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未成年への酒類提供で起訴された店長に無罪が言い渡された判例
事案の概要
この事例は、保健所長から飲食店営業許可を受けて飲食店を営んでいた店長Yが、同店の客Bが20歳未満であることを知りながら同人らにサワーを提供したとして、営業所で20歳未満の者に酒類を提供した風営法違反の罪で起訴された事件です。
この事件で、飲食店の従業員Aが未成年のお客にお酒を提供したことは明らかであるものの、店長Yや従業員Aが「お客が20歳未満のものであることを認識していたかどうか」が主要な争点となりました。
風営法違反は逮捕される?よくある違反行為と罰則を弁護士が解説
判例分抜粋
裁判所は次のように店長Yの故意を否定し、犯罪の証明がないとして同人に対して無罪を言い渡しました。
「未成年かもしれないと思ったとは話していない旨の被告人Yの供述の信用性を排斥しきれないから、証人…の証言並びに本件自白調書は信用できないといわざるを得ない。…以上を踏まえると、結局客観証拠によっても、被告人Yが故意を有していたと認めることはできず、これは本件自白調書の存在を考慮しても同様というべきである。」
「態度や言動等次第では、Aが、Bらを20歳以上であると判断した可能性を排除しきれないというべきである。だからこそ、Bは、他店で20歳未満と見られることもあれば、20歳以上であるなどと判断されて飲酒できたこともあると考えられる。検察官の主張を総合しても、Aが、当時、Bらが20歳未満であるかもしれないと認識していたことを推認するに足りない。」
(岐阜簡易裁判所令和4年3月23日判決)
弁護士の解説
本判決では、お客の当時の髪型や服装、背格好において、明らかに20歳未満であることをうかがわせる点は見当たらないとした上で、店長と応対したお客の代表者がマスクをしていた可能性があることや、未成年や運転手の方にはお酒を提供できない旨を告げたところ、お客が「大丈夫です」と答えていた事実を認定したうえで、店長の故意を否定しています。このように。お客が「大丈夫です」と答えたことで、店側が20歳以上であると考えたとしても何ら不思議ではないとして検察官の主張を斥けています。
キャバクラの無許可営業で起訴され執行猶予となった判例
事案の概要
この事案は、風俗営業の許可を受けないで飲食店を経営し、酒類を提供して従業員に談笑の相手をさせるなどして遊行飲食をさせたとして、経営者Yが風営法違反の罪で起訴された事例です。Yは、所要の許可を得ることなく他者の名義を借りてキャバクラ店2店舗を経営し、大きな利益を上げていました。
判例分抜粋
裁判所は、以下のように判示し、被告人Yに懲役6月、執行猶予3年間、罰金100万円の有罪判決を言い渡しました。
「被告人は、…客席等の設備を設けて営業を営む飲食店「C」を経営するものであるが、東京都公安委員会の風俗営業の許可を受けないで、…同店において、不特定多数の客に対し、同店従業員らに、談笑の相手をさせるとともに、酒類等を提供して飲食させるなどの接待をして遊興飲食をさせ…、もって無許可で設備を設けて客の接待をして客に遊興及び飲食をさせる営業を営んだ」。
(東京地方裁判所令和3年9月8日判決)
弁護士の解説
裁判所は、被告人が相当期間にわたり風俗営業許可を得ることなく、他者の名義を借りてキャバクラ店2店舗を経営し、大きな利益を上げていることを、大胆で悪質な犯行であると判示しています。ただし、被告人Yには前科がなく反省の態度を示していることから、懲役刑については執行猶予が付されています。
また、本判決では罰金刑として100万円の支払いが命じられていますが、それとは別に没収と追徴も行われています。被告人は、クレジットカード売上未払債権約113万が没収されており、また約4034万円が追徴されています。
客引き・無許可営業により罰金刑が言い渡された判例
事案の概要
この事例では、被告人Yが県公安委員会から風俗営業の許可を受けて営業していた社交飲食店の店長・従業員と共謀して、客引きをして風俗営業許可を受けていない移転先店舗において従業員らに接待をさせ、酒類を提供して飲酒させたとして、無許可営業の罪で起訴された事案です。被告人は、県公安委員会に宛てて従業員に客引きをさせない旨の誓約書を提出していましたが、店の売上を上げるために本件違反行為に及びました。
判例分抜粋
裁判所は、次のように判示し、被告人に罰金80万円の有罪判決を言い渡しました。
被告人は、「県公安委員会から風俗営業の許可を受けて…社交飲食店〇〇を営んでいたものであるが…通行していたAらに対し、同店の客とするため…「よかったらどうですか。お店決まっています。今日、女の子15人いてるんで、今いけますよ。一応80分5000円で消費税かかるんで、全部別で。3人付きます。」などと言って誘い、もって当該営業に関し客引きをし、…県公安委員会から風俗営業の許可を受けないで…同店において、客席等の設備を設けて、客であるBらに対し、同店従業員らに客席に同席させて談笑させるなどして接待をさせるとともに、酒類を提供して飲食をさせ、もって無許可で風俗営業を営んだ」。
(和歌山地方裁判所令和2年7月22日判決)
弁護士の解説
裁判所の量刑の理由として、被告人が県公安委員会に宛てて従業員に客引きをさせず許可を受けるまで風俗営業をしない旨の誓約書を提出していたにもかかわらず、自己の経営する店の売上を上げるためと言う安易かつ自己中心的な動機で犯行を主導していることは、法軽視の態度が著しく客引きも常習的であると評価されています。
ただし、移転先の店舗における無許可営業の期間は比較的短く、被告人が犯行をいずれも認め、二度と犯罪をしないと誓っており、同種前科がなく、被告人の父親が出廷して被告人の監督を約束したことなどが考慮され、懲役ではなく罰金刑が選択されています。
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