
「夫が浮気相手の慰謝料を肩代わりしようとしている――そんなのおかしいと思いませんか?」
裏切られた苦しみを乗り越えて、家族としてやり直そうと決めたのに、夫がなおも不倫相手を庇うような態度を取る…納得できない気持ちは当然です。
この記事では、実際にあった相談事例をもとに、夫が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることを法的に阻止できるのか、その可能性と対応策について、不倫慰謝料問題に強い弁護士の視点から詳しく解説します。
記事をお読みになって、一人での対応が難しいと感じた場合は、全国どこからでも無料でご相談いただけますので、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
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目次
【相談内容】夫が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることを法的に阻止することはできますか?
夫の不倫が発覚しましたが、離婚ではなく夫婦関係をやり直すことにした30代女性です。私は現在35歳で、夫とは12年前に結婚し、10歳の娘と7歳の息子の2人の子どもがいます。夫は地元の建設会社で現場監督をしており、私はパートで事務の仕事をしています。
3か月ほど前から、夫が週末にも「現場の確認」と言って出かけることが多くなり、平日も帰宅が遅くなっていました。ある日、夫の車から見慣れない女性用のアクセサリーが出てきたため問い詰めたところ、近所のスーパーの店員と不倫関係にあることを白状しました。相手は夫より7歳年下の独身女性で、夫が仕事帰りによく利用するスーパーで知り合ったとのことでした。
最初は離婚も考えましたが、子どもたちがまだ小さく、夫も深く反省して「家族を裏切って本当に申し訳なかった。これからは絶対に浮気はしない。家族のために頑張りたい」と涙ながらに謝罪してくれたため、もう一度やり直すことにしました。
ただし、不倫相手の女性には慰謝料を請求して、きちんと責任を取ってもらいたいと考えています。その旨を夫に話したところ、夫は「俺から誘ったんだし、彼女は店員で収入も少ないから、慰謝料は俺が代わりに払う」と言い出しました。
しかし、私たちは離婚せずに夫婦関係を続けるのですから、夫が慰謝料を払っても結局は同じ家計から出ていくだけで、私の精神的苦痛に対する賠償になりません。それに、やり直すと約束したばかりなのに、まだその女性を庇うような態度を取られることが本当に腹立たしいです。彼女には自分できちんと慰謝料を支払ってもらい、不倫の責任を取らせたいのです。
夫に何度説得しても「彼女を困らせるわけにはいかない」と聞く耳を持ちません。夫が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることを法的に阻止する方法はないのでしょうか。弁護士の先生のお知恵をお借りしたいです。
【弁護士の見解】不倫慰謝料の肩代わりを阻止することは可能か?
不倫慰謝料の請求は、精神的苦痛を受けた被害者にとって当然の権利です。しかし、慰謝料を請求した際に、加害者である配偶者が不倫相手の慰謝料を肩代わりしようとするケースも少なくありません。
不倫をした配偶者が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることは許されるのでしょうか。
結論から申し上げると、夫(または妻)が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることを法的に完全に阻止する方法はありません。その理由は、以下で解説するように、不貞行為における慰謝料請求の法的性質と、共同不法行為者間の関係に由来します。
【前提知識】配偶者と不倫相手は共同して慰謝料責任を負う
不貞行為による慰謝料請求において、不倫をした配偶者と不倫相手は、民法上の共同不法行為の責任を負います。
これにより、両者は不真正連帯債務の関係になり、被害者(貞操権を侵害された側)は、どちらか一方に対して慰謝料の全額を請求することも、双方に分けて請求することも可能です。
例えば、慰謝料額が100万円と認められた場合、被害者は配偶者に100万円全額を請求してもよいですし、不倫相手に100万円全額を請求しても構いません。あるいは、配偶者に50万円、不倫相手に50万円と請求することもできます。
ただし、注意すべきは二重取りはできないという点です。つまり、慰謝料額が100万円であれば、一方から100万円を受け取った時点で、もう一方に対してはそれ以上の請求はできません。
これは、被害者には、自身が受けた精神的苦痛に対する賠償以上の慰謝料を受け取る権利がないからです。
配偶者が慰謝料全額を肩代わりすることは法的に問題ない
不貞行為の慰謝料責任は、共同不法行為者である配偶者と不倫相手が連帯して負いますが、2人の間での慰謝料の負担割合については、不倫当事者間で自由に決めることができます。
これは法律上何ら制限されるものではありません。
そのため、たとえ配偶者が「不倫相手の分も自分が全額支払う」と取り決めたとしても、それは法的に有効な合意となります。つまり、配偶者が慰謝料負担割合を100%、不倫相手が0%とすることも可能であり、配偶者が不倫相手の慰謝料を肩代わりすること自体は、法律上何ら問題がない行為として扱われます。
被害者としては納得がいかないかもしれませんが、これは共同不法行為の法的性質からくるものであり、第三者である被害者がその内部的な取り決めを外部から強制的に変更させることは困難です。
慰謝料を肩代わりする合意書や念書も法的に有効
さらに、配偶者と不倫相手との間で、慰謝料を配偶者が肩代わりする旨の合意書や契約書、念書などを交わしていた場合、これらの書面は法的に有効と判断されます。
そのため、もし今回のケースで夫が不倫相手の慰謝料の肩代わりを取りやめようとしたとしても、不倫相手はその合意書等に基づいて、夫に対して全額負担するよう主張することができてしまうのです。
ただし、例外として、その合意書や契約書が不倫関係の継続を目的とした内容である場合には、公序良俗に反する契約として無効になる可能性があります。しかし、単に慰謝料の負担割合を取り決める内容であれば、原則としてその法的効力は認められると考えておくべきでしょう。
それでも肩代わりを阻止するためにできること
上記の通り、配偶者が不倫相手の慰謝料を肩代わりすることは法律上問題がないため、確実に肩代わりを阻止できる直接的な法的手段はありません。これは、不真正連帯債務の性質上、債務者間の内部的な負担割合の合意に、債権者(被害者)が介入することが困難だからです。
しかし、まったく打つ手がないわけではありません。
不倫相手との話し合いの場で、不倫相手の負担割合をゼロにしないように合意を促す交渉を行うことは可能です。
例えば、「慰謝料の〇割は不倫相手が直接支払うことを条件に、訴訟は起こさない」や、「特定の金額を不倫相手が支払えば、それ以上の追及はしない」といった具体的な提案をすることで、不倫相手に何らかのメリットを示して、直接の支払いを促すよう交渉する余地はあります。
不倫相手にとって何らかのメリットがなければ応じない可能性も高いため、慰謝料の減額を検討したり、訴訟を避けることを引き合いに出したりするなど、交渉の工夫が求められます。この交渉を有利に進めるためにも、法的な専門知識を持つ弁護士に相談し、戦略を練ることが非常に重要になります。
慰謝料の全額を不倫相手だけに支払わせた場合に生じる肩代わりの問題
前述の通り、不貞行為の慰謝料について、配偶者と不倫相手との間で負担割合を10:0にすることも法的に可能ですが、この負担割合の取り決めは、あくまで共同不法行為者間の内部関係の問題に過ぎません。そのため、今回のケースでは、慰謝料を請求する側である妻の権利には影響しませんので、妻は引き続き不倫相手に対して慰謝料の全額を請求することが可能です。
しかし、たとえ不倫相手に慰謝料の全額を支払わせることができたとしても、その後に以下のような「肩代わり」にまつわる問題が生じる可能性があります。
不倫相手が配偶者の肩代わりをしたとして、求償権を行使する可能性がある
慰謝料の請求において、不倫相手が配偶者と連帯して全額の責任を負うとはいえ、これはあくまで被害者に対する関係です。
不倫相手が慰謝料の全額を支払った場合、その中に配偶者が本来負担すべきだった割合が含まれていると考えられます。この場合、不倫相手には、配偶者が負担すべきであった金額について、配偶者に対して「求償権」を行使する権利が発生します。求償権とは、他人の債務を代わりに弁済した者が、その負担分を本来の債務者に請求できる権利のことです。
これを防ぐには、慰謝料の話し合いの段階で、不倫相手に求償権を放棄させる旨の合意を取り付ける必要があります。
しかし、不倫相手にとって何のメリットもない状態で求償権の放棄に応じる可能性は低いため、先述したように、慰謝料の減額を提案したり、「求償権を放棄するなら訴訟は起こさない」といった条件を提示したりするなど、交渉の工夫が求められます。
裏で配偶者が不倫相手にお金を渡す可能性もある
たとえ不倫相手が慰謝料の全額を直接あなたに支払ったとしても、その裏で、あなたの配偶者が不倫相手に対して、支払われた慰謝料の一部または全額を補填する形で金銭を渡すケースも実際に存在します。
これでは、実質的に配偶者が不倫相手の慰謝料を肩代わりしているのと同義であり、被害者としては「不倫相手に責任を取らせたい」という意図が果たされないことになります。
このような事態を防ぐためには、配偶者の預貯金口座や給与の動き、さらにはクレジットカードの利用明細など、家計全体の財産管理を行い、不審な金の流れがないか監視することが有効な対策となります。
ただし、完全に防ぐのは困難な場合もあるため、弁護士と相談しながら対策を講じることが重要です。
不倫慰謝料の肩代わり問題を弁護士に相談するメリット
不倫慰謝料の肩代わりに関する問題は、法律的にも感情的にも非常に複雑です。配偶者の対応に納得がいかないまま、単独で解決を目指すのは困難なことも多くあります。そんなときこそ、法律の専門家である弁護士のサポートが大きな助けとなります。
- ①法的に正確なアドバイスを受けることができる
- ②相手方との交渉を任せることができる
- ③求償権の放棄交渉や合意書作成を任せることができる
- ④調停や訴訟などの裁判手続きも引き続き一任できる
①法的に正確なアドバイスを受けることができる
不倫・離婚問題に特化した弁護士は、慰謝料請求に関する豊富な知識と経験を持っています。
慰謝料の適正額の判断はもちろん、不倫相手に全額請求する際の注意点や、慰謝料の肩代わりや求償権を未然に防ぐための具体的なアドバイスを受けることができます。特に、肩代わり問題については、事前の対策が極めて重要であり、経験豊富な弁護士であれば、類似事例での成功・失敗パターンを熟知しているため、あなたのケースに最適な戦略を提案してくれます。
また、慰謝料請求書の作成方法から、相手方への効果的なアプローチまで、法的根拠に基づいた適切な手順を踏むことで、感情に流されず、冷静かつ戦略的に問題解決へ向けた道筋を立てることが可能になります。
②相手方との交渉を任せることができる
不倫をした配偶者や不倫相手と直接交渉することは、精神的に大きな負担を伴います。特に、裏切られた怒りや悲しみが残る中での交渉は、冷静な判断を妨げ、本来得られるべき結果を逃してしまう危険性があります。
弁護士に依頼すれば、代理人として相手方との交渉窓口を全て任せられるため、精神的なストレスを最小限に抑えられます。また、弁護士が窓口となることで、相手方も法的責任の重さを認識し、より真剣に交渉に臨む傾向があります。
弁護士は法律の専門家として、相手方の主張の矛盾点を的確に指摘し、証拠に基づいた論理的な交渉を進めることで、あなたの権利を最大限に守りながら、円滑な解決を目指してくれます。
③求償権の放棄交渉や合意書作成を任せることができる
慰謝料の肩代わり問題で最も重要なのが「求償権の放棄交渉」です。 個人で不倫相手に求償権の放棄を求めても、相手が応じる可能性は低いのが現実です。 弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて求償権の放棄交渉を代理で行ってくれます。また、放棄に応じてもらうための条件提示(慰謝料減額、訴訟回避など)についても戦略的にアプローチしてくれます。
さらに、求償権の放棄を明記した合意書の作成も任せることができ、後々のトラブルを防ぐことが可能です。 これらの専門的な交渉と書面作成により、個人では困難な求償権の放棄を実現できる可能性が大幅に高まります。
④調停や訴訟などの裁判手続きも引き続き一任できる
話し合いで解決できない場合、慰謝料請求は調停や訴訟へと発展する可能性があります。特に、肩代わり問題が絡む事案では、法的争点が複雑になりがちで、適切な主張立証が求められます。
弁護士に依頼していれば、交渉段階から調停、そして裁判へと移行した場合でも、全ての手続きを一貫して任せることができます。これにより、手続きの継続性が保たれ、これまでの経緯を踏まえた最適な戦略を維持することが可能です。
法的な知識や煩雑な書類作成から解放されるだけでなく、裁判所での適切な主張・反論、証拠の提出方法、相手方の反論への対処など、専門的な対応を全て任せることで、不利な状況に陥ることなく、最良の結果を目指すことができます。
不倫慰謝料請求でお困りの方は当事務所にご相談ください
「夫が不倫相手の慰謝料まで肩代わりしようとしている」「相手に本当に責任を取らせたいのに、どうすればいいか分からない」──そうした葛藤を抱える方は決して少なくありません。
当事務所は、これまでにも数多くの不倫慰謝料問題や「慰謝料の肩代わり」に関するご相談を受け、実績を積んできました。被害者の立場に立って、法的に適切かつ納得のいく解決を導くため、弁護士が親身・誠実に対応し、全力であなたをサポートします。
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