個人再生で車を残す4つの方法と引き上げ拒否ができるケースを紹介

日本でも一部の大都市を除いては、自動車は生活の重要な「足」でしょう。毎日のように生活のいろいろな面で不可欠な存在。それが車です。毎日自分が独占的に使用することのできる車。無くなっては生活できない、という人もいるでしょう。

それでは、この車は個人再生することでどのような扱いになるのでしょうか?手放さなくて良い方法はあるのでしょうか?

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個人再生前に把握しよう。いま乗っている車は誰のもの?

そもそも自分が使用している車は、法律上いったい誰のものなのでしょうか?実は、その車を購入したパターンによって異なるのです。誰が所有者かによって個人再生により車が引き上げられてしまうかどうかが関わってきます。

現金で買った車の場合

車は当然自分のものとなります。この場合、ローンを返済中の車のように個人再生することで引き上げられる心配はありませんが、車の資産価値という点で問題となることがあります。詳細は後にご説明いたします。

ローンで買った車の場合

ローンを組んで車を購入した場合には、その返済が終わっている場合と、まだ返済中の場合で所有者が異なります。詳細は、次のようになります。

ローンを支払い終わった車の場合

ローンを組んだけれど、支払いが完了している。このような場合には、個人再生することによって車が引き上げられてしまうということはありません。なぜなら、ローンの返済が完了した時点で、その車の所有権がローン会社からあなたに移転し、あなたが車の所有者になるからです。

車検証上の「所有者」欄がローン会社あるいはディーラーなど自動車販売会社のままになっているケースをよく見かけますが、それはあくまでも車検証の上でのこと。法律的には所有者はあなたになっているので問題ありません。

ちなみに、車検証上の「所有者」欄は名義変更できます。「所有者」とされているローン会社あるいはディーラーなど車の販売会社に「車の名義変更したいのですが?」と問い合わせてみるといいでしょう。必要な書類を送ってくれるはずです。

ただ、この場合に問題となりうるのは、その車の資産価値です。その車が高級車で、新車登録から数年しか経過していないような場合には資産価値アリとされ、個人再生の裁判手続き上問題となることがあります。しかし、普通車で新車登録後ある程度以上年数の経過している自動車の場合には、資産価値が問題とされない場合もあります。これも後に詳述します。

ローン返済中の車の場合

結論から言いましょう。ローンで購入した車は、ローン会社のものです。毎日自分だけが使用し、自分の家においておけるため、自分のものだと勘違いしているケースが多々あります。

確かに、そのローンの支払いがすべて終われば、車は自分のもの、つまり自分の所有物となります。しかし、これはあくまでもローンの支払いが完全に終了した場合です。少しでもローンが残っている場合、極端なことを言えばローンが1円でも残っている場合には、その車の所有権はローン会社にあるのです。なぜかといえば、ローンで購入した車には所有権留保という担保権が付いているからです。簡単に言うと、見かけとしては購入した人のものになっているその車の所有権はローン会社にとどめてある、ということです。

そのため、万一ローンが支払われなくなった場合、ローン会社は所有権に基づいて、「使用者」に車の返却を求めます。いわゆる「引き上げ」ですね。車検証をよく見てください。車検証上、通常のケースでは「所有者」はローン会社となっているはずです。これに対して、あなたは「使用者」となっていると思います。そう、その車の所有者はローン会社であり、あなたは「使用者」に過ぎないのです。

車をリースしている場合

リースして車を乗っている場合には、その車の所有者はリース会社です。そのためローン返済中の車と同じように、個人再生した場合にはリース会社によって車は回収されてしまいます。

個人再生する前に車の名義変更をしても大丈夫?

個人再生するに際して、何らかの理由から自動車の名義変更をしようと考える方がいらっしゃいます。しかしそれはやってはいけません。その行為は法律上、資産隠しとなります

資産隠しが発覚した場合には、せっかくうまくいっていた再生手続きも取り消しにされてしまいます。絶対にやらないようにしてください。

自動車ローンに保証人がいる場合どうなる?

個人再生した場合、自動車ローンの債権者であるローン会社などは、ローンの残債務額を一括で保証人または連帯保証人に請求することになります。つまり、個人再生すると自動車ローンの保証人に迷惑をかけることになります。

そのため個人再生に踏み切る前には、保証人や連帯保証人に連絡または相談することは最低限必要なことでしょう。保証人がその請求に対して一括返済できない場合には、保証人と一緒に個人再生や破産するということを検討する必要があるかもしれません。

個人再生をして車が引き上げられる時期は?

個人再生手続きは、債務整理の中でもある意味最も専門的な法律知識などが必要となる手続きとなります。そのため、弁護士や司法書士など債務整理の専門家に依頼する必要性が高いものです。

たしかに、何らかの理由からそれら専門家には依頼せず、債務者個人で行うこともできないことはありません。しかし、裁判所によっては弁護士や司法書士に依頼するように求められることもあるようです。

また、専門家に依頼することで手続きがスムーズになるなど、副次的な効果もありますので、やはり本人だけでの申し立ては避けたほうが賢明でしょう。

そしてこの専門家に依頼した場合、債務整理を専門家が引き受けたことを明らかにするため、正式に「委任契約」をとりかわすことになります。この契約に基づき、専門家は「受任通知」を各債権者(ローン会社や借金の相手業者など)に発送します。この時点で、車のローン会社は残金の完全な返済が望めないことを知ることになります。業者によって扱いはそれぞれですが、この通知の時からだいたい1,2カ月程度で車の引き上げが実行されます。

その具体的な時期については、その専門家とローン会社がやりとりして決定されることになります。

個人再生で車を手放さずに残す4つの方法とは?

冒頭でも述べたように、いまや車は生活の必需品です。個人再生した場合でも、手元に残したいと思うのが人情というものですよね?もし、業者によって引き上げられてしまった場合には、生活に支障が出てしまいます。

それでは、車を引き揚げられなくする方法はないのでしょうか?

以下のような方法を使うことで、車を手元に残せる可能性を高めることができます。

1.親・兄弟などに残債務を一括で支払ってもらう

親や兄弟など近親者に頼んで、ローンの残額を一括で支払ってもらう方法です。もちろん、親や兄弟などが引き受けてくれなければなりませんが、このやりかたができる場合には、車はローン会社のものでなくなるため、個人再生をしても車が引き上げられてしまうことはなくなります。しかし、この場合には車の資産価値が問題となってくることがあります。

ちなみに、親などに肩代わりしてもらったローンの残債務額は、今度は親などが債権者となり個人再生の対象債権となります。

2.親・兄弟などにローンの債務引き受けをしてもらう

この方法は、ネット上でもほとんどまったく見かけない方法ですが、実務上よく利用される方法です。

つまり、ローン会社と交渉して親・兄弟などと債務引き受け契約(免責的債務引き受け)を締結してもらい、自動車ローンの債務者をその親や兄弟に変更するのです。ローン会社も契約どおりローンを支払ってもらえるのですから、通常交渉に応じてくれるはずです

こうすることにより、法律上ローン債務は自分の債務ではなくなるため、個人再生した場合でもそのローン債務は手続きの対象外となり、車が引き上げられてしまう恐れはなくなります。

3.ローン会社と別除権協定を締結する

個人再生する場合、ローン返済中の車は基本的にローン会社によって引き上げられてしまいます。しかし、事業などに不可欠である場合など特に車を手元に残す必要性が高い場合には、債権者との間で「別除権協定」を結ぶという方法があります。

裁判所に対して、車を共益債権(事業の継続などに必要なもので、すべての債権者に利益となりうる)として認めてくれるよう上申書を提出するのです。別除権協定が成立すれば、ローンの残額を分割で支払うことを条件として車の回収を防ぐことができます

4.担保権消滅請求をする

ちょっと難しい話になりますが、裁判所に対して担保権の消滅請求というものをすることで、車の引き上げを阻止することができます。

どういうことかというと、上述のようにローンで購入した車にはローン会社の所有権留保という、いわゆる担保権が付いています。そのため、個人再生された場合にはローン会社によって車は回収されるのが通常です。

しかし、以下のふたつの条件を備えることができる場合には、裁判所に対して担保権消滅許可申請(民事再生法148条)ができることとされています。

①自動車が事業等で必要不可欠なこと

②車の資産としての査定額を一括して裁判所に支払うこと

つまり、このふたつの条件を揃えることができ、担保権消滅許可申請が裁判所によって認められた場合には、車を手元に残すことが可能になります。

ただし現実問題として、ある程度まとまったお金を一括で裁判所に納付する必要があるため、個人再生をしようとしている人にとっては厳しいものとなります。

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個人再生をしても車の引き上げを拒否することができる場合もある

一定の条件が備わっている場合には、ローン会社からの引き上げを拒否できる場合があります。これは平成22年6月4日の最高裁判所の判決に基づくものであり、いくつかの条件があります。

車検証上の所有者がローン会社でないこと

車検証上の「所有者」がローン会社でないことが条件となります。このような場合には「所有者」はディーラーなど自動車の販売会社になっていることが多いようです。

個人再生の開始決定までにローン会社が「所有者」とならないこと

個人再生は申し立て後、特に問題がない場合には通常1~2週間程度で開始決定がなされます。この裁判所による開始決定時点においても車検証上の所有者がローン会社になっていないことが条件です。

先に述べたとおり、ローンで購入した車は通常、ローン会社により所有権留保されています。つまり、法律上所有権はローン会社にあります。そのため、個人再生をする場合には契約どおりにローンの返済が行われないため、ローン会社は所有権に基づいて返還を求めてきます。

しかし、上のような条件を備えている場合には、そのローン会社からの引き上げの要求を拒否できる場合があるのです。

一度車検証上の「所有者」の欄を確認してみるといいでしょう。

引き上げ拒否できる場合の車はどうなる?

上記のように車の引き上げを拒否できる場合、その後の車の扱いはどうなるのでしょうか?

車はそのまま利用できる

ローン会社からの引き上げを拒否することが最高裁判例によって認められていますので、車はそのまま乗り続けることができる可能性が高いといえます。

自動車ローンの支払いはどうなる?

自動車ローンは残債務額が個人再生の対象債権となります。そのため、個人再生によって大幅に減額された自動車ローンの債務額を返済完了した場合には、車検証上の所有者(この場合、通常はディーラーなど自動車販売会社)に対して、名義変更の請求ができることになります。

個人再生した後、車は購入できるの?

現金で購入する分にはまったく問題ありません。問題となるのは、ローンを組もうとする時です。

個人再生を申し立てると、その時点で信用情報機関に事故情報が記録され、その人はブラックリストに入れられてしまいます。

このブラックリストに入っている期間は、まず新たなローンは組めません

個人再生後に車を購入する裏技とは?

ローンの残っている車の場合、個人再生することによって、基本的には車を引き揚げられ失ってしまうことになります。しかし、車を失った場合でもどうしても車が欲しい、車が生活上必要だということも多いと思います。

それでは、個人再生後に車を手に入れるにはいったいどうしたらいいのでしょうか?

現金で購入する

ローンでの購入が問題となっているだけですので、現金で購入する分には何の問題も発生しません。親や兄弟などに購入代金を貸してもらい、購入するパターンもよくあります。ただこの場合も、せっかくお金を貸してくれた人に迷惑をかけないようにしたいものです。

親や兄弟などの名義で購入してもらう

自分の代わりに親や兄弟などに車を買ってもらうことです。親や兄弟がブラックリストに入っているなど特別な事情がない限り、ローンでも車を手に入れることができるでしょう。ただし、言うまでもないことですが、その支払いは毎月自分が責任をもって支払うことが大切です。

車の資産価値が高い場合はどうなるの?

上で述べたように、車が自分の所有物である場合、ローン会社などからの回収の恐れはありません。しかし個人再生する場合、今度はその資産価値が問題となる場合があります。

個人再生の場合、車の査定額とその他の所有している資産との合計額または100万円とのどちらか高額なほうを返済すべき債務額としなければなりません。これはなぜかというと、法律上「清算価値保障の原則」というものがあるためです。つまり個人再生の場合には、再生計画により返済すべき額(最低弁済額)は、最低でも持っている財産以上の額を返済すべき、という考え方です。

いうまでもないことですが、所有している車の経済的価値がそれほど高くない場合には、あまり問題となることはありません。しかし、それが高額な場合には再生計画で返済すべき総額が高くなる恐れがあるということになります。

以下にその取扱いを説明します。

高級車の場合

所有している車が外車や、国産でも高級車であるような場合です。この場合には、かなり高い確率で最低弁済額は100万円を超えることになるでしょう。

普通自動車の場合

新車登録後それほど年月が経過していないような場合には、やはり最低弁済額に影響してくる可能性があります。新車登録後7年から10年以上経過している場合や走行距離が10万キロを超えている場合などには、それほど影響しないと考えてもいいでしょう

軽自動車の場合

軽自動車の場合、普通自動車よりは通常経済的価値は低くなります。しかし、新車登録後それほど時間が経過していない場合には、やはり問題となることがあり得ます。

オートバイの場合

ハーレーダビッドソンなど、一部の高級オートバイや新車購入後時間があまり経過していないような場合には資産価値として検討する余地があるかもしれません。

しかし、通常のケースではそれほど問題となることはないと思われます。

個人再生に査定書は必要?

車を所有している人が個人再生する場合、基本的に車検証のほかに査定書も裁判所に提出することになります。

この査定書を入手するにはつぎのような方法があります。

基本的な入手方法

裁判所に提出する書類である以上、ある程度信用のおける機関の発行した書類であることが望ましいといえます。そのため「(財)日本自動車査定協会」などに依頼して査定書を発行してもらうなどの方法が望ましいといえます。

査定書の簡単な入手方法とは?

本則としてはうえで述べたように、信用のおける機関の発行した査定書が望ましいといえます。しかし、より簡単な方法も存在します。その方法とは、インターネットを利用することです。いまやインターネットを利用することで、車の現在の経済的価値についても大まかな値段を知ることができます。

たとえば、カーセンサーグーなど、中古車検索サイトを利用するとします。サイト上で自分の車と同一の年式・装備のものを検索し、販売価格を調べます。出てきた価格は、あくまでも業者の販売価格ですので、実際の値段(実際に業者に買い取ってもらう際の車の値段)はそれよりある程度以上低いはずです。その検索結果の画面を印刷することで、査定書代わりとすることができます実務上、このような方法も裁判所によっては認められています

査定書が不要な場合もある

個人再生を申し立てるに際して、ローンの残っている車がある場合には、基本的に車の査定書が必要でした。しかし、車検証の記載によって、その車の資産価値がないことが明らかな場合には別途査定書が不要とされる場合もあります

以下のような場合です。

  • ①走行距離が10万キロを超えているような場合
  • ②新車登録時から7年から10年以上経過している場合

以上のような車の場合には、実際の取引上売買が成立しにくいため、車の経済的価値がほぼゼロとされることが多いためです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

現代おいては、もはや生活に欠かせない車ですが、個人再生する際には大きな問題となることがあります。

ローンを完済している場合には、車の資産価値が問題となることがありますし、ローンが残っている場合にはローン会社による引き上げなどが問題となります。

個人再生を検討される場合には、これらのことを念頭に置いて慎重に判断することをお勧めいたします。

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