借金問題を抱え、何とか解決を望む以上、なるべく早く借金苦から解放されたいと思うのは当然のことです。
しかし、個人再生は、裁判所で行われる債務整理手続きです。裁判上行われる手続きであるため、手続きが終了するまでには、ある程度の時間がかかります。
個人再生は非常に厳格で複雑な手続きであるため、通常の場合、個人のみでの申し立ては現実的とは言えません。実際には、弁護士や司法書士など債務整理の専門家への依頼が必要でしょう。
この場合には、専門家への依頼から実際に個人再生を申し立てるに至るまでの期間も考えなければなりません。
今回は、個人再生する場合にかかる各種の期間(時間)について、ご紹介します。なお、ご紹介する各期間はおおよそのものであり、実際には多少前後する可能性がありますのでご了承ください。
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個人再生の手続きの各段階に要する期間
手続きの流れには、各段階を考えることができます。ごく大雑把ですが、個人再生する場合には、つぎのような段階を経て手続きが進んでいくことになります。
※先に述べたとおり、自分で個人再生の申し立てをするのは現実的ではないため、弁護士や司法書士に依頼することを前提に話を進めていきます。
①申し立てまでに要する期間
弁護士や司法書士など、債務整理の専門家に依頼して個人再生する場合、申し立てに至るまでにはいくつかの段階を分けて考えることができます。大まかに言うと、つぎのような各段階を経て申し立てが行われることになります。
相談
個人再生を専門家に依頼する以上、まずは専門家に相談することからはじまります。どの専門家に依頼するのがよいのかは、評判などを調べ、個人再生に実績のある専門家にするのが間違いないでしょう。
依頼・受任
相談した結果、その専門家に個人再生の手続きを依頼する場合には、「受任契約書」にサインすることになります。これは早ければ、相談当日に行うことも可能です。
家計簿の作成
個人再生する場合には、最低でも2か月以上家計簿をつける必要があります。これは、その提出が法律で定められているからです。
つまり個人再生は、専門家に依頼した場合でもその依頼の時から実際に申し立てをするまでに、かならず2か月以上は期間が必要ということです。
書類の収集
個人再生するためには、手続きで要求される大量の書類を入手・作成しなければなりません。
しかし、専門家に依頼している場合には難しい書類を自分で作成する必要は、ほぼありません。基本的には、自分でなければ入手できない性質の書類を入手してください。それ以外の書類に関しては、基本的に専門家が入手してくれます。
内容のすり合わせ
本人との面談や収入・財産を示す書類などの内容により、個人再生するに際しての具体的方針を決定します。
書類の作成
申立人の事情に合わせ、専門家が申立書をはじめ必要な添付書類を作成します。
申し立て
出来上がった申立書・添付書類などを裁判所に提出します。通常の場合、専門家が代理または代行して行ってくれるため、自分で裁判所に足を運ぶ必要はありません。各種書類を裁判所に提出することにより、正式に個人再生手続きを申し立てたことになります。
申し立てが遅い場合には
弁護士や司法書士など債務整理の専門家の中には、実際問題として、債務整理をあまり熱心に行っていない事務所も存在します。債務整理の依頼から、実際に個人再生が申し立てられるまでの期間があまりにも長い場合には、専門家に進行状況を確認する必要があります。
②受理から開始決定までの期間
開始決定がなされるまでの期間は、申し立てを行う裁判所の運用次第です。
一般的には、数日から数週間以内である場合が多いでしょう。
ただし再生委員が選任される場合は、再生委員との面談など各種手続きが増えるため、開始決定が出るまでの期間は長くなります。
③開始決定から財産状況等報告書等提出までの期間
開始決定がなされた場合、裁判所の定める期限までに、財産状況等報告書など一定の書類を裁判所に提出する必要があります。
この期間も裁判所によってまちまちですが、一般的には開始決定後1か月から数か月以内と考えてよいでしょう。
④開始決定から再生計画案提出までの期間
個人再生手続きも終盤になると、手続きによって免除される債務の額や、これからの債務の支払い方法などを記載した「再生計画案」を裁判所に提出する必要があります。
これも、裁判所の指定する期限内に提出しなければなりません。
開始決定からこの期限に要する時間は、一般的に言って数か月前後となります。
⑤再生計画案提出から認可決定までの期間
再生手続きも、認可決定までになると最終段階です。
裁判所は、提出された再生計画案などを審査し、必要な手続きを踏んだあと、その計画案を認可するかどうか判断します。
再生計画案の提出期限から、この認可決定(不認可決定)が出るまでは、一般的に言って数か月前後かかるでしょう。
⑥認可決定から認可が確定するまでの期間
裁判所でめでたく再生計画の認可決定が出たとしても、法律上はその認可決定が確定しなければ借金減額の効果が発生しません。
認可決定が確定するためには、その旨を「官報」という政府の広報誌に「公告」する手続きが必要です。
官報による公告とは?
個人再生手続きでは法律の規定により、申立人について個人再生手続きをしている旨を、官報により公告する必要があります。
そして、認可決定が法律上確定するのは、その旨が官報で公告された日が基準となるのです。
そのため、認可決定が出た場合には、その旨を官報に公告するための時間が必要になるのです。
認可決定の確定日はいつ?
個人再生の認可決定は、その旨が官報で公告された日の翌日から計算して二週間経過した時点で確定することになります。
そのため、いつ官報に公告されるのかということが、非常に重要になるのです。
では、官報で公告されるのに要する期間とは?
認可決定が確定するためには、まずは官報にその旨の公告がなされることが必要です。
官報への公告の手続きは、すべて裁判所が行うことになりますが、実際に公告がなされるまでの期間はケースバイケースです。
あえて言うならば、二週間から1か月前後を目安として考えておけばよいでしょう。
⑦認可確定から実際に返済が始まるまでの期間
認可決定が出た旨の公告後、二週間の経過をもって、認可決定は確定します。これにより、法律上、晴れて借金が減額されたことになります。
実務では、大半の方が元の借金の80%を免除されます。しかし、20%は借金が残るので、これ以降基本的に3年の期間をかけて分割払いしていく必要があります。
実際の返済が始めるまでの期間
これはうえで述べた「再生計画案」の規定によります。
実務上では、「認可決定の確定した月の翌月(翌々月)末日まで」などとするのが一般的です。
そのため、認可決定確定後、数か月以内には返済が始まるものと考えておいたほうがよいでしょう。
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個人再生終了後に返済に要する期間について
個人再生は自己破産と異なり、手続き終了後に、減額された借金を返済する必要のある手続きです。その返済期間については、民事再生法という法律によって厳格な定めがなされています。
基本は3年間の分割払い
個人再生によって減額された債務は、基本的に3年間で分割払いをすることになります。
実務では、再生計画案に「毎月末日まで」などという定めをし、各債権者の指定する銀行口座に振り込む形で支払いを行うことになるのです。
返済額が100万円の場合、毎月の支払額は?
実務では、個人再生後に支払うべき債務額は100万円となる例が大半です。これには将来利息が発生しません。そのため、これを3年間で支払う場合、毎月の支払額は約2万8千円となります。
例外として5年間の分割払いとすることも可能
個人再生による返済期間は、うえで述べたように基本的には3年間での分割払いとなります。しかし、3年間では支払うことが難しいような特別な事情がある場合もあるでしょう。
その場合には、その旨を裁判所に申し立てることで、支払い期間を5年間まで延長してもらうこともできます。
どのような場合に返済期間を5年にできるのか?
客観的に見て、申立人の収入と支出の状況から考えて、減額後の債務を3年の分割で支払うことが困難であると判断できる場合であることが必要です。
返済額が100万円の場合の毎月の支払額は?
うえで述べたように、個人再生では手続き後の返済額が100万円となる方が大半です。この100万円を5年間で毎月の分割払いとする場合、毎月の返済額は約1万7千円です。3年間での返済と比較すると、返済額が毎月1万円以上減額されるため、より返済が楽になります。
返済開始後の返済期間の延長について(再生計画の変更)
個人再生の手続きは、再生計画案が裁判所によって認可され、それが確定することによって実質的に終結します。あとは、その再生計画に基づき、毎月返済をしていけばよいことになります。
しかし、事情によっては、再生計画どおりに返済することが難しくなることもあるでしょう。そのような場合には、一定の条件のもとに、返済期間を最長2年間まで延長することが認められます。
これを「再生計画の変更」といいます。
再生計画の変更
民事再生法第234条では、再生計画の変更について、つぎのように定めています。
「小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。」
つまり、元の再生計画での返済期間が3年だった場合には5年。元の返済期間が5年だった場合には、7年まで延長してもらえることになります。
延長が認められる条件とは?
民事再生法第234条で定められている条件は、「やむを得ない事由」で返済が「著しく困難」になることです。
これは実例としては、それぞれつぎのような場合が該当することになります。
返済期間の延長が認められる場合の具体例
つぎのような事情が発生した場合には、裁判所に返済期間の延長を認定してもらえる可能性が高いでしょう。
- 会社をリストラされてしまった
- 病気になり働けなくなってしまった
- 交通事故を起こしてしまい、多額の賠償金を支払わなければならなくなった
これらのほかにも、延長を認定してもらえる事由に該当する事情はたくさんあると思われます。
詳しくは、弁護士や司法書士など債務整理の専門家に相談するとよいでしょう。
ブラックリストに載る期間とは?
個人再生をした場合、基本的に、いわゆるブラックリストに載る状態になります。債務整理して借金問題を解決する以上、これはある意味、仕方のないことです。個人再生を申し立てる際には、この点を充分理解したうえで行動することが重要です。
そもそもブラックリストとは?
個人信用情報機関では、個々人の金融機関の利用履歴について、それぞれ情報を管理しています。このため、ある人が借金を返済しない場合などには、それを「事故情報」としてその人のデータに登録するのです。
このように、事故情報が記録されている状態が「ブラックリストに載っている」状態ということになります。
個人信用情報機関の種類
個人信用情報機関には、主につぎの3つが存在します。
①株式会社CIC(通称「CIC」)
主に、クレジットカードなどを発行する信販会社が加盟している機関です。
そのため、クレジットカードの利用状況・返済の滞納などが個人情報として記録されます。
②株式会社日本信用情報機構(通称「JICC」)
主に、消費者金融などが加盟している機関です。
そのため、消費者金融からの借入額や返済状況などが個人情報として記録されます。
③全国銀行個人信用情報センター(通称「KSC」)
主に、銀行が加盟している機関です。
銀行での借り入れ状況、返済状況などが個人情報として記録されます。
個人再生をした場合には、これら個人信用情報機関において、それぞれ事故情報が記録され「ブラックリストに載る」ことになるのです。
ブラックリストに載るデメリット
個人信用情報機関においてブラックリストに載っている場合、各種の不利益を受けることになります。
主要なデメリットは、つぎのようなものです。
新たな借り入れなどができなくなる
個人信用情報機関でブラックリストに載っている状態の場合、基本的には金融機関などから新たな借り入れができなくなります。
このため、事業でどうしても金融機関から借り入れが必要であるなどの場合には、個人再生以外の債務整理を検討する必要があります。
クレジットカードが作れなくなる
個人再生を申し立てた場合、すでに持っているクレジットカードは、基本的に利用できなくなります。そして、ブラックリストに載っている状態では、新たにクレジットカードを作ることもできません。
そのため、基本的には現金で買い物をすることになります。当然、キャッシングも利用できません。ブラックリストから名前が削除されるまでの間、このような不利益を被ると考えておいたほうがよいでしょう。
ブラックリストから削除される期間について
個人信用情報機関において自分のデータに事故情報が記録されたからと言って、一生ブラックリストに載せられるわけではありません。
個人の金融機関の利用履歴などの情報を管理している個人信用情報機関では、個人再生後に新たな事故情報が登録されない場合、ブラックリストから名前を削除する扱いとなっています。
この期間は、つぎのように各信用情報機関で扱いが異なっています。
①CIC
上記でご紹介したほかの機関では、個人再生が申し立てられた場合、その人のデータに事故情報が記録されます。
しかし、このCICでは、個人再生の申し立ては事故情報として扱わないという運用をしています。つまり、個人再生した場合でも、CICではブラックリストに載らないことになります。
ちなみに、自己破産した場合には5年間事故情報が記録されます。
②JICC
個人再生した場合には、事故情報として記録されます。削除されるまでの期間は、5年間となります。
③KSC
KSCは個人信用情報機関中、個人再生に関して、もっとも厳しい扱いをしています。つまり、個人再生を申し立てた場合には、10年間事故情報が記録されたままとなるのです。
銀行関係からの借り入れなどを将来予定している場合には、注意が必要でしょう。
個人再生後5年~10年はデメリットを覚悟すること
上記のように、個人再生した場合には、最高10年間はブラックリストに載ることになります。この期間に新たな借金をせずに生活できるよう、収入と支出のバランスを充分に検討しておく必要があります。
銀行口座が凍結される期間
個人再生したからと言って、基本的には銀行などの口座が凍結されるということはありません。ただし、個人再生で債務の免除の対象となる「再生債権者」の中に銀行が含まれている場合には、注意する必要があります。
口座から預金を引き出す必要も
万一、口座が凍結されてしまう恐れがある場合には、対策を講じる必要があります。
せっかくお金を預けているのに、口座が凍結され引き出すことができなくなってしまっては大変です。最悪の場合には、日々の生活にも事欠くことにもなりかねません。
そのような場合には、個人再生を申し立てる前に、全預金を引き出すことが必要かもしれません。
再生委員が選任される場合
東京地裁など一部の地方裁判所では、個人再生する場合には、再生委員が選任されます。また、司法書士が書類の作成を代行している場合には、再生委員が選任されるという扱いの地方裁判所も一部にはあります。
再生委員が選任される場合、手続きがより複雑となります。そのため、再生委員が選任されない場合と比較すると、手続き終了までの期間がさらに長くなります。
まとめ
今回は、個人再生する場合に要する各種の「期間」をテーマに、ご説明いたしました。
冒頭でも述べましたが、個人再生は裁判所で厳格に行われる手続きです。そのため、手続きのすべてが終了するまでには、ある程度の時間がかかります。
多額の借金を負っている状態での生活は、とても苦しいものです。借金問題から早く解放されるためにも、個人再生にはこれらの期間がかかることを念頭に置いて、計画的に準備することが望ましいでしょう。
借金問題は悩んでいても解決しません。それどころか利息が増えるなど、逆に借金が膨らみ問題が深刻化してしまいます。
まずは気軽に、債務整理の専門家に相談することをおすすめします。
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