このような悩みが生じる想定ケースとしては、例えば、自分の息子が離婚し、息子の元嫁が子供(祖父母から見て孫)を引き取り暮らすことになったが、元嫁が祖父母と孫が会うことに難色を示しているような場合です。
結論から言いますと、祖父母に孫と面会交流をする権利(面会交流権)は認められていません。つまり、祖父母が監護親(子と一緒に暮らす親)に孫との面会交流を求めても、監護親はそれを拒否することが出来るということです。
しかし、親が離婚したからといって、祖父母と孫の関係が変わるわけでもなく、また、祖父母が孫に会いたいと思うのは当然の感情です。
そこでこの記事では、面会交流問題に強い弁護士が、上記内容をもう少し詳しく説明した上で、祖父母が孫と面会交流するにはどうすればいいのかをわかりやすく解説していきます。
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目次
祖父母に面会交流権はない
面会交流とは、離婚や別居により子と離れて暮らしている父または母が、子と定期的・継続的に会って話をしたり遊んだり電話や手紙・メールなどで交流することです。この交流する権利を「面会交流権」といいます。
このように、面会交流権はあくまでも子と離れて暮らす親(非監護親)に認められた権利ですので、祖父母には面会交流権は認められません。ただし、監護親(子と一緒に暮らす親)の好意で孫と面会交流することは可能です。
面会交流とは?取り決め方法や話がまとまらない場合にすべきこと
祖父母による面会交流の審判申立てが認められなかった判例
この事案は、死亡した妻の両親(子どもにとっては祖父母)が子どもとの面会交流を求めて審判を申し立てた事例です。
この事例では、夫婦が婚姻し子どもをもうけ妻側の両親と同居して生活していましたが、あるとき夫は単身家を出て、妻とは別居して生活するようになります。別居後は夫婦は定期的に交代で子どもの養育を行っており妻側の両親も子育てに尽力していました。
しかしあるとき妻が亡くなってしまい、それ以降は子どもの養育は夫が専ら行うようになり祖父母は孫に会うことができなくなりました。そこで妻側の両親が家庭裁判所に面会交流を求め審判を申立てました。
これについて最高裁判所は、祖父母による面会交流の申し立てを以下の理由で否定しました(最高裁令和3年3月29日判決)。
- 面会交流については父母の協議で決定すると民法に規定されていること
- 協議の主体である父母の申し立てにより裁判所は面会交流について決定することができること
- 父母以外の第三者による面会交流の申し立てを認める規定が存在していないこと
以上から、父母以外の第三者は、事実上子どもを監護してきたとしても、面会交流を求める審判を申し立てることはできません。
祖父母が面会交流することは一切できないの?
祖父母に面会交流権がなく審判の申立てもできないとはいえ、祖父母が孫と面会交流する方法がまったくないわけではありません。具体的には、
- 子(非監護親)の面会交流に祖父母が参加する方法
- 監護親の承諾を得て祖父母が面会交流する方法
の2つの方法があります。以下でそれぞれについて解説していきます。
子(非監護親)の面会交流に祖父母が参加する方法
祖父母による面会交流の申し立ては認められないとしても、祖父母の子(非監護親)には面会交流権がありますので、非監護親は監護親に対して子との面会交流を求めることができます。
面会交流中にどこに行って何をするのか、さらに誰と会うかといった行動については非監護親が自由に決めることができるのが原則です。そのため、非監護親が子を実家に連れて行く、あるいは面会交流の場に祖父母を同伴させるなどして、祖父母と孫が会えるようにすることができます。
ただし、前述の通り、祖父母自身は面会交流を要求する権利がないと考えられているため、非監護親が死亡している場合にはこの方法による孫との面会交流はできません。
また、祖父母が面会交流に参加することが子どもの福祉・利益を害すると認められる場合や、祖父母が参加することを禁止する合意がされていたりそのような内容が調停調書、公正証書などで定められている場合には参加することができません。
にもかかわらず監護親の意思に反して無理やり面会を強要すると、監護親から面会交流調停が申し立てられたり無用なトラブルに発展する可能性もあります。したがってこのような場合には以下で解説する方法をとるべきでしょう。
監護親の承諾を得て祖父母が面会交流する方法
監護親の承諾を得られれば、祖父母も自由に孫と面会交流できることになります。上記でお伝えした「非監護親の面会交流に参加する方法」とは違い監護親とのトラブルに発展することはありません。
そして祖父母の面会交流について監護親の承諾がとれた場合には、祖父母や監護親の要望・意向を踏まえて面会交流の内容や方法について取り決めをし、書面に残しておくことが重要です。
なぜなら口約束だけで完結させていた場合には後々一方が約束を守らなくなったとしても、合意した内容を証明することができないからです。書面で残す場合には公証人がその権限で作成する「公正証書」の形で残しておけば事後的に合意内容を否定されるリスクは小さくなるでしょう。
もっとも、離婚後に義両親と子を会わせたくないと考えている監護親から承諾を得るためには、以下で解説するように監護親の意向や考えに十分配慮したうえでの交渉が求められます。
監護親に承諾を得るためのポイント
監護親と子どもの生活を優先する姿勢を示す
監護親が面会交流に祖父母が同席することに難色を示す根拠としては、子どもに自分の悪口や私生活にむやみやたらと干渉されるのではないかと不安を感じているということが挙げられます。
また子どもには監護親との生活があり、子どもにとっても親の悪口や消極的な評価を聞かされることは、良い影響にはならないでしょう。
したがって、面会交流の際には祖父母は相手方親の悪口を吹き込んだり、私生活に過度に干渉するような発言は控えるべきです。
そのうえで監護親と子どもとの生活を最優先に面会交流の内容・方法を決めるように配慮している姿勢を示すことで、相手方からの譲歩も引き出しやすくなるでしょう。
高額な現金やプレゼントをするのは控える
祖父母が面会交流に同席した場合には、毎回高額なお小遣いやプレゼントを孫に渡してしまうことも頻繁に起こりえます。
かわいい孫にお小遣いやプレゼントをあげたいという気持ちは分かりますが、毎回のこととなると監護親の教育方針と抵触してしまうおそれがあります。
そして祖父母に会うと必ずお金を貰えると孫が認識することも健全な面会交流であるとはいえません。なぜなら場合によってはお金欲しさに祖父母と会いたがるという状況を生み出しかねないからです。
以上から毎回、孫に高額なお小遣いやプレゼントを与えることは控えるようにしましょう。
監護親に祖父母を参加しても問題ないとアピールする
監護親が祖父母の面会交流の参加に消極的な場合には、自分たちの権利ばかりを主張する前に、相手方の話をしっかりと聞くことから始めましょう。
なぜなら、監護親が祖父母と子の面会交流を拒否している理由や心配している点、して欲しくないと思っていることを聞き出し、そのようなネガティブな要素をひとつひとつ払拭してあげることで面会交流への参加の道が開ける可能性が高いからです。
したがって、まずは監護親としっかり話し合うことから始めてみましょう。
孫と面会交流をしたい方は弁護士に相談
孫と面会交流をしたいと思っているのに難しい場合には、一度弁護士に相談してみることがおすすめです。
弁護士に依頼することで監護親との話し合いや交渉をまかせることができるため、当事者も感情的にならず冷静に話し合いの席につくことが期待できます。さらに面会交流調停への同席や合意書・公正証書の作成などの手続きについてもお願いすることができます。
弊所では、監護親との交渉、公正証書の作成、監護親から面会交流調停を申し立てられた場合の調停への同席について豊富な実績があります。親身誠実に弁護士が全力でサポートしますので、孫と会いたい祖父母の方、自分の子と両親を会わせてあげたい非監護親の方は、まずは弁護士までご相談ください。相談する勇気が解決へ繋がります。
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