このようにお考えの方もいるのではないでしょうか。
結論から言いますと、器物損壊の検挙率は他の犯罪に比べて極めて低いのは確かです。もっとも、令和3年度の器物損壊の検挙率は約14.8%あり、警察が全く動かないわけではありません。現行犯逮捕以外にも後日逮捕されることもありますし、逃げ得と考えるのは早計です。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 器物損壊で警察は動くのか
- 器物損壊で現行犯以外で逮捕されることがあるのか
- 器物損壊は逃げ得なのか
- 器物損壊で警察が逮捕に向けて動く前にすべきこと
などについてわかりやすく解説していきます。
なお、器物損壊事件の逮捕でお困りの方で、この記事を最後まで読んで問題解決しない場合には全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
器物損壊について知っておきたい前提知識
器物損壊罪とは
器物損壊罪とは、故意に(わざと、意図的に)他人の物を損壊または傷害することです。器物損壊罪は刑法第261条に規定されています。
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
条文上の「前三条」とは、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊罪に関する規定のことです。これらの罪で保護される物以外の物、すなわち、他人の所有する文書・電磁的記録・建造物・艦船を除いたすべての有体物が、器物損壊の対象となる「他人の物」となります。
なお、「他人の物」には、公共物や動物も含まれます。
器物破損と器物損壊の違いは?
「器物損壊」と「器物破損」は同じ意味を持ちますが、法律上の正式な名称は「器物損壊」です。これは、法律用語や公文書での表現として使われる標準的な用語です。そのため、起訴状や告訴状、判決書などの公文書では、「器物損壊」という表現が使用されます。
ただし、日常会話や一般的な文章では、「器物破損」という表現がよく使われることもあります。
器物損壊で逮捕される行為
他人の物を損壊または傷害すると、器物損壊罪で逮捕される可能性があります。
「損壊」とは、物の毀損・破壊のことをいい、物理的に物の形体を変更又は滅却させる行為のほか、ひろく物の本来の効用を失わせる行為も含まれます。
したがって、故意に人の家のガラスを割る、タクシーのドアを蹴って凹ませるといった物理的に物の形体を変更または減却させる行為のほか、飲食店の食器に放尿する、女性の衣服に精液をかけるなど、ひろく物の本来の効用を失わせる行為も器物損壊にあたります。
「傷害」とは、動物にのみ使用される言葉で、動物を殺傷する行為はもちろん、他人が飼育するペットを逃がす行為も傷害に含まれます。
その他、器物損壊で逮捕される可能性のある行為の例としては次のようなものがあります。
- 店や人の家の窓ガラスを割る
- 自転車のタイヤをパンクさせる
- 職質のパトカーを蹴って凹ませる
- 商店街のシャッターに落書きする
- 他人の飲食物にツバを吐く など
器物損壊罪の刑罰
器物損壊で逮捕され、有罪判決となった場合の刑罰は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。
罰金は原則として1万円以上ですので(刑法第15条参照)、罰金刑を科された場合は1万円~30万円の範囲で罰金を徴収されます。
また、科料とは、1000円以上1万円未満の金銭の納付を命じられる刑罰の一種ですが、器物損壊罪でこの刑罰が科せられることはほとんどありません。
なお、罰金刑になった場合でも、被害者に対する民事上の損害賠償責任を免れるわけではありません。罰金刑は刑罰の一種であり、罰金は国に収めるものです。器物損壊行為で被害者が被った損害は別途弁償する必要があります。
器物損壊罪は故意ではない場合も逮捕される?
器物損壊罪は、故意(わざと意図的にやる意思)がある場合にのみ成立する犯罪です。
そして器物損壊罪には過失犯処罰の規定がありませんので、行為者において器物損壊の事実について認識して認容する心理的な状態(わざと壊したという状況)がなければ器物損壊罪の故意犯は成立せず逮捕されません。
なお、器物損壊罪には未遂の処罰規定もありませんので、器物損壊の故意があったものの損壊や傷害の結果が生じなかった場合には逮捕されません。例えば、スーパーの菓子パンの袋にイタズラで穴を開けようとしたところ、店員に見つかったため何もせずに逃げたようなケースでは、器物損壊罪は成立しませんので逮捕されることもありません。
器物損壊罪は親告罪
器物損壊罪は親告罪です(刑法第264条)。
親告罪とは、検察官が起訴をするにあたり、告訴権者の告訴を必要とする犯罪のことです。告訴とは、告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の訴追(処罰)を求める意思表示をいいます。告訴権者とは、被害者本人またはその法定代理人(親権者や後見人)を指します。
つまり、いくら器物損壊にあたる行為をしたとしても、告訴権者の告訴がなければ起訴されることはないということです。
なお、親告罪の告訴期間は被害者が犯罪事実と犯人を知った時から6ヵ月です。器物損壊罪の公訴時効は3年ですが、公訴時効が完成する前に告訴期間が過ぎれば、公訴時効の完成を待たずとも、それ以降は起訴されて刑事罰を受ける心配がなくなります。
器物損壊で警察は動かない?逃げ得?
まずは、器物損壊罪に対して警察がどんな姿勢なのかみていきましょう。
器物損壊の検挙率
令和4年度版犯罪白書によると、令和3年度中の器物損壊の認知件数(捜査機関に器物損書事件が発覚した件数)は「56,925件」、検挙件数(事件の犯人が特定され立件された件数で在宅事件、身柄事件の双方を含む)は「8,463件」ですから、検挙率(=検挙件数÷認知件数)は「約14.8%」となります。
ちなみに、その他の犯罪の検挙率は次のとおりです。
- 殺人罪・・・101%
- 強盗罪・・・99.3%
- 傷害罪・・・85.9%
- 暴行罪・・・88%
- 詐欺罪・・・49.6%
- 恐喝罪・・・86.7%
- 放火罪・・・88.7%
- 住居侵入罪・58.1%
このように他の犯罪と比べて器物損壊罪の検挙率が極端に低い理由としては、
- 犯行から一定期間経過した後に被害が発覚することが多い
- 窃盗罪、暴行罪などと比べて現行犯逮捕される事件が少ない
- 器物損壊罪は殺人罪、強盗罪、放火罪などの重大犯罪と比べて比較的軽微な罪
- 警察が本腰をあげて捜査を尽くさない
- 事件認知後、犯人検挙前に示談などによって告訴が取り下げられることがある
ことなどが考えられます。
器物損壊は現行犯逮捕ではなく後日逮捕されることもある
器物損壊は現行犯逮捕されるイメージが強いせいか、現行犯でなければ警察が捜査・立件に動かない、逃げ得、と考える人もいますが、それは間違いです。器物損壊は、現行犯逮捕ではなく後日逮捕される可能性も十分あります。また、場合によっては緊急逮捕される可能性もあります。
器物損壊は現行犯逮捕が多い
まず、器物損壊で逮捕されるパターンとして多いのが現行犯逮捕です。
現行犯逮捕とは、犯罪を犯したこと、及びその犯人が逮捕者にとって明白である場合に、裁判官が発する逮捕状なしに犯人の身柄を拘束できる逮捕のことです。ここでいう逮捕者とは、通常逮捕、緊急逮捕の権限をもつ警察官などの公務員に限らず、公務員以外の一般の方も含みます。
したがって、駐車場に停めていた車にいらずら目的でペンキを塗られた場面を目撃された車の持ち主、家の庭の花壇に植えていた植物の花をハサミで切られた場面を目撃した家の家主は犯人を逮捕状なしに逮捕することができます。なお、一般人が逮捕した犯人の身柄は、その後警察官に引き渡す必要があります。
器物損壊は他の犯罪と比べて被害者(または目撃者)の目前で行われることが多い犯罪でもあるため、このことが器物損壊では現行犯逮捕が多い要因の一つになっているものと考えられます。
器物損壊は通常逮捕(後日逮捕)されることもある
他方で、器物損壊は通常逮捕(後日逮捕)されることもあります。
通常逮捕とは、裁判官の発する逮捕状によって犯人の身柄を拘束する逮捕のことです。現行犯逮捕と異なり、犯行から数日、数か月、場合によっては数年経ってから逮捕されること、犯人を逮捕するにあたって裁判官が発する逮捕状が必要とされる点が現行犯逮捕との大きな違いです。
通常逮捕の逮捕状が発布されるのは、犯人に罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがあると認められた場合です。罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれは、犯行動機、犯行態様(計画性の有無、共犯者の有無など)、被害額の大きさ、常習性の有無、犯人の認否、定職の有無、監督者の有無、前科・前歴の有無などを総合的に考慮して判断されます。
通常逮捕のやり方は様々です。警察官が犯人の自宅に来て逮捕状を呈示されて逮捕されることもあれば、数回の出頭要請・取り調べを経た上で逮捕されることもあります。はじめ身柄を拘束されない在宅事件として捜査を受けていたからといって、通常逮捕されないという保証はありません。
器物損壊は緊急逮捕することもできる
また、器物損壊は緊急逮捕することもできます。
緊急逮捕とは、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したと疑うに足りる充分な理由がある場合で、逮捕の緊急性があり、その場で逮捕状により犯人を逮捕できない場合に逮捕状なく犯人の身柄を拘束する逮捕のことです。
器物損壊の罰則は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料ですから、器物損壊を犯した犯人も緊急逮捕の対象となります。
防犯カメラの証拠映像から犯人特定され後日逮捕されることも
器物損壊は他の犯罪に比べて検挙率が極端に低く、被害者が泣き寝入りするケースが多い犯罪といえますが、近年は人々の防犯意識が高まり、いたるところに防犯カメラや監視カメラが設置されるようになっています。
たとえば、パチンコ店では、ギャンブルに負けた客が腹いせに遊技台を壊すこともあります。そのため(その他、不正行為の監視のため)、店内・店外のあらゆる場所に防犯カメラが設置されています。また、従業員の目が届きにくいカラオケ店の個室にも、設備の破損や性的な行為を防ぐために防犯カメラが必ず設置されています。さらに、コンビニや飲食店などの店舗、都市部や繁華街などの人通りの多い場所、そして個人の自宅の玄関先や駐車場にも、今では防犯カメラがあちこちに設置されています。
そのため、「誰も見ていなかったしバレないだろう」と甘く考えてその場から逃げたとしても、防犯カメラの映像に器物損壊の犯行の一部始終が映っていて、そこから犯人が特定され、防犯カメラの映像が証拠となり後日逮捕されることも十分に考えられます。
また、犯行の一部始終は映っていなかったものの、犯行の一部が映っていたり、映像から性別、体格、服装、乗り物などがわかる場合は、映像から得られる情報と他の証拠から得られる情報とを照らし合わせることで器物損壊の犯人の特定につながることがあります。
実際、「”器物損壊” ”防犯カメラ” ”逮捕” ”ニュース”」とネットで検索すると、防犯カメラの映像が証拠となり、器物損壊容疑で逮捕される事例が数多く存在することがお分かりいただけるかと思います。
ちなみに、一般的に防犯カメラの記録映像は、記録媒体の容量を超えると上書きされるようになっています。そのため、器物損壊行為から一定期間が過ぎれば防犯カメラの証拠映像が消えるから安心と思われる方もいるかもしれません。しかし、最近では大容量HDDに保存できたりクラウドに大容量データを保存できるタイプの防犯カメラもあります。さらに、店舗や個人が設置した防犯カメラ映像の保管期間に法律上の制限はありませんので、データが上書きされる前に記録媒体が交換されるなどして、器物損壊の現場が録画された映像が長期間残り続ける可能性もあります。したがって、器物損壊行為が撮影された映像の上書き消去を期待して待つのは得策とは言えないでしょう。
器物損壊の証拠がない場合は警察に後日逮捕されることはない?
では、防犯カメラが設置されていない場所で器物損壊の犯行が行われた場合には、証拠がないため警察に後日逮捕される心配はないのでしょうか。
前述の通り、後日逮捕を行うには、逮捕の必要性(被疑者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがある場合)に加えて、「罪を犯したことを疑う相当な理由(逮捕の理由)」が必要です。相当な理由の判断は、裁判官が警察から提出された事件の証拠を検討して行いますが、器物損壊の証拠がない場合、相当な理由があるかどうかを判断することはできません。
したがって、器物損壊の証拠がなければ逮捕状が発布されず、逮捕も行われません。
ただし、加害者が「証拠がない」と考えていても、目撃者に犯行を見られていることもあります。その他、指紋や遺留物(犯人が現場に残していった物)が犯行現場に残されていることもあります。これら目撃者の供述やその他の証拠により警察が逮捕に踏み切ることもあります。
器物損壊が過失であれば逃げた方が得?
器物損壊罪はわざと他人の物を損壊したとき、つまり、他人の物を損壊することにつき故意がある場合に問われる罪です。反対に、故意がない場合、つまり、不注意(過失)によって他人の物を損壊した場合には器物損壊罪には問われません。
もっとも、故意か過失かは最終的には裁判所が判断することですから、犯行の時点で「過失」と考えていても、裁判で「故意」と判断されることがないとはいえません。そのため、犯行の時点で「過失」だと思っていても器物損壊罪で検挙される可能性はあるといえます。
結果的に裁判まで至らず、検察の段階で「過失」と判断され不起訴となることも考えられますが、自分勝手に「過失」と判断し逃げるのは早計といえます。
器物損壊で逮捕された後はどうなる?
器物損壊で逮捕された後の流れ
ここでは、器物損壊で逮捕された後の流れについて説明します。
①検察官へ送致
器物損壊容疑で逮捕されると、警察署内の留置場に収容されます。それに前後して、警察官から逮捕事実について言い分を聴く弁解録取(実質は取調べ)を受けます。
その後、継続して身柄を拘束する必要があると判断された場合は、逮捕から48時間以内に、事件と身柄を検察庁へ送致されます。
他方で、必要がないと判断された場合は釈放され、事件は在宅事件扱いとなります。
在宅事件とは逮捕、勾留によって身柄を拘束されていない事件のことをいいます。つまり、日常生活を送りながら、警察、検察、裁判所からの呼び出しに応じて取調べなどを受けたり、裁判に出廷して刑事裁判を受けるのが在宅事件です。
在宅事件になるケースとは、罪証隠滅のおそれ、あるいは逃亡のおそれがないと判断されるケースです。
②勾留
送致後は、検察官による弁解録取を受けます。そして、継続した身柄拘束が必要と判断された場合は検察官により勾留請求されますし、必要がないと判断された場合は釈放され、事件は在宅事件扱いとなります。
なお、勾留請求は、検察官が被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に行う必要があります。つまり、「逮捕から送致まで48時間以内+勾留請求まで24時間以内」=最大3日間(72時間)が勾留前の逮捕期間となります。
検察官に勾留請求されると、今度は、裁判官による勾留質問を受けます。そして、裁判官により、継続した身柄拘束が必要と判断された場合は勾留決定が出されますが、必要がないと判断された場合は、検察官による不服申し立てがない限り、釈放されます。
勾留期間は原則として10日、やむを得ない事情がある場合は検察官の請求により10日間延長できますので、最大で20日間勾留されます。つまり、上記でお伝えした3日間の逮捕期間と合わせると、器物損壊容疑で逮捕されてから刑事処分が決まるまで最大で23日間、身柄を拘束される可能性があるのです。
③刑事処分(起訴または不起訴)
勾留後は、警察・検察による本格的な捜査(取調べや証拠収集など)を受けます。上記の通り、勾留期間は最大で20日間ありますので、この期間に警察・検察が共同して捜査を尽くし、検察官はその捜査を踏まえて、刑事処分(起訴、不起訴)を決めます。
不起訴になれば前科がつきませんし、勾留されていた場合は身柄を釈放されますので、これまで通りの日常に戻ることができます。
他方で、起訴された場合には刑事裁判にかけられ、有罪または無罪の判決が下されます。有罪判決の場合は、実刑懲役・執行猶予・罰金刑のいずれかになりますが、どの場合でも前科がついてしまいます。
起訴率は?
検察統計調査によると、令和4年度の器物損壊罪を含む毀棄・隠匿の罪の起訴率は22.9%です。起訴されたもののうち、約49%が公判請求(公開の法廷で審理を求める起訴)、約51%が略式命令請求(公開の法廷ではなく、書面審理によって100万円以下の罰金または科料の刑を言い渡す手続き)されています。
初犯だとどうなる?執行猶予それとも懲役実刑?
初犯の器物損壊事件で犯行態様や動機が悪質ではないの場合は、略式手続きで罰金刑になる可能性が高くなります。
もっとも、初犯であるからといって必ずしも罰金刑になるとは限りません。起訴されて有罪となれば、初犯でも執行猶予のつかない懲役実刑の判決が下される可能性もあります。
実刑か執行猶予かの判断にあたっては、初犯であるかどうか(前科、前歴の有無)だけでなく、
- 犯行の計画性の有無
- 犯行動機・犯行態様
- 余罪の有無
- 被害の程度
- 示談成立の有無
- 被害者の処罰感情
などの諸事情が考慮されます。
初犯の器物損壊であっても、悪質なケースでは懲役実刑もあり得ますので、後述するように被害者と示談を成立させ、告訴しない、あるいは、既になされた告訴を取り下げてもらうよう働きかけることが重要となります。
器物損壊で逮捕された場合のリスク
器物損壊で逮捕された場合のリスクは次のとおりです。
職場や学校にバレる・有罪となれば懲戒解雇や退学処分もあり得る
まず、器物損壊で逮捕されると職場や学校に逮捕されたことがバレてしまう可能性があります。
前述の通り、器物損壊で逮捕されると、起訴または不起訴の刑事処分が決定するまで最大で23日間も身柄拘束されます。その後起訴されるとさらに勾留期間が延長されます。身柄拘束期間中は弁護士以外の者と自由に連絡がとれなくなるため、職場や学校に隠し通すことが困難となってきます。
また、すべての器物損壊事件について報道されるというわけではありませんが、社会的耳目の高い事件などは報道されやすい傾向にあります。実名報道されると家族・親族はもちろん、近所や仕事・学校の関係者、友人・知人などに知れ渡る可能性があります。また、ネット上に情報が流れると、いつまでもその情報が検索される状態に置かれてしまいます。
次に、逮捕は懲戒解雇や退学処分の理由にはなりえませんが、逮捕されたことで職場や学校にいずらくなったり、会社からは退職、学校からは退学を進められる可能性はあります。一方、会社が有罪判決を受けたことを懲戒解雇事由の一つとする就業規則を設けていた場合には、有罪判決を受けたことで強制的に退職させられる可能性があります。未成年については、仮に有罪判決を受けた場合には強制的に退学させられる可能性があります。
社会的信用を失う・家族にも迷惑がかかる
次に、逮捕の事実を知られることで社会的信用を失ってしまう可能性があります。
これまで親しくしていた職場の同僚、上司、取引先の相手から見放され、職場にいずらくなって職場を退職せざるをえなくなるかもしれません。社会的信用を失ったことで、退職に追い込まれれば収入は大きく落ち込み、あなたの生活に大きく影響してしまうことも考えられます。人のつながりが強い地域にお住いの場合は、報道によってあっという間に器物損壊事件のことが世間に知れ渡り、今の住まいに住むことができなくなって、今の住まいから離れざるをえなくなるかもしれません。
また、家族をもっている方は家族にも大きな影響を与えます。あなたが事件を起こしたこと自体に大きなショックを受けていることに加えて、自分が罪を犯したかのように肩身の狭い生活を送らざるをえなくなります。あなたが一家の大黒柱の場合、収入が落ち込めば家族の生活にも大きな影響を及ぼします。子どもがいる場合、今の住まいを離れることは子どもに大きな負担を負わせてしまいます。新しい住まいでの生活に苦労する可能性もあります。
前科がつくことで生活に様々な影響を受ける
次に、前科がつくことで日常生活や仕事に影響を受ける可能性があります。
逮捕されただけで前科はつきませんが、その後起訴されて、器物損壊罪の刑罰である「懲役」「罰金」「科料」のどの刑を科された場合でも、有罪であることに変わりはないため前科がついてしまいます。
前科がつくことで受ける影響は次の通りです。
- 免許(医師免許、看護師免許など)をはく奪される
- 免許、資格を必要とする一定の職種に就くことができない
- 海外渡航先の国で入国が認められない
- パスポートを発給してもらえない
器物損壊で逮捕回避や不起訴獲得のためにすべきこと
器物損壊罪にあたる行為をしてしまったという場合、逮捕や刑罰を免れるためには次のことを行うとよいでしょう。
示談交渉する
まずは、器物損壊の罪を認める場合は被害者と示談交渉することです。
被害者と示談交渉し、示談を成立させることができれば、成立のタイミングで様々効果を得ることができます。
被害者が警察に被害を申告する前に示談を成立させることができれば、警察に器物損壊事件が発覚することを防ぐことができます。被害者に捜査機関に被害を申告しないこと、被害届や告訴状を提出しないことに合意していただけるからです。警察に事件が発覚しなければ、逮捕や厳しい取調べ、逮捕に引き続く長期の身柄拘束、刑罰を受けることを免れることができます。
示談交渉、示談成立のタイミングがはやければはやいほど、得られる効果は大きくなりますので、示談交渉を思い立ったらはやめに行動に移すことが大切です。
なお、万が一被害者に被害申告された後でも示談交渉はすべきです。被害申告された後でも示談を成立させることができれば、被害者が被害申告や告訴を取り下げてくれる可能性が高いからです。被害者が被害申告や告訴状を取り下げてくれれば、それ以上捜査が進むことはありませんし、器物損壊罪が親告罪である以上、検察官は不起訴処分にせざるを得ません。
さらに、万一告訴されて逮捕された場合であっても、被害者との示談成立を目指すべきです。被害者と示談が成立すれば、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を判断する際に有利な事情として働きますので、不起訴を獲得できる可能性が高まります。不起訴になれば刑罰を科せられることはあませんので前科が付くことも回避できます。
自首を検討する
警察に器物損壊事件が発覚する前であれば、示談交渉と並行して自首することも検討しましょう。
自首とは、
- ①捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に
- ②犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告して
- ③その処分に委ねる意思表示をする
ことをいい、①から③のすべての要件を満たさなければ自首は成立しません(刑法第42条1項参照)。
自首が成立すると、裁判官の裁量により刑を減軽することができるというメリットがあります(任意的減軽)。
また、自首そのものの効果ではありませんが、自首した上で犯行の一部始終をすべて話すことで、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないとして逮捕を回避できる可能性を高めることができます。また、自首したことで犯人の反省が評価され、不起訴処分にしてもらえる可能性もあります。
そのため、器物損壊の被害者との示談交渉が難航し、告訴される可能性が高まってきた場合には、被害者が捜査機関に告訴状を提出する前に自首することも選択肢としてあり得ます。
もっとも、犯人を逮捕するかどうかはあくまで捜査機関の判断に委ねられています。そのため、事件の内容・規模、自首までの経緯などによっては罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがあるとして逮捕されてしまう可能性もないとはいえません。器物損壊で自首する際は、逮捕の可能性もあることを念頭に置いておく必要があるといえます。
弁護士に相談する
次に、弁護士に相談することです。
ここまで警察が捜査に動く前の対策として「示談交渉」と「自首」を紹介しましたが、いずれも成功させるには弁護士の力が不可欠です。
被害者と示談交渉するといっても、加害者との直接の示談交渉に応じる被害者はいないといっても過言ではありません。被害者が弁護士をつけてきた場合は被害者側に有利な条件で話をまとめられてしまう可能性があるため、弁護士に相談、依頼すべきです。
また、自首するにしても単に警察に出頭すればいいわけではありません。弁護士のアドバイスを受けながら逮捕回避のための事前準備を行った上で出頭する必要があります。
器物損壊罪にあたる行為をしてしまい逮捕されないか不安という方ははやめに弁護士に相談することが大切です。
当事務所では、器物損壊事件の逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、器物損壊の公訴時効である3年の間、警察に逮捕されることに怯えて暮らすのがお辛い方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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