婚姻関係にない男女の間に子が生まれた場合、ぜひ知っていただきたいのが認知のことです。
本記事では、主に任意認知を行う男性向けに、任意認知について詳しく解説します。
この記事をお読みいただくことで、任意認知について詳しくなっていただけますので、ぜひ最後までご一読いただければと思います。
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目次
任意認知とは?
任意認知とは父親が自分の意思で子を認知することをいいます。
認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子、婚外子)について、子と父親との間に親子関係(父子関係)を成立させる法制度です。
任意認知は、婚姻関係にない男女の男性が自分の意思で、非嫡出子との間に親子関係を成立させるものといえます。
では、そもそもなぜ認知という法制度が必要なのでしょうか?
まず、母親については出産という事実を有し、医師や助産師が作成する出産証明書(出生届の右側に記載されている)によって、出産した子が我が子であることを容易に証明できます。
他方で、父親については母親のような証明手段がありません。
しかし、少なくとも婚姻関係にある男女の間に生まれた子(嫡出子)については、夫の子としてもよさそうです。
そのため、民法という法律で嫡出推定という法制度を設け、嫡出子については夫の子と推定するとして、反証のない限り妻が出産した子が夫の子であること、すなわち子と夫との間に法的な親子関係が成立するとしているのです。
しかし、この嫡出推定の法制度が適用されるのはあくまで「嫡出子」であって、「非嫡出子・婚外子」には適用されません。
そこで、父親との間に法的な親子関係を成立させるため、非嫡出子・婚外子のために設けられた法制度が認知というわけです。
任意認知の成立要件
上記のように、母親については、分娩の事実に基づく出産証明書により親子関係が証明できるため、そもそも認知することがあり得ません。
一方、父親については、基本的には、血縁関係のある子供を任意で認知することが任意認知の成立要件となります。
とはいえ、父親と子供に血縁関係がなくても任意認知の届出を出して認知を成立させることは可能です。
認知届書を受理する役場ではわざわざ父子が血縁関係にあるかどうかまでチェックするわけではないからです。
ただし、後になってDNA鑑定等で血縁関係にないことがわかれば、認知無効の訴えを起こすことができます。
認知の種類・効果
認知には任意認知のほかに強制認知があります。
強制認知とは、男性が任意認知しない場合に、裁判所の手続きを経て行う認知のことです。
具体的には、家庭裁判所に対して認知調停の申立てを行い、認知に向けた話し合いが行われ、相手男性の合意を得ることができれば子が認知されることになります。
調停で解決できなかった場合は、家庭裁判所に対して認知の訴えを提起して、裁判での解決を図ります。
子が認知されると子と男性との間に親子関係が成立します。
親子関係が成立するということは、父親となった男性は子を扶養する義務を負います。
親の子に対する扶養義務は、親に余裕があれば子を援助するという「生活維持義務」ではなく、親と同程度の生活を保障する「生活保持義務」だと解されています。
養育費もこの生活保持義務に基づいて負担するもので、生活に余裕がないから支払わない、生活に余裕がある場合に払えばよい、という言い逃れはできないことになります。
その他、親子関係が成立した効果として、将来、父親が死亡した際、認知された子が相続権を取得する、すなわち、父親の相続人になるということを挙げることができます。
なお、子の母親は父親(夫)と婚姻関係にない以上、夫の相続人となることはできません。
婚外子の戸籍はどうなる?出生時、認知時
婚外子を任意認知した父親が婚外子の存在を秘密にしている女性とこれから婚姻する場合、あるいは、家族に婚外子の存在を秘密にしたまま婚姻したものの、これから任意認知する予定があるという場合に「自分の戸籍に認知の情報はどう表示されるのか」、「相手女性や家族に婚外子の存在はバレてしまうのか」と疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか?
そこで、以下では、出生から認知まで誰の戸籍に認知の情報がどう表示されるのかについて解説します。
出生時
出生時は、まず、母親を筆頭者とする戸籍に婚外子の情報(婚外子の名前、生年月日、身分事項(出生)など)が記録されます。
もっとも、婚外子の情報のうち【父】、【続柄】の欄は空欄です。
なぜなら、婚外子は認知されないと、男性との間に父子関係が成立しないからです。
認知時
子が認知されると母親の戸籍で空欄だった【父】、【続柄】の欄が埋まります。
また、婚外子の情報の「身分事項」の「出生」の次の欄に「認知」の欄が設けられ、認知の情報(認知日、認知者の氏名、認知者の戸籍)が追加されるのです。
他方で、父親の場合、①父親が親を筆頭者とする戸籍に入っているケースと②自らを筆頭者とする戸籍を作成していたケースとが考えられますが、いずれのケースでも、父親の「身分事項」の欄に「認知」の欄が設けられ、認知の情報(認知日、認知した子の氏名、認知した子の戸籍)が記録されます。
そして、①のケースで婚姻した場合(婚姻届を提出した場合)、父親は親の戸籍から除籍され、新たに父親を筆頭者とする戸籍を作成されることが一般的ですが、その場合、前の戸籍に記録された認知の情報は引き継がれません。
他方で、②のケースで婚姻する場合は、認知の情報は現在の戸籍に記録されたままですから、妻に婚外子の存在を秘密にしたい場合は、婚姻前に転籍して新しい戸籍を作っておく必要があります。
婚外子の存在、任意認知したことは家族にバレる?
まず、婚外子を任意認知した父親が婚外子の存在を秘密にしている女性とこれから婚姻する場合を考えてみましょう。
この場合、前述のとおり、①父親が親を筆頭者とする戸籍に入っているケースと②自らを筆頭者とする戸籍を作成していたケースの2つのケースが考えられますが、①のケースでは、婚姻時に新たな戸籍が作成され、その戸籍には認知の情報は引き継がれませんから、妻に婚外子の存在や任意認知したことはバレにくいと考えられます。
次に、②のケースでは、婚姻したとしても新たな戸籍は作成されず、認知の情報は現在の戸籍に記録されままで、その戸籍に妻の情報が記録される(妻があなたの戸籍に入る)ことになりますから、妻が何かの機会にその戸籍を取得した時点で婚外子の存在や任意認知したことがバレてしまう可能性があります(それを免れるために婚姻前に転籍するという方法があります。転籍すると新しい本籍地とする戸籍に認知の情報は引き継がれません)。
では、家族に婚外子の存在を秘密にしたまま婚姻したものの、これから任意認知する予定があるという場合はどうでしょうか?
まず、任意認知する前は、父親の戸籍に認知の情報は記録されませんから、婚外子の存在がバレにくいでしょう。
他方で、任意認知すると父親の戸籍の身分事項の欄に認知の情報が記録され、家族はその戸籍をいつでも入手することができますから、婚外子の存在や任意認知したことがバレてしまう可能性があります。
やはり、このケースでも、婚外子の存在や任意認知したことを家族に隠すためには、転籍という手段を用いた方がよいです。
もっとも、婚姻によって新たな戸籍を作った場合も転籍した場合も、婚外子の存在や任意認知の事実を隠す手段としては不十分です。
なぜなら、いずれの場合でも過去の戸籍には認知の情報が記録されたままで、家族はいつでも過去の戸籍まで遡ることができるからです。
家族があなたの過去の戸籍を遡るきっかけは様々だと思いますが、家族にあなたの戸籍を遡られてしまうきっかけで多いのが相続です。
あなたがお亡くなりになって相続が発生すると、基本的には、相続人間で遺産を誰にどのくらい分けるか話し合う遺産分割協議が必要となります。
そして、この遺産分割協議は相続人全員が協議に参加しなければ無効となりますから、協議を始めるにあたっては、まずあなたの相続人が誰かを確定させる必要があるのです。
あなたの相続人を確定させるためには、あなたの生前からお亡くなりになるまでの戸籍を取り寄せるなどして、相続人の氏名、住所等を特定する必要があります。
この過程で、婚外子の存在や任意認知したことがバレてしまう可能性があるというわけです。
任意認知の方法は2つ
任意認知の方法は「届出による認知」と「遺言による認知」の2つです。
届出による認知
届出による認知は、
- 認知届書
- 届出人である父親の印鑑
- 認知する父親の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 認知される子の戸籍謄本(全部事項証明書) ※父親、子の戸籍謄本は、届出地が本籍地ではない場合に必要です。
- 届出人の本人確認証(免許証など)
を市区町村役場に提出します。
提出する市区町村役場は、届出人である父の本籍地若しくは住所地又は認知される子の本籍地の市区町村役場です。
遺言による認知
遺言による認知の場合は、遺言書に子を認知したい旨を記載します。
遺言書には、
- 子を認知したい旨
- 認知したい子の住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍の筆頭者
を記載するのが基本です。
また、父親は届出をすることができませんから、遺言書で代わりに届出を行ってもらう遺言執行者(遺言による認知の場合の届出人)を指定しておきましょう。
遺言執行者は、あなたが死亡した後、遺言執行者に就職してから10日以内に必要書類(認知届書、遺言書の謄本など)を市区町村役場に提出します。
届出、遺言による認知の共通の注意点
胎児を認知する場合は母親の、成人を認知する場合は成人の承諾が必要です。
承諾書を作成して提出する方法もありますが、認知届書の「その他」の欄に承諾者が自筆した承諾した旨の文言と承諾者の署名・押印を入れると承諾書の代わりとすることもできます。
その他、胎児を認知する場合は、母親の本籍地の市区町村役場に届出を行わなければならない点にも注意が必要です。
後から任意認知を取り消すことはできる?
任意認知をした後、「養育費を払いたくない」、「相続で揉めそう」、「現在の家族に婚外子がいることがバレたくない」などという思いから「認知を取り消したい」と考える方もいるでしょう。
しかし、その子が実の子である場合は任意認知を取り消すべきではないですし、法律上も、一度した認知を取り消すことはできないことになっています。
父親の都合で勝手に任意認知を取り消すことができるとなれば、認知された子にとってはもちろんその母親にとっても大変迷惑な話です。
他方で、任意認知したとはいえ、本当に自分の子だと確信をもって認知したとはいえない場合もあるでしょう。
そうした場合は、家庭裁判所に対して認知無効調停を申し立て、調停委員への陳述、証拠資料の提出、DNA型鑑定の実施などによって、認知した子が我が子でないことを明らかにする必要があります。
そして、父親・母親ともに認知が無効であることに合意した場合は合意に相当する審判がなされ、認知が取り消されます。
まとめ
任意認知は、男性が婚外子を自らの意思で認知することです。
認知すると子に対する扶養義務、養育費の支払い義務が発生します。
また、これから婚姻する場合やすでに婚姻している場合、任意認知した場合は、婚外子の存在を家族にバレてしまう可能性があります。
このように、一度、任意認知すると様々な効果が発生し、簡単に取り消せるものではありませんから、任意認知するかどうか慎重に判断することが求められます。
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