にわたる婚姻関係が悪化した
- 夫婦間には幼い子どもが2人いること
- 被告が弁護士からの連絡や訴状にも応答しない不誠実な対応をしてきたこと
以上のような事情を考慮して、不貞行為によって妻が被った精神的な苦痛は小さいものでないと判断しました。
「本件不貞行為が原告宅で行われたとはいえ、不貞行為の回数が1回しか認められないこと、原告がAに対して損害賠償請求をせずに同居を継続しており、当面はAと離婚をする具体的な予定がないため、原告とAとの間の婚姻関係が完全に破綻するには至っていないこと、その他本件における一切の事情を考慮すると、慰謝料については、原告の被った精神的苦痛を金銭に換算した額を70万円と認めるのが相当」であると判示して、慰謝料70万円を認めました(東京地方裁判所令和4年4月27日判決)。
1回の不貞行為に対して慰謝料100万円が認められた裁判例
この事案は、夫が元妻である被告と夫名義の家で口淫をし、その後も隠れて連絡や接触を繰り返したとして妻が慰謝料300万円を請求した事案です。
- 1回の不貞行為があったことは当事者間には争いがない
- それ以上の不貞行為を認めることができる証拠は存在していない
- 被告は夫と直接連絡しないこと・隠れて面会しないことを口頭や文書で約束していた
- しかし事前通知なく、被告は夫と連絡をとったり、同宿したり、または会ったりしていた
以上のような事情を考慮して、被告の一連の行為は、原告の婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する不法行為に該当すると認定しています。
「本件不法行為により原告に精神的苦痛が生じていることが認められる。そして、・・・本件不法行為の態様、原告夫婦の婚姻期間、原告夫婦の現況等、本件で認められる一切の事情を考慮すると、本件不法行為と相当因果関係にある損害は、慰謝料として100万円が相当である」と判示して、慰謝料100万円を認めました(東京地方裁判所令和4年3月24日判決)。
不貞行為が1回だけでも離婚は認められる?
1回だけの不貞行為であっても、離婚できる可能性はあります。
まず、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定されていますので、夫婦が話し合って相手方配偶者が離婚に応じる場合には、「協議離婚」をすることができます(民法第763条参照)。
しかし、相手方配偶者が離婚に応じず話し合いがは解決できない場合には、裁判所を利用して離婚を申し立てていく必要があります。
ここで不貞行為は、法定離婚事由として裁判離婚を申し立てる理由となりますので、裁判離婚が認められる可能性があります(民法第770条1項1号参照)。
ただし、1回だけの不貞行為の場合には、前述のようにケースによっては悪質性が低いと判断される可能性もあります。
そして「裁判所は、…事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(民法第770条2項参照)」ため、裁判所が婚姻の継続を相当と判断すれば、離婚が認められない可能性がある点は注意が必要です。
慰謝料請求のためには証拠が必要
不貞行為を理由に、相手方配偶者などに慰謝料を請求するためには、証拠に基づいて不貞行為があったことを立証できる必要があります。
メールや写真、動画、録音データなどさまざまな物が考えられますが、ポイントとなるのはどれくらい不貞行為があったことを推認することができるか、という点です。
不貞行為を立証するための証拠とそのポイントについては、以下のようなものです。
証拠 | ポイント |
LINE、メール、Facebookなどのメッセージのやり取り | テキストでのやり取りから性行為や肉体関係にあったことが推認することできる内容が記載されていれば証明力の高い証拠となります。単にイチャついているだけの内容では肉体関係までは推認できません。 |
写真・動画 | 性行為や性交類似行為自体が記録されている動画や画像などの場合には非常に高い証明力を有する証拠となります。 性交等自体の記録でなくとも、ホテルや自宅などに出入りしている写真や動画であっても肉体関係を強く推認させる証拠になります。 |
不貞関係を認めたメッセージや録音 | 相手方配偶者が第三者との肉体関係を認める内容の文書や録音がある場合にも、不貞行為を立証できる強い証拠となります。 |
不貞当事者間の通話内容 | 肉体関係があることを推認できる携帯電話での通話内容が録音されている場合には、非常に強い証明力を有します。 |
ラブホテルの領収書、クレカ明細 | ラブホテルを利用したことが分かる領収書やクレジットカードの明細記録などについても不貞行為があったことを証明する証拠となります。 |
探偵に依頼した場合の調査報告書 | 性行為の現場やラブホテルに出入りする写真や目撃情報などを記載した探偵の調査報告書なども高い証拠能力が認められる可能性が高いです。 |
不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
不貞行為を原因とする慰謝料を請求する場合には、弁護士に依頼するべきです。
ここまで解説してきたように1度だけの不貞行為の場合には、複数回・長期間にわたるケースと比べて慰謝料の金額が低くなる傾向があります。
ただし、慰謝料の算定についてはケースバイケースで異なりますし、少しでも高額な慰謝料を獲得したいと希望する場合には、専門的な法律や過去の集積された裁判例の知識や、相手方との交渉能力が必要となります。
慰謝料が高額になるほど相手方の反発や抵抗も大きくなる可能性があります。
そこで、弁護士に依頼することで専門的な立場から適切な請求をすることができ、不貞行為の相手との連絡や交渉についてもすべて任せておくことができるのです。
訴訟に発展した場合であっても、引き続き訴状代理人として裁判対応を任せておくことができます。
さらに、慰謝料請求のみならず、離婚手続きや不貞相手との合意書の取り交わし、未払いの場合の強制執行などによって最終的な解決までサポートしてもらうことができます。
当事務所では、不倫をした配偶者やその不倫相手への慰謝料請求を得意としており豊富な実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者のために全力を尽くしますので、慰謝料請求を弁護士に依頼することをご検討中の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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