当事務所では、小学生や中学生、高校生などのお子様が器物損壊事件を起こし、刑罰を受けたり高額な賠償責任を負うことに不安を感じている親御さんからこのような相談が多く寄せられています。
結論から言いますと、20歳未満の子供が器物損壊事件を起こしても刑事責任を負う可能性は低いです。ただし、年齢によっては逮捕・勾留されることもありますし、保護処分(保護観察、少年院送致など)を受ける可能性もあります。また、12歳前後であれば責任能力があると判断されて、損害賠償責任を負う可能性があります。子供が責任無能力と判断されれば、原則として監督義務者である親が賠償責任を負うこととなります。
この記事では、上記内容につき詳しく解説するとともに、子供が器物損壊事件を起こした場合の対応方法につき、刑事事件に強い弁護士が解説していきます。
なお、お子様が器物損壊事件を起こしてしまいお困りの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
子供が器物損壊事件を起こしたらどうなる?
そもそも器物損壊とは?
器物損壊とは、他人の物を壊したり、その物の用途に従って使えなくしてしまう犯罪です(刑法第261条参照)。罰則は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
「他人の物」は、文書と建造物を除くあらゆる物です。動植物も含みます。
また、故意に人の家のガラスを割る、タクシーのドアを蹴って凹ませるといった物理的に物の形体を変更または減却させる行為のほか、飲食店の食器に放尿する、女性の衣服に精液をかけるなど、ひろく物の本来の効用を失わせる行為も器物損壊にあたります。例えば、子どもが他人の家の壁やシャッターにスプレーで落書きをする行為や、自転車や車の空気を抜いてパンクさせる行為も器物損壊にあたります。
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刑事責任は負う?
子供が器物損壊事件を起こした場合には刑事責任を負わない可能性が高いです。
刑法第41条は、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定しています。したがって、14歳未満すなわち13歳以下の者は、刑事未成年として器物損壊事件を起こしたとしても刑事罰を受けることはありません。
一方、20歳に満たない「少年」による非行については少年法が規定しており、14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年は「触法少年」といいます。触法少年については、都道府県知事や児童相談所長から送致を受けた場合に、家庭裁判所の審判に付されることになります。この場合、家庭裁判所は触法少年に対して保護処分(保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設送致、少年院送致など)を決定します。
また、14歳以上20歳未満の者は、「犯罪少年」と呼ばれ、さきほどの刑事未成年ではありませんので逮捕・勾留される可能性があります。
少年事件(20歳未満の者が犯罪相当の行為をした事件)の場合には、検察官による捜査が終わった事件はすべて家庭裁判所に送致されることになります。犯罪少年による器物損壊事件の場合には、家庭裁判所による少年審判に付され保護処分が決定されることになります。保護処分の場合は前科はつきません。
ただし、家庭裁判所の裁判官が、少年事件を起こした少年の非行歴や成熟度、事件の重大性などを踏まえて刑事裁判が妥当であると判断した場合には、検察官送致(逆送)という処分がとられる場合があります。逆送された事件については、成人が事件を起こした場合と同じように検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されることになります。逆送・起訴されて有罪となった場合には前科がつきます。
しかし、器物損壊罪は「原則逆送対象事件」ともされておらず、実際に重大事件とも言い難いため、逆送となるケースはほぼないと考えられます。したがって、子どもが器物損壊事件を起こしたとしても、刑事責任を負わない可能性が高いと言えるでしょう。
民事責任は負う?
他人の者を壊した場合には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」と言えるため、行使者には不法行為責任に基づき「これによって生じた損害を賠償する責任」が発生します(民法第709条)。
しかし、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」としています(民法第712条)。
このような未成年者の責任能力については、13歳以上のものであれば責任能力者であると判断される傾向がありますが、11〜12歳以下の場合には責任能力がないとされるケースもあります。
したがって、責任能力のある子供自身に対して器物損壊行為によって生じた損害を賠償するように請求できますが、その子供に資力があるかどうかはまた別の問題となります。
子供の親は賠償責任を負う?
器物損壊をした子供に責任能力がないとされる場合であっても、「その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しています(民法第714条1項)。
そして、子供の両親などの親権者は監督義務者にあたります(民法第820条参照)。
ただし、親権者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、親権者は免責されることになります(民法第714条1項但書き)。
器物損壊で中学生・高校生は退学になる?
器物損壊事件を起こした場合、中学生・高校生は退学になるのでしょうか。
まず、中学校は義務教育であるため、公立中学校では退学処分は認められません。私立中学校の場合には退学処分がありえますので、その場合には他の私立中学に編入するか、公立中学校に転校することになります。
また、高校生が退学処分になるかどうかは、学校側の裁量による部分が大きく、事案に応じて判断されることになります。
事件が検察官送致(逆送)されて、刑事裁判によって有罪判決を受けた場合には、退学処分となる可能性が高いでしょう。また保護処分といえども児童用施設や少年院送致になった場合には、長期間通学することができないため、退学になる可能性があります。
退学処分を回避するためには、以下のような対策をしておくことが重要です。
- 警察からの学校への連絡を控えてもらう
- 家庭裁判所からの学校照会を控えてもらう
- 事件を反省し更生への取り組みを行っていることを報告する
子供が器物損壊事件を起こした場合はどうする?
罪を認める場合の対応方法
器物損壊の罪を認める場合には、その被害について適切に謝罪して被害弁償をすることが重要となります。
被害者が捜査機関に告訴をする以前であれば、示談が成立することで告訴状の提出を回避して事件化することを未然に防ぐこともできます。
仮に事件化してしまった後であっても、早期に被害者との示談が成立することで、少年にとって有利な判断を得られる可能性が高まります。
犯罪少年による器物損壊事件では、被害弁償や示談の成立の有無がその後の少年への処分に大きく影響する可能性がありますので、弁護士に依頼して適切に対応することが重要です。
弁護士を入れて早期に被害者との示談が成立することで、少年が釈放され学業への復帰・社会復帰が実現できる可能性が高まります。
罪を認めない場合の対応方法
実際には器物損壊事件を起こしていないのにその容疑をかけられてしまった場合には、弁護士を通じて捜査機関や裁判所に対して無罪を主張していくことになります。
弁護士が代理人として、少年のアリバイや真犯人が存在している可能性があることを適切に主張・立証することで、嫌疑なし・嫌疑不十分として審判の不開始や不処分を得られる可能性があります。
器物損壊事件で捜査機関に逮捕された少年の方は、心理的なプレッシャーや恐怖心、仲間の少年たちとの人間関係などさまざまな要因で、自分の正当な主張を維持することが困難なケースがあります。
そのような場合であっても、弁護士と接見して主張や言い分を伝えることで、事件の実態に即した適切な処分を求めるように捜査機関や家庭裁判所などにはたらきかけていくことが可能となるのです。
当事務所では、器物損壊の示談交渉、逮捕の回避、早期釈放を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守ります。お子様が器物損壊事件を起こしてしまいお困りの方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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