子供の認知とは?そのメリットと認知されない子供のデメリット
  • 「シングルマザーとして子供を育てることになったけど、父親にも最低限の協力はして欲しい…」
  • 「そのためには「認知」が必要と人から聞いたけど、そもそも認知ってなんだろう…」
  • 「子の父親である交際相手が認知しない場合どうすればいいのだろう…」

この記事では、このようなお悩みを、男女問題・男女トラブルに強い弁護士が解決します。

シングルマザーに至る経緯としては、男性から結婚を拒絶されたり、不倫相手との間での妊娠であったり、あるいは、子供は欲しいが夫はいらないとお考えの方もいることでしょう。

経緯はどうあれ、子供の父親に対する当然の権利を得させてあげることも母親としての役目です。それを叶えるための制度が「認知」であり、この記事を読むことで認知の必要性がお分かりいただけます。

貴女を母親として選んで生まれてきてくれる(生まれてきた)子供のために「認知」についての理解を深めたいとお考えの方は最後まで読んでみてください。

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子供の認知とは

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、男性が自身の子であると認めることによって、男性とその子との間に親子関係を発生させる行為をいいます(民法779条)。

内縁関係(事実婚)や不倫関係など婚姻関係にない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」、婚姻関係にある男女間に生まれた子を「嫡出子」といいます。

民法第772条1項では「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定めていますので、嫡出子の父母が誰であるかは出生届が出された時点で確定します。

一方、非嫡出子にはこの推定が及びません。母親が誰であるかは「分娩(出産)の事実」により明らかですが、父親が誰であるかは法律上は明らかになっていません。そのため、非嫡出子と父親との間の親子関係を創設するために「認知」が必要となるのです。

認知された子供の戸籍はどうなる?

認知後の母子の戸籍

非嫡出子の戸籍は、出生届を提出後はまずは母親の戸籍に入ります。その際、母親が自分の親の戸籍に入ったままの場合は、母親を筆頭者とした新しい戸籍を作る必要があり、そこに子の戸籍を入れることになります(つまり、母と子は同一戸籍)。このとき、母子の戸籍の”子の欄”には【父】、【母】の欄が設けられていますが、【父】の欄は空欄のままです。

そして子が認知されると、母子の戸籍には、先ほど空欄だった【父】の欄には父親の氏名が、さらに身分事項の欄には認知の事実(認知日、認知した父親の氏名など)が追加されます

また、子を認知した父親の戸籍にも認知の事実(認知日、認知した子供の氏名など)が記載されます。ただし、それにより父親の戸籍に子の戸籍が移るわけではなく、父親の姓を称することもできません。

認知した子を父親の戸籍に移し、父親と同じ姓を名乗らせたいのであれば別途手続きが必要ですので、「子を認知すると戸籍はどうなる?記載内容は?弁護士が解説します」を参考にしてください。

子供が認知されるメリット

①養育費を請求できる

父子関係の発生により父親は扶養義務を負い(民法第877条)、母親は父親に養育費を請求できるようになります。仮に、父親から支払いを拒否された場合は、養育費請求調停や審判により、最終的には父親の財産を差し押さえて強制的に支払わせることも可能です。

なお、認知がされない場合でも父母の話し合いで養育費の支払いを合意することもできますが、この場合、父親が合意内容を履行しなかったとしても、母親は養育費請求調停や審判を申し立てることができません。父子関係が生じていないため父親は扶養義務を負わず、母親が養育費を請求する法的根拠に欠けるからです。

②父親が死亡した場合、子供に相続権が発生する

子が認知され父子関係が生じると、父親が万が一死亡した場合、その子に父親の財産を引き継ぐ権利、つまり、相続権が発生します

過去には、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とする民法の規定がありましたが、平成25年12月に法改正され、非嫡出子と嫡出子の相続分は同等となりました。そのため、父親に嫡出子がいる場合でも、平等に遺産を受けることができます。

③父親を親権者と定めることができる

非嫡出子についてはまずは母親が親権者となります。認知しただけでは母親の親権が父親に移るわけではありません。しかし、父母の協議で父親を親権者と定めることで認知した子の親権を父親に移すことができます(民法819条4項)。

協議が調わない場合は家庭裁判所に対して「親権者変更調停」を申し立て、裁判所の審判で変更許可を得ることができれば父親が親権者となることができます(民法819条5項)。母親の子供に対する虐待や育児放棄などの兆候が見られる場合は親権者を変更する必要が出てくるでしょう。

認知した父親は親権を取得できる?取得の方法について弁護士が解説

子供が認知されるデメリット

①認知までが大変

「認知はするけど結婚はしない」というのならまだしも、結婚はおろか認知すら拒否する男性も少なくありません。父親がそもそも自分の子供かどうか疑っている、あるいは、養育費を支払っていくだけの資力がないなどの理由からです。

父親から認知を拒否された場合や認知について話し合いをしても話がまとまらない場合は、あなたの方から後述する認知調停などを申し立て、手続きに参加する必要があります。父親と話が折り合わない場合は解決までに時間がかかり、精神的にも経済的にも負担が大きくなります

②子供に父親の扶養義務を負わせてしまう

認知によって父子関係が発生するということは、その子供も父親を扶養する義務があるということになり、将来的に父親が生活に困窮した場合や介護が必要な場合に負担を求められる可能性があるということは頭に入れておくべきです。

認知されない子供のデメリット

父親に子どもが認知されないことには、デメリットもあります。

これは現実には父親と言われている人が存在しているにもかかわらず、父と子どもの間に法的な父子関係が存在していないことによって生じるデメリットです。

具体的には、以下のようなデメリットが子どもに生じることになります。

  • 子どもの養育費を父親に請求することができない
  • 子どもが父親に対して扶養してもらうことができない
  • 父親が死亡しても子どもに相続権が発生しない
  • 子どもが父親がいないという心理的な負担を感じさせてしまう

以上のように、法律上の親子関係が存在しないことで、民法が規定している親子を保護している規定が適用されないという結果が生じてしまいます

親の扶養・養育義務や相続財産の承継なども、法律上の親子関係を前提として生じる法的効果なのです。

認知されない子供についてのQ&A

ここでは認知されない子どもが生活していくうえで不安・疑問を感じがちな、よくある質問について解説していきます。

パスポートを作ることはできる?

認知されていない子どもであっても、パスポートを作ることは可能です

パスポートを発行することができないのは、戸籍がない者や、特定の犯罪歴がある者・逮捕状や勾引状が出ている者などです。

そのため、母親が適式に出生届を役所に提出しており、子ども自身に何かしらの犯罪歴などが無い場合には、パスポートを発行してもらうことができます。

戸籍はどうなる?

父親に認知されない子どもは、母親の戸籍に入ることになります

認知されていない結果、法律上の父親は存在していないことになりますので、戸籍上「父」の欄は空欄になります。

戸籍上の父親が存在していないことによって、なんらかの法的または行政サービスを受けられなくなるなどのデメリットはありません。ただし、戸籍上の父親が空欄になっていることに子どもが精神的な負担を感じる可能性はあります

認知された場合でも、それだけで母親の戸籍からの変動が発生することはありませんが、「父」の欄には認知した者の氏名が記載されるようになります。

母子手当てはもらえる?

認知されていない子どもも、児童扶養手当(母子手当)を受給することができます

児童扶養手当は、ひとり親世帯を経済的に援助・支援するために支給されるものですので、母親が婚姻によらないで懐胎した児童も保護の対象となっています。

ただし、認知されていないとしても父と母が事実上の婚姻関係があれば受給資格がありません。具体的には、父母が同居している場合や、住民票が同住所にある場合、定期的な訪問・生活費の補助を受けている場合などには受給することができません。

就職に影響はある?

父親から認知されていない子どもだからといって、就職活動に悪影響が出るということは考えにくいでしょう

使用者だからといって求職者の戸籍謄本を取得することはできないため、あらかじめ父親の有無を知られるということはありません。

そして近年企業の採用面接についても、個人のプライバシーや人権に配慮して家族構成やプライベートな質問を差し控える傾向が大きくなっています。企業としても応募者の人となりや個人の能力を重視しているはずですので、法律上の父親の有無が問題となることは考えにくいでしょう。

事実を知った場合の気持ちとして考えられるものは?

子どもがある程度成長してから、自分には法律上の父親が存在していないことに気づいてショックを受ける場合も考えられます。

他の同年代の人物と比較して、自分には愛してくれる父親がいないと悲しみを感じる可能性があります。さらに、父親のいない自分の家庭は不完全なものだとして、自身のルーツを自虐的に捉えてしまう子どももいます

任意認知と強制認知について

認知には大きく分けて任意認知と強制認知の2種類があります。

任意認知

任意認知とは、父親が自分の意思で非嫡出子を認知することをいいます。父親が未成年また成年被後見人であっても法定代理人の同意なく認知することができます(民法780条)。

子が出生する前、つまり胎児の時点で認知(胎児認知)することもできますが、この場合、母親の承諾を要します(民法783条1項)。また、子が成人している場合は、その本人の承諾が必要です(民法782条)。

公的に認知したことにするには、父親が役所に対して認知届を提出する必要があります。届出人は父親であり、任意認知の当事者でない母親が勝手に提出することはできません。

なお、遺言による認知も可能で、これも任意認知の一つといえます。父親が作成する遺言書に「〇〇(非嫡出子)を自分の子として認知する」などの文言を入れておくことで、父親が死亡した以後、死亡した父親と子との間に父子関係が生じます。これにより子は父親の相続人としての立場を得ることができます。

また、父親より先に子が死亡した場合でも、その子に直系卑属(父親から見て、孫やひ孫)がいる場合に限り、死亡した子の任意認知も可能です(民法783条2項)。これにより、父親と直系卑属は直系血族の関係となり、互いに相続や扶養関係が生じます。

任意認知とは?手続き方法や成立要件などを弁護士がわかりやすく解説

強制認知(父親が認知しない場合の法的手段)

強制認知とは、任意認知とは反対に、父親の意思に反して非嫡出子を認知させる法的手段です。

父親に子を認知するよう求めても認知しない場合、非嫡出子やその法定代理人は父親に対してまずは「認知調停」を申し立てる必要があります。

認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?

そして、認知調停で父親が認知することに合意した場合は合意に相当する審判がなされます。審判が確定したら審判書謄本と確定証明書を役所の戸籍窓口に持参して認知届を提出します。これにより、父親と非嫡出子との間に法律上の父子関係が創設されます。

他方で、調停でも合意に達しない場合は、家庭裁判所に対して「認知の訴え」を提起することができます。裁判において、当事者の主張・反論、証拠の提出、必要に応じて証人尋問が行われ判決によって強制的に認知が決せられます。

決定的な証拠としてはDNA鑑定です。裁判所は証拠調べとしてDNA鑑定を実施することができます。裁判所が実施するDNA鑑定は鑑定人に対する鑑定命令により行われます。父親がDNA鑑定を拒否した場合強制的に鑑定を実施することはできませんが、この場合、父親がDNA鑑定への実施を拒んだという態度が弁論の全趣旨として判断の考慮要素として斟酌されることになります

強制認知とは?メリット・デメリット、手続きの流れなどを解説

子供の認知はいつからいつまでできる?

子の認知は、子が胎児の時から父の死亡後3年以内であれば行うことができます(民法783条1項、民法787条但書)。

第783条
1.父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。

第787条
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない

また、先述の通り、父親は子が死亡した場合でも、その死亡した子に直系卑属(孫など)がいる間は、その死亡した子を認知することができます(民法783条2項)。

まとめ

あなたが認知を望んでも、まずは相手男性が自発的に認知してくれなければ認知によるメリットを受けることができません。

相手男性による認知を望む場合は、まずは話し合いを試み、それでも難しい場合は調停などの方法を取ることを検討しましょう。

認知に限らず、子供の戸籍や養育費のことが関わってくる問題ですので、慎重に対応することが必要です。

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