
ガールズバーは、女の子がカウンター越しに接客するスタイルの飲食店であり、キャバクラのように女の子がお客の席に同席して接待する営業スタイルの飲食店とは異なります。そのため、ガールズバーは風営法上の風俗営業許可を取得せずに開業することが可能です。
しかし、裏を返せば、風俗営業許可を得ていないガールズバーが接待行為を行うと、風営法上の無許可営業として摘発・逮捕される可能性があります。また、仮に風俗営業許可を取得してガールズバーを経営した場合でも、状況によっては風営法やその他の法律に抵触し、違法となることがあります。
特に2025年6月28日に施行された改正風営法により、無許可営業に対する罰則が大幅に強化され、個人に対しては「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこれらが併科」、法人に対しては「3億円以下の罰金」が科されることになりました。これにより、従来よりもはるかに厳しい処罰を受ける可能性があるため、より一層の注意が必要です。
この記事では、風営法違反事件に強い弁護士が、
- ガールズバーで風営法違反となるケースや実際の逮捕事例
- ガールズバーで風営法違反とならないための対策
などについて詳しく解説していきます。
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目次
ガールズバーの開業に風俗営業許可は不要
ガールズバーの開業を検討している方にとって、最も重要な疑問の一つが「風俗営業許可は必要なのか?」ということでしょう。結論から申し上げると、一般的なガールズバーであれば風俗営業許可は不要です。ただし、営業スタイルや提供するサービス内容によっては許可が必要になる場合もあるため、正確な理解が欠かせません。
ここでは、ガールズバーと風俗営業許可の関係について、開業に必要な手続きとあわせて詳しく解説します。
風俗営業許可がなくても開業できる理由
そもそも、「ガールズバー」とはどのようなお店なのでしょうか。
ガールズバーとは、女性スタッフがメインにお酒を提供し、カウンター越しに接客する店のことをいいます。
ガールズバーはキャバクラとは異なります。キャバクラとは、キャバ嬢と呼ばれる女性スタッフがお客の席に同席して「接待」を行う飲食店のことです。ガールズバーはカウンター越しに接客するため、「接待」を行わないことが前提となっている営業スタイルであるといえます。
そのため、ガールズバーは風営法上の風俗営業許可を取得せずとも開業することができるのです。
ガールズバーの開業に必要な手続きは?
ガールズバーを開業しようとする場合には、次のような手続きが必要となります。
- ①飲食店営業許可
- ②深夜酒類提供飲食店営業の届出
- ③防火対象物使用開始届出
①飲食店営業許可:
ガールズバー店の事業を開始するためには、飲食店経営許可を申請する必要があります。飲食店営業許可とは、飲食店を営業するために食品衛生法に基づいて取得する許可証です。飲食店営業許可を取得することで、店舗で調理した料理や午前0時までの酒類の提供が可能になります。この飲食店営業許可を取得するためには、ガールズバーの所在地を管轄する保健所に申請したうえで検査に合格する必要があります。
②深夜酒類提供飲食店営業の届出:
ガールズバーで接待は行わないものの、深夜0時以降も酒類を提供したいという場合には、前述の飲食店営業許可のほかに、「深夜酒類提供飲食店営業の届出」が必要となります。この場合、都道府県公安委員会に届け出る必要があります。
③防火対象物使用開始届出:
ガールズバーの店舗の広さによっては、防火対象物使用開始届出が必要となります。建物やその一部を使用開始する前に、管轄の消防署に届け出る手続きです。使用開始の7日前までに届出する必要があります。
ガールズバーで接待をするなら風俗営業許可が必要
前述の通り、ガールズバーの場合には、飲食店として食品衛生法上の飲食店営業許可は必要となりますが、風営法上の許可は必要ありません。しかし、ガールズバーで「接待」が行われる場合には、風営法1号営業として風俗営業許可を取得する必要があります(風営法第2条1項1号、第3条1項)。
(用語の意義)
第二条この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(営業の許可)
第三条風俗営業を営もうとする者は、(省略)営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
では、どのような行為が「接待」にあたるのでしょうか。以下で確認しましょう。
風営法上の「接待」とは
風営法第2条3項では、風営法における「接待」について、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。これは、ガールズバーでの会話やサービスなど慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して興趣を添える会話やサービスを行うことを指します。
具体的には、カウンター越しかどうかを問わず、特定のお客と一定時間談笑したりお酌をすると、「接待」と評価される可能性があります。一定時間について明確な基準はありませんが、常識的に考えて数十分も特定のお客と会話を交わしていれば、捜査機関から、単なる接客の域を超えた「接待」と判断される可能性があるでしょう。
その他、次のような行為も接待行為と見做される可能性があります。
- お客と一緒にカードゲームやテレビゲーム、ビリヤード、ダーツなどの遊戯を愉しむこと
- 特定少数のお客にダンスやショー、歌唱を披露すること
- カラオケでデュエットをする
- キャバクラ・ラウンジのような同伴・指名のシステムがあること
- 必要以上のスキンシップをとること
これらの行為を風俗営業許可を取得せずに行うと、無許可営業として風営法違反で摘発される可能性があります(後述します)。
【注意】風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出の併用は不可
「風俗営業許可」と「深夜酒類提供飲食店営業の届出」は原則として併用することができません。
風俗提供許可を取得すると、ガールズバーで接待行為を行うことができるようになりますが原則として午前0時までの営業しかできません。これに対して、深夜酒類提供飲食店営業の届け出た場合、午前0時以降の営業が可能ですが、接待行為を行うことはできません。
つまり、「深夜0時までは接待をして、深夜0時以降は普通のバーとなる」ことはできないのです。もしこれを許してしまうと、原則として深夜営業ができないとする風営法の規制自体が骨抜きになってしまうからです。
- 深夜営業はあきらめて接待行為を行う
- 接待行為はあきれめて深夜営業を行う
上記の2つの選択肢の中からどちらを選択するのかについては、ガールズバーをどのようなお店として経営していきたいのかによって異なることになるでしょう。
ガールズバーが風営法違反となるケース
ガールズバーが風営法違反となる主なケースは次の通りです。
- ①風俗営業許可をとらずに接待を行うケース
- ②風俗営業許可で深夜営業をしているケース
- ③深夜酒類提供飲食店営業の届出をしながら接待を行うケース
- ④未成年者に客の接待をさせるケース
- ⑤深夜0時以降の客引き行為
- ⑥客の正常な判断を著しく阻害する行為
①風俗営業許可をとらずに接待を行うケース
前述の通り、ガールズバーでお客の接待をしているにもかかわらず、風俗営業許可を取得していない場合には、風営法違反となります。
接待を伴うガールズバーを無許可で営業した場合には、従来は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらが併科」とされていましたが、2025年改正風営法により罰則が大幅に強化され、個人に対しては「5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはこれらが併科」、法人に対しては「3億円以下の罰金」が科される可能性があります(風営法第49条1号、3条1項)。
③深夜酒類提供飲食店営業の届出をしながら接待を行うケース
深夜酒類提供飲食店営業を届け出ていながら、お客の接待を行う場合には、風営法に違反することになります。
深夜酒類提供飲食店営業の場合には、接待行為を行うことはできません。適法に深夜営業ができる場合であっても、特定のお客と談笑したり、歌をデュエットしたり、身体的な接触をしたりする場合には、「接待」と評価される可能性があります。
風営法の規制に違反して接待行為を行った場合には、無許可営業と同様に、個人に対しては「5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはこれらが併科」、法人に対しては「3億円以下の罰金」が科される可能性があります(風営法第49条1号、3条1項)。
④未成年者に客の接待をさせるケース
風営法は、18歳未満の者に客の接待をさせることを禁止しています(風営法第22条1項3号)。また、営業所で午後10時〜翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させることも禁じられています(同第4号)。
風営法の規制に違反して未成年に接待を行わせた場合には、刑事罰として「1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはこれらが併科」されます(風営法第50条1項4号)。
⑤深夜0時以降の客引き行為
接待を伴わないガールズバーであっても、深夜0時以降の客引き行為は禁止されています。
飲食店営業を営むものは、以下の行為を行ってはいけません(風営法第32条3号、22条1項1号2号)。
- 当該営業(深夜における営業に限る)に関し客引きをすること
- 当該営業(深夜における営業に限る)に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと
「客引き」とは、相手を特定してお店の客として来るように勧誘する行為をいいます。 具体的には、特定の通行人に執拗につきまとってお店への入店を勧誘したり、特定の通行人の前に立ちふさがったりしてお店の案内をする行為が客引きにあたります。
風営法に違反して「客引き行為」を行った場合には、「6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはこれらが併科」される可能性があります(風営法第52条1号)。
なお、風営法違反についてより理解を深めたい方は、風営法違反は逮捕される?よくある違反行為と罰則を弁護士が解説も合わせて読んでみてください。
⑥客の正常な判断を著しく阻害する行為
2025年改正風営法により、接待飲食営業(風営法2条1項1号)において「客の正常な判断を著しく阻害する行為」が新設され、禁止されました(18条の3)。
ガールズバーで接待を行う場合、次の行為が規制対象です。
- 1.料金について、事実と相違する説明又は客を誤認させる説明をすること(18条の3第1号・17条関係)
- 2.客が接客従業者に恋愛感情等を抱き、かつ従業者も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、客を困惑させて遊興又は飲食をさせること(18条の3第2号)
- 3.注文等の前に飲食等の全部又は一部を提供して客を困惑させ、それによって当該飲食等をさせること(18条の3第3号)
上記2番目の具体例としては、次のような行為が該当します。
- 「飲食等をしなければ関係が破綻する」旨を告げる
- 「従業者の降格・配置転換等の不利益回避には飲食等が必要不可欠」旨を告げる など
違反した場合は、まず25条の指示の対象となり、改善がない・悪質等のときは26条により営業停止(最長6か月)又は許可取消しの行政処分の対象となります。
なお、接待を行わないガールズバー(深夜酒類提供飲食店営業のみ)には18条の3は適用されません。
ガールズバーが風営法違反で逮捕された事例
ここでは、実際にガールズバーの経営者や従業員が風営法違反で逮捕された事例を紹介します。
深夜の路上で客引き行為をした疑いで逮捕された事例
この事例は、深夜の路上で客引き行為をしたとしてガールズバーの店長(男性・34歳)と同店の従業員(女性・26歳)が逮捕された事例です。
逮捕されたガールズバーの店長は従業員に客引きをするように指示し、その指示にしたがった女性従業員が、午前1時20分頃に40代の男性に対して客引き行為をしたと見られています。
このガールズバーを巡っては、客引きトラブルによる通報が十数件あり、県警は風営法などに基づき指導を繰り返していました。同店では、女性従業員が通行人を勧誘することが店の決まりであったと見られています。
参考:深夜に路上で客引き行為 容疑で西宮のガールズバー店長と従業員を逮捕|鉄板事件記事|神戸新聞NEXT
18歳未満の者をガールズバーで働かせたとして逮捕された事例
この事例は、ガールズバーにおいて22時以降に18歳未満の少女複数名に、お客の接待をさせたとして、風営法違反の疑いで逮捕された事例です。
警察の調べによると、逮捕された飲食店の経営者(男性・44歳)は、自身の経営するガールズバーで、18歳未満の少女4名にお客にお酒を提供した疑いが持たれています。この店をめぐっては、「未成年者がガールズバーで働いている」という相談を受けて警察が捜査していたところ、今回の逮捕につながったと見られています。
参考:「未成年がガールズバーで働いている」風営法違反の疑いで40代の男逮捕 愛媛 | TBS NEWS DIG
ガールズバーで無許可で接待させたとして逮捕された事例
この事例は、ガールズバーで無許可で従業員にお客の接待をさせたとして風営法違反の疑いで逮捕・起訴された事例です。
逮捕された会社員の男性は、公安委員会から風俗営業許可を受けずに従業員を客席に同席させるなどの接待行為を行っていました。風営法違反の疑いで逮捕された男性は起訴され、裁判所は、店がある程度長い期間営業していたことや、未成年者を従業員として雇用していたことなどから懲役8か月、執行猶予3年、罰金50万円の有罪判決を言い渡しました。
参考:ガールズバーで無許可で接待させた男に懲役8か月 執行猶予3年 罰金50万円 風営法違反の罪 元消防士の男と共謀 富山地裁(チューリップテレビ) - Yahoo!ニュース
ガールズバーで風営法違反とならないための対策
これまでお伝えしてきたように、ガールズバーで風営法違反にあたる行為をすると逮捕・摘発され、拘禁刑を科される可能性もあります。特に2025年改正風営法により、無許可営業に対する罰則が個人で最大「5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金」、法人で「3億円以下の罰金」へと大幅に強化されました。仮に執行猶予がついたとしても有罪である以上、前科がついてしまいます。そのような事態を回避するためには次のような対策を講じておくべきでしょう。
- ①従業員の教育を徹底する
- ②接待行為が生じない環境作りをする
- ③2025年改正風営法への対応
- ④弁護士に相談する
①従業員の教育を徹底する
ガールズバーで風営法違反を回避するためには、従業員の教育を徹底することが重要です。
当該ガールズバーにおいて、「接待行為が禁止されている」や「深夜0時以降の営業が禁止されている」といった事項については、経営者は認識していても、スタッフやキャストが十分に認識できていない可能性があります。仮に、従業員の認識が不十分であることが原因で、風営法に違反する行為を行ってしまったとしても、その責任を負うのは経営者です。
したがって、従業員が禁止行為を十分に認識して業務に従事できるように、禁止事項を説明したうえで、どのような行為が禁止行為に該当するのかといった点を説明し、教育することが大切になります。
②接待行為が生じない環境作りをする
風営法に違反しないようにするためには、接待行為が生じないような環境づくりを整備することが重要です。
風営法に違反しているかどうかは、ガールズバーやキャバクラなどの形式的な区別ではなく、お店の営業の実態によって判断されることになります。そのため、風営法に違反しないようにするためには、接待行為を回避するためのルールや仕組みなどの実態を整える必要があります。
- 指名、同伴、アフター制度は禁止する
- カウンターを設置してカウンター越しに接客するスタイルにする
- カラオケやダーツなどの遊技施設を設置しない など
お店としてのルールや仕組みを明確にしておくことで、「ここはキャバクラのような店ではない」とお客に理解しておいてもらうことも、接待を期待する環境を作らない効果があります。客観的に接待行為ができない環境づくりは、警察の立ち入り調査の際にも、有効な反論となります。
③2025年改正風営法への対応
2025年改正風営法により新設された「客の正常な判断を著しく阻害する行為」への対応が重要です。
ガールズバーで接待を行う場合、以下の点に特に注意が必要です:
- 料金説明の透明性を徹底し、虚偽の説明や誤認を招く表現を避ける
- 客の恋愛感情を利用した営業手法(色恋営業)を禁止する
- 客が注文していない飲食物を勝手に提供しない
- 従業員への具体的な接客ガイドラインを作成・周知する
これらの規制に違反した場合、営業停止や許可取消しといった重い行政処分を受ける可能性があるため、日常的な管理体制の見直しが不可欠です。
④弁護士に相談する
風営法に違反してしまうことを予防するためには、弁護士に相談したうえで法的なアドバイスを受けることが重要です。営業しようとするガールズバーが「接待」に該当するのか、どのような届け出や許可を申請すべきなのか、風営法の違反を指摘された場合にはどのような対応をとればいいのか、などについても弁護士であれば幅広くサポートしてもらえます。
また、スタッフの採用や各種取引先との関係についても、適切な契約書の作成や契約書チェックをしてもらうことができます。
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