逆リベンジポルノとは、女性から男性に対して、男性の性的な動画や画像を公表すると脅迫すること、または、実際に公表することです。
世間では「リベンジポルノの被害者=女性」と思われがちですが、逆リベンジポルノの被害に遭う男性も実際にいますし、当事務所へも被害男性からのご相談が寄せられています。
そこでこの記事では、リベンジポルノ被害に強い弁護士が、
- 逆リベンジポルノをする女性の目的
- 逆リベンジポルノの被害に遭う割合や傾向
- 逆リベンジポルノの実例
- 逆リベンジポルノの対策方法
- 被害にあってしまった場合の相談先
などについてわかりやすく解説していきます。
なお、既に被害に遭われていてお困りの男性は弁護士までご相談ください。
ネットで誹謗中傷されたら弁護士に無料で相談してみよう |
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逆リベンジポルノとは?
そもそも、リベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者が、破局や他方から拒絶されたことへの腹いせとして、同人の性的な動画や画像を本人が特定できるような形で公表する行為を指します。
警視庁が公表した令和5年のデータによれば、令和4年度のリベンジポルノの被害を受けた被害者の86.5%は女性で、圧倒的に女性がリベンジポルノの被害に遭っていることがわかります。男性が被害に遭う割合は全体の13.5%しかありません。
したがって、リベンジポルノという場合には、統計的に女性に対する犯罪であることが暗黙の了解となっていることがほとんどです。
このような現状を受けて、逆に女性による男性に対するリベンジポルノ行為のことを「逆リベンジポルノ」と呼称することがあります。ただしあくまでも造語ですので、法律的に用いられているわけではありません。
加害の目的は?
逆リベンジポルノを行う加害女性の目的は、大きく分けて以下の3つに大別できます。
- ①振られた腹いせ・復縁を迫るため
- ②美人局
- ③ホストの独占・売掛金の踏み倒しのため
以下それぞれについて詳しく解説していきましょう。
①振られた腹いせ・復縁を迫るため
元カノや元妻による逆リベンジポルノの場合には、破局や離婚したことの復讐や復縁のために性的動画像を公表するケースがあります。
元カノから復縁を迫られ断ったところ、ストーカーされた挙句、交際中に撮影されたであろう裸の動画・画像や性行為中の動画などを送りつけてくるという事案も多数報告されています。
このような女性の心理は、「私とヨリを戻さなければ、性的なデータを公表するぞ」というものです。つまり相手を脅して復縁を迫るための手段として逆リベンジポルノ行為が行われているのです。
また完全に関係が終了し復縁の可能性もない場合には、男性への復讐や嫌がらせ目的のために、逆リベンジポルノをする女性もいます。
このような復讐や復縁を目的としたリベンジポルノ行為は、加害者が女性の場合でなく男性である場合も共通して見られる動機です。
②美人局(つつもたせ)
女性が加害者となる逆リベンジポルノの事案では、「美人局(つつもたせ)」のケースもあります。
「美人局」とは、女性がおとりとなって、ターゲットとなる男性と肉体関係・性的な関係を結び、その後その女性と裏で繋がっていた第三者が登場し、脅迫や恫喝によって男性側から金品を巻き上げる行為のことを指す言葉です。
この美人局の手段として、逆リベンジポルノ行為が行われるケースがあるのです。
つまり、ターゲットとなる男性と女性が性的な関係になった際に性行為を動画や画像で記録したり、女性が男性から性的な動画や画像を送るように要求したりして、それらのデータをネタに男性から現金などを不法に受け取ろうとするのです。
美人局がトラブルになる場合には、加害者は関係を持った女性個人だけではなく、その女性と裏で繋がっている犯罪集団や反社会的組織(暴力団や半グレなど)が関わっているケースも少なくありません。
美人局について詳しくは、出会い系には特に注意!美人局の手口・特徴・対策・対処法を徹底解説をご覧になって下さい。
③ホストの独占・売掛の踏み倒しのため
また、ホストの独占やホストクラブの売掛金の踏み倒しのために、逆リベンジポルノが行われるケースもあります。
ホスト業界では顧客となる女性と性的な関係を結んで営業しているホストも少なくありません。
そのため、ホストを独占したい女性客や売掛金の支払いができない場合に、逆リベンジポルノに及ぶケースがあるのです。
具体的には、「売掛金の回収を待ってくれないのであれば、アノ動画をバラまく」「別の客との関係を終わらせないのであれば、あなたの裸の写真をネット掲示板に投稿する」と脅して自分の思い通りにホストをコントロールしようとする女性客がいるのです。
ホストの場合、そのような性的な動画や画像を公表されたことで、月に数千万円も店に入れてくれる”太客(ふときゃく)”に嫌われてしまい、売上が大幅ダウンしてしまったというホストもいます。そのため、逆リベンジポルノ被害に遭わないように加害者の女性に要求されるままに従ったり、お金を払ったりしてしまったりするケースが後を絶ちません。
被害に遭う割合と傾向
警視庁が公表したデータによれば、男性がリベンジポルノ被害に遭う件数は年々増加してきており、被害に遭う割合も令和4年は過去最高となっています。
平成30年における男性がリベンジポルノの被害に遭う件数は、90件しかなかったものの(割合にして全体の7%程度)、その件数は年々増加傾向で、令和4年には234件(割合として全体の13.5%)にも及んでいます。
このようなデータから、男性が逆リベンジポルノの被害に遭う割合はどんどん増えてきていると考えることができます。
【リベンジポルノの被害者の性別】 | ||||||
平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和4年の割合 | |
男性 | 90件 | 97件 | 142件 | 195件 | 234件 | 13.5% |
女性 | 1257件 | 1382件 | 1427件 | 1432件 | 1494件 | 86.5% |
逆リベンジポルノの事例
別れを告げた元カノから逆リベンジポルノ被害を受けた事例
この事例は、ある男性が以前交際していた女性から逆リベンジポルノの被害を受けた事例です。
この男性は女性と交際していましたが、女性があまりに男性の行動を拘束することから嫌気がさし別れることにしました。しかし、女性は納得せず、「別れるなら、これをバラまく」といって交際中に撮影されたと思われる男性の裸の動画や画像を送り付けてきました。
データを公表されたくない男性は、女性に思いとどまるように説得しましたが、内心それらの動画を公表されてしまうのではないかとヒヤヒヤして生活してたところ、インターネットで弁護士の情報を見かけて相談するに至りました。
男性の代理人となった当事務所の弁護士が女性と話し合いを行い、女性の言動やしようとしていることは犯罪にあたる可能性が高く、データを公開しないことと元データを目の前で削除させることで、解決することができました。
SNSで出会った女性から美人局被害を受けた事例
この事例は、SNSで出会った人妻の女性と性的な関係を持ったことで逆リベンジポルノ被害を受けた事例です。
男性は、Facebookで知り合った女性と仲良くなり、LINEを交換し頻繁にトークや通話で会話することで、2人は次第に親密な仲になっていきました。
トークや通話では男性側の性的な趣向や、大人な会話も頻繁になされ、あるとき女性が男性の裸の画像を送って欲しいと依頼してきました。男性はこのようなやりとりに性的に興奮してしまい、言われるがままに顔がわかるような裸の写真を何枚か送ってしまいました。
すると、女性のアカウントから突然電話がかかってきて、出ると男の声で、「俺の女に手を出したな!画像をバラまかれたくなければ慰謝料を払え」と要求してきました。
男性は、自分の画像をネットにバラまかれることは避けたいと考えお金を支払う約束をしてしまいました。美人局の被害に遭った男性は逆リベンジポルノ被害を避けるためには相手に慰謝料を払う必要があるのか、弁護士に相談することにしました。
依頼を受けた当事務所の弁護士が対応し、恐喝での刑事告訴も辞さない旨を男に伝えたところ、男は素直に罪を認めました。そして、被害男性が支払った慰謝料の返還、元データの目の前での削除とともに、画像をネット等に流出させない確約を書面にて行い解決に至りました。
逆リベンジポルノはどんな罪になる?
脅迫罪・恐喝罪・強要罪
逆リベンジポルノ行為には、刑法上の犯罪が成立する可能性があります。
被害者の性的な動画・画像を公表すると脅す行為は、名誉に対する害悪の告知として「脅迫罪」に該当する可能性があります。
また、性的な動画・画像をバラまかれたくなければ交際を継続しろと要求することは、脅迫を用いて人に義務のない行為を強いる「強要罪」に該当する可能性があります。
さらに、同様な方法で金銭の支払いを要求した場合には、「恐喝罪」に該当する可能性があります。
ストーカー規制法違反
逆リベンジポルノ行為はストーカー規制法に違反する可能性があります。
逆リベンジポルノ行為はストーカー規制法が禁止している「つきまとい等」に該当する可能性があります。「つきまとい等」には、被害者の性的しゅう恥心を侵害する行為が含まれているため、被害者の性的な動画・画像を送りつけたり・公表したりすることは「つきまとい等」に該当する可能性が高いのです。
なお、ストーカー規制法違反となるためには、被害者に対する恋愛感情その他の行為の感情またはそれがみたされなかったことに対する怨念の感情を充足する目的で行われる必要があります。
実際に公表した場合の罪
逆リベンジポルノとして実際に性的な動画・画像を公表した場合には、以下のような犯罪が成立する可能性が高いです。
- わいせつ物頒布罪(刑法第175条)
- 名誉毀損罪(刑法第230条)
- 公表罪(リベンジポルノ防止法第2条)
- 公表目的提供罪(リベンジポルノ防止法第3条)
これらの犯罪の詳細については、リベンジポルノ防止法とはどんな法律?構成要件と成立犯罪を解説で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
逆リベンジポルノの被害にあわないための対策
性的な動画・画像を撮らない/提供しない
男性がリベンジポルノの被害に遭わないようにするためには、性的な動画や画像を撮らない・撮らせないようにしておくことが重要です。
また、相手からの求めに応じて性的な動画・画像を提供してしまうとそれがゆすりのネタになってしまうおそれもありますので、自分から送るのも厳禁です。
円満な別れ方で終わらせる
交際相手や配偶者と別れる際には、お互いよく話し合って円満な破局を目指すように心がけましょう。
相手を無下に扱ったり恨みを買うような別れ方をしてしまうと、復讐や嫌がらせ目的で逆リベンジポルノ被害に遭ってしまうおそれがあります。
女性からの誘惑には警戒しておく
SNSやマッチングアプリを通じて、積極的に誘惑してくる女性には注意しておく必要があります。
インターネット上には美人局のターゲットにできるような男性を漁っているアカウントもたくさん存在しています。甘い言葉で積極的に誘ってくるような相手は、危険人物として関わりを持たないようにしておくことが賢明でしょう。
被害に遭った場合の相談先
セーファーインターネット協会:画像の無料削除を依頼したい場合
逆リベンジポルノの画像や動画をネット上に流出させられてしまった場合には、拡散を防ぐためにできるだけ早急にそれらを削除する必要があります。
被害者本人が、逆リベンジポルノがアップロードされたSNSや掲示板等の管理者に削除要請することもできますが、削除要請のやり方が分からない方もいることでしょう。
その場合には、セーファーインターネット協会に相談することも検討しましょう。
セーファーインターネット協会とは、2013年に民間企業を主体として設立された一般社団法人です。同協会は、インターネット上の情報を監視し、リベンジポルノを含む違法・有害であると見なしたデータについて、日本国内・国外を問わずインターネットサービスプロバイダやサイト管理者に無料で削除を要請してくれます。
画像等の削除方法などについて詳しくは、リベンジポルノを削除する方法と削除を依頼できる窓口を解説をご覧になってください。
警察:加害者に刑事責任を負わせたい場合
逆リベンジポルノの加害者を逮捕してもらいたい、刑事罰を与えたいとお考えの方は、警察に相談しましょう。
平成26年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称「リベンジポルノ防止法」)」が施行されたため、逆リベンジポルノの画像や動画のネット等への公表が確認された場合には、刑事事件として立件される可能性が高いです。
また、前述の通り、逆リベンジポルノの画像等をネット等にばら撒くと脅す行為は、脅迫罪、恐喝罪、強要罪に該当する可能性があります。被害にあったことがわかる証拠を確保したうえで警察に被害届や告訴状を提出することで、刑事事件として取り扱ってくれる可能性があります。
弁護士:穏便な解決を図りたい方・損害賠償請求をしたい方
上記の通り、逆リベンジポルノの被害者が捜査機関に被害申告をすることで加害者に刑事罰を受けさせることも可能です。
もっとも、刑事裁判となれば、被害者の男性も裁判に証人として出廷しなくてはならないこともあります。また、ご自身にも落ち度があり(不倫関係にあった。相手女性を弄んだなど)加害者からの報復が怖い方や、おおごとにして周囲に知れるかご不安な方もいるでしょう。
その場合は、最初から事件化するのではなく、まずは弁護士を介入させて、弁護士から加害者に警告を与えた上で交渉してもらう手段もあります。
リベンジポルノの加害者との交渉経験が豊富な弁護士であれば、加害者に元データを目の前で消去させ、性的な画像等をネットなどに公表しない旨の約束を取り付けることも可能です。
また、弁護士であれば、ネット上に流出した逆リベンジポルノの画像等の消去を迅速に行えますし、合わせて損害賠償請求(慰謝料請求)をすることもできます。
リベンジポルノの損害賠償(慰謝料)相場と高額賠償を獲得する方法
このように、穏便な解決を図りたい方や、損害賠償請求も視野に入れている方は、弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所では、リベンジポルノの加害者との交渉を得意としており、画像の削除、損害賠償請求の経験も豊富にあります。親身誠実に弁護士が依頼者のために全力を尽くしますので、逆リベンジポルノでお困りの男性は、当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
ネットで誹謗中傷されたら弁護士に無料で相談してみよう |
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