遺贈による不動産の登記は遺言執行者の有無が大きなポイントになる

相続人以外にも財産を残すことができる「遺贈」。自宅や所有している不動産が遺贈の対象となったときには、譲り受けた人(受遺者)は誰に対しても「この土地は自分のものだ」と主張できるよう、所有権移転登記をしておくのが原則です。

しかし、相続ではなく遺贈による所有権移転登記は何かと勝手が違うもの。今回は、遺贈による不動産の所有権移転登記について解説します。

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遺贈登記は誰が行うもの?

一言で「登記する」といっても、何事もなく登記を終えることは意外に大変だったりもします。まずは、誰が登記手続きをできるのかについて確認しましょう。

登記義務者とは

遺贈によって所有権移転登記を行うとき、登記の手続きをするべき人のことを「登記義務者」と呼びます。

遺贈者はすでに死亡しているため、登記義務者にはなりえません。そこで、遺贈者の代わりに、相続人や遺言執行者が登記義務者となります。相続人が登記義務者となる場合は相続人全員が登記義務者となります。

相続によっては、相続人が何十人となることも...また、受贈者は登記義務者であるとともに、登記権利者でもあります。

遺贈登記ができる人

相続登記の場合は、相続人が何人いようが、不動産を受け継ぐ相続人が単独で所有権移転登記の手続きができます。しかし遺贈の場合は、受贈者が単独で登記手続きを行うことはできません。

遺贈を原因とした所有権移転登記手続きは、①遺言執行者がいる場合と②遺言執行者がいない場合で異なります。

遺言執行者がいる場合

遺言執行者とは、遺言に書かれたことを実現するための手続きを執行する人のことです。被相続人から指名されることもあれば、「選任審判申し立て」という手続きによって、相続人や受遺者などが裁判所に申し立てをして決めることもあります。

遺言執行者がいる場合は、受遺者と遺言執行者で所有権移転登記手続きが可能です。

遺言執行者がいない場合

遺贈による所有権移転登記で問題となるのが、遺言執行者がいない場合です。この場合は、受遺者と相続人全員で共同申請をしなければなりません。

ただ、共同申請というと、法務局に全員で出向かなければならないのではと考える方もいるかもしれませんが、その必要はありません。申請は受遺者だけでも可能です。しかし、その場合は相続人全員の委任状や相続人全員の印鑑証明証が必要になります。

このように、遺言執行者がいない場合は、遺言執行者がいる場合に比べて必要書類が増えるほか、手間が煩雑になる点は要注意です。

相続人の中には、遺贈には同意しているものの、印鑑証明書などの書類を出し渋る人や、なかなか手続きに協力してくれない人もいます。遺言執行者がいない場合は、スムーズに所有権移転登記を進めることが難しいことも少なくないため、あとから遺言執行者の選任審判申し立てをするという方法をとることも。

受遺者と遺言執行者が同じなら手続きはスムーズ

最も手続きがスムーズにいくのが、受遺者と遺言執行者が同じ人に設定されている場合です。この場合、受遺者が遺言執行者としての権利も有していますので、単独で遺贈による所有権移転登記手続きを行うことができます。

相続人が受贈者の場合にも相続登記はできない?

先ほどから、「遺贈を原因とした所有権移転登記」という言葉が出てきました。登記には売買や贈与など、移転するに至った原因があります。その原因によって、手続きや必要書類などが若干異なります。今回テーマとして扱っているのは、「相続」と「遺贈」が原因となるケースです。

相続登記と遺贈登記

相続を原因とした所有権移転登記と、遺贈を原因とした所有権移転登記。相続も遺贈も、遺言書にそれぞれ明記することができます。遺言書に「自宅をAに相続する」と書かれていれば相続、「自宅をAに遺贈する」と書かれていれば遺贈です。

そしてそれぞれの原因に従って登記を行うことになりますが、受贈者が相続人の場合は「遺贈」と書かれていても相続登記ができれば、手続きも簡単です。この場合はどのようになるのでしょうか?

包括遺贈の登記原因は相続にできる

受贈者が相続人であっても、基本的には「遺贈する」と書かれていたら遺贈です。ですが、遺贈すると書かれてあったとしても、相続人の全員に対して包括遺贈がなされた場合には、相続を原因とする所有権移転登記ができることになります。

相続登記と遺贈登記を両方行う場合

土地の半分は相続人のもの、半分は受遺者のもののときなどは、相続登記と遺贈登記の両方を行うことになります。この場合は以下の順番で所有権移転登記をすることになります。

  1. 遺贈による所有権移転登記をする
  2. 残りの不動産について相続による所有権移転登記をする

遺贈の登記をする際の必要書類とは

遺贈を原因とした不動産の所有権移転登記手続きでは、どのような書類が必要になるのでしょうか?こちらも、遺言執行者がいる場合といない場合で分けてご紹介します。

遺言執行者がいる場合の必要書類

遺言執行者が選任されている場合の必要書類は以下のとおりです。

  • 遺贈される不動産の登記済権利証、または登記識別情報通知書
  • 遺贈される不動産の登記事項証明書
  • 遺贈される不動産の固定資産評価証明書
  • 受遺者の住民票、もしくは戸籍の附票(本籍地の記載が必要)
  • 遺言執行者の印鑑証明書
  • 遺言書
  • 遺言者が死亡したことがわかる戸籍謄本
  • 受遺者の住民票

遺言執行者がいない場合に必要となる書類

遺言執行者がいない場合は、以下の書類が必要です。

  • 遺贈される不動産の登記済権利証、または登記識別情報通知書
  • 遺贈される不動産の登記事項証明書
  • 遺贈される不動産の固定資産評価証明書
  • 受遺者の住民票、もしくは戸籍の附票(本籍地の記載が必要)
  • 遺言書
  • 遺言者が死亡したことがわかる戸籍謄本
  • 全ての相続人の印鑑証明書
  • 受遺者の住民票

必要書類は大きく変わりませんが、全ての相続人の印鑑証明書が必要になるところがネックです。

登記の申請書に記載すること

登記の申請書はこのようになっています。

登記申請書の見本

こちらは相続を原因とする登記申請書ですので、遺贈の際には、原因の欄には相続ではなく「遺贈」と記載します。そのほか、相続人欄も「権利者」「義務者」という書き方に変えることになりますが、基本的に記載する情報は同じですので参考にしてみてください。

参考:登記申請書:法務局

被相続人(遺贈者)の最後の住所が登記簿上の住所と異なるとき

引越ししたりして住所が変わったときには、不動産の登記簿上の住所も変更する手続きを行うのが基本ですが、なかなかそこまで手が回らないこともあります。

そこで、不動産登記に記載されている被相続人の住所が、被相続人の最後の住所と異なることがあります。このとき、相続による所有権移転登記の場合は、不動産登記上の住所と被相続人の本籍地が同じなら、そのまま登記の手続きを進めることができます。

一方、遺贈の場合は、遺贈による所有権移転登記に先立って遺贈者の住所変更登記が必要です。住所変更登記を済ませて登記上の住所を最新のものにしてから、遺贈による所有権移転登記を行うことになります。

権利書がない場合

不動産登記はそう頻繁に行うものではないため、長い年月の間に重要な書類が紛失することもあります。よくあるのが、不動産の権利書を紛失するケースです。

権利書は「登記済証」とも呼ばれています。平成16年の法改正以降は「登記識別情報」といって、登記済証の代わりに12桁のコードが発行されることになりました。これらを紛失した場合には、「事前通知」という手続きを行うことになります。

事前通知にあたっては、特別な手続きは必要ありません。権利証などがない状態で変更登記を申請した場合に、法務局から登記名義人の住所地に宛てて書面が送られてきます。

これは本人限定受取郵便で送られるもので、受け取ってから約2週間以内に「申請に間違いがない」ということを申し出ることにより、本人確認を行うためのものです。事前通知によって本人確認が取れれば、所有権移転登記が可能です。

もしも2週間以内に申し出がなければ、不動産登記手続きが却下されます。権利証がなくても手続きは可能だとこのほかの方法として、司法書士や公証人などに本人確認情報を作成してもらう方法などがあります。

これらの方法は、一般的な登記手続きよりも時間がかかることは否めませんが、もしもの時のために知っておくと安心です。

登記にかかる費用

遺贈による不動産の所有権移転登記を行うときには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

移転登記にかかる費用は以下のとおりです。

  • 登録免許税
  • 登記簿謄本などの証明書の交付手数料
  • 不動産評価証明書や登記事項証明書などの交付手数料
  • 司法書士に依頼するのであればその報酬

登録免許税は、固定資産税評価額の2%です。相続の場合は0.4%であることを考えると少し割高ではあります。例えば、固定資産税評価額が1億円だった場合、遺贈登記の登録免許税は200万円です。

このほか、申請書類の発行手数料が必要ですが、1通数百円程度のため、そこまで高額ではありません。

まとめ

遺贈を原因とした所有権登記の基本的な知識について解説しました。大きなポイントは、遺言執行者の存在の有無です。特に相続人の人数が多い場合などは、遺言執行者がいないことによって遺贈登記の手続きが煩雑になる可能性もあります。

遺言執行者は相続人や受贈者も選任を申立てることができますので、手続きを円滑に進めるために必要に応じて制度を利用しましょう。

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