夫婦の一方が離婚届を勝手に出すと相手にバレます。なぜなら、夫婦の一人だけが離婚届を役所に提出しに行くと、本人確認がとれていないもう一方の配偶者に「離婚届受理通知」が届くからです(戸籍法27条の2第2項)。受理通知が相手に届くのは離婚届を出してから1~2週間程度ですのでバレるのは時間の問題です。
では、一方配偶者の意思に反して離婚届を出した場合、離婚は成立するのでしょうか?
結論から言いますと、勝手に出した離婚届でも離婚は成立します。
この記事では、以下の項目につき、離婚問題に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
- 離婚届を勝手に出しても離婚が成立する理由
- 離婚届を勝手に出して成立した離婚は無効
- 離婚届を偽造・勝手に出すと成立する犯罪
- 勝手な提出を防ぐ「離婚届不受理申出の制度」
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離婚届を勝手に出しても離婚が成立する理由
離婚届を勝手に出すケースとしては、以下のようなものがあります。
- 一刻も早く離婚したい、不倫相手と再婚したい等の理由から偽造した離婚届を出すケース
- 過去に相手が署名捺印した離婚届を、今現在は相手が離婚を翻意したのに勝手に提出するケース
- 本心ではなく夫婦喧嘩の勢いで相手が書いた離婚届を提出するケース など
この点、協議離婚の成立要件は、「①離婚届の提出」と「②離婚意思の合致」の2つです。そして、「②離婚意思の合致」は離婚届を提出する時点で存在していなくてはなりません。上記ケースでは、少なくとも離婚届が役場に出された時点では相手に「②離婚意思の合致」があったとはいえません。
しかし、市区町村役場の職員がチェックするのは、民法、戸籍法などの法律で定められた事項について不備なく離婚届に記入されているかどうかという点のみです。夫婦が本当に、法律上の婚姻関係を解消しようとする意思があるかどうかまではチェックしません(というよりチェックのしようありません)。
そのため、離婚届を勝手に出したとしても、離婚届の記載内容に不備がなければ離婚届は受理され、形式的には離婚が成立するのです。
離婚届を勝手に出して成立した離婚は無効
離婚届を勝手に出した場合でも”形式的には”離婚が成立しますが、離婚届を出した時点で相手が離婚することに合意していない以上、その協議離婚は無効です。
協議離婚を無効とするには、まずは家庭裁判所に対して「協議離婚無効確認調停」の申立てを行います。調停が不成立であった場合には「離婚無効確認訴訟」を起こします。調停の審判または訴訟の判決で離婚無効が認められると、相手が戸籍の訂正を役所に申請することで、戸籍は元に戻ります。
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離婚届を偽造・勝手に出すと成立する犯罪
離婚届の相手方の署名・押印欄に勝手に名前を記入することは「有印私文書偽造罪(刑法159条1項)」、偽造した離婚届を市区町村の窓口に出すことは「偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)」、相手の同意なく離婚届を勝手に出すことは公務員をして戸籍に嘘の内容を記載・記録させることになり「電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)」にあたる可能性があります。さらに、偽造した離婚届による無効な離婚を前提として新たに別の者と再婚すると「重婚罪(刑法184条)」となります。
離婚届を勝手に出された配偶者が警察に被害申告をすることで、これらの犯罪で立件されるおそれもありますので絶対に偽造・無断提出はやめましょう。
勝手な提出を防ぐ離婚届不受理申出の制度
離婚届不受理申出の制度とは、離婚する意思がないにもかかわらず、配偶者の一方から勝手に離婚届を市区町村の窓口に出されるおそれがある場合に、あらかじめ市区町村の窓口に離婚届を受理しないよう申し出る制度です。
この申し出の効力は申し出をした方が取り下げるまで継続しますので、離婚届を勝手に出されるおそれがある方は、無断提出される前にこの申し出をしておくことで防ぐことができます。
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