親権をめぐる裁判で重要視される6つのポイントと今やるべきこと

離婚するにあたっては親権、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流など様々なことについて取り決める必要がありますが、その中でも親権は夫婦が互いに譲らずもめる要素の一つでもあります。

そして、協議、調停、審判でも取り決めることができない場合は裁判で決着をつけるほかありません。

本記事では、親権をめぐる裁判ではどんな点が考慮されるのか、裁判で親権を勝ち取るためにはどんなことをすべきなのか、などということについて解説してまいります。

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親権をめぐる裁判で考慮される事情

親権をめぐる裁判で考慮される事情は法律に明記されているわけではありませんが、過去の裁判例を見ると、おおよそ以下の事情を総合的に考慮して、夫婦のいずれに親権を与えるかどうかを判断しているようです。

監護実績、監護意欲、子供に対する愛情

これまで子供といかに触れ合い、愛情を注いできたか、子育てに関与してきたかということです。

親として子供に監護意欲、愛情を持つことは当然と考えられるかもしれませんが、裁判における愛情は客観的な物差しから計測される点に注意が必要です。

具体的には、

  • 主に食事、弁当を作ってきたのは誰か?
  • 家族と一緒に食事を摂っていたか?
  • 主に子供の健康管理(病院への同伴、予防接種、健康診断への付き添いなど)をしていたのは誰か?
  • 主に一緒にお風呂に入っていたのは誰か?
  • 主に勉強、遊びに付き添っていたのは誰か?
  • 主に寝かし付けをしていたのは誰か?
  • 保育園・幼稚園・学校・塾・習い事への送り迎えをしていたのは誰か?
  • 保育園・幼稚園・学校・塾・習い事の行事、イベントごとに参加していたか?

などの事情から子供に対する監護意欲、愛情を持っていたのかどうか、監護実績があるのかどうかが判断されます。

監護の継続性

離婚後も監護を継続していけるかどうかということです。

監護の継続性を判断する上で重要なポイントは、夫婦のいずれがこれまで監護意欲をもって子供と触れ合い、愛情を注いできたかという監護実績です。

つまり、監護実績を有している方が離婚後も継続して子供を監護していける可能性が高く、子供の利益にもつながると考えられるのです。

もう一つのポイントは、今現在、子供が夫婦のいずれと一緒に暮らしているかという点です。

子供のことを考えると、可能な限り、子供が今置かれている環境を変えるべきではありません。

そのため、今現在、子供と一緒に暮らしている親に親権を持たせた方が子供の利益にもなり、監護を継続して行っていける可能性が高いと判断されるのです。

子供の年齢、意思

離婚後、子供が夫婦のいずれと生活していきたいかという希望も重視されます

もっとも、子供の意思がどこまで重要視されるのかは年齢により異なります。

子供が10歳未満の場合は、一般的に判断力が未熟だと考えられるためそれほど重要視されません。

他方で、子供が10歳から14歳未満の場合は、判断力は十分でないものの、自分の意思を表わす力はあると考えられますから、一定程度重要視されます。

なお、判断力には個人差がありますから、判断力が備わっているかどうかは子供の精神的、肉体的な発育状況を考慮して個別に判断されます。

子供が15歳以上の場合は、子供の意向を聞くことが法律上義務付けられています。

そして、15歳以上の子供の場合、子供自身に判断力があると考えられますので、子供の意思も重要視されます。

もっとも、子供が親から強制されたり、親の気持ちを察して発言している可能性も否定できませんので子供の真意は慎重に見極められます。

必ずしも子供の意思通りになるとは限りません。

周囲のサポート体制・環境の有無

子育てをしていく上で、親族、友人・知人、第三者に援助を求めることができるか否か、援助を求めることができる体制・環境が整っているか否かということです。

婚姻中は、少なくとも夫婦のいずれかが子供を監護することができましたが、離婚後、親権を持つ方は一人で監護していかなくてはなりません。

もっとも、肉体的、精神的、経済的な面から一人で子育てしていくのは至難の業です。

したがって、離婚後の周囲のサポート体制・環境の有無も考慮されるのです。

父親の場合、離婚後も現在の仕事を続けるという方が多いでしょうから、周囲のサポートを得ながら仕事と子育てをどう両立させていくのか考えなければなりません。

母親の場合、特に離婚まで専業主婦やパートタイムで働いていたという方は、経済的な面で不安を抱えることが多いかと思います。

その場合は、固定費(家賃、水道光熱費など)削減のため、一時的にでも親の家に同居することなどを検討しなければなりません。

親の経済力、金銭管理能力

子育てをしていく上ではお金がかかります。

特に教育費は、子供の希望や進学によっては大きな負担となりますが、できるだけ子供の希望を叶えてあげたいというのが親の気持ちでしょう。

したがって、親の経済力も一つの考慮事情にはなります

また、お金をギャンブルや遊興費に費やすなど親の金銭管理能力に問題がある場合は、子育てを継続していくことは難しいでしょうから、親の金銭管理能力も考慮されます。

もっとも、いくら経済力があったとしても監護実績が乏しい場合は、監護を継続していくことも難しく、子供からも支持されない可能性があります。

反対に、現時点では経済力が乏しくても、養育費や児童手当、児童扶養手当等で一定程度補えることができますし、スキルアップや転職、親族等からの援助でいくらでも改善することは可能です。

その意味では、経済力は監護実績や監護の継続性ほど重要視されない事情といえます。

親の健康状態

親が肉体的にも、精神的にも健康であるかということです。

子育てしていく上では体が資本となりますから、心身ともに健康であることが必要です。

親自身が統合失調症や双極性障害、アルコール依存、薬物依存などの精神病を患っている場合は、その親に適切な監護を期待することが困難です。

現在治療中の場合は、現在の症状や今後の治療状況、完治の見込みなどが、あるいは完治している場合でも今後再発する可能性がないかどうかなども考慮されます。

裁判での証明が容易ではない事項

裁判で親権を勝ち取るためには、前述した「裁判で考慮される事情」を証拠により証明する必要があります

もっとも、中には裁判での証明が容易ではない事情もあり、事前に知っていただくべき以下でご紹介してまいります。

監護実績

一つ目に監護実績です。

なぜ、監護実績の証明が容易ではないのかというと、夫婦のどちらがより監護してきたのかというのは、基本的には夫婦にしか分からないことだからです。

基本的に夫婦にしか分からないことですので、まずはその夫婦が監護実績を示す事実を記憶のとおり、正直に話していただければ問題はありません。

しかし、親権をめぐる裁判となれば、お互いが親権を勝ち取りたいという思いが強く出る場面ですから、お互いが事実を多少誇張して話したり、場合によっては意識してありもない事実をあるものとして話してしまう可能性も否定はできません。

そうした場合、夫婦の話以外の証拠によって夫婦の話が真実か嘘かを見極める必要がありますが、前述のとおり、監護実績のことは基本的には夫婦しか分からないことですので証明の術がありません。

こうなると、裁判官は最終的には夫婦の話の内容や話し方から、いずれの話が真実かを判断するしかなくなってしまいます。

つまり、裁判官に与える印象によっては、真実のことを話しているのに嘘だと受け止められたり、反対に、相手が嘘を話しているのに真実だと受け止められてしまう可能性もあるということです。

子供の意思

二つ目に子供の意思です。

前述のとおり、法律で子供の意向を聞くことを義務付けられているのは、子供が15歳以上の場合です。

したがって、子供が15歳未満の場合は、そもそも裁判官が子供の意向をくみ取ってくれない可能性もあります。

また、子供の意向を裁判官に伝える方法として、子供を証人として申請し、証言台に立たせて「〇〇と一緒に暮らしたい。」と証言させる方法が考えられます。

もっとも、子供を証人として申請して仮に裁判所に採用された場合は、相手方からの厳しい反対尋問を受けることが予想され、子供にとって精神的に重たい負担となることに間違いありませんから、可能な限り避けたい方法です。

また、稀に、子供に裁判所宛の陳述書を書かせて証拠申請する、子供が書いた手紙や子供との会話を録音したデータなどを証拠申請する方もおられます。

もっとも、こうした証拠書類や証拠物は、裁判官に「親権を得たいがために、親が子供も誘導して書かせた(発言させた)証拠であって証拠価値がない」という印象を与えかねず、かえって逆効果となるおそれがありますので注意しましょう。

なお、裁判では、裁判所が必要と認めたときは、親の監護実績、監護能力、子供の意向等を調べる家庭裁判所調査官主導の「事実の調査(調査官調査)」が行われることがあります。

調査官調査の結果が親権獲得のために有利に働きそうな場合は、裁判所に調査官調査を行うよう上申し、調査官調査を行ってもらうことによって子供の意思を裁判に反映させる、という方法を取ることも可能です。

裁判で親権を勝ち取るためのポイント

以上ご紹介した「裁判で考慮される事情」や「裁判での証明が容易でない事項」を踏まえ、裁判で親権を勝ち取るためには何をすべきかという点について解説していきたいと思います。

積極的に子育てに参加し、子供とコミュニケーションを密に取っておく

前述のとおり、まず何より監護実績を作っておくことが大切です。

前述の「監護実績、監護意欲、子供に対する愛情」の箇所でも触れたように、

  • 子供の食事・弁当を作る
  • 子供と一緒にお風呂に入る
  • 病院へ付き添う
  • 子供の勉強を見る
  • 子供を遊びに連れて行く
  • 子供の寝かしつけをする
  • 保育園・幼稚園・塾・習い事への送り迎えをする
  • 保育園・幼稚園・塾・習い事の行事・イベントに参加する
  • お祝い事(子供の日、誕生日、クリスマスなど)を主催する、プレンゼントを買う

などの具体的行動に移し、その中で子供とコミュニケーションを密に取っておきましょう

そうすることで、子供に愛情が伝わって子供から信頼され、子供から「離婚後も一緒に暮らしたい」と指示されることにつながります。

なお、父親と母親とを比べると、母親の方が監護実績を多く有することが通常ですから、特に子供が10歳未満の場合は母親が親権者とされるケースが非常に多いです。

父親が子供の親権を得たいと望む場合は、意識して子供と接する機会を増やさなければなりません。

子育てや子供とかかわった証拠を残しておく

ここでいう証拠とは、育児日記(あるいは単なる日記)、母子手帳、連絡帳、写真、動画などを挙げることができます。

あるいは最近ではSNSやブログを使って意識的に監護実績を残す方もいますので、チャレンジされてみてはいかがでしょうか?

「裁判での証明が容易ではない事項」の「監護実績」でも述べましたが、裁判で「〇〇のことをやってきた」などと正直に話しても、相手からそれを否定され、「自分は〇〇のことをやってきた」などと言われて反論され、監護実績の言い合いになるのが落ちです。

そのため、裁判ではあなたの話に加えて、その話を裏付ける客観的な証拠が必要となってきます

日記をつける際は、行動した直後の記憶の鮮明なうちに、できる限り詳細に記載しておくと裁判官にもインパクトを与えます。

また、写真や動画は正確な日時を記録しておくことが大切ですから、誤差が出ないよう、撮影する前にカメラを調節しておきましょう。

周囲から援助を受けることができる体制を整える

真っ先に考えられるのが、ご自身の親や兄弟姉妹の家に同居させてもらうことです。

子供の幼稚園・保育園、学校、友達関係のことで今住んでいる場所を離れたくないという場合や、ご親族が遠方に住んでいるという場合は今いる家に同居してもらうことも検討しましょう。

子供が小さく、かつ、ご自身が正社員としてフルタイムで働くなどという場合は、周囲の援助が必要不可欠といえます。

また、離婚時の経済力によっては、経済的な面から考えてもご親族からの援助を受けた方が子供にとっても利益となるでしょう。

相手が親権者として適任でないことを示す証拠を残す

相手が親権者として適任でないことを示す事実としては、虐待、育児放棄、浪費癖(経済力のなさ)、心身の不健康などがあります

どんな証拠を集めるのかは、どんな事実を証明するかによって異なります。

たとえば、虐待の場合は、子供の話を聴き取った際に作成したメモ帳・日記帳、虐待時の写真、動画、音声の録音データ、怪我をした部位の写真や病院を受診したい際に作成された診断書、カルテなどが考えられます。

また、浪費癖についてはクレジットカードの利用明細書、クレジットカード会社からの督促状などが考えられます。

まとめ

親権をめぐる裁判では、監護実績・監護意欲・子供への愛情、監護の継続性、子供の年齢・意思、周囲のサポート体制・環境の有無、親の経済力・心身の健康状態などを総合的に考慮して、夫婦のいずれに親権を与えるのが適当か判断されます。

このうち裁判で最も重要視されるのは「監護実績・監護意欲・子供への愛情」ですが、十分な証拠を確保していないと説得力のある主張ができなくなるおそれがあります。

裁判では、ご自身が主張したい事実を証拠によって証明しなければならない難しさがあることを、ぜひこの機会に知っていただければと思います。

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