人の物を隠すと窃盗罪それとも器物損壊罪?弁護士が解説
他人の物を隠すとどんな犯罪が成立するのだろう…

このようにお考えではないでしょうか。

結論から言いますと、犯人が後で自分や第三者のものにするために一時的に他人の物を隠した場合には窃盗罪が成立します。他方で、嫌がらせ目的で他人の物を隠した場合には器物損壊罪が成立します

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 窃盗罪と器物損壊罪の違い・分かれ目
  • 人の物を隠した場合に窃盗罪が成立するケース・器物損壊が成立するケース

などにつきわかりやすく解説していきます。

なお、人の物を隠してしまい罪に問われるおそれがある方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には全国無料相談の弁護士までご相談ください

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

窃盗罪と器物損壊罪の違い

窃盗罪・器物損壊罪の成立要件

窃盗罪の成立要件

窃盗罪とは、「他人の財物を窃取した」場合に成立する犯罪です(刑法第235条)。

「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することをいいます。他人が占有するものか否かについては、占有の事実と占有の意思を総合して、社会通念に従って判断されることになります。

例えば、ポケットやバッグに入れている財布やスマホには事実上の支配が及んでいます。鍵をかけて駐輪した自転車や、公共の場所に置き忘れた財布などについては、事実上の支配はかなり希薄になっていますが、占有の意思は失われていないとして、他人の占有が及んでいると評価される可能性があります。

そのため、置き引きなどの行為は窃盗罪に問われる可能性があります。

窃盗罪とは?構成要件や刑罰について解説

器物損壊罪の成立要件

器物損壊罪とは、故意に(わざと)他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立する犯罪です(刑法第261条)。

「他人の物」とは、(公用文書、私用文書、建造物以外の)すべての他人の物をさし、法令上違法なものも客体に含まれます。

「損壊」とは、物の物理的損壊のみならず、その効用を害する一切の行為を指します。また、他人の所有しているペットなどの動物を殺した場合には「他人の物を傷害した」ことになり、同罪が成立することになります。

器物損壊罪の罪質は、他人の財物の効用を害し、利用可能性を侵害する犯罪です

そのため、飲食店の食器に放尿したり、嫌がらせ目的で他人の物を隠す、他人の物を勝手に捨てる行為については、物の物理的な損壊はないものの、効用や利用可能性を侵害したとして器物損壊罪が成立することになります。

器損損壊とは?成立要件と示談金相場・示談しないとどうなるのかを解説

窃盗罪と器物損壊罪の罰則の違い

窃盗罪が成立した場合には、「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に科されることになります。

他方で、器物損壊罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金若しくは科料」が科されることになります。

ここで器物損壊罪の法定刑が、窃盗罪の法定刑よりも軽くなっているのはなぜでしょうか。どちらも被害者の個別財産が使えなくなっているという点では共通しています。

器物損壊罪には財物の存在自体を完全に滅失させてしまう場合も含まれています。これに対して窃盗罪では盗んできた物を自分のものとして活用することができます。

このように、器物損壊罪は領得罪性を欠く点において責任が小さく、一般予防の必要性が低くなることから窃盗罪よりも刑罰が軽くなっているのです。

窃盗罪と器物損壊罪の最大の違い

窃盗罪も器物損壊罪も、他人の財物に関する犯罪という点では共通していますが、窃盗罪が他人の物を自分や第三者のものにするために占有を移転させる犯罪であるのに対し、器物損壊罪は他人の物を破損したり、隠す、勝手に捨てるなどしてその物の効用を害する犯罪である点に最大の違いがあります

もう少し専門的に言えば、窃盗罪と器物損壊罪の違いは「不法領得の意思」が有るか無いかです。この点につき以下で詳しく解説していきます。

窃盗罪と器物損壊罪の分かれ目は「不法領得の意思」の有無

窃盗罪が成立するためには、主観的な要素として、窃盗罪の故意のほかに「不法領得の意思」がなければなりません。

不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物として経済的用法に従い利用・処分する意思であると定義されます。

つまり「①権利者排除意思」と「②利用処分意思」の2つの意思がなければ窃盗罪は成立しません。

他人の物を「一時利用」する行為を不可罰とするために、①権利者排除意思が要求されています。そして、窃盗罪と器物損壊罪を区別するために②利用処分意思が要求されています。

具体的に考えてみましょう。

ある人物が他人が駐輪していた自転車を持ち去ったとします。この人が自転車を一時利用する意思で乗り回したあとに元の場所に戻したとします。この行為には①権利者排除意思がないため、窃盗罪ではなく不可罰の一時利用行為にあたります。

次に、この人は自宅に早く帰るために他人の自転車を持ち去ったとします。この場合、①権利者を排除し、かつ②自転車の用法に従い利用する意思もあるため、不法領得の意思が認められます。したがって、窃盗罪が成立することになります。

上記に対して、自転車の持ち主への嫌がらせ目的で自転車を離れた場所に隠した場合はどうでしょうか。この場合、①権利者を排除する意思はありますが、②物を利用処分する意思はありません。したがって、不法領得の意思が欠けることになり、窃盗罪は成立せず器物損壊罪が成立することになるのです。

【ケース別】窃盗と器物損壊どちらになる?

後で自分の物にするために隠した場合

後で自分の物にするために一時的に他人の物を隠した場合、隠匿しているため器物損壊と考えるかもしれません。

しかし、行為時に「後で自分の物にする」目的があるため、利用処分意思が認められます。

したがって、不法領得の意思が認められるため、器物損壊罪ではなく窃盗罪が成立することになります

後で壊す目的で隠した場合

後で壊す目的で他人の物を一時的に隠した場合、物の占有を移転しているため窃盗罪となるでしょうか。この場合、「後で壊す目的」で行動しているため、利用処分意思がありません。

したがって、不法領得の意思がないため、窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立することになります

自分の物にするために隠したが後でその物を壊した場合

「自分の物にする」目的で行動している以上、権利者排除意思と利用処分意思が認められるため、占有移転時点で窃盗罪が成立します

窃盗罪が成立している以上、そのあとに物を破壊しても不可罰的事後行為として器物損壊罪は別途成立しません

不可罰的事後行為とは、ある犯罪を行った後にさらに行った行為のうち、犯罪が成立しないものとして扱われる行為のことをいいます。犯罪が成立しないのは、後から行われた行為も先に行われた犯罪行為と合わせて処罰する扱いとされるからです。

他人の物を盗む行為が窃盗罪として処罰されている以上、盗んだあとに他人の物を壊す行為は先に行われた窃盗行為の中で一緒に評価されているため、別途、器物損壊罪は成立しないことになるのです。

窃盗と器物損壊のどちらが成立するかを検討する意義

窃盗罪が「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」なのに対し、器物損壊罪は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」と軽い法定刑となっています。

また、窃盗罪は非親告罪であるのに対して、器物損壊罪は親告罪です(刑法第264条)。つまり、器物損壊罪は被害者の告訴がなければ検察官が公訴を提起することができません。

被害者に謝罪し速やかに示談交渉を行うことで、告訴状の提出を回避したり、既に提出された告訴を取り下げてもらえる可能性があります。

捜査機関が窃盗罪を前提に立件していたとしても、実は器物損壊罪が成立するという可能性は十分にあります。このような場合、被害者から告訴を得られていないことを理由として不起訴となる可能性があるのです

したがって、器物損壊罪の成立を検討することには、実務上大きな意義があります。ただし、窃盗罪か器物損壊罪なのかの判断は簡単ではありませんので、刑事弁護を専門的に取り扱う弁護士に相談して対応してもらう必要があるでしょう。

まとめ

この記事では、窃盗罪と器物損壊罪の成立要件や、区別の基準などについて詳しく解説してきました。不法領得の意思があるか否かで窃盗罪と器物損壊罪は区別されます。

窃盗罪よりも器物損壊罪の方が法定刑が軽く親告罪である点で、どちらの容疑をかけられるのかは重大な問題です。

窃盗罪か器物損壊罪かの区別が曖昧なケースで警察に逮捕された場合には、弁護士のサポートが必要となります。

当事務所には窃盗・器物損壊事件を含む、刑事弁護の経験が豊富な弁護士が在籍しております。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、お一人で悩まず、まずは当事務所にご相談ください。お力になれると思います。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。