- 「誤って(過失で)物を壊してしまった…器物損壊罪はわざと(故意)ではない場合でも罪に問われるのだろうか…」
- 「故意ではない器物損壊の場合でも弁償をする必要があるのだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、器物損壊罪は過失犯処罰の規定がありません。そのため、故意ではない場合には器物損壊罪は成立しません。ただし、故意の有無については、嫌疑をかけられている人の主観ではなく、客観的な事実に基づいて判断されます。また、故意ではない器物損壊の場合でも、損害賠償責任、すなわち壊した物の弁償をする義務は負うことになります。
この記事では、上記内容に加え、
- 器物損壊の過失で逃げた場合のリスク
- 器物損壊の過失なのに逮捕された場合の対処法
などについて、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
なお、故意ではない器物損壊であるにもかかわらず刑事事件に発展するおそれのある方や、既に逮捕されてしまった方のご家族の方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
器物損壊罪は故意ではない過失の場合には成立しない
器物損壊罪は故意犯
刑法には器物損壊罪について、「前三条に規定するもの(公用文書等毀棄・私用文書等毀棄・建造物等損壊)のほか、他人の財物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」と規定しています(刑法第261条)。
そして刑法38条1項には、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合には、この限りではない」として、刑法は故意犯処罰の原則を規定しています。
したがって、故意犯ではない過失犯については、「法律に特別の規定」がある場合でなければ処罰されることはないのです。
以上より器物損壊罪についてみてみると、故意犯のみが処罰されており、過失犯処罰の規定がありません。
要するに、行為者において器物損壊の事実について認識して認容する心理的な状態(わざと壊したという状況)がなければ器物損壊罪の故意犯は成立せず、不注意や不可抗力で他人の所有物を損壊してしまった(うっかり壊してしまった)場合には器物損壊罪は成立しないということです。
器物損壊罪について詳しくは、器損損壊とは?示談金相場や示談しないとどうなるのかを解説をご覧になってください。
故意があったかどうかはどう判断する?
それでは、故意があったかどうかはどのように判断されるのでしょうか。
注意が必要なのは、器物損壊の嫌疑をかけられている人が、「故意ではなく過失だった」と主張しさえすれば、故意が否定されるというものではなないということです。
つまり故意の有無については、客観的な状況証拠によって判断されることになります。警察や検察官などの捜査機関は、行為者の具体的な行為の内容や結果の重大性、行為後の行為者の行動・発言など客観的な事実に基づいて故意犯か否かを判断することになります。
例えば、たとえ被疑者がうっかり被害者の物を壊してしまったと供述していたとしても、武器や道具を持参して破壊していたり、人目のつかないところに移動させて破壊していたりするケースでは、過失であったとは認定される可能性はかなり低いといえるでしょう。
器物損壊で故意ではない過失の場合でも弁償は必要
刑事責任において、器物損壊罪は故意が必要であり過失の場合は処罰されないと解説しました。
しかし一方で、民事責任の場合には故意・過失があれば被害弁償しなければなりません。
民法709条は不法行為責任として「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
したがって、不法行為責任が成立するための要件としては以下のとおりです。
- 故意または過失
- 権利または法律上保護された利益侵害
- 損害の発生
- 行為と損害との間に因果関係があること
したがって、器物損壊罪とは異なり、過失がある場合であっても損害賠償責任が発生する旨が規定されています。
もっとも、被害者は加害者に対していつまでも被害弁償を請求できるわけではありません。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、以下の事実があった場合には時効によって消滅することになります。
- 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から「3年間」行使しないとき
- 不法行為の時から「20年間」行使しないとき
被害者が物を壊した相手を知っている場合には、3年間放置していると消滅時効によって損害賠償する権利が無くなることになります。
器物損壊の過失で逃げた場合のリスク
ここまで過失による器物損壊であれば犯罪が成立しない、と解説しました。
それでは過失の場合には逃げてしまえば弁償もしなくて済むのではないか、逃げて身元を特定されたら弁償すれば済むのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、前述のように故意か過失かは行為者の供述からではなく客観的な状況などによって判断されることになります。
したがって、真実として過失による損壊であったとしても、被害者や捜査機関は故意による破壊行為であるとして捜査され、逮捕されてしまうおそれもあります。具体的な事案によっては、すぐに器物損壊の事実を認めて申告しなかったことが、故意を裏付ける客観的な考慮要素と判断される可能性さえあります。
過失で他人の物を壊してしまった場合には、素直に認めて被害弁償することで民事・刑事ともに大きなトラブルに発展せずに解決できる、というケースもあるのです。
器物損壊の過失なのに逮捕されたらどうする?
故意ではないことを一貫して主張する
過失によりうっかり他人の所有物を壊してしまっただけなのに、故意犯として逮捕されてしまう可能性もあります。
損壊した物品の状況や、防犯カメラや被害者や目撃者の供述などの証拠と照らし合わせて、相反する供述をするあなたには、逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断されたことになります。
このような場合、捜査機関は有罪方向に傾く供述を引き出そうと取り調べをする可能性があります。
「その物品があることは知っていた?」「壊れても仕方ないと思っていた?」「意図的に壊したと言われても仕方ないのでは?」など、あなたがわざと壊したと推認できる方向の質問に「はい」と言わせようとする質問が繰り返される場合もあります。
特に逮捕直後の自白調書には信用性が高いと言われてしまうおそれがあり、虚偽自白が証拠として残らないようにすることが非常に重要です。そのため、取り調べ対応に不安のある方は、必ず弁護人と接見して取り調べの対応についてアドバイスを受けるべきです。
示談を成立させて不起訴処分を目指す
また、過失の器物損壊で逮捕されてしまった場合であっても、被害者と示談を成立させることは重要です。
前述のように過失であっても民事責任が発生することになるため、素直に謝罪して被害者に弁償する必要はあります。そして器物損壊事件は決して重大な事件であるとは言い切れません。捜査機関も、被害弁償が済めば事件性は限りなく減少したと判断する可能性もあります。
そのため、過失であることを立証するよりも、示談により不起訴処分を獲得することを目指す方が得策だといえるでしょう。そのためにも弁護士に依頼して被害者と早々に示談交渉を進めていくことが重要となります。
当事務所では、器物損壊の被害者との示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、故意ではないのに警察から故意を疑われている方、出頭を求められている方、既に逮捕されてしまった方のご家族の方は、当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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