借金問題を法律的に解決する方法として、債務整理という手続きがあります。
債務整理には自己破産など4つの方法がありますが、その中の1つの方法として任意整理という手続きがあります。
任意整理は、債務整理のほかの3つの方法と異なり、裁判所を利用せず当事者同士が自由に交渉を行う方法です。
今回はこの「任意整理」について、詳しくご紹介いたします。
- 「任意整理とはどのような手続きなのか?」
- 「任意整理すると借金がどれくらい減るのか?」
- 「任意整理するためにはどれくらいの費用がかかるのか?」
上記のような疑問にお答えしますので、ぜひ最後までお読みください。
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1.任意整理とは|裁判外で行う債権者と債務者の話し合い
借金問題を法律的に解決する方法のことを、債務整理といいます。
債務整理には、自己破産を含め4つの方法があります。
任意整理とは、債務整理にある4つの方法のうちの1つです。
任意整理では裁判所を利用せず、債権者(借金を貸した側)と債務者(借金を借りた側)の自由な交渉によって、借金に関するつぎのような事柄について話し合いをします。
- 借金元本の減額
- 将来利息のカット
- 分割返済の可否
- 毎回の返済額の減額(返済期間の長期化)
ただし、任意整理は文字通り当事者間の「任意」の交渉であるため、相手業者には交渉に応じる法律上の義務はありません。
このため、相手が強硬な業者である場合には、借金の返済条件に付いて一切譲歩してくれないケースもたくさん存在します。
もし相手業者との話し合いによって借金問題が解決しないようであれば、任意整理以外の強力な方法によって債務整理する必要があります。
2.任意整理のメリット・デメリット
4つある債務整理方法それぞれに特徴があるように、任意整理という方法にも主として以下のようにメリット・デメリットが存在します。
任意整理という方法は、借金の貸し手である金融業者などと直接交渉する方法です。
このため任意整理するためには、弁護士や司法書士など債務整理の専門家への依頼なしには手続きを行うことが非常に難しい手続きとなっています。
今回、こちらでは専門家への依頼があることを前提として任意整理についてご紹介いたします。
任意整理のメリット
任意整理する場合、つぎのようなメリットを受けることができます。
- (1)専門家の依頼後、すぐに業者からの請求がストップする
- (2)しばらくの間、借金返済を止めることができる
- (3)対象となる債権者を自由に選べる
- (4)裁判外で手軽に手続きできる
- (5)債務整理したことが官報に掲載されない
- (6)将来利息がカットされ返済が楽になる
それぞれにつき、順次解説させていただきます。
(1)専門家の依頼後、すぐに業者からの取り立てがストップする
借金の返済を滞らせている場合、業者からしつこく取り立ての連絡を受けることがあります。
あまりにしつこかったり、強い口調で取り立てを受けるなどするため、業者からの連絡を怖がり精神的に不安定に陥ってしまうケースも後を絶ちません。
この取り立ての連絡は、基本的に借金の返済が再開されるまで止まることがありません。
しかし、任意整理に限らず債務整理を専門家に依頼した場合には、この取り立ての連絡はすぐにストップさせることができるのです。
受任通知には取り立てをストップさせる効果がある
債務整理を専門家に依頼した場合、その専門家から相手業者に対して「受任通知(じゅにんつうち)」という書面が送られます。
受任通知とは、債務整理の専門家が依頼人に関する借金問題を解決する仕事の依頼を受けたことを金融業者などに対して通知するものです。
この通知が相手業者に到達した場合、それ以降は専門家が交渉の窓口となるため、債務者に対して直接取り立ての連絡をすることが禁止されることになっています。
その結果、業者からの取り立ての連絡はぱったりと止まることになるのです。
つまり、任意整理を専門家に依頼すれば、それ以降は手続き全般を専門家に任せることができるため、精神的にも負担を軽くすることができるようになるのです。
(2)しばらくの間、借金返済を止めることができる
任意整理の申し込みをして債権者(金融会社など)が交渉することを受け入れた場合、話し合いが合意に至るまでの間は借金の返済をストップできることになります。
この場合、借金返済を再開する日は、任意整理の結果成立した合意内容によって定められた返済日から行うことになります。
任意整理することによって、数か月の間借金の返済を止めることができるため、その間経済的に生活を立て直すことができるのです。
(3)対象となる債権者を自由に選べる
任意整理をする場合、交渉の対象となる債権者は自分で自由に選択することができます。
たとえば、A・B・Cと3社からの借り入れがある場合でも、Aだけを任意整理の対象としてB・Cからの借り入れに関しては契約どおり返済していくことも可能となります。
これに対して個人再生や自己破産の場合、法律上「債権者平等の原則」というルールがあるため、すべての債権者を手続きの対象としなければいけません。
消費者金融と友人知人からの借金があるケースでは、友人知人には迷惑をかけたくないという思いから消費者金融だけを自己破産などの対象としたいと考える方がたくさんいます。
しかし、個人再生や自己破産の場合には、そのようなことは認められません。
債権者である以上、消費者金融だけでなく友人知人からの借り入れも個人再生または自己破産の対象としなければいけないのです。
このため個人再生や自己破産する場合には、親族や友人知人からの借金がある場合には、それらの人々にも迷惑をかけることになってしまいます。
これは他人に保証人になってもらっている場合も同様です。
ローンなどでお金を借りる際に誰かに保証人になってもらっている場合、その借金を個人再生や自己破産すると保証人に迷惑がかかることになります。
これに対して任意整理をする場合には、上記のようなケースにおいて友人知人などからの借金だけを債務整理の対象から除外することができます。
このため、それらの人々に迷惑をかけずに債務整理ができるのです。
(4)裁判外で手軽に手続きできる
4つある債務整理の手続き中、任意整理以外の3つの方法は、すべて裁判所で行う手続きです。
裁判所で行う債務整理は、手続きの進め方などが法律によって厳格に定められています。
これに対して任意整理の場合には、裁判外で行う手続きであるため、手続きの進め方や合意内容などは当事者の自由に決めることが可能です。
(5)債務整理したことが官報に掲載されない
債務整理中、個人再生や自己破産という方法は、非常に強力に借金問題を解決することのできる方法です。
しかしその反面、一定以上の財産が処分されるなど手続きを行うためにはデメリットも多く受けることになります。
それらデメリット中、多くの方が心配されるものとして「官報(かんぽう)」に住所や名前が掲載されてしまうという点があります。
官報とは、政府が発行している広報紙のようなもので、そこには個人再生や自己破産した人の住所や名前が掲載される扱いになっているのです。
これに対して任意整理する場合、その事実が官報に掲載されることはありません。
個人再生や自己破産と異なり、任意整理しても借金問題を抱えていることが周囲にバレにくいという点は、任意整理のメリットと考えられます。
ただし、個人再生・自己破産することで官報に氏名などが掲載されたとしても、通常はそれほど問題になることはありませんので過度の心配は不要です。
(6)将来利息がカットされ返済が楽になる
業者からお金を借りたりクレジットカードでキャッシングまたは商品を買ったりした場合、元本に対して利息が発生するのが通常です。
元本だけの返済であればまだしも、毎月発生する利息の返済が必要となるため借金問題はなかなか解決できないのです。
任意整理した場合、交渉の基本原則として、この利息(将来利息)をカットする方向で話し合いが進められることになります。
交渉が成功した場合、残債務(借金の残高)を分割で返済することになるのが一般的ですが、残債務に利息が発生しなくなるので返済が非常に楽になります。
ただし、任意整理はあくまでも当事者間の交渉にすぎません。
このため、相手業者によっては期待通りの効果が得られない可能性があるので注意が必要です。
相手が強硬な態度をとる業者である場合、任意整理ではまったく借金問題を解決することができないというケースも存在します。
このようなケースでは、任意整理以外の、より強力な債務整理方法を選択する必要があります。
任意整理のデメリット
任意整理に限らず、債務整理によって借金問題の解決を図る以上、どうしてもデメリットを避けることはできません。
たとえば、自己破産する場合には上記のように官報に氏名が公表されたり、職業や日常生活の自由に制限を受けるなど各種のデメリットがあります。
任意整理をする場合、個人再生・自己破産ほどのデメリットを受けることはありませんが、つぎのような点で不利益を受けることになるので気を付けてください。
- (1)いわゆる「ブラックリスト」に載る
- (2)借金問題の解決力が弱い
それぞれについて、順次ご紹介します。
(1)いわゆる「ブラックリスト」に載る
この場合の「ブラックリスト」とは、警察などが要注意人物をリストアップしているようなものではありません。
あくまでも、債務整理をした人の個人的な情報を記録・管理している個人信用情報機関における扱いです。
個人信用情報機関では、個人に関する金融機関の利用状況をデータとして記録しています。
お金を借りたり返したりという情報はもちろんのことですが、クレジットカードの利用状況、ローンの申し込みの事実など多種多様な個人の金融機関の利用状況がデータとして記録されているのです。
債務整理した場合、その人の個人情報に「事故情報(「異動情報」)」が記録されます。
これは簡単に言うと、金融機関に対して「迷惑をかけた」という情報です。
何らかの債務整理をするということは、金融機関との当初の約束を守らないということに他なりません。
このため、債務整理した場合には、この個人情報に事故情報が記録されることになるのです。
そして、個人信用情報機関において個人情報に事故情報が記録されている状態を「ブラックリストに載る」「ブラックリスト入り」などと呼ばれることになります。
個人信用情報機関には、銀行系・消費者金融系・クレジット系と独立した機関が3つ存在しますが、事故情報だけは3つの機関で共有されています。
このため、1つの機関で事故情報が記録された場合には、ほかの機関にもその事実が判明することになります。
その結果、どこか1つの機関で事故情報が記録されてしまうと、つぎのようなデメリットを受けることになります。
ブラックリスト入りすることのデメリット|ローンが組めなくなる
個人信用情報機関においてブラックリスト入りしている場合、主としてつぎのようなデメリットを受けることになります。
- 新たにお金を借りられなくなる
- 新規でクレジットカードを作れなくなる
ただし、上記のようなデメリットは一生続くわけではありません。
ブラックリストから名前が削除されれば、デメリットも消滅することになりますので安心してください。
ブラックリストから削除されるまでの期間
任意整理した場合、5年の経過することによって、その人の信用情報から事故情報の記録が削除される扱いとなっています。
つまり、任意整理したときから5年が経てばブラックリストから名前が削除されることになります。
債務整理する以上、どうしてもブラックリスト入りは避けることができません。
債務整理後、しばらくの間は銀行・消費者金融・クレジット会社など金融機関の利用はできなくなることを十分理解したうえで任意整理を行ってください。
(2)借金問題の解決力が弱い
任意整理は、その他の債務整理方法である個人再生や自己破産と比較すると借金問題を解決する力が弱いという欠点を持っています。
個人再生・自己破産は、法律の規定に基づいて地方裁判所で厳格な手順を経て行われる債務整理方法です。
このため、法律の条件を満たしている場合には、たとえ相手業者が自己破産などに反対していたとしても借金を帳消しにするなど強力な効果が期待できます。
これに対して任意整理の場合、交渉はあくまでも当事者によって任意になされるものです。このため相手業者には、そもそも交渉に応じる義務もないため、借金問題の解決力がどうしても弱いものとなるのです。
任意整理に応じない業者も存在する
最近は、任意整理に応じない業者も増加傾向にあるようです。
上記のように個人再生や自己破産とは異なり任意整理には法的な強制力がないため、業者には交渉に応じる義務がないからです。
もし相手業者が交渉に応じない場合には、つぎのように任意整理以外の債務整理方法を検討することになります。
業者が任意整理に応じない場合の対処法|個人再生・自己破産の検討
万一、相手業者が任意交渉に応じない場合、借金問題解決のためには、より強力な債務整理方法に方針転換する必要があります。
4つある債務整理方法のうち、個人再生と自己破産には法的な強制力をもって強制的に債務の免除(借金の帳消し)または債務の大半を減額させる効力が認められます。
このため、相手業者が任意交渉に応じない場合であっても、法律の定める条件などをクリアさえすれば借金問題を根本的に解決できる可能性があるのです。
ただし、個人再生と自己破産を検討する場合、どちらの方法が適しているかに関してはケースバイケースです。
本人の職業・収入・資産や借金の額などによって最適な債務整理方法は異なってくるため、弁護士や司法書士など債務整理の専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。
3.任意整理の仕方|専門家に依頼するのが基本
任意整理では、借金の貸し手である金融業者などと直接交渉しなければいけません。
業者と交渉する以上、自分だけで行うことには当然のこととして限界があります。
借金問題に関して交渉を行う以上、最低限度の法律の知識が必要となりますし、交渉を有利に進めるためのノウハウなども必要です。
この点を考えると、任意整理するためには大前提として債務整理の専門家に依頼し、交渉を代行してもらう必要があるのです。
任意整理に限らず、債務整理を依頼することのできる専門家には弁護士と司法書士がいます。
任意整理を依頼する以上、専門家に対して費用が発生しますが任意整理の結果、費用を上回るメリットが受けられることが一般的です。
通常の場合、専門家へ支払う報酬額以上に借金が減少するなど、メリットを受けることが期待できます。
4.任意整理の費用
任意整理を専門家に依頼した場合、実費以外にも専門家への報酬を支払う必要があります。
費用の詳細に関しては、依頼先の専門家ごとに料金やシステムが異なりますが、一般的なケースでは以下のような費用が発生することになります。
- (1)基本報酬
- (2)成功報酬
それぞれについて、簡単にご説明いたします。
(1)基本報酬
弁護士や司法書士など債務整理の専門家に借金問題の解決を依頼する場合、かならず発生するのが基本報酬です。
債務整理をする場合、ケースによっては十分な借金問題の解決効果が得られない可能性もわずかですが存在します。
たとえば、任意整理で相手業者と交渉したにもかかわらず、相手が譲歩せず借金の支払い条件などがまったく改善しないケースもあるでしょう。
基本報酬とは、債務整理する以上かならず発生する報酬のことをいいます。
基本報酬の相場|1社につき3万円~5万円
任意整理を専門家に依頼する場合、任意交渉の対象となる業者「1社につき〇万円」という形で報酬が必要となります。
実際に基本報酬としていくらが必要となるのかについては、各専門家によってそれぞれ異なります。
しかし、一般的に見た場合には、1社につき3万円から5万円くらいが相場と考えてよいでしょう。
そして任意整理の結果、借金の減額などの効果があった場合には、以下のように成功報酬が加算されるのが一般的な扱いです。
(2)成功報酬
専門家が任意整理した結果、借金額の減少など依頼人にとって何らかの利益が生じた場合には成功報酬が発生するのが通常です。
この成功報酬は、主としてつぎのような2つ報酬に分類することができます。
- ①減額報酬
- ②過払い報酬
①減額報酬
減額報酬は、その名前のとおり任意整理の結果借金が減額された場合に発生する成功報酬です。
②過払い報酬
過払い報酬とは、任意整理による債権調査の結果過払い状態であることが判明した場合に、業者から返還させた過払い金に関して発生する成功報酬です。
具体的には、戻ってきた過払い金の20%から30%程度が相場と考えてよいでしょう。
消費者金融会社やクレジットでのキャッシング歴が長い場合には、過払い金が発生している可能性があります。
心当たりがある方は、債務整理の専門家に相談されることをおすすめいたします。
具体的な報酬に関しては依頼前に確認を
上記の各報酬額に関しては、あくまでも目安としての一般的な相場です。
実際には、依頼をする専門家ごとに細かい点において異なってくる可能性がありますので、任意整理を依頼する際には事前に確認することをおすすめします。
5.信頼できる専門家の見分け方
任意整理に限らず債務整理を専門家に依頼する場合には、債務整理を請け負っているからといって、どの専門家に依頼しても効果が同じであるとは限りません。
借金問題の解決を図る以上、なるべく信頼できる専門家に依頼することが大切です。
信頼できる専門家を見分けるためには、つぎのようなポイントに着目するとよいでしょう。
- (1)報酬額が明確かどうか
- (2)受任通知をすぐに発送してくれるかどうか
- (3)債務整理の進行状況を説明してくれるかどうか
それぞれについて、簡単にご紹介します。
(1)報酬額が明確かどうか
信頼できる専門家かどうかは、債務整理を依頼することによって発生する各種報酬にかんしてキッチリと説明してくれるかどうかによって判断することができます。
信頼できる専門家であれば、必ず発生する報酬だけでなく、債務整理の進行状況次第で発生する可能性のある報酬に関しても説明してくれるはずです。
(2)受任通知をすぐに発送してくれるかどうか
債務整理を受任した専門家は、対象となる金融業者などに受任通知を発送することになります。
信頼できる専門家であれば、任意整理を引き受けた場合には、即日または遅くとも翌日には受任通知を発送してくれるはずです。
もし、依頼後数日経過しても金融業者などから催促の電話などがある場合、専門家がまだ受任通知を発送していない可能性が考えられます。
(3)債務整理の進行状況を説明してくれるかどうか
専門家に債務整理を依頼した場合、借金問題が解決するまでには短くても数か月、長ければ半年以上かかることもあります。
その間はすべて専門家に任せていれば結構ですが、依頼人としては債務整理の進行状況がどうなのか気になることもあるでしょう。
信頼できる専門家であれば、債務整理の進行状況に関しての問い合わせに関しても、きちんと説明してくれます。
もし、きちんと説明してくれなかったり、説明を避けようとする専門家の場合には注意が必要です。
最悪の場合、債務整理を受任したものの、その後放置しているケースも考えられます。
6.任意整理の流れ
任意整理を専門家に依頼した場合、手続きは以下のような手順で進むのが一般的です。
- (1)任意整理を依頼する
- (2)受任通知の発送
- (3)債権の調査
- (4)調査結果報告
- (5)和解案の作成
- (6)相手業者との交渉
- (7)和解の成立
- (8)和解契約書の取り交わし
- (9)返済開始
順次、ご説明いたします。
(1)任意整理を依頼する
任意整理という債務整理方法は、専門家に依頼して交渉を行うことが基本となります。
個人でも行うことができないわけではありませんが、通常のケースでは相手業者が交渉に応じてくれないというケースもあり、借金問題の解決は難しいでしょう。
任意整理を専門家に依頼する場合、報酬の額など重要事項について事前にきちんと説明を受けるようにしてください。
(2)受任通知の発送
任意整理を正式に依頼した場合、専門家は「受任通知」を作成し、任意整理の対象である業者に対して発送します。
この通知が業者に到達した場合、業者は債務者に対して直接取り立ての電話などをすることが禁止されます。
受任通知は、専門家が債務整理を正式に受けたことを通知すると同時に、これまで取引の詳細を記録した「取引履歴(とりひきりれき)」という書類の開示を求める通知を兼ねることになります。
(3)債権の調査
受任通知が相手業者に到達すると、しばらく後に業者から専門家に対して取引履歴が送られてきます。
専門家はこの書類を基に、必要に応じて利息の再計算などを行います。
この計算によって、法律上実際に支払うべき義務のある借金額が確定することになります。
(4)調査結果報告
業者からの取引履歴や再計算(「引き直し計算」とも言います)によって、依頼人が実際にいくらの借金を抱えているのかが明らかになります。
(5)和解案の作成
法律上支払い義務のある借金総額と実際に無理なく毎月支払うことが可能な金額から、具体的な和解案を作成します。
毎月返済可能な金額と比較して、支払うべき借金総額があまりに高額である場合には任意整理できない可能性もあります。
(6)相手業者との交渉
毎月無理なく返済できる金額が判明すると、いよいよ金融業者との交渉の段階に入ります。
債務整理の専門家に依頼している以上、交渉はすべて専門家に任せていればよく、自分で積極的に何かしなければいけないということはありません。
専門家は相手業者と話し合いを行い、無理なく返済を継続できる範囲内の条件で合意が成立するように交渉を行います。
(7)和解の成立
相手業者との交渉の結果、毎月の返済可能額の範囲内で借金の完済(全額の返済)が可能となる合意が成立した場合、当事者間に和解が成立します。
(8)和解契約書の取り交わし
当事者間にどのような内容の合意が成立したのかを明らかにするために、「和解契約書(わかいけいやくしょ)」を作成します。
和解契約書内には借金の総額や、いつから借金の返済を再開するか、毎月いくらずつ返済するかなど借金返済の重要事項に関して明記されます。
(9)返済開始
任意交渉による合意内容に基づき、返済を再開することになります。
任意整理後には、基本的に合意内容に基づいてきちんと返済を続けなければいけません。
7.依頼後に業者から取り立てを受けた場合の対処法
専門家に任意整理を依頼したにもかかわらず、金融業者などから取り立ての連絡を受けた場合、素直に債務整理の専門家に任意整理を依頼したことをハッキリと伝えてください。
その際には依頼先の専門家の事務所名や連絡先などを伝えて構いません。
そうすれば、業者はすぐに取り立てを止めるはずです。
もし、それでも取り立ての連絡が止まらない場合には、すぐに依頼先の専門家に相談してください。
そうすれば、有効な対策を講じてくれます。
8.任意整理後の債務の返済方法|基本は分割
任意整理が成功し、借金の返済方法が確定すると、合意内容に従って返済をすることになります。
任意整理で合意が成立した場合、残債務の支払いは分割となることが一般的です。
支払いが滞った場合、業者には残債務を一括請求する権利が認められることが通常ですが、大半のケースでは任意整理することで分割が認められるようになります。
返済するお金を一度に用意できる場合には、借金を一括で返済するケースもありますが、一般的には稀な事例となります。
分割払いの返済期間|長くても3年~5年
借金を分割で返済する場合、返済期間は3年から5年以内とすることが一般的です。
これ以上になると返済期間があまりに長くなるため、途中で返済できなくなる恐れなどがあるためです。
返済が開始してから終了するまでの期間を3年と考えても、その期間は決して短いものではありません。
自分の収入・支出などを十分考慮に入れ、毎月の返済額を無理なく返せる金額に抑えることが大切です。
9.返済に行き詰まった場合の対処法|再度の任意整理も可能
一度任意整理したにもかかわらず、途中で約束どおり返済できなくなってしまった場合、どのように対処したらいいのでしょうか?
任意整理は文字どおり、当事者間における「任意」の債務整理方法です。
このため万一、前回の任意整理の合意内容どおりに返済できなくなってしまった場合には、もう一度任意整理することも不可能ではありません。
ただし、任意整理では交渉に応じる法的義務はありませんので、債権者が交渉に応じてくれない場合には再度の任意整理はできないことになります。
このような場合には、任意整理以外の債務整理方法を検討する必要があります。
具体的には、特定調停や個人再生・自己破産などを選択することになるでしょう。
10.任意整理ができない場合の対処法|「特定調停」「個人再生」「自己破産」
繰り返しになりますが、任意整理という手続きは裁判外で行われる債権者と債務者間の任意の交渉です。
このため、任意整理を行っても借金問題の解決に至らないケースも多々見られます。
そのような場合には、法律の規定に基づく強制力のある手続きであるつぎのような手続きを検討してください。
- (1)特定調停
- (2)個人再生
- (3)自己破産
(1)特定調停
「特定調停(とくていちょうてい)」とは、簡易裁判所で行われる借金問題の解決法です。
債務者側(お金を借りている側)が裁判所に申立て、金融業者など債権者との間で借金の支払い条件の変更などに関して話し合いが行われます。
しかし、特定調停には借金問題を解決する効果があまり期待できないことが多いため、実務ではほとんど利用されていないのが実情です。
(2)個人再生
「個人再生(こじんさいせい)」という手続きでは、借金総額の最大80%~90%のカットが認められる可能性があります。
残りの債務に関しては基本的に3年間の分割払いをする必要がありますが、将来利息が付かないため返済が非常に楽になります。
たとえば500万円の借金を抱えている人が個人再生した場合、借金が最大で400万円カットされることになるため、残りの100万円を支払えばいいことになります。
この100万円には利息が付かないため、これを3年間で毎月分割返済する場合には、毎月2万8千円弱を支払えば返済することが可能となります。
つまり、500万円の借金を抱えていたとしても、個人再生すれば毎月2万8千円弱の支払いを3年間続ければ借金はすべて支払い終えることができるのです。
このように個人再生には、強力に借金問題を解決する効果が期待できます。
(3)自己破産
4つある債務整理の方法中、もっとも有名なものが自己破産という手続きです。
自己破産するには地方裁判所で手続きを行うことになりますが、法律の条件を満たした場合には、それまで背負っていた借金のすべてについて免除を受けることができます(「非免責債権」は除く)。
裁判所において自己破産が認められると上記のように基本的にすべての借金の免除を受けることができますが、その反面、いくつかのデメリットを受けることになるので注意が必要です。
11.最適な債務整理方法を選択するために必要なたった1つのこと
借金問題は、人それぞれによって内容がまちまちです。人が違えば職業・収入も異なり、持っている財産も違います。
このため、借金問題の解決方法である債務整理には4つの方法がありますが、どの方法が最適なのかはそれぞれの事情に応じて選択する必要があります。
しかし、実際にどの方法が最適なのかを判断するには、高度な法律的知識と債務整理のノウハウなど専門知識が欠かせません。
間違った債務整理をしてしまうと、手続きを行ってから後悔する可能性も否定できないのです。
たとえば自己破産によって資格制限を受ける職業に就いている人が、うっかり自己破産してしまうと、失業することになりかねません。
ご自分の借金問題を解決するためにもっとも必要なことは、債務整理の専門家に相談することだといえます。
12.まとめ
今回は、4つある債務整理方法の1つである任意整理についてご紹介させていただきました。
借金の貸主である債権者と借主である債務者の間で直接行われる任意整理では、借金の返済条件などに関して自由に交渉を行うことができます。
しかし任意整理は、法律による強制力がないため、借金問題を解決するためには強力な効果を期待できないというデメリットが存在します。
任意整理によって満足のいく結果が出なかった場合には、個人再生や自己破産など、より強力な効果の期待できる債務整理方法を検討する必要があります。
もし借金問題でお困りの場合には、当事務所へお気軽にご相談ください。一般的な内容であれば、初回の相談料は無料です。当事務所では、北は北海道から南は沖縄まで日本全国、どちらからのご相談・ご依頼でも承っております。
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