自己破産のデメリットに関する10の誤解。家族や海外旅行に影響する?

多重債務に陥り借金問題に苦しんでいる人は、世間では予想以上に多いものです。

しかしそのような場合でも、裁判所において自己破産が認められた場合には、基本的にそれらの借金の支払いすべてを免除してもらうことができます。

言うまでもないことですが、これは非常に大きなメリットです。この自己破産のメリットに関しては、世間でもかなり多くの人が知識として持っていると思います。

しかし同時に、世の中には自己破産に対する数々の誤解があり、その誤解を真に受けてしまっているためか破産することをためらう風潮があります。

自己破産した場合、いくつかデメリットを受けることはあります。それは確かなことです。しかし世間では、自己破産したからといって心配する必要のないことまでデメリットになる、と勘違いされていることがたくさんあるのです。

今回は、そのような自己破産に関する誤解をテーマに解説したいと思います。

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世間で流れているうわさの数々

世間でささやかれている、自己破産にまつわる数々のうわさ。そのほとんどは、自己破産することから受けるデメリットに関するものが多いようです。

その代表的なものを挙げると、つぎのようなものになるでしょうか。

自己破産にまつわる噂
  • 「会社や近所など周囲の人にバレる」
  • 「家族、親族に迷惑がかかる」
  • 「戸籍に傷がつく」
  • 「住民票に載る」
  • 「財産すべてを差し押さえされる」
  • 「会社をクビになる」
  • 「年金や生活保護などの受給ができなくなる」
  • 「アパートを追い出される」
  • 「投票権がなくなる」
  • 「海外旅行が制限される」
  • 「ギャンブルなどで借金を作った場合には破産できない」

これらの話は、世間にまことしやかに流れているものです。こんな話を耳にしたら、誰でも自己破産に不安を覚えるのは当然です。これらの話は、事実なのでしょうか?

結論から先にお伝えしましょう。しかし、これらの話はそのほとんどが全くの事実無根。「デマ」と考えてよいものなのです。実際には、自己破産したからといって、そのようなデメリットを受けることはほとんどありません。

それでは、うえに掲げた10個のうわさの「現実」について、順次見ていくことにしましょう

自己破産のデメリットに関する10の誤解

世間に出回っている自己破産にまつわるうわさで、比較的よく耳にするものを挙げると、つぎのようになります。

①「会社や近所など周囲の人にバレる」

自己破産した場合、「官報」に名前が載ったり、個人信用情報機関でブラックリストに入れられたりすることになります。この点を不安視して、自己破産したことが他人にバレるのではないかと心配する人がいます。確かに、その可能性はゼロではありません。しかし、この問題はそれほど不安視するほど重大なものではないのです。

会社や周囲にバレることはまずない

自己破産したからといって、自分から進んで話さない限り、通常では破産したことが会社や周囲の人たちにバレることはまずありません。確かに官報によって住所や名前が公表されるのですから、自己破産したことが官報の記載から発覚してしまう恐れはあります。しかし、実際問題としては、官報などから自己破産の事実が周囲にバレるという事例はほとんどないのです。

その理由について、それぞれ考えてみることにしましょう。

官報公告

自己破産した場合、その旨が「官報」で公告されることになります。自己破産を検討している人の中には、このために自分が破産したことが周囲にバレてしまうのではないかと心配することが多いようです。

しかし、実際にはまずそのようなことはありません。一般の人は官報などをいちいち閲覧などしないからです。

個人信用情報機関におけるブラックリストからバレる?

自己破産した場合、多くのケースにおいて個人信用情報機関で記録されている個人のデータに「事故情報」が残ることになります。これが「ブラックリスト」の載るということです。

この場合、一定期間金融業者からお金を借りることができなくなったり、クレジットカードを利用することができなくなったりします。金融業者などは、個人信用情報機関のデータを共有しているため、自己破産した事実を知っているからです。しかし、これはあくまでも金融業者などごく一部の範囲でのこと。この情報が世間一般に漏れることはありません。

ブラックリストに載ったからといって、このことから自己破産した事実が周囲の人たちにバレる心配はありません。

②「家族、親族に迷惑がかかる」

「自己破産した場合、家族や親せきなど親族に迷惑がかかる」。これもいまだに根強く残っているうわさです。そのようなうわさを耳にして、自己破産に不安を覚える人は後を絶ちません。しかし、このうわさはデマです。基本的には、このような心配をする必要はありません。

親族には迷惑がかからない!

自己破産したからといって、家族や親せきなどに迷惑がかかることはありません。

いかに家族同士とはいえ、法律では人はそれぞれ別個独立のものです。法律上、人が違えば家族といえども法律関係はまったく無関係に扱われるのです。つまり、親子や兄弟であっても人間が違えば、法律関係がほかの人に及ぶことはないのです。このため、自己破産した場合でも、家族はもちろんのこと親せきなど親族に対して迷惑をかけることもありません。

ただし、家族・親族の中に保証人となっている人がいる場合は話が変わってきます。

家族・親族が保証人となっている場合、自己破産すると迷惑がかかる!

うえで述べたように、自己破産した場合でも基本的には家族・親族に迷惑が及ぶことはありません。しかし、家族や親族の中に自己破産する人の借金の保証人となっている人がいる場合には注意が必要です。この場合において自己破産すると、その保証人に対して迷惑がかかることになるからです。ただしこれは、自己破産者の家族・親族だから迷惑がかかるのではなく、あくまでも「保証人」として責任が及ぶことになるのです。

「同居」している親族がいる場合には要注意!

以上のように、自己破産したとしても基本的には家族に迷惑がかかることはありません。しかし、同居している家族が金融機関で何らかの審査を受ける場合には少し注意が必要となります。

住所が同じで名字も同じ場合、金融機関によっては審査に際して細かく調査する可能性があるからです。たとえば、消費者金融などからお金を借りようとする場合、融資に際して業者は審査を行います。この時に、同居の親族で自己破産した記録が個人信用情報機関のデータに残っている場合、審査に通らない可能性があるのです。

このため、もし同居の親族でこれからローンなど金銭の借り入れを予定している人がいる場合、自己破産の申し立ては慎重に検討する必要があります。

③「戸籍に傷がつく」「住民票に載る」

「自己破産すると戸籍に傷がつく」「自己破産したことが住民票に記載される」。これもよく耳にするうわさです。しかし、これも完全な誤解です。

戸籍には傷がつかない、住民票には載らない

自己破産したからといって、戸籍にその事実が記載されることは一切ありません。

戸籍事務に関する以前の運用では、自己破産した場合には、確かにその旨が戸籍に記載されることになっていました。このため、そのようなうわさが根強く残っているのかもしれません。しかし、現在ではその運用が変更されているのです。このため現在では、自己破産してもその旨が戸籍に載るようなことはありません。

同様に、住民票に破産したことが記載されるようなことも全くありません。

④「財産すべてを差し押さえされる」

「自己破産すると財産のすべてが差し押さえられてしまう」。これもたまに耳にすることのあるうわさです。確かに、破産するとタンスなど家財道具に差し押さえの封印が張り付けられてしまうようなイメージがあります。しかし、これも完全な誤解です。

財産すべてを差し押さえされることはない

自己破産したからといって、財産のすべてを差し押さえられては大変です。それでは一切、生活することができなくなってしまいます。当然ですが、自己破産してもそのようなことにはなりません。法律で定められた一定のお金や貯金、その他の財産に関しては手元に残されることになっています。このような財産のことを、法律上「自由財産」といいます。

基本的には、現金や預貯金その他の財産の総額が一定額以下である場合、財産は一切差し押さえなどの制限を受けることはありません。

逆に言えば、これを超えた財産に関しては破産すると差し押さえなどを受け、「持っていかれる」ことになります。

自己破産者の過半数以上はまったく財産を持っていかれていない!

現在、全国の地方裁判所における自己破産の統計では、60%以上が「同時廃止事件」として処理されています。事業を行っていない個人に限定した場合には、実に70%以上のケースが「同時廃止」となっているのです。「同時廃止」とは、破産者にめぼしい財産がないため、簡略化された破産の処理方法のことを言います。この同時廃止によって自己破産が処理される場合、破産者の財産は一切制限を受けることはありません。つまり、自己破産をする前後において、自分の所有している自動車や家財道具などは以前と同じように使い続けることができるのです。

一定以上の財産がある場合には差し押さえを受けることも!

破産すると自分のものが裁判所などによって持っていかれてしまうのでは?と考える人がいるかもしれません。確かに、この心配は間違いではありません。実際、破産を申し立てた人にある程度以上まとまった金銭や貯金、高額な財産などがある場合には、それらは制限を受けることがあります。必要に応じてこれらを換金し、債権者に分配する必要があるからです。

車などは名義に注意!

日本でも一部の大都市圏を除くと、自動車やバイクは日常生活の必需品でしょう。自己破産すると、この自動車なども処分の対象となる可能性があります。

車や一定以上の排気量のバイクなどには、車検証などに所有者が記載されています。もし、普段使用している車両が家族など自分以外の名義である場合には、自己破産したとしても車両が処分されることはありません。あくまでも処分の対象となるのは、自己破産する人「本人」名義のものに限定されるからです。

逆に言うと、普段自分で使用せず家族に貸してあげているような車両でも自己破産する人名義のものである場合には、その車両は処分されてしまう可能性があります。

⑤「会社をクビになる」

自己破産に関して世間でささやかれているうわさのひとつに、自己破産すると「会社をクビになる」というものがあります。これは、自己破産した事実が会社にバレて会社に居づらくなるという意味ではなく、自己破産したことにより会社に解雇されてしまうといううわさです。

しかし、このうわさも全くのデタラメです。

就職、転職に際して不利益を受けることはない(資格制限のある職業は別)

一般の会社員はもちろんのこと、公務員であったとしても破産したことが解雇の理由になることはありません。つまり、自己破産したとしても会社や役所から解雇される心配は全くないのです。

ただし、つぎに述べる一定の職業の場合には話が変わってきます。

資格制限のある職業では失業の恐れもある

世の中に数多く存在する職業の中には、破産することでその仕事に就職することができなくなるなどの制限を受けるものがあります。自己破産すると「資格制限」というものが発生するため、この制限の及ぶ職業に就いている人は失業する可能性さえあるのです。

ただし、資格制限の対象となる職業はある程度限られており、会社員や公務員など一般的な職業はその対象とはなりません。世間一般で考えた場合、大半の職業は資格制限の対象とはなりませんので、必要以上に神経質になることはないでしょう。しかし、自己破産する場合には事前の確認は必要です。ご自分の職業が資格制限の対象かどうか知りたい方は、下の記事が参考になると思います。

⑥「年金や生活保護などの受給ができなくなる」

自己破産した場合、年金や生活保護が受けられなくなるという俗説があります。これも全く根拠のないものです。

年金も生活保護も受給できる

自己破産と年金や生活保護の受給には、まったく何の関係もありません。自己破産しても、今までどおりこれらの金銭の給付を受けることができます。受給額が減額されるなどということも一切ありません。

逆に、自己破産したことで年金や生活保護が減額されたり、受けられなくなったとしたらどうなるでしょう?お金が入ってこなくなってしまい、かえって生活ができなくなってしまいます。破産とは、多額の借金で生活できない状態になっている人の経済的更生を目指すための制度です。このようなことになってしまっては、破産制度の意味がなくなってしまいます。その点から考えても、このうわさは「あり得ない」ことです。

⑦「アパートを追い出される」

自己破産した場合には、今住んでいるアパートを追い出される、という話もたまに耳にします。これも法律上、まったく根拠のないものです。

アパートを追い出されることはない

自己破産してもアパートを出ていかなければならなくなるようなことは、一切ありません。

現在住んでいるアパートなど賃貸住宅に住むことができるのは、「賃貸借契約」を締結しているからです。賃貸借契約とは、定められた家賃を支払う代わりに、目的のアパートなどに住む権利が認められるという契約です。正式に契約を結んでいる以上、破産したからといってこの契約が無効になるようなことはありません。自己破産したとしても、アパートなど賃貸住宅から出ていく必要はないのです。

ただし、言うまでもないことですが、家賃はしっかりと支払うことが条件です。家賃を支払わなければ、自己破産した人でなくてもアパートを追い出されることになります。

⑧「投票権がなくなる」

「自己破産すると選挙権がなくなる」、という話も根強く流れているうわさですね。いわゆる「公民権」の制限です。このため、自己破産すると選挙の投票権がなくなってしまうのではないかと心配される方もいます。しかし、これもまったく根も葉もない情報です。そのような事実は、一切ありません。

投票権はなくならない

自己破産しても、選挙における投票権など公民権を喪失することはありません。つまり、選挙の際には自己破産する前と同様、投票することができます。

平成30年の公職選挙法改正により、満18歳以上の者であれば自己破産したことがあるかどうかにかかわらず、選挙において投票権が認められることになっています。

⑨「海外旅行が制限される」

世間では「破産者は海外旅行に行けなくなる」といううわさも流れているようです。自己破産した人は海外旅行しても、旅先で入国を拒否される……など、さも現実にありそうなうわさです。

しかし、これも「真っ赤なウソ」。全然心配する必要などありません。

海外旅行することに全く影響はない

自己破産しても、海外旅行することに影響など一切ありません。破産と海外旅行とは、まったく無関係なものです。

ただし、破産の処理方法が「管財事件」となった場合には、旅行する前に裁判所の許可が必要となることがあります。しかし、それ以外では海外旅行に関して自己破産のデメリットが及ぶことはないのです。

⑩「ギャンブルなどで借金を作った場合には破産できない」

破産法によって定められているものに「免責不許可事由」というものがあります。これは、自己破産しようとする人の行為の中に「免責不許可事由」に該当する一定の事実がある場合、自己破産の手続きにおいて最終的に「免責」が認められないとされるものです。

このうわさは、半分は真実で半分は間違いということになります。

ギャンブルや浪費は免責不許可事由

借金を作った原因がギャンブルや高級ブランド品を買ったなど浪費の場合、これらの行為は免責不許可事由に該当します。法律上、破産者において免責不許可事由に該当する行為がある場合には、免責が許可されないことになっているのです。そのため、ギャンブル・浪費などで作った借金の場合、最悪のケースとしては破産が認められない(「免責」が下りない)可能性は確かにあります。しかし、だからといって絶対に免責を受けることができないということではありません。つぎのような場合には、免責が許可されることがあるからです。

「裁量免責」について

破産者が免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所にはその独自の判断で免責決定をすることが認められています。これを「裁量免責」といいます。

裁判所の実際の運用では、この裁量免責によって免責を受けている破産者は相当多数に上ります。免責不許可事由に該当する行いがあったとしても、その程度がよほどひどい状態でない場合には、裁判所によって免責が許可されているのです。

つまり、ギャンブルや浪費などで作った借金であったとしても、自己破産することで免責を受けることができる可能性は十分にある、ということです。

自己破産に関する間違った情報に惑わされないように

今回は世間で耳にする10個の自己破産に関するうわさを考えてみました。

これら「情報」の中には、確かに以前においてはそのような制限を受ける時代があったかもしれません。しかし、現在ではそのような不利益を被ることはなくなりました。昔と比べると現在は、社会的にも法律的にも自己破産しやすい環境が整ってきていると考えてもよいかもしれません。

それにもかかわらず、世間ではいまだに以下のような噂がまことしやかに出回っています。

「情報」には正しいものと間違ったものがあります。間違った情報に惑わされず、自己破産に関する正しい知識を持ってください。そして、必要がある場合にはためらうことなく自己破産に踏み切ることをお勧めします。

現在は自己破産することに対して社会が寛容になっている

以前の法律では、破産者に対する各種制限は現在と比較すると大変厳しいものがありました。破産した者は、社会的にも大きなペナルティーを課されていた時代もあります。

しかし、現在はそのような制限はかなり少なくなってきています。

いわゆる「グレーゾーン金利」が平成22年に撤廃されたことにより、多重債務者の数は減少に転じることになりました。しかしそれでも、平成25年における自己破産件数は8万件以上に上ります。その後はさらに減少したとはいえ、それでも毎年7万件以上申し立てられているのです。自己破産は、決して自分とは無関係な世界の話ではありません。

このような時代背景を受けてでしょうか、破産者に対する社会的扱いも大きく変貌してきました。「ノーマライゼーション」と言われる考え方が社会に浸透し始め、それまで破産者には制限されることとされていたものが、徐々に解除されるように変わってきたのです。

このように、日本社会も破産者に対して寛容になってきています。自己破産しても、昔のように偏見を持たれることが少なくなってきているのです。

破産するに対して自分自身が偏見を持ち、必要であるにもかかわらず自己破産による借金問題の解決を先延ばしなどしてはいけません。

まとめ

今回は、自己破産に対する誤解をテーマに解説してみました。

世間に流れている自己破産に関する各種のうわさには、それが真実なのかどうかを疑ってみる必要があります。

今回は、世間でささやかれている10個の代表的なうわさを見てみました。その結果、ほとんど全部がまったくの誤解であることが分かりました。ネット上にもたくさんの情報がありますが、これもその真偽をしっかりと確認する必要があります。

自己破産するという行為は、人生の中でも一大事といっていいほど重要なことです。世間に流れている間違った情報を真に受けてしまったため、自己破産することを避けるようなことがあってはいけません。

正しい知識を持ち、自己破産のメリットとデメリットをしっかり理解することが重要です。

メリットだけでなくデメリットも正しく理解しなければいけません。デメリットに関して充分な理解がないにもかかわらず自己破産に踏み切ってしまうと、とんでもない後悔をすることになるかもしれないのです。

デメリットも充分理解し、そのうえでそれでも自己破産するのかどうかを冷静に判断する必要があります。

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