面会交流を認めるかどうかや面会交流の実施方法を裁判官が判断するにあたり重視するのが、調査官調査による結果をまとめた意見書(調査報告書)です。この意見書で面会交流について結論が決まると言っても過言ではないほど重要なものです。
面会交流問題を得意とする弁護士が解説していきます。
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そもそも調査官とは?
「調査官」とは、「家庭裁判所調査官」のことを指します。
調査官は、家事調停事件・家事審判事件、人事訴訟事件、少年事件などについて必要な調査を行い、その他法律において定められている事務を行うことが主な仕事です。
調査官には、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)を受験して採用された後、裁判所職員総合研修所に入所して約2年間の研修を受けて必要な技能などを修得した人のみなることができます。
法律の専門家である裁判官と異なり、調査官は子どもの心理や教育学などを学び夫婦や親子の問題を分析する専門家であると考えることができます。
このように専門的な知識・経験を有する調査官は、親権者の決定や面会交流の実施方法、少年犯罪などの事件について裁判官が法的な判断をする際に重要となる情報を調査して明らかにする、という役割を果たしています。
面会交流調停事件では、裁判官の調査命令を受けた範囲において事件に関わることになります。もっとも調査官は、約7割以上の面会交流調停事件に関与しています。
それでは、面会交流事件で調査官はどのような調査を行うのでしょうか。
面会交流の調査官調査は具体的になにをするの?
子どもの監護状況調査
裁判官の調査命令により、調査官は子どもの監護状況を調査します。
監護状況の調査については、監護親・非監護親それぞれから事情を聴取し、必要に応じて家庭訪問や保育所や幼稚園・小学校など各種機関への調査をすることもあります。
この調査によって子どもの生活状況、健康状態、発育状態などを調査することになります。
この監護状況調査については子どもに関する調査となるため、非監護親が積極的に関与・協力する場面は少ないでしょう。
調査官が調査した結果については調査報告書が作成され、手続きの当事者もこの報告書に目を通すことができます。
子どもの意向・心情調査
裁判官の調査命令を受けて、調査官は子どもの意向調査・心情調査を実施することができます。
子どもの意向調査は、子どもが面会交流を実施することに積極的なのか消極的なのか、面会交流を実施するにあたってどのような点に注意・配慮しておく必要があるのかなどを把握することが目的です。
子どもが面会交流をしたがっている、または嫌がっている場合であっても子どもの発言を字義通りに受け取って良いかどうかは意向・心情調査で問題となります。なぜなら、面会交流は、子どもの健全な成長や健康を最優先に考えて実施される必要がありますが、子どもの発言にはさまざまな背景や経緯が影響している可能性があるからです。
子どもが10歳~13歳程度になると、自分の身の回りのことは自分で判断できる自己決定能力が備わっていると考えられるため、子どもの希望や意思に対しては十分尊重されることになります。一方で10歳未満の場合には、未だ十分な自己判断能力がない場合もあるためその他の調査が必要となる場合もあります。
子どもが面会交渉に消極的な態度を示す場合であっても、それは親権者の影響や親権者に気をつかってそのような態度を示している場合もあるため、発言の背景や経緯を調査することが重要となります。
面会交流調停期日への立会い
調査官は、事実を調査して報告する以外にも、当事者間の調整や話し合いのアシストをする場合があります。
裁判官から「期日立会命令」があった場合には、調査官は面会交流調停の期日に調停室に立ち会い、専門的な立場から当事者間の調整的な役割を果たす場合があります。
調査官が、当事者に対して面会交流の実施のために必要な事情聴取をしたり、現実的な面接方法を提案したりする場合もあります。
裁判官の立会命令については、裁判官が必要に応じて判断するもので1期日ごとに判断されることになります。
調査官は必要な調査などを行い、親権者・非監護親・子どもにとって最も良いと思われる解決方法を検討し、報告書が作成され裁判官に報告することになります。この報告に基づいて裁判官は事件の解決のために調停や審判を進めていくことになります。
主張整理
調査官は、面会交流調停の申立人・相手方の双方と面談を行い、主張を整理して争点を明確にすることもあります。
調査官は、悩みや心理的な負担から気持ちが混乱している当事者に対しては冷静に話し合いができるようにカウンセリングの方法を活用して心理的にサポートしたり、調停に立ち会って当事者同士の話し合いがスムーズに進むように調整したりする場合もあります。
そのため調査官は、法的に意味のある事実だけを聞き取るだけではなく、当事者の不安や不満についても適切にケアして精神的に安定できるよう努めます。したがって、これまでの経緯、父母の関係性、子どもと双方との関係性などについても当事者から聴取することになります。
まとめ
冒頭でお伝えしたように、面会交流の調査官調査での報告書が、今後、子どもと面会交流できるのか(逆に、面会交流を拒否できるのか)どうかを分ける重要な役割を果たします。しかもやり直しがききません。
そのため、面会交流につき相手と争いがある場合には、出来るだけ早急に弁護士に相談・依頼をし、面会交流調停・審判で実施される可能性の高い調査官調査に向けた対策をとっておくべきでしょう。
弊所では、面会交流調停や審判への同席、調査官調査に向けた対策など、親身誠実に弁護士が依頼者を全力でバックアップします。子どものことは絶対に譲れないという方は、調停や審判を有利に運びたいとご希望の方は弁護士までご相談下さい。相談する勇気が解決への第一歩です。
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