結論から言えば、不倫は違法であり法律違反となります。
この記事では、不倫問題に強い弁護士が、
- 不倫はどんな法律に違反して違法となるのか
- 不倫をすると起こり得る問題(リスク)
について解説していきます。
現在、不倫している、不倫されている方で、記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、お気軽に弁護士までご相談ください。
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目次
不倫とは不貞行為のことであり違法です
不倫とは不貞行為のこと
まず「不倫」とは、法的にどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。
「不倫」の一般的な意味としては、「人が踏み行う道からはずれること・非倫理的なこと、特に配偶者でない者との男女関係・浮気のこと」を指します。
民法には「不倫」という言葉自体は規定されていませんが、同じような意味として「不貞な行為」という言葉が規定されています(民法第770条1項1号参照)。この「不貞行為」は、配偶者以外の第三者と自由な意思で性交渉をすることを指す言葉です。
すなわち不倫とは、不貞行為のことであるということができます。
一般的な意味の不倫には、異性交際、デート、キス、目移りなどさまざまな浮気行為を含む場合がありますが、民法上「不貞行為」という場合には性行為・性交渉を指す言葉となります。
不貞行為は違法です
「不貞行為」は、「違法」です。
ここで注意が必要なのは、不倫は「犯罪行為ではない」ということです。
戦前には姦通(かんつう)罪という犯罪が規定されていました。これは夫のある妻と、姦通の相手方である男性側に成立した犯罪ですが、夫を告訴権者とする親告罪である一方で妻は告訴することができませんでした。さらに夫が浮気しても妻は告訴できないという男女平等原則に反する規定だったため戦後姦通罪は廃止されています。そのため現在、配偶者以外の者との自由意思に基づく性行為自体を処罰する犯罪はありません。
以上より、不貞行為は「刑法上」違法行為ではないということです。
それでは、次に民法上はどうでしょうか。
結論からいうと「不貞行為」は、民法上不法行為が成立するため「違法」です。
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・法律上保護される利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償しなければならないという責任です(民法第709条参照)。
そして婚姻することによって夫婦は相互に同居・協力・扶助義務を負い(同法752条参照)、夫婦は相互に「貞操を守る義務」を負っています。なぜなら不貞行為が法定離婚事由として規定されているからです(同法770条1項1号参照)。
したがって、配偶者がいる者が、第三者と肉体関係を持つ場合、「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・法律上保護に値する利益が侵害されることになります。
以上より、不貞行為は民法上、違法行為にあたるということになるのです。
なぜ不倫は犯罪ではないの?犯罪でなくとも負う責任や不利益は?
これは不貞行為になる?
プラトニックな関係は?
それでは、配偶者のある者が第三者と互いに恋愛感情があるもののプラトニックな場合、すなわち肉体的な欲求を離れた精神的な恋愛関係の場合はどうでしょうか。
「不貞行為」は、配偶者のある者が配偶者以外の第三者と自由な意思で肉体関係・性行為を行うことだと説明しました。そのためこのような肉体関係・性行為が存在しないプラトニックな関係の場合には原則として不貞行為には該当しないことになります。
具体的には、配偶者のいる男性または女性が、第三者と恋愛感情を抱いて、電話・メール・LINEなどのSNSでやり取りしている場合や、食事・映画・ショッピング・ドライブなどデートのみを行っている場合、「不貞行為」とはなりません。
キスやハグをしたら?
不貞行為は肉体関係・性行為を行うことを指しています。
そのため第三者とキスやハグをしたり、手をつないだり抱き着く・胸やお尻を触る等の身体的接触を伴う行為も「不貞行為」には該当しません。
ただし不貞行為のいう性交とは直接的な性交渉のみならず、それに準じた「性交類似行為」も含むと考えられています。性交類似行為として具体的には手淫や口淫、密室で裸で抱き合う行為なども含まれます。
性交類似行為の場合には、そのような行為の延長に性交渉があると考えられているため、「直接的な性行為がなければ不貞行為には当たらない」と単純に考えないようにしてください。
酔った勢いで肉体関係を持ってしまったら?
酔った勢いで第三者と肉体関係を持ってしまった場合はどうでしょうか。
この場合、アルコールの影響を受けていたとしても自由な意思に基づいて第三者との間で肉体関係を持った、と考えられるため不貞行為と判断される可能性が高いです。
自由な意思ではなかったという反論が通用するには、飲酒により酩酊しており事理弁識能力が全くなかった、責任能力がまったく欠如していたというような例外的な場合でしょう。多くのケースでは飲酒していたとしても自己の意思に基づいてホテルや相手方の自宅に赴き性行為をする意思決定をしているため、この「自由意思」が否定される可能性は少ないでしょう。
以上より酔った勢いで第三者と肉体関係を持ってしまった場合でも、原則として不貞行為に該当します。
魔が差して1回だけ不倫してしまったら?
魔が差して1回だけ第三者と肉体関係を持ってしまった場合はどうでしょうか。
この場合も自由な意思に基づいて第三者と性交渉・性行為を行っているため、理論的には「不貞行為」に該当します。
そのうえで不貞行為に該当するとしても、その回数や期間、その後の夫婦の生活状況、有責配偶者の反省の程度に照らして「婚姻関係を破綻される程の有責行為」にはあたらないとして離婚事由該当性が否定される可能性はあります。
そのため、、不貞行為を離婚事由として裁判で認めてもらうにはある程度継続的に不貞行為を行っていた事実を証明する証拠を準備しておいた方が良いでしょう。
風俗でサービスを受けたら?
性風俗店で性的なサービスの提供を受けた場合には「不貞行為」に該当するでしょうか。
これについては事例に応じて裁判例でも結論が分かれています。性風俗店の場合は金銭支払いの対価として性的サービスを提供しているため、セックスワーカーの「職業選択の自由」とのバランスが問題となります。
風俗嬢に関しては不貞の「故意・過失」を欠くと判断される可能性がありますが、不貞をした配偶者の行為は不貞行為に該当すると判断される可能性が高いでしょう。
もっとも、夫が1回だけ性風俗店を利用し、妻が夫に対して離婚請求した事案につき判例(横浜家庭裁判所平成31年3月27日判決)は、「仮にあと数回の利用があったとしても、被告(夫)は発覚当初から原告(妻)に謝罪し、今後(風俗を)利用しない旨を約束していること~からすると、この点のみをもって、離婚事由に当たるまでの不貞行為があったとは評価できない」と判示し、妻からの請求を認めませんでした。
したがって、有責配偶者の反省の程度や関係修復に向けての対応いかんによっては、数回程度の風俗遊びでは離婚請求が認められるだけの不貞行為とは判断されない可能性があります。
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同性と身体の関係を持ったら?
不貞の相手が異性ではなく同性の場合はどうでしょう。
これについては同性との肉体関係の場合も不貞行為となると判断した裁判例があります。
不貞行為は男女間の行為のみならず「婚姻生活の平和を害するような性的行為」も含まれ「同性同士の好意の結果、既存の夫婦生活が離婚の危機にさらされたり形骸化したりする事態も想定される」として不貞行為が認定されました(東京地方裁判所令和3年2月16日判決)。
不倫は離婚事由になる
不倫は離婚事由となります。
民法には裁判上の離婚が認められる原因として5つの事由が法定されており、「不貞な行為」は法定離婚事由のひとつです(民法第770条1項1号参照)。
そのため不貞行為を理由に相手方配偶者は、裁判上の離婚を請求する権利を有することになりますので、有責配偶者としては相手方の離婚請求を止めることができません。
法定離婚事由とは|相手が離婚を拒否しても離婚できる5つの条件
不倫をすると慰謝料請求される
慰謝料相場
配偶者がある者が第三者と不倫をした場合には、相手方配偶者から慰謝料請求がされるリスクがあります。
慰謝料とは、不貞行為によって相手方配偶者が被った精神的苦痛を慰謝するために支払われる賠償金です。離婚が成立した場合もなんとか離婚を回避した場合、いずれの場合であっても慰謝料を請求されるリスクがあります。
それでは、不貞行為を理由として請求できる慰謝料の相場はいくらでしょう。
不貞行為を理由とする慰謝料の相場としては「50万円~300万円」程度でしょう。
ただし慰謝料の算定については裁判所がさまざまな考慮要素をもとに総合的に判断するため、ケースバイケースで相場が変わってくる可能性があります。
慰謝料が増額される要素
それではどのような事情があれば慰謝料を算定する場合に増額することが見込まれるのでしょうか。過去の裁判例などを参考に考慮要素を紹介しましょう。
- 婚姻している期間が長い
- 夫婦の間に未成熟の子どもがいる
- 不貞以前の夫婦関係が破綻していなかった
- 不貞行為の期間が長い
- 有責配偶者に反省の態度が希薄
- 不貞行為が発覚したことが原因で夫婦が離婚・別居することになった
- 有責配偶者に経済力がある場合 など
不倫相手にも請求できる
不貞行為に基づく慰謝料については不倫をした配偶者のみならず、不倫相手に対しても請求することができます。
この場合、不倫をした配偶者と不倫相手は共同して他人の権利・利益を侵害したことになるため「共同不法行為」が成立します。そのため不倫の当事者は連帯して慰謝料全額を支払う義務を負うことになります。
慰謝料請求の時効
慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求権ですので、時効期間の経過により権利が消滅してしまいます。
損害賠償請求権の消滅時効は以下の期間が経過することで完成します。
- 被害者(法定代理人)が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
- 不法行為の時から20年間行使しないとき
不倫当時に婚姻関係が破綻していたら?
不倫が不法行為に該当して慰謝料請求権が発生するのは、不倫当時に婚姻関係が破綻していない場合です。
なぜなら、不倫当時、婚姻関係が破綻していた場合には、既に「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・法律上保護に値する利益の侵害がなくなってしまっているため不法行為が成立しないと考えられているからです。
不倫の証拠となるものは?
不倫の証拠になりうるものは以下のようなものです。
証拠 | 内容 |
画像 | 性行為自体やラブホテル・自宅に通っている様子を捉えたもの |
音声・動画 | 性行為自体や性行為が推認できる内容についての通話・動画 |
領収書・利用明細 | 不倫相手と利用したホテルなどの利用明細 |
交通系ICカードの利用履歴 | 不倫のための移動に利用したことが分かる利用明細 |
メール・SNS | 不倫相手との性行為が推認できる内容 |
妊娠・堕胎を証明できる書類 | 不倫相手の子どもを妊娠・堕胎したことが分かる内容 |
調査報告書 | 不倫していることがわかる探偵の調査報告書など |
これは浮気・不倫の証拠になるもの?と迷った人のための情報まとめ
離婚・慰謝料以外にも不倫で負うリスク
懲戒解雇になるケースもある
多くの企業が就業規則に懲戒解雇事由として「職場の風紀・秩序を乱した場合」や「素行不良の場合」などを規定しています。
不倫のようにプライベートな事項について会社が懲戒を行うことはできませんので基本的には懲戒事由に該当しないケースが多いでしょう。
ただし会社の企業運営に具体的な影響がでるような場合や職場内の秩序を著しく低下させる場合には懲戒事由に該当する可能性があります。
そのような判断基準として、以下のような事情が重要となるでしょう。
- 従業員の地位
- 職務内容
- 不倫の態様
- 会社の規模、業態 など
懲戒処分は、使用者が労働者に対して一方的に課す不利益な制裁処分であるのでその有効性は厳格に判断される必要があります。そのため従業員の不倫行為が職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えていない場合には懲戒事由に該当しないことになります。
家族との関係が悪化する
不貞行為が発覚すると配偶者からは離婚や別居を申し出される可能性が高いですし、その場合には子どもとは離れて暮らすことで家族関係が悪化するリスクがあります。自分の父親や母親が不倫をしていることを快く思う子どもはいません。そのため不倫が発覚した場合、子どもは大きな失望やショックを受ける可能性があります。
また、自分の配偶者を裏切ったことで義理の両親や自分の両親との関係が悪化する可能性もあります。
有責配偶者として自分から離婚できなくなる
主として離婚の原因を作り出した「有責配偶者」は、原則として離婚請求が認められません。
現行民法は離婚事由として破綻主義を採用しているため、婚姻関係が破綻している場合には双方からの離婚請求を認めています。ただし有責配偶者からの離婚請求を無制限に認めると、原因を作出した当事者が自己に有利に制度を利用して裁判所に離婚を承認させたり、相手方配偶者の意思を無視した状態で離婚が成立させてしまったりするリスクがあります。
そのため裁判所も「相当長期の別居期間」があり、夫婦間に「未成熟の子が存在しない」場合、「著しく社会正義に反するといえるような特段の事情」がない限りで、有責配偶者からの離婚請求を例外的に認める判断をしています(最大昭和62年9月2日判決)。
有責配偶者とは?有責配偶者からの離婚請求が認められる条件と時効
不倫相手の配偶者から慰謝料請求される
不倫相手にも配偶者がいる場合には、不倫当事者同士はW不倫となってしまいます。
この場合には不倫によって自分の家庭のみならず不倫相手の家庭も壊すことになります。そして不倫相手の配偶者から不倫に基づく慰謝料請求されるリスクもあります。不倫相手側夫婦が不倫を理由に離婚した場合、慰謝料が増額される可能性もあります。
不倫相手の配偶者から報復や脅迫される
不倫相手の配偶者から、報復や嫌がらせ、脅迫されるリスクもあります。
なかにはSNSやインターネット上に不倫している事実を投稿・拡散されたり、激昂した相手方から自宅に怒鳴りこまれたりする場合もあります。さらに勤務先や第三者に不倫していることをバラすと脅され、ひどい場合には現金を要求されたり暴行を振るわれたりする場合もあります。
しかし、上記のような行為はいずれも違法で、場合によっては犯罪行為が成立する可能性すらあります。
自由や名誉、財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合には「脅迫罪」が成立し、法定刑は「2年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」です(刑法第222条参照)。
脅迫や暴行により人に義務のない行為を行わせたり権利の行使を妨害したりした場合には「強要罪」が成立し、法定刑は「3年以下の懲役」です(同法第223条参照)。
人を恐喝して財産を交付させた場合には「恐喝罪」が成立し、法定刑は「10年以下の懲役」です(同法第249条参照)。さらに暴行・脅迫により相手方の反抗を抑圧して財物を強取した場合には「強盗罪」が成立し、法定刑は「5年以上の有期懲役」です(同法第236条参照)。
不倫をしてトラブルになったら弁護士に相談
不倫をした側の方は、高額な慰謝料を請求されたり、不倫相手の配偶者から脅しなどの被害に遭っている場合には必ず弁護士に相談してください。弁護士に相談することで適切な慰謝料相場を知ることができます。また相手方がイリーガルな手段に打って出てくる場合には弁護士を通じて辞めるように警告したり、よっぽどひどい場合には相手を告訴したりするためのサポートを受けることもできます。
また、不倫された側の方は、感情的になって行動すると、上記で説明したように犯罪に触れることもあります。慰謝料を請求するどころか逆に慰謝料を請求され、挙句に刑事罰を受ける恐れすらあります。不倫した配偶者や不倫相手に責任をとらせたいのであれば、私的制裁ではなく、法に則って行う必要がありますので弁護士に相談しましょう。
弊所では、不倫問題の解決を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者の利益のために全力を尽くしますのでまずはお気軽にご相談下さい。相談する勇気が解決への第一歩です。
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